「あの、さ」

わたしは思い切ってこう切り出した。

「ん?」

「わたしのこと……助けてくれて本当にありがとう。そのせいで藤原くんが苦しい思いしちゃったよね……。本当にごめんね」

藤原くんが退院した後、なんとなく言いそびれてしまっていた言葉。

わたしは藤原くんにビルから飛び降りて自殺する自分の姿を見たことを話した。

「わたしが自殺すること知ってたんだよね?だから、藤原くんは始業式の日に声をかけてきてくれた。そうだよね?」

わたしの言葉に藤原くんはうなずいた。

「あぁ。春休みに結衣が自殺する夢を見た。結衣のことは知ってたし、最初は戸惑ったけど……救いたいって思った。だから、始業式の日からできるだけ声をかけようって決めた。それで自殺を思いとどまってほしいって思ったから。でも、一緒にいればいるほど、俺は純粋な結衣に惹かれて……。結衣に笑顔も見られるようになったし、少し安心してた。きっと28日が来ても結衣は自殺なんてしないって」

「でも……、その夢が変わったの……?」

「あぁ。結衣と遊んだ日の夜にまた夢を見たんだ。その夢では工事用の足場が崩れて俺が巻き込まれてた。それで悟ったんだ。俺は4月28日に死ぬって。でも、結衣を救えるならそれでいいと思った。でも、残された結衣の気持ちを考えるとこれでいいのかって悩んだりもして……。だから、距離を置こうって考えた。でも、それが正解なのか俺にも分からなくて。余計に結衣を苦しめている気もして……」

藤原くんのおばあさんがいっていた。

藤原くんは不器用だって。藤原くんは何でも器用にこなすと思っていたけど、藤原くんも悩んだり迷ったりすることもあるんだ。