☆゚+.〈BL〉 GAME ゚+.☆

突然だが俺はクラスの皆に
追いかけられている。

それもこれもあいつのせいだ。

染野の奴、一週間
絶対に逃げきってやる❢❢

そして、あいつは
悔しい思いもをすればいいさ。

とは言うものの、
学校にいる間は
授業以外は男女関係なく
追いかけられるから
こっちは必至で逃げるしかない。

一番安全なのは
家か慎の家だが
学校に行かないわけにはいかない。

しかし、登下校中にも
追いかけられるから
本当に休む暇なんて
あったもんじゃない。

担任はこのことに無関係だ。

雪村曰く、
生徒の問題に口出ししないらしい。

まぁ、別にいじめじゃないから
雪村の言うことも一理ある。

そして、授業が始まる

十分間追いかけ回された後、
やっと教室に戻ってこられた。

しかし、この追いかけっこ
(一対三十九)は昨日から
始まったばかりだ。

因みに、このGAMEを
始めた張本人は
俺を追いかけてこない。

そしてもう一人、
このバカげた GAMEに
参加していないのが笹山慎。

俺の親友で中学から一緒だ。

二日でこれじゃ、
後五日ももつか自信がないが
どぉにかして逃げきるしかない。

土日は慎の家に居ようか?

いや、その前に
捕まったらお仕舞いだ。

やっぱり、週末は
家で大人しくして、過ごすか?

母さんに買い物を
頼まれないことを祈ろう。

学校での唯一の
逃げ場は雪村がいる
国語教官室だ。

それは、的木先生がいるから。

担任の雪村より仲がいいのは
去年の担任だったのと
色々な話が合うからだ。

生徒たちは休み時間に
態々教官室まで来ない。

だから、俺は此処にいる。

勿論、慎も一緒に。
兎に角、、家から出なきゃいいが
平日はそうも言ってられない。

俺が毎時間来る理由も訊かずに
相手をしてくれる。

的木先生とそれに
付き合ってくれる慎には
感謝している。

雪村は話していないのか
俺がただ遊びに来てるだけだと
思っているみたいだ。

染野のGAMEに
彼を巻き込みたくない。

校内で人気者の彼は
知らなくていいし、
知られたくない。

何時も一緒にいる慎も
あえて言わない。

それはとても
有り難かったし
親友だと改めて思った。

時は流れ、今日は金曜日。

これで、土日に捕まらなければ
俺の勝ちということになる。

クラスの奴らと染野に
悔しい思いをさせてやる。

流石に、放課後までは
教官室に行けないが
このまま帰ったら
奴らに捕まるのがオチだ……

う~ん…… どぉすか?

