「山浦さん。クライアントから、一番にお電話です」
外線の1と書かれたボタンを押す。
「いつもお世話になっております。山浦に代わりました」
このくらいの台詞は、流れるように口から出てくる。
短大を卒業して五年。
つまり就職してからも五年。
習得した処世術の一つ。
後は飲み会にたまに参加して、会社の愚痴を適度に言うことも一つ。
大村からこちらに帰ってきて、時間に押し流されるように生きている気がする。
今までも感じていたかもしれないけれど、見ない振りをした気持ち。
日々を、ただこなしているだけの毎日。
大村は時間の流れがゆっくりで、目的意識と意欲に燃えていて、生きてる!と実感できる。
そう思うと、今の私は死にかけているのかもしれないな。