それから細かいことをいろいろ話し合ったけど、方向としては教会のロケに決まった。スケジュールはおいおい組むとして、まずはロケ場所を探しましょう、という結論に達して、その日は解散。
 その足で、ステンドグラスの教会に向かう。あの写真が気にいるんじゃないかと思って、一応見学のアポだけ事前に取ってあった。
 以前撮ったから大体は覚えているけれど、今回は視点が違った。あのステンドグラスを、荘厳に『見せない』ことが求められているのだから。祭壇前の一番大きなステンドグラスではなく、あえて小さなものに目を向ける。
 頭の中で切り取って、想像する。静謐で神聖、それでいて重要なのが、温かみ……。なんだかピンと来なかった。やはり華やかすぎるのだ。
 別に悪くはないんだけど、なんかこう、違うんだよな。
 俺がそう思うのだから、嶋中さんはもっとそう思う気がする。それに、今回は妥協したくない。
 それから暇を見つけては、近くの教会を見て回ったけど、イメージ通りの場所はなかなか見つからなかった。結婚式場の教会も一通り回ったけど、やはり華やかすぎる感が拭えない。かと言って普段礼拝なんかをやっているところは、ただの集会場みたいで使えない。
 やっぱりあのステンドグラスの教会で撮るしかないだろうか、と思い始めていたところに、鈴木さんから連絡が入った。もしかしたらイメージに近いかも、という教会が見つかったらしい。
 鈴木さんの説明によると、もともと地主かなんだかが建てたのを、その家が没落したときに市が買い取ったもので、一般には全く公開されていないらしい。一応ステンドグラスがあって、歴史的に貴重だからと市が管理しているけど、メンテナンスに業者がたまに入るほかはほったらかし。地元の人でもその存在は知られていないそうだ。
「よくそんなもの見つけてきましたね」
 感心して言うと、それが仕事なので、と一言返される。仕事ができそう、と思ったのは間違いじゃないらしい。
「ただ、写真もなにもないので、実際見てみないと何とも言えません。一応撮影の許可は降りるそうです」
 だったら見に行くしかないだろう。