図書室の奥で
悩んでいたら
慎が家(うち)に来ればと
言ってくれた。

奴らもまさか、
慎の家の前でまで
待ち伏せていないだろう。
たぶん、
待ち伏せはしてないと
思うが用心することは大事だ。

裏道を通り、
バレないように帰る。

この道は中学の時に
見つけた道であいつは知らない。

知ってるのは俺たちだけだ。

裏道から出る。

そして、そこから
慎の家まで急いで走った。

玄関の中に入った時
ホッとした。

土日は慎の家で
過ごすことになり
母さんにメールをした。

だが、問題は残ってる。

此処から帰る時だ。

あいつの前で
油断してはいけない。

少しでも気を抜くと
捕まってしまう。

「なぁ慎」

「ん?」

俺は疑問に思っていたことを
慎に訊くことにした。

「土日、外に行く予定なかったのか?」

「うん、それに
予定があったとしても
貴也の方が大事だよ」

慎の優しさには脱帽だな。

「ありがとうな」

「僕たち親友でしょ?」

嬉しいな。

「あぁ」

慎がところでと前置きをした。

「聡くんはこんなこと
始めたんだろうね?」

“聡くん”とは染野のことだ。

俺たち三人は
同じ中学だったりする。

「さぁな」

あいつのやることは
たまによくわからない。

「しかも、何で貴也?」

それは、何となくわかっている。

「誰でも良かったんじゃないか?」

「じゃぁ、来週は僕かな?」

それはないな。

「慎はないんじゃないか」

お気に入りだからな。

「どぉして?」

「だって、染野は
慎がお気に入りだかな」

俺がそう言うと
キョトンとした顔をした。

「僕が聡くんのお気に入り?」

「中学の時も
慎にはちょっかい
出さなかっただろう?」

昔から慎だけは
逆に守っていた。

「確かに、
貴也にばっかり出してたような?」

何となく思い出したらしい。

「染野のは俺が邪魔なのかもな」

「何で?」

天然つうか純粋だなぁ。

「何時も慎の傍にいるからだろう」

ようは嫉妬だ。

「俺は中学からのよそ者だから
慎を取られたみたいで
気に食わないんだろう。
まぁいいさ」

後二日捕まらなければいい話だ。

「今日は沢山話そうね。
この一週間、貴也が
追いかけられっぱなしで
まともに話せなかったからね」

「じゃぁ、いっぱい話すか」

明日は土曜だし
夜更かししても
怒る人はいない。

そして、一週間分の話をした。

楽しい時間は
あっという間に過ぎてしまう。

慎と話してて、本当に
今週はまともに
話せてなかったことを知った。

今、俺は家に
帰ろうとしているところなのだが
無事に帰れるかは運次第だ。

「じゃぁな、慎」

「気を付けてね」

あいつらが何時何処で
待ち伏せてるかわからないからな。

「わかってるって」

「やっぱり、送ってこうか?」

心配性だなぁ。

「いいよ。
心配すんな、
家に着いて部屋に
入ったら電話するから」

「わかった」

心配そうな顔をする慎に
笑顔で手を振った。

**数十分後**

俺は無事に自分の
部屋に着いた。

「もしもし、慎」

「貴也!?
電話くれたってことは
無事なんだね?」

声だけで焦ってるのがわかる。

「おう❢❢
今回は染野の負けだな」

「だね」

慎が心底
ホッとした声を出して言った。
今日は月曜日。

学校に着いて教室に入ると
皆(染野以外)が俺見た。

既に皆知っているのだろう。

染野に「お疲れさま」と
言われたが別に嬉しくない。

そして、皆には
聞こえないような
小さな声で
「次は誰にするかな」と囁いた。

その後、慎が入ってきた。

「おはよう、貴也
一週間、お疲れさま」


慎に言われると嬉しい。

「おはよう
ありがとうな」

俺たちは席がわりと近い。

「次は誰だと思う?」

今週は誰がターゲットに
されるんだろうな……

「わからないよ」

幼なじみの慎でもわからないか。

「だよな、染野も
悩んでたみたいたしな」

あの囁きは
決まってないからこそだ。

「何で知ってるの?」

「さっき「 次は誰にするかな 」
って言ってからけど
放課後までには決めるんだろうけどな。
慎は参加しないだろう?」

聞くまでもないけどな。

「うん、だって
百万円なんて大金
貰っても使い道ないもん。
貴也だって参加しないでしょ?」

当たり前だ。

「勿論」

こんなくだらないGAMEに
参加する気はさらさらない。

とりあえず、俺に平和が
戻ってきたから
他の奴らのことは気にしない。

「やっと、静な
学校生活が送れる」

「そぉだね。
今日は教官室行く?」

先週はクラスの奴らから
逃げるために行っていた
教官室だが今週は
その必用がない。

