初雪が降ってから二週間が経過した。
 辺りを覆い尽くさんばかりに積もった雪は、ここ数日の間に天候に恵まれて徐々に融けつつあった。

(こういうのが一番ヤなんだよなあ……)
 シャーベット状になった雪の上を歩きながら、紫織は顔をしかめた。

 学校に行く時以外は長めのブーツを履いているが、すぐ側を車が通ると泥雪を撥ねられるから、それもあまり意味をなさない。
 酷い場合は、足元だけでなく、コートまで汚されてしまう。

 ちなみに今日は日曜日。
 普段であれば自主的に出歩くことは滅多にないのだが、涼香と逢う約束をしたので、こうして外を歩いている。

(そういえば、涼香と学校の外で逢うなんて珍しいかも)

 融けかけの雪をなるべく避けて歩きながら、紫織はふと思った。
 紫織と涼香の家は、学校から全くの逆方向にある。
 そのせいで、互いに用事があっても全て校内で済ませてしまうし、一緒に帰っても、結局は駅で別れることとなる。

(何だか変な感じ)

 いつになく、紫織は緊張していた。
 やはり、私服で逢うのは、制服の時とは気分が違う。

(涼香はどんな格好で来るんだろ?)

 普段は決して見ることの出来ない涼香の私服姿を想像しながら、紫織は口元に笑みを浮かべた。