【 三章 第九の月~十五夜~ 】
「おばあちゃん、あと十分で停電になっちゃうから、これから使うものだけ先に出しちゃおうよ」
「ああ、そうだったねぇ。早くしないと」
おばあちゃんと一緒に、冷蔵庫に入っている食材をチェック。
夕飯に使うものだけを取り出して、あとはしっかり閉めておいた。
うっかり開けてしまわないように、マグネットで『開けたらダメ!』と書いたメモを留める。
これから八時間の計画停電をやり過ごさなくてはならない。冷蔵庫の開け閉めを行わないことで、中の食材を守らなくては。
優理君の誕生日に起こった『カルマ(業)の火』から二か月が過ぎた。
私の誕生日である八月七日、一花が私に「おめでとう」を言ってくれたそのすぐ後、また総理大臣がラジオで会見を開いた。
長く続く子どもの外出禁止令に、教育の機会が奪われると感じた保護者と、外に出られないストレスで苛立つ子ども達の声を受け、政府もついに核爆弾の危険性を考えて子ども達を外に出さないという方針を明らかにしたのだ。
それまでは国民がパニックになるのを防ぐために、表面上は伏せられていた。