「慎が行きたいなら行くけど」

「じゃぁ、行く❢❢」

この時は、まさか
的木先生と雪村が
俺たちの恋人に
なるなんて想像もしてなかった。

「わかった、昼休みに行こう」

染野を見るとターゲットが
決まったらしい。

皆も本人も
気付いていないみたいだ。

慎には後で教えてやろう。

**昼休み**

此処は国語教官室。

弁当を持って二人で来た。

「いらっしゃい」

的木先生がニコニコと
迎え入れてくれたのに対し
雪村は「また来たのか」と
呆れた顔をした。

「此処でお弁当食べていいですか?」

とりあえず訊いてみる。

「訊くまでもなく、
此処で食べる気満々じゃないか」

「雪村には訊いてない」

ばっさりと俺が言った。

「俺はいいよ」

やった❢❢ 内心大喜びの俺。

「ありがとうございます」

俺たちは教官室の
ソファーに座って弁当を食べ始めた。

「ねぇ貴也、聡君、
次のターゲット決まったのかな?」

あぁ、すっかり忘れてた。

「決まったみたいだぜ」

「えっ、誰?」

そりゃ気になるよな。

「鈴川」

「何で知ってるの?」

教室で一人で頷いてたからな。

「さっき、
納得したみたいに頷いてたから」

「そっか、鈴川君
逃げ切れるかな?」

どおかな……

「あいつの運次第だろう」

俺たちの話しが気になったのか、
的木先生が「何の話?」と訊いてきた。

「え~とですね、
今、うちのクラスで
GAMEをしてるんです」

あんまり、話したくないが
まぁ、仕方ないよな。

「GAME?」

不思議そうに
的木先生が首を傾げた。

「先週から始まったんですけど
クラスから一人ターゲットを決めて
そいつが逃げ切れば勝ち、
捕まれば負けっていうGAMEで、
ターゲットを捕まえた奴は
百万円が手に入るんですよ」

「それはまた
本格的だね。
誰が始めたの?」

「染野ですよ」

まったく、面倒な
GAMEを始めてくれたぜ。
「先週から始まったって
言ってたけどターゲットは誰だったの?」

「俺です」

その言葉で何となくわかったみたいだ。

「もしかして、先週
毎時間来てたのは
クラスメイトから逃げるためだったの?」

察しがいいな。

「はい。
先週は本当に疲れました」

「それで?」

結果が気になるのか。

「俺が勝ちましたよ。
そんで、今週っていうか
今日の放課後からは鈴川が
ターゲットにされるみたいです」

「因みに、そこに居る
雪村は何も言いませんからね」

ジト目で雪村を見た。

「静、
そぉいうことは止めろよな」

的木先生は雪村と仲いいのか?

「亮には関係ないだろう」

「あの、二人は仲いいんですか?」

俺の心の声を慎が口に出した。

「静とは幼なじみなんだよ」

へぇ~

それは初耳だ。

「雪村と的木先生が
幼なじみだなんて
初めて知りました」

「小学校からずっと一緒だ」

応えたのは意外にも雪村だった。

「初めて会ったのは
六歳の時だから、
もう二十年だね」

早いなぁと的木先生が言った。

「腐れ縁ってやつさ。
このことは他の奴らには秘密だぞ」

「わかってるよ」

言われなくたって言わないさ。

「それで、話しを戻すけど、
静、止めさせろよ」

染野のGAMEな。

「言ったところで無駄だから
止めなかったんだよ」

雪村はこういう奴だよな。

「その最初から諦めてる感じは
昔から変わらないよな……」

はぁ~と的木先生が
眉を八の字にしてため息を吐いた。

「雪村先生は昔から
こんな感じなんですか?」

慎の質問に的木先生は
雪村を指して言った。

「それはもう、
無気力でやる気のない奴だったよ」

「いらないこと言うな」

ムスッとして雪村が
すかさずつっこんだ。

「別にいいじゃないか」

一見、合わなさそうな
この二人が幼なじみかぁ~

「今度、二人の話
聞かせてくださね」

「しょうがねぇなぁ」

慎がそう言うと
応えたのはまたしても雪村だった。

「今度の土曜、空けとけよ。
亮もいいだろう?」

「勿論、
二人共、空けといてね」

休日に的木先生に会える!?

よっしゃ❢❢

「「はい」」

内心ウキウキの俺。

「それで、今週の
ターゲットは誰だって?」

「鈴川だって」

態と聞き返したな。

「そりゃ災難だったな。
あいつ走るの苦手だろう」

これっぽっちも
そんな事思ってないだろう。

目が笑ってるぜ。

「確かにな……
今週は染野の勝ちかな」

鈴川は体育が苦手で
とくに走るのはダメだ。

せめて、二日くらいは
逃げてほしいものだ。

「鈴川君大丈夫かな?
言い方が悪いけど
僕より遅いよね」

いえてるな。

「さぁ、どぉだかな」

こいつは本当に教師か?

