「はあ?」
と、市川さんが先生を睨み付けるが。


「お前、中学生の時から派手な格好で相当目立っていたらしいじゃないか。それに、気に入らないクラスメイトには暴力を振るったりしていたそうだな。要注意人物だと、出身中学から連絡が入っているぞ」

「ぼ、暴力はしてないわよっ」

「永倉さんが弱い立場にあるからって、彼女のことをいじめていたんだろう」

「私は……!」


市川さんは自分の意見を発しようとするが、先生はそれを遮り
「全く、これだから問題児は……」
と、溜め息を吐く。

市川さんが、膝の上で両拳をギュッと握り締めたのが、俺の位置からも見えた。


「……違いますよ」

先生、市川さん、そして律が。
皆一斉に、俺へと視線を向ける。


「確かに、きっかけを作ったのは市川さんですけど、先に手を出したのは永倉です」

だから、と言葉を紡ぎながら、俺は律と視線を合わせ、


「お前も悪いぞ、律」



そう言うと、先生はバツが悪そうに

「そ、そうなのか? よく分からないが、じゃあ後は皆で話し合って仲直りしてくれ!」

と言い残し、学習室を出ていった。
バタンと扉が閉まると、パタパタパタと小走りに去っていく足音が聞こえてきた。