そうだ。鵠は同じマンションということを切欠に、俺に話しかけてきた。

それ以下も、それ以上もない。

「やっほー」

背中を叩かれる。痛くはないけど痛い。
振り向いて、その声の主を見下げる。

「おう」

笑顔でこちらを見上げていた。

「さっきさあ、担任に……」

鵠が笑いながら話し始める。本当にいつも楽しそうで、こういう人間の周りに人は集まる。

さっきの男子も鵠のことが好きなのかもしれない。

男子“も”?

ふと考えたそれに、自分で気付く。なんだ、今の。


口の中が、苦く感じた。