「雪村、仮にも教師なんだから
逃げきってほしいくらいは言えよな」

「自分に正直なだけだ」

とことんマイペースだなぁ。

「俺、何で雪村が
教師になったのかわからない」

「僕も……」

今まで黙ってた慎が言った。

プッ、慎にまで言われてるよ(笑)

よく教師になったな。

「 俺が思うには
明日の朝には
捕まってるんじゃないか」

「僕は今日の帰りには
捕まってる気がする」

まぁ、運動部の奴らに
追いかけられたらアウトだろうな。

「笹山、お前何気に酷いな」

慎の言いたいことは
わかるけどな。

そんな慎の言葉に
教官室に笑い声が響いた。

「お前ら、さっさと
弁当食わないと時間なくなるぞ」

話しててすっかり
忘れてたが弁当の途中だった。

「ヤバっ」

「貴也、早く食べちゃおう」

俺たちは残りの
弁当を急いで食べた。

「じゃぁ、俺たち
教室に戻りますね」

名残惜しが仕方ない。

「またね」

教官室を出て
教室に戻った。
今日は約束の土曜。

学校の奴らに
見つからないように
しなきゃならない。

後々面倒な事になりかねない。

雪村はともかく、
的木先生に休日に
会っていたなんて知られたら
学校に居られないだろうな。

そして、俺たちは今、
学校からかなり離れた
公園に来ていた。

「此処でいいんだよね?」

その場所はタクシーで
三十分程かかる所だった。

「雪村が寄越した
地図だと此処のはずだ」

どぉやら俺たちの方が

早く着いたみたいで
雪村たちはまだ来ていなかった。

二十分後、やっと二人が来た。

運転してるのは
的木先生で雪村は
助手席に座っていた。

「先生たち五分遅刻です」

慎が膨れっ面をして言った。

「俺たち
二十分前から待ってたんですよ」

俺も拗ねた口調で言ってみた。

「え? そんな前から待ってたの!?」

「はい」

肯定の意味で慎が
返事をした。

「そりゃ悪かったな」

謝る雪村なんて貴重かも。

「まぁいいけどさ」

「それで、何処に行くんですか?」

慎は何時も俺が
思っていることを
代弁してくれる。

「まだ決めてないんだけど、
とりあえず乗って」

そぉ言われたから
慎と二人で後部座席に乗った。

「お邪魔します」と
二人で言ってみた。

「どぉぞ」

俺たちの台詞が
可笑しかったのか
的木先生は小さく笑った。

「なぁ、番号交換しないか」

いきなり雪村が提案してきた。

「そぉだね」

的木先生まで便乗している。

「いいのかよ?

雪村も的木先生も、
教師が生徒にケー番教えてちまって」

「お前ら二人にだけな」

学校にいる時より
二人が子供っぽくみえる。

まぁ、口ではこう言ってるが
俺の内心は
〈的木先生のケー番ゲット❢❢〉と
かなり興奮気味だけどな。

「誰にも言うなよ」

誰が教えてやるか。

「言わねえよ」

ファンの奴らには
絶対に知られちゃならない。

「笹山もだぞ?」

「わかってます」

「じゃぁ赤外線するか」

四人で番号交換をした。

「行き先はまだ
決まってないからドライブしよう」

的木先生が車を発進させた。

着いたのは隣の市。

雪村が「市内にいて生徒に
見つかるのは嫌だ」とぼやいたのを
慎には聞こえなかったみたいだ。

「二人共、お腹すいてない?」

言われてるみれば、
昼飯がまだだったなぁと思い出す。

「お腹すきました」

二人でハモると
的木先生がまた笑った。

「静は?」

ついでとばかりに
雪村に訊いた。

「俺はついでかよ❢❢」

雪村自身もそう思ったらしい。

「まぁ、腹はへったけどな」

本気で怒ってるわけじゃない。

「じゃぁ、
俺のおすすめの店に行こう」

「何の店ですか?」

的木先生のおすすめとは
何の店だろうか?

