「心配してくれるのはありがたいけど、僕はどうしても家族三人でもう一度暮らしたいんだ」

僕は、はっきりした口調で言った。

父親が家を出て海外の仕事をしてから、今までお金には困らなかったが、その代わり本来ある家族の形が崩壊した。そして今は、お金すらも徐々になくなっている。

「楽しいぶん、それ以上に辛いことも後から後悔することになるよ。それでもいいの?」

「ああ、いいよ」

そう言って僕は、先ほど銀行から下ろした七万円を女神様に手渡した。七万円を納めたから、これで七日間は父親がいた前の家族の生活が送れる。

「明日から七日間だけ、父親が君の家にいる」

淡々と説明する女神様の言葉を聞いて、僕は「そうか」と言った。

サイフの中身を確認するとお札は一枚も入っておらず、小銭だけのサイフが重たく感じた。