場面が次々と変わっていく中で、そこには必ず拓真くんの姿があった。
休み時間の度に“私”のもとへ足を運んできて、私にだけではなく千春にも話し掛けている。
しかも、あろうことか拓真くんは、私のことが好きだと公表もし始めたのだ。
拓真くんが何を考えているのかは、この時の“私”も今の私もきっと分からない…。
『ねぇ!拓真くんの事はどう思ってるの?』
『…っ…。あ、いや…』
『すごく良いじゃん!桜の事想ってるみたいだし!』
『そうだね…。』
本当のことは、千春には言えなかった。
そして、今拓真くんと接しているということも翔くんには言っていない。
フッと蘇る記憶に、私は顔を歪めた。
ああ…そうだこの時から私は…
『桜も満更じゃない感じだよね!』
蓋をしたはずの想いが、開きかけ始めていたんだ…。
あの頃、拓真くんの優しさに、笑顔に惹かれていて。
まるであの出来事など無かったかのように、拓真くんはあの頃と同じように私に接してきていた。
「迷って…いいの…?」
目の前の“私”に問い掛けるように、そう呟いていた。
「あの人は“私”を傷付けたんじゃないの…?」
自分で呟いたのに、そのままブーメランのようにその言葉が返ってきて胸に突き刺さる。
このままでいいの…?
そう思ったとき、また体がパアッと光に包まれる。
戻るのか…。
そう思って瞳を閉じようとした時、視界の先で、今まで笑っていた拓真くんの表情が、スッと消えたような気がした。