「イタリアンの店なんだけど
二人共好き?」

俺の好物だ。

「はい。
大好きです」

慎と二人で応えた。

まぁ、慎は
どっちかというと
和食の方が好きだけどな。

「よかった。
ご飯食べながら
俺たちの話をしてあげるね」

「ありがとうございます」

的木先生は学校の人気者だが、
本人はまったく気付いていない。

車を五分程走らせて
的木先生おすすめの店に着いた。

「喫煙席で大丈夫?」

最初は雪村のためかと
思ったが、どうやら
的木先生も喫煙者らしい。

でも、学校では吸ってないよな。

「雪村が吸ってるのは
知ってますけど、
的木先生も吸うんですね」

「学校ではあんまり
吸わないようにしてるんだよ」

何でだろ?

「理由(わけ)を訊いても?」

「秘密」

唇に人差し指を
当ててシーのポーズをした。

「それで、なんの話からする?」
知りたいことは沢山あるが
欲張ってはいけない。

「二人が高校生の頃の
話が聞きたいです」

雪村と的木先生は
どんな高校生だったんだろうか?

「わかった」

きっとモテたんだろなぁ。

「まず最初に、
俺も静も真面目な
生徒じゃなくて
よく二人でよく怒られたよ」

それは意外だ。

「雪村は
わかりますけど的木先生も?」

「うん。
因みに俺たちは
河路の卒業生なんだよ」

他の生徒が
知らないことを知れて嬉しい。

「じゃぁ、
先生たちは僕たちの先輩ですね」

そういうことになるのか❢❢

「煤宮先生は
俺たちの担任だったんだよ」

あのおじいちゃん先生が
雪村たちの
担任だったなんて吃驚だ。

煤宮先生は六十過ぎの
おじいちゃん先生で
色んな相談にのってくれるから
生徒たちの間では
的木先生の次に人気だ。

「優しいですよね」

慎がしみじみ言うと
的木先生は
ちょっと困り顔をしてから
「あぁ、今の生徒には
優しいよね」と言った。

今の?

「俺たちが学生だった頃は
とっても怖かったんだよ」

「なぁ静」

同意を求められた
雪村は煙草を灰皿に
押し付けて消した。

「そぉだな、何時も怒鳴ってたしな」

あの煤宮先生が
怒鳴ってるところなんて
想像できない……

「意外だね」

慎も同じ事を思ったみたいだ。

「だよな」

俺たちには優しくて
先生というより
本当のおじいちゃんみたいな感じだ。

「きっと、俺たちの時は
息子みたいな感じで、
今の皆は
孫みたいな感じなんだと思う。
煤宮先生も歳とったから
少し丸くなったのかもね」

その後、雪村が意外にモテたとか
二人で同じ人を好きになったとか、
色々な話をを沢山聞かせてもらった。

その後食べたパスタは
とても美味しかった。

「ごちそうさまでした」

二人に向かって言った。

「美味しかった?」

「はい、とても
美味しかったです」

あのカルボナーラ
家で作れるかな?

「それはよかった」

学校では見れない二人がいる。

まず、私服だし
煙草を吸ってる的木先生とか
ある意味レアだよなぁ。

そして、スーツの時と
違って実年齢よりも
若く見えるし、
下手すれば大学生でも
通りそうだ。

そんな心の声を
またしても、慎が
言葉にした。

「今日の先生たちは
大学生くらいに見えますね。
雪村先生も何時もより
格好いいです」

雪村も黙ってりゃ
格好いい部類に入るだろうな。

「それは嬉しいが
《何時もより》は余計だ」

「ごめんなさい」

素直だなぁ。

「まぁいいけどな」

この空気が気持ちいい。

「そぉだ、今、
三組でやってるGAMEなんだけどさ」

話が戻ったな。

「染野が始めたアレですか」

内容が気になるのか?

