「ねぇ、本当にいいの? 病み上がりじゃ……」
「平気だって。兄貴、めちゃくちゃ元気だから」
次の日。伊都は、誠を連れて、病院に向かっていた。
実は昨日、兄の唯斗に「そういえば、例の俺に会いたいと言っていた人はどうなった?」と言われたので、「明日連れてくるよ」と言ったのだ。という訳で、伊都は久しぶりに学校に行き、帰りに誠を病院に連れていくことにした。
歩きで行くのは少し遠いので、初めて病院行きのバスに乗り、やって来た。
「いや、でも……」
誠は病院を目の前にして、まだ渋っていた。
「大丈夫だってー。兄貴、誠に会うの楽しみにしてたから」
「そ、そう?」
「当たり前だろ」
伊都はニカッと笑った。病院に入って、兄の病室に向かう。扉を開けて、兄に声をかけたを、
「兄貴ー。連れてきたぞ」
兄は、ベッドから体を起こし、新聞を読んでいた。
「おお、伊都。彼が、そうか?」
「おうよ。俺の友達の誠。一ノ瀬 誠」
「一ノ瀬くんか」
「初めまして」
誠は、しっかりと頭を下げて挨拶をした。
「伊都。せっかく連れてきてくれたところ悪いが、彼と二人きりで話がしてもいいか?」
「おー、分かった。じゃ、下にいるわ」
こうなることは、ある程度予想していた。
「それじゃ、ごゆっくりー」
伊都は、病室を出た。