「永倉さんは、それでいい?」

尚也が、俺の後ろの後ろの席にいる律に目を向け、そう尋ねる。

律には何も言わないで、勝手に今の行動を起こしている。事前に相談しても、気を遣わないで、とか言われそうだったから。

でも、やっぱり相談しておいた方が良かったかも、と今更ながら思う。律がどう思ったか、少し不安になってきた。律の方を向けない。


すると、律のリアクションより先に、教室前方の窓際で尚也の進行を見守っていた担任が、口を開いた。


「長尾。申し訳ないが、永倉は体育祭当日は応援と見学のみしてもらうことになってるんだ。本人にはそう話してある」


こう言われることも、想定済みだ。


「俺も、本人からそう聞きました。でも、本人は一種目でもいいから出場したいって言ってました。万が一ですけど怪我をしたとしても、二人三脚なら俺が隣にいますし」

「でもなあ」

うーん、と担任は腕を組んで頭を悩ましている様子だ。

悩んでいるということは、可能性があると思っていいだろうか。

俺は期待しながらOKの返事を待った。

でも。


「……やっぱり駄目だな。許可は出来ない」