「はーい、みんな、このバケツにも水が入っているよ」


「こっちにもあるから、みんな押さないでね」


学校はカオスだった……。

と言っても、


「お願い、私にも洗わせて!」


「お水ちょうだい!」


先ほどまでとは打って変わって、いまは可愛いものではあったが。

蒼士は一緒にみんなの元へと水を運ぶひかりに笑いかけると、額の汗を拭った。


「いやー、なんとか収まったね」


「うん。一時はどうなるかと思ったけど、司が止めてくれたのかな」


「たぶんね。ギリギリセーフって感じだね」


そう、嫉妬に狂った女子生徒たちと、逃げ惑う男子生徒たち。
その間でみんなに怪我のないよう立ち回っていた蒼士たちだが、体力にも限りはあった。

正直、疲労で限界が近づいていた。
そんな中、激高してモップを振り上げた少女がいた。
それに気付けはしたものの、重い足と荒い呼吸では蒼士もひかりも僅かに手が届かなかった。

間に合わない!

そう諦めかけた時、それは起こった。

一瞬、ビクンと震えたかと思うと、突然嫉妬に狂った少女たちが一斉に動きを止めたのだ。