2話「緑色の彼」
「薫、起きて」
「ん…………」
その声は聞き覚えがあるようで、聞いたことがないような。不思議な声だった。男性の声だが、少し高い澄んだ声。
薫は目を擦り、ゆっくりと目を開けた。
薄いカーテンから太陽の光が柔らかく差し込む。眩しいと感じながらも、その声の主が気になって薫は目を細めて声がした方を見つめた。
すると、そこには新緑の葉のような緑色のふわふわした髪に、日に焼けた肌の色、そして瞳が紫黒色の、すらりとした体格の男が居た。薫と目が合うとニッコリと笑って「薫、お誕生日おめでとう!」と、明るい声でお祝いの言葉を言いながら、薫をギュッと抱きしめた。
「…………ミキくん………?」
「うん、そうだよ。どうしたの、寝ぼけちゃった?」
「ごめん………熟睡しちゃったみたいで」
「ははは。可愛いなー、僕の恋人は」
「恋人………」
ミキは南の肩に頬を擦り付けるようにブンブンと頭を揺らした。この度に緑の髪が頬に当たってくすぐったくなり、薫は思わず微笑んでしまう。ミキからは、あの白檀の香りがした。きっとアロマオイルの香りが移ったのだろう。
真っ白なシャツとズボンという服装の彼。そして、薫は緑色のパジャマを着ていた。
「あれ?パジャマってこの色だっけ?」
「薫が好きな緑だよ。僕の色でしょ?僕がプレゼントしたの忘れたの?」
「ううん。そうだったね……」
そう。
ミキの部屋によく泊まるようになった頃。彼が準備してくれたんだ。
まだ頭がボーッとしているのかもしれない。