祖母の家で暮らすようになって、一ヶ月が経った。

 桜は散って葉桜となり、田んぼは田植えの準備が始まりつつある。
 風の匂いも、春から初夏へと移りつつあるのだろうか。

 三月に祖母がなくなり、四月に仕事を辞めて祖母の家に引っ越してきた。今でも、思い切った選択をしたと思っている。

 ただ、パティシエールを辞めるよりも大変な事態が、祖母の家で待ち構えているとは思いもしなかった。

 知らぬ間に家がカフェに改装されていたり、そこに神様と狛犬が住んでいたり、いきなり動物の声が聞こえる神通力に目覚めてしまったりと、とんでもない出来事の連続である。

 でも、そのおかげで、祖母を亡くした悲しみから、少しだけ立ち直ったような気がする。ひとりだったら、塞ぎ込んで、しばらく無気力状態だっただろう。

 私は今、狛犬カフェの店員として、また、満月大神の巫女として、日々頑張っている。きっと、天国にいる祖母も、優しく見守ってくれているだろう。

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