歳月はゆったりと流れていった。

 気が付けば、高校卒業の日となっていた。
 しかし、北国の春はまだまだ先なので、校庭の桜の木はまだ固い蕾に覆われている。

「体育館、ちゃんと暖房効いてるんでしょうねえ?」

 そうぼやいているのは、紫織の無二の親友である涼香。

 涼香とは不思議な縁で繋がっていたらしく、クラス替えがあってからも、三年間ずっと同じクラスメイトとして過ごすことが出来た。
 ただ、涼香が人目も憚らずにベッタリしてくるので、一時期は変な噂が流れていた、と別のクラスメイトから耳打ちされたこともあった。

(でも、どんなに言ってもやめないからなあ……)

 紫織は今までのことを想い出しながら、深い溜め息を漏らす。

 それを見た涼香は、「どうした?」と紫織の顔を覗き込んできた。

「――別に何でもないよ」

 紫織がそっぽを向くと、涼香はすかさずその方向に回り込んで来る。