樹々は穏やかな顔で図鑑のページを捲っていく。
そして目的のウサギのページを開けると、樹々は蛍光ペンで線を引かれた項目を指差した。

「ここにウサギが食べても大丈夫な花や草が書かれているんだよ。ノコギリソウも書いてあるでしょ?だから紗季は無罪だよ!」

なるほど。

って樹々・・・・。

『どうして小学校が管理する図鑑に蛍光ペンで線を引かれているのだろう?』と私は気になって、樹々の言葉があまり入ってこなかった。
何よりもう樹々の私物化しているし。

今頃小学校の図書室では、『大変な事』が起きているんだろうな。
想像したくない・・・・。

その蛍光ペンで線を引かれた項目には、聞き覚えのある花の名前が書かれていた。
クローバーにタンポポ。

そしてノコギリソウ。
他にもオオバコとかハコベと言った名前が書かれている。

それと『ナズナ』ってどんな花だろう?

あまり聞き覚えない花の名前に私は再び混乱した。

同時に不安になってしまった。
だってこの図鑑で、一つの事実が証明されたから。

嬉しいことなんだけど、再び振り出しに戻ってしまったから・・。

「『ノコギリソウは食べても大丈夫な花』ってことは、やっぱり紗季は無罪。無罪ってことは、やっぱり私と葵があげた花が原因?」

私が出した結論に、樹々は頭を抱えた。
まるで『それだけは言わないで』と叫んでいるような落ち込んだ表情・・・・。

「結局はそこに戻っちゃうんだよね。まあ紗季の容疑が晴れたから嬉しいんだけどさ。と言うか、葵って人があげた花が何なのか分かったら直ぐに解決するのに!」

確かに樹々の言う通りだ。
葵があげた花が図鑑に載った花ならば、私達も無罪なはず。

これで葵と向き合って話が出来るハズなのに・・・・。

まあでも、ウサギの死因を調べたら一発で分かることなんだけどね。
そもそもウサギの死因って私達は知らないし。

『私と葵があげた花で死んだ』って言う証拠もないし。
学校側はそこについては調べていたのだろうか?

「そういえばウサギの死因って何だろう?寿命で死んだとか考えられないかな?」

私はいつの間にかそんなことを口にしていた。
ウサギの寿命ってどれくらいなんだろう?

私の言葉に直ぐに樹々は行動してくれた。
『その項目、どこかで見たような気がする』とでも言うように、樹々は隅々まで図鑑を確認する。

けど寿命については、紗季が指を指して教えてくれた。

興味深い言葉と共に・・・・。