――翌日。ゼクスとエリーは一史が通う大学前にいた。
お昼を回り、今の時刻は2時45分。3講目が終わる時間で、一史の情報によれば、3講目から帰る学生が多くなるそうだ。
「今回は地道に学生から聞くしかない。俺が考えるに、管理人は男である可能性が高い。となれば、エリーの力が必要だ」
「お任せ下さい。ゼクス様の頼みとならば、断る理由はありません」
にこりと微笑むエリーの今日の姿は、事務所の時とは正反対にカチッとした服装をしている。
タイトな黒のスカートに、黒色のジャケット。赤い縁の伊達眼鏡を掛けた姿は、仕事が出来る秘書と言ったところか。
「さて。どいつにアタックするか……」
少し離れた場所で見ていれば、次第に大学から出てくる人が増え始める。ゼクスは黙って目星を付けていると、ひとりで出て来た男に目を止めた。
「エリー。あの男にしよう」
「分かりました」
そう言ったと同時に、エリーは歩き出す。左耳にピアスを付け、スマホを見ながら歩く男に声を掛けた。
「すみません。お話よろしいですか?」
「あぁ?」
周りを見ていなかった男は、僅かに不機嫌に顔を上げる。しかしエリーを見た途端目を見開き、驚いたまま足を止めた。
「突然に申し訳ございません。わたくし、探偵の鈴木と申します。お伺いたいお話があるのですが、少しだけお時間ちょうだい出来ますでしょうか?」
「探偵さん……。あ、あぁ、大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。では近くのカフェに移動しましょうか」
明らかに見とれていることが分かった。ほぅと放心状態の彼に微笑み、エリーは術の必要はないと心の中でくすりと笑う。前もって入るカフェを決めていたので、先にゼクスはそこに入り、離れた場所で様子を伺うことにした。
店内が空いていたこともあって、エリー達はゼクスの後ろの席に着く。コーヒーと紅茶が頼まれたところで、エリーが話を始めた。
「突然にありがとうございました。まず、こちらの名刺を渡しておきますね」
そう言って1枚の名刺を手渡す。そこには鈴木探偵事務所、鈴木茉緒(すずき まお)と書かれている。実際にありそうな名前ではあるが、全くのデタラメだ。
「ありがとうございます。あ、俺は横井(よこい)です」
「横井さん。よろしくお願い致します。あ、上着を脱がせてもらってもよろしいですか?」
「どうぞどうぞ」
ありがとうございますと言って、エリーはジャケットを脱いだ。下に着ていたのは、白のレースのノースリーブブラウス。ジャケットの上からでも胸が大きいことは分かっていたが、それは更に強調される。
探偵がこんな服を着ていることは、まずないだろう。だが何ともエロさを兼ね備えた姿に、横井は釘付けとなった。
「では横井さん、さっそくですが、お話を聞かせて下さい。あなたの通う大学のことなんですが、大学内で噂になっているサイトがあることは、ご存知ですか?」
本題を切り出すと、横井の表情は僅かに強ばる。じっとエリーを見ていたと言うのに、急に目を逸らした。
「実はそのことで、知っていることを聞かせて欲しいんです」
少なくとも知っていることは明白の中、話を続ける。と、ここで飲み物が運ばれてきたが、横井は口にすることはなく、視線を下に向けたまま。
「……俺は何も知りません」
小さな声で呟いて、だんまりを決め込む。それを見たエリーは、机の上に乗せられている横井の手に自分の手を重ね、ねぇ……と囁いた。
ドキッと驚いた横井が顔を上げると、エリーはにこりと微笑む。
「私の目を見て?」
色香含む声で言えば、横井は吸い込まれるように見つめる。赤い両目が妖しい光を帯びると、横井の目はとろんととろけた。
お昼を回り、今の時刻は2時45分。3講目が終わる時間で、一史の情報によれば、3講目から帰る学生が多くなるそうだ。
「今回は地道に学生から聞くしかない。俺が考えるに、管理人は男である可能性が高い。となれば、エリーの力が必要だ」
「お任せ下さい。ゼクス様の頼みとならば、断る理由はありません」
にこりと微笑むエリーの今日の姿は、事務所の時とは正反対にカチッとした服装をしている。
タイトな黒のスカートに、黒色のジャケット。赤い縁の伊達眼鏡を掛けた姿は、仕事が出来る秘書と言ったところか。
「さて。どいつにアタックするか……」
少し離れた場所で見ていれば、次第に大学から出てくる人が増え始める。ゼクスは黙って目星を付けていると、ひとりで出て来た男に目を止めた。
「エリー。あの男にしよう」
「分かりました」
そう言ったと同時に、エリーは歩き出す。左耳にピアスを付け、スマホを見ながら歩く男に声を掛けた。
「すみません。お話よろしいですか?」
「あぁ?」
周りを見ていなかった男は、僅かに不機嫌に顔を上げる。しかしエリーを見た途端目を見開き、驚いたまま足を止めた。
「突然に申し訳ございません。わたくし、探偵の鈴木と申します。お伺いたいお話があるのですが、少しだけお時間ちょうだい出来ますでしょうか?」
「探偵さん……。あ、あぁ、大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。では近くのカフェに移動しましょうか」
明らかに見とれていることが分かった。ほぅと放心状態の彼に微笑み、エリーは術の必要はないと心の中でくすりと笑う。前もって入るカフェを決めていたので、先にゼクスはそこに入り、離れた場所で様子を伺うことにした。
店内が空いていたこともあって、エリー達はゼクスの後ろの席に着く。コーヒーと紅茶が頼まれたところで、エリーが話を始めた。
「突然にありがとうございました。まず、こちらの名刺を渡しておきますね」
そう言って1枚の名刺を手渡す。そこには鈴木探偵事務所、鈴木茉緒(すずき まお)と書かれている。実際にありそうな名前ではあるが、全くのデタラメだ。
「ありがとうございます。あ、俺は横井(よこい)です」
「横井さん。よろしくお願い致します。あ、上着を脱がせてもらってもよろしいですか?」
「どうぞどうぞ」
ありがとうございますと言って、エリーはジャケットを脱いだ。下に着ていたのは、白のレースのノースリーブブラウス。ジャケットの上からでも胸が大きいことは分かっていたが、それは更に強調される。
探偵がこんな服を着ていることは、まずないだろう。だが何ともエロさを兼ね備えた姿に、横井は釘付けとなった。
「では横井さん、さっそくですが、お話を聞かせて下さい。あなたの通う大学のことなんですが、大学内で噂になっているサイトがあることは、ご存知ですか?」
本題を切り出すと、横井の表情は僅かに強ばる。じっとエリーを見ていたと言うのに、急に目を逸らした。
「実はそのことで、知っていることを聞かせて欲しいんです」
少なくとも知っていることは明白の中、話を続ける。と、ここで飲み物が運ばれてきたが、横井は口にすることはなく、視線を下に向けたまま。
「……俺は何も知りません」
小さな声で呟いて、だんまりを決め込む。それを見たエリーは、机の上に乗せられている横井の手に自分の手を重ね、ねぇ……と囁いた。
ドキッと驚いた横井が顔を上げると、エリーはにこりと微笑む。
「私の目を見て?」
色香含む声で言えば、横井は吸い込まれるように見つめる。赤い両目が妖しい光を帯びると、横井の目はとろんととろけた。