――――それは、星も月も見えない夜のことだった。




私の眼下では、ネオンが眩しく輝いている。

それとは反対に、私の頭上には光なんて何も見えない。


空は、真っ暗だ。私の心と同じように――




「こんなところで、何をしてるんだ?」




私しかいないと思っていた空間で、突然知らない声が背後から聞こえてきて、私は慌てて振り向いた。



月の明かりはない。下からの輝きがあるだけで、ここに私たちを照らしてくれるものは何もない。

だから、どんな人がこの場にいるのか、私にはわからなかった。声で判断すると男性みたいだし、暗闇に慣れた私の目にはスタイルの良さそうな男性の姿が見える。


なんとなくその人を見ていると、その人影は私の元に近づいてきた。そして、一定の距離を詰めるとその場で立ち止まる。

距離が近くなったから、もっと相手の姿を見ることができた。全身黒い服を身に纏った男。どうやら私よりも年上で、背が高くて顔が小さい。だけど、どんな顔をしているかはわからなかった。


私は、念のため被っていたフードをさらに目深にした。

こんな夜にフードを被っているなんて、完全に怪しい奴だろうけど。