「う、上村?」
「……あんた、俺を殺す気か?」
痛みに顔をしかめ、ゆっくりと体を起こすと、彼は私を威圧的に見下ろした。相変わらず偉そうな態度だ。
「何なのよ。上村、どうして勝手に入ってくるの?」
私は上村に気づかれるのが嫌で、恐怖でまだ微かに震える手を背中の後ろに隠した。動悸がなかなか治まらない。
――とりあえず、強盗じゃなくて良かった。
「勝手にって、ちゃんと鍵を預かったでしょ」
「なっ!? 私は預けた覚えはないわよ! あんたが勝手に持って行ったんじゃない。……わかった! その鍵、返しにきてくれたのよね?」
私は、さっさと鍵を返して欲しくて、上村に向かって右手を突き出した。
「……先輩、ひょっとして震えてんの?」
上村の視線に気づいた時には遅かった。とっさに手首を掴まれて、隠しようがない。
「あんたのことを泥棒だと思ったのよ。悪い?」
反対の手で口を覆い、肩を揺らして笑いを堪える上村にムッとして、私は思いっきり上村の手を振り払った。
「それはそれは、驚かせてすみません。先輩も意外に可愛いところあるじゃないですか」
「一体何の用? 用がないのなら、鍵を置いてさっさと帰んなさいよ」
上村の一言一言が一々癇に障る。
人のこと驚かせておいて、謝ったって口先だけで、絶対に悪いなんて思ってない。本当にこいつ、性格悪い!
「……用があるから来たんでしょ。とりあえず部屋に上げてくださいよ」
「鍵を返すなら入れてあげるわ」
「……わかりました。帰るときに返します」
嫌そうな顔でそう答えると、上村は体を折り曲げて、下から何かを拾い上げた。
「何それ……グレープフルーツ?」
さっき三和土を転がったのはこれだったんだ。上村は手のひらに載せたグレープフルーツを「はい」と私に手渡した。
「それ、お土産です」
「はあ……ありがとう」
とりあえず間に合わせで選んだのだろうか。上村からの奇妙な手土産を手に、私は部屋の中へと向かう。
「お邪魔しまっす」
上村は機嫌よく私の後についてきた。
「……あんた、俺を殺す気か?」
痛みに顔をしかめ、ゆっくりと体を起こすと、彼は私を威圧的に見下ろした。相変わらず偉そうな態度だ。
「何なのよ。上村、どうして勝手に入ってくるの?」
私は上村に気づかれるのが嫌で、恐怖でまだ微かに震える手を背中の後ろに隠した。動悸がなかなか治まらない。
――とりあえず、強盗じゃなくて良かった。
「勝手にって、ちゃんと鍵を預かったでしょ」
「なっ!? 私は預けた覚えはないわよ! あんたが勝手に持って行ったんじゃない。……わかった! その鍵、返しにきてくれたのよね?」
私は、さっさと鍵を返して欲しくて、上村に向かって右手を突き出した。
「……先輩、ひょっとして震えてんの?」
上村の視線に気づいた時には遅かった。とっさに手首を掴まれて、隠しようがない。
「あんたのことを泥棒だと思ったのよ。悪い?」
反対の手で口を覆い、肩を揺らして笑いを堪える上村にムッとして、私は思いっきり上村の手を振り払った。
「それはそれは、驚かせてすみません。先輩も意外に可愛いところあるじゃないですか」
「一体何の用? 用がないのなら、鍵を置いてさっさと帰んなさいよ」
上村の一言一言が一々癇に障る。
人のこと驚かせておいて、謝ったって口先だけで、絶対に悪いなんて思ってない。本当にこいつ、性格悪い!
「……用があるから来たんでしょ。とりあえず部屋に上げてくださいよ」
「鍵を返すなら入れてあげるわ」
「……わかりました。帰るときに返します」
嫌そうな顔でそう答えると、上村は体を折り曲げて、下から何かを拾い上げた。
「何それ……グレープフルーツ?」
さっき三和土を転がったのはこれだったんだ。上村は手のひらに載せたグレープフルーツを「はい」と私に手渡した。
「それ、お土産です」
「はあ……ありがとう」
とりあえず間に合わせで選んだのだろうか。上村からの奇妙な手土産を手に、私は部屋の中へと向かう。
「お邪魔しまっす」
上村は機嫌よく私の後についてきた。