場所さえわかれば問題はない。
「があっ!?」
 どこかで声が上がり、何かが倒れる音がした。それに続いて何者かが走る足音が聞こえ、そしてまた声が上がり、何かが倒れた。
 何かが倒れる音が三回聞こえた。
 ユストは暗闇の中、音のした方へと歩いていく。
 音のしたあたりには一人の黒い服を着た男が倒れていた。もちろん、相手は知り合いではない。
「王国の暗殺者か何かでしょうね。まあ、想定内ですが」
 敵がこちらの動きを察知している。というのをユストは最初からわかっていた。だからここに来た。
 ここには自分たち以外に誰もいない。ここならば何をしても誰にも見られない。
 見ているのは自分だけ。
「しかし、もう手遅れですよ。私をどうこうしようとすべてはもう終わりです」
 男が闇の中へ沈んでいく。男が倒れている場所だけが、まるで底なし沼にでもなったかのように沈んでいく。
「それに、もう始まる頃ですしねぇ」
 そう言うとユストはあくびをしてレリナの寝ている廃屋へと戻っていく。
 廃屋の中に戻るとそこにはレリナがいる。ぐっすりと眠っている。そして、おそらくすべてが終わるまで彼女は眠ったままだろう。
 そんな彼女を見てユストは首を傾げる。
「なぜ私はこの人を助けたんでしょうねぇ」
 なぜ。自分で助けておいて自分でその理由がわからない。
 彼女の境遇に同情したからというわけではないだろう。レリナのような境遇のエルフはこの国に大勢いるし、この国だけではなく大陸のどこかで苦しんでいる亜人はいくらでもいる。
 別に彼女の容姿が好みであるというわけでもない。特にルナエルフに思い入れ