和人が起こした行動の結果は予想以上に芳しくなかった。

 数日後、内側から目張りされた黄色のテープが外から確認できた時は思わず「マジかよ」と呟いてしまった。
 景観を損なうという言葉を理事会へ贈りたい心持ちになった。

 それでもそのテープは『keep out』の意味合いもある気がして、ガラスが割れた部分を塞ぐ役割と人を寄せ付けない意味があるのだと無理矢理思うことにした。

 しかし実際は逆の作用をもたらしていたようだった。
 目立たなかった小さな穴は悪目立ちする黄色のテープによって、人々の注目を浴びていた。
 道行く人が違和感に気づき、立ち止まって塞がれた穴を見ていく。

 注目を浴びたことで欠けたガラス部分が危ない、見た目が悪いなどの声が上がり、迅速な修繕工事へ繋がればいいと淡い期待を抱きながら成り行きを見守ることにした。

 数日が過ぎ、珍しく早い時刻に帰宅した夕方。

 穴の前に小さな人影を見つけて目を丸くした。
 手に木の枝を持ち、あろうことかあの外壁の穴を穿っていた。