「うん。
何でそんな事
始めたんだろうと思って」

内容じゃなくて
理由(わけ)を知りたいのか。

「あいつは昔から
気紛れでしたから、
今回のGAMEも意味は
ないと思いますよ」

染野のやる事は
何時だって無意味なことが多い。

「強いて言うなら
単なる暇潰しですよ」

金持ちの考えることは
さっぱりわからない。

「中学の時から
ずっとそうなんです」

五年も一緒だが
理解不能なのは変わらずだ。

「三人は中学から一緒なの?」

「俺はそうですね。
慎と染野は
幼稚園からの
幼なじみなんですよ」

俺は染野にしてみれば
邪魔者なんだろう。

「なぁ? 慎」

「うん、だけど
僕には聡君の
考えてることはわからない」
「まぁ、幼なじみだからって
考えてることが全部
わかるわけじゃないからね」

そぉなのか。

俺は幼なじみなんて
いないからわからない……

「俺も静と二十年
一緒にいるけど時々だけど
未だに何考えてるかわからないし。
静もそぉだろう?」

「確かにな」

やっぱりそうなのか……

「だから、笹山君も
気に病むことないよ」

的木先生の言葉で
少しは気が楽になったらしい。

「わかりました」

苦笑いのような笑みを
浮かべて慎は応えた。

話に区切りが着いたところで
GAMEの話に戻る。

「鈴川の奴、逃げられてるかな?」

今日が土曜だから
明日捕まらなければ
鈴川の勝ちだな。

もしかしたら、
もう捕まってるかも
知れないけどな。

「どぉだろうな」

出来れば逃げきって
くれればいいと思うが
鈴川じゃ無理だろうか……

「まぁ、結果は
月曜にならないと
わからないってことだな」

そりゃそうだ。
確かめる術はないしない。

鈴川とは仲がよくないから
勿論、ケー番も知らない。

「だよなぁ~
そしてまた新しい
ターゲットを探すんだよ」

慎を抜いて俺に
戻るまで繰り返されるんだ。

「かなり酷なGAMEだよね」

今週は追いかけてた側だったのに
来週は追いかけられる側に
なるかも知れないのだから
確かに酷だろう。

特に気が弱い奴はプレッシャーに
耐えられないだろう。

「そぉですね。
だけど、慎だけはターゲットに
しないと思うんですよ」

大体、俺を最初のターゲットに
したのだってやきもちからだ。

「何で?」

的木先生から
質問が飛んできた。

「慎は染野のお気に入りですよ」

「そぉいえば、
この前もそんな事言ってたよね?」

俺にばっかり
ちょっかいを出すのは
慎を取られて悔しいんだと思う。

「先週のGAMEで
何で最初のターゲットが
俺だったかわかるか?」

ちょっぴり天然な
慎には難しいか?

「たまたまじゃないの?」

やっぱり難しいか。

「違うよ」

考え出した慎とは逆に
的木先生は
わかったという顔をした。

「あのさぁ、それ
俺が答えてもいい?」

「はい」

迷いなく言った。

「ようは嫉妬でしょう?」

「当たりです」

雪村ですらポカーンとした
顔をしていた。

「染野君は春日井君に
笹山君を取られたみたいで
悔しかったんだよ」

今度は慎が
ポカーンとした顔をした。

「だから、春日井君を
最初のターゲットにしたんだ」

その言葉に慎は
俯いてしまった。

「おい、
慎が気にすることじゃないぞ」

俺は
これっぽっちも気にしていない。

「でも貴也……」

小さな声で
慎が名前を呼ぶ。

「俺は最初から
わかってたんだ」

そう、わかってたんだ。

慎を取った俺への嫌がらせだと。

余談だが、鈴川は
昨日つまり金曜の
放課後は捕まっていなかった。

無事に帰れたかは
不明だが……

「だから、慎が
気に病むことじゃ
ないから顔を上げろ」

恐る恐ると
いった感じで
慎はやっと顔を上げた。

おっと、また話が脱線したな。

「このGAMEって
全員に回るまで
続くんだよね?」

そうだろうなぁ。

「恐らくは」

何ヵ月かかるんだか……

そして、何人の
クラスメイトが逃げ切れるだろうか?

