その日の朝、宏樹は陽が完全に昇る前に目が覚めた。
普段であれば珍しくもないのだが、今日は仕事の公休日である。
(もう少し寝るか)
そう思い、目を閉じてみるものの、何故か深い眠りに落ちない。
頭の中もすっかり冴えてしまったので、半ば諦めてベッドから降り、自室を出て洗面所へと向かった。
◆◇◆◇
「はへ?」
洗面所で真っ先に遭遇したのは、歯磨き途中の朋也であった。
「はひひ、ひょうってひゃひゅみひゃなひゃっひゃっへ……?」
歯磨き粉でいっぱいにした口で、朋也は宏樹に訊ねてくる。
そのせいで、この世のものとは思えない意味不明な言葉を並べ立てていたが、『兄貴、今日って休みじゃなかったっけ?』と訊かれたのはすぐに理解した。
(なにもそんな状態で話しかけてこなくていいものを……)
宏樹は心底呆れた。
「――まずは口をすすいだらどうだ?」
やんわり指摘すると、朋也はハッと気が付いたように、宏樹に背中を向けて歯磨き粉を洗面台に吐き出した。
そして、コップに満たしていたぬるま湯で口を数回すすいでから、再びこちらを見た。
「で、なんで早起きしたんだ?」
「何となく目が覚めてしまっただけで……。別に早く起きるつもりはなかったんだけどな」
「ふうん……」
わざわざ訊ねてきたわりには、ずいぶんとあっさりした反応が返ってきた。
(まあ、こんなもんだとは分かっていたけどな……)
宏樹は苦笑しながら、朋也と代わって洗面台に立った。
普段であれば珍しくもないのだが、今日は仕事の公休日である。
(もう少し寝るか)
そう思い、目を閉じてみるものの、何故か深い眠りに落ちない。
頭の中もすっかり冴えてしまったので、半ば諦めてベッドから降り、自室を出て洗面所へと向かった。
◆◇◆◇
「はへ?」
洗面所で真っ先に遭遇したのは、歯磨き途中の朋也であった。
「はひひ、ひょうってひゃひゅみひゃなひゃっひゃっへ……?」
歯磨き粉でいっぱいにした口で、朋也は宏樹に訊ねてくる。
そのせいで、この世のものとは思えない意味不明な言葉を並べ立てていたが、『兄貴、今日って休みじゃなかったっけ?』と訊かれたのはすぐに理解した。
(なにもそんな状態で話しかけてこなくていいものを……)
宏樹は心底呆れた。
「――まずは口をすすいだらどうだ?」
やんわり指摘すると、朋也はハッと気が付いたように、宏樹に背中を向けて歯磨き粉を洗面台に吐き出した。
そして、コップに満たしていたぬるま湯で口を数回すすいでから、再びこちらを見た。
「で、なんで早起きしたんだ?」
「何となく目が覚めてしまっただけで……。別に早く起きるつもりはなかったんだけどな」
「ふうん……」
わざわざ訊ねてきたわりには、ずいぶんとあっさりした反応が返ってきた。
(まあ、こんなもんだとは分かっていたけどな……)
宏樹は苦笑しながら、朋也と代わって洗面台に立った。