「染野君を止めるのは
無理なんでしょう?」

止めようとするだけ
時間と労力の無駄遣いだ。

「それは百パー無理ですね。

あいつは言い出したら
聞く耳を持ちません」
「笹山が言ってもダメなのか?」

せめて、慎の言葉くらい
素直に聞けばいいんだが
それすらしないから厄介だ。

「多分ダメだな」

「そっか、じゃぁ
三組は当分大変だね」

まったくだ。

そして、雪村は何も言わない。

「俺たちは参加する
気がないんで自分が
ターゲットじゃなきゃいいです」

他の奴らのことなんて
知ったことじゃない。

「そろそろ出よっか」

店に掛かっている
時計を見ると入ってから
二時間も経っていた。

「そうだな。出るぞ」

「はいよ」

雪村と的木先生は
先に行き、会計をしている。

「お前ら、この後も暇か?」

一日暇だから来たんだしな。

「あぁ」

短く肯定すると
的木先生から
吃驚する提案をされた。

「じゃぁ、家に来ない?」

えっ、的木先生ん家!?

行けるなら行きたい。

「いいんですか?」

「うん。

その方が時間を気にしないで
話ができると思ってね」

確かに学校から
離れてるとはいえ、
屋外にいれば
誰に会うかわからない。

屋内の方がいいとは
思っていたけど、的木先生ん家に
行けるとは予想外だった。

「じゃぁ決まりだな」

車に戻り、連れて来て
もらった時の様に
「お邪魔します」と言って
乗ったら、「別にいいのに」と
的木先生が笑った。

その笑顔が可愛いと
思ったのは内緒だ。

「俺たちの奢りだか金はいらねぇよ」

車に乗ってから
慎と二人で財布を
出そうとしたら
雪村に止められた。

「いいのか?」

別に、俺たちに払えない
金額じゃなかったが
奢ってくれるみたいだ。

「誘ったのは
俺たちだから奢られといて」

的木先生にまで
言われちゃしょうがない。

「わかりました」

二人で
「ごちそうさまです」
とお礼を言った。

「的木先生ん家は
此処から近いんですか?」

答えたのは雪村だ。

「此処から十分くらいだ」

「ぁはは、静に
先に言われちゃったね」

気にしないのが凄い。

「実家はちょっと遠いけどね」

付け足すように的木先生は言った。

そぉなのか……

好きな人のことは
ちょっとした小さなことでも
知れると嬉しくなる。

「学校からは
少し距離ありますよね?」

車通勤だとしても
やはり距離がある。

「そうだね。

毎日、六時には
起きないと間に合わないんだよ」

本当に早起きなんだなぁ。

俺たちは七時に起きても間に合う。

教師ってのも大変なんだなぁと
思っている内に着いたらしく、
そこは十階建てのマンションだった。

「俺の部屋は
五〇五号室だよ」

駐車場からエントランスに向かい
エレベーターのボタンを押した。

五階に着き、的木先生が
五〇五号室の鍵を開けた。

「はい、どぉぞ」

「お邪魔します」

車に乗った時と
同じ台詞を言って
中に入ると男の人の
一人暮らしとは
思えない程にキレイな部屋だった。

「キレイな部屋ですね」

俺の部屋はヤバいくらい汚い。

慎の部屋も
此処まではキレイじゃない。

「そぉ?」なんて
おどける的木先生は
素で聞き返している。

「はい、とてもキレイです」

一体、何時、
掃除してるんだ?

「慎もそぉ思うだろう?」

A型の慎は小まめに掃除する。

だから《少し》散らかっていても
決して汚なくはない。

一方、B型でマイペースな
俺の部屋はかなり汚い。

片しても一週間で汚なくなる。

「的木先生は
何時掃除してるんですか?」

「普通に休みの日だよ」