☆゚+.〈BL〉 GAME ゚+.☆

確か昨日、俺達といる時は
まだ苗字で呼んでたはず。

「そ、それは」

慌ててる慎、かわいいな(プッ)

「どうしたの?」

俺は不安と寂しさを隠して笑った。

「何でもない」

只でさえファンクラブのことで
心配をかけているのに
寂しいなんて言えない。

「そう? 何かあったら言ってね」

亮の科白に泣きそうになった。

ごめんな……

俺はたった今
自分の気持ちを隠したどころだ。

「わかった」

心の中で謝った。

悟られないようにもう一度笑った。

大丈夫、明後日からも頑張れる。

色々考えていたら
亮の携帯が鳴った。

「静からだね」

雪村?

「はいよ、どうした?」

来られなくなったのか?

「渋滞?

わかった、着いたら電話して」

なんだ、渋滞にひっかかってるだけか。

三十分後、再び亮の携帯が鳴った。

雪村達が着いたみたいだ。

「貴也、おはよう」

俺に抱き付こうとした
慎を雪村が止めた。

「いくら幼馴染みだからって
春日井に抱き付こうとするなよ、慎」

おぉ?

雪村が俺に嫉妬?

しかも、名前で呼んだよな。

一晩で進展したな(ニヤニヤ)

「静、笹山君に手出したの?」

慎は真っ赤だな。

「へぇ~

静は優しくしてくれた?」

顔をますます真っ赤に
しながら頷いた。

「よかったな」

二人をからかいなが
亮と俺はキッチンでお茶を淹れている。

夕方、亮に駅まで送ってもらった。

大丈夫、学校で話せなくても
また家に来ればいい。

明日から頑張れる❢❢

そう思っていたのに
あんなことが起きるなんて
知る由もなかった……

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

俺が亮ん家に
慎が雪村ん家に
泊まった二ヶ月後、
事件は起きた……

十二月になりめっきり
寒くなってきたある日に
それは起こった。

俺と慎を
狙っていたみたいで
学校帰りに拐われた。

最悪だ(怒)

連れて来られたのは
何処かの倉庫らしき場所。

主犯の検討はついている。

「あの時以来ね」

やっぱりな。

俺のことをひっぱたいた三年。

俺達を連れて来た奴は知らないが
他はうちの学校の生徒だ。

しかも、三人は三年ときた……

「お久しぶりでーす」

わざと棒読みで答えた。

「要件は一つ
二人の連絡先を
大人しく教えなさい」

教えるわけねぇだろう❢❢

「無理」

二人に連絡先を
教えてもらった時に
誰にも教えないと約束した。

「そう、じゃぁ
犯(や)られれば吐くかしら?」

一人の男が俺に近付いて来た。

「好きに犯(や)っていいわ」

バカだなぁ(ニヤリ)

犯(や)られようが
殴られようが
刺されようが教えねぇよ❢❢

携帯はロックを
かけているから大丈夫だろう。

「貴也❢❢」

慎が俺を呼んだ。

「あんたはお友達が
犯(や)られる
ところを見てなよ」

唯一同学年であろう女が言った。

こいつらバカだろう。

「大丈夫だ」

心配そうな表情(かお)をした
慎に微笑んだ。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

「あんたゲイ?」

別室に連れて来られた
俺はこの男と二人きりだ。

「そうだ」

随分すんなり答えたな……

俺はこの男を知っている。

名前は石浜覚。

バスケ部の主将だったはずだ。

〔ゲイ〕なのは否定しない。

俺達の恋人も〔男〕だからな。
そして、思ったのはこいつ、
俺を犯す気はないんじゃないかと。

「石浜先輩、
バスケ部の練習はいいんですか?」

主将がこんなところで
油売ってていいんだろうか?

俺の言葉に焦りを見せた(ニヤリ)

もうすぐ、冬の大会があったはずだ。

バカな女のバカなことに
付き合ってる場合じゃないだろう。

「今日、部員さん達に
嘘を吐いて此処に来たんですよね?」

顔を歪めた。

図星だな。

「このことを
部員さん達に
バラされたくなければ
俺達に協力して下さい。

それとも、
本当に俺を犯します?」

その瞬間、犯罪者になり
バスケ部は出場停止になるだろう。

証拠?

そんなものは
それこそどうにでもなる。

「高校最後の大会に
出られなくなりますよ?」

主将が問題を起こせば
バスケ部は当然試合に出られない。

欲に負けて出場停止になるか
俺達を逃がす手助けをして
試合に出場するかは
本人次第だ。

「わかった、
お前達を逃がす手助けをしよう」

懸命な判断だ。

「名前を聞いていなかったな」

俺が一方的に知っているだけだからな。

「春日井貴也ですよ石浜先輩」

ついでに慎の名前も告げといた。

別室を二人で出た。

「貴也❢❢ 大丈夫?」

何もされていないからな。

そうそう、別室を出る前
雪村に電話しておいた。

「大丈夫だ。

慎は何もされていないか?」

見た目は大丈夫そうだ。

「うん、大丈夫」

よかった……

慎に何かあったら
俺が雪村に殺(や)られちまう(笑)

「覚、何で!?」

喚いたのは当然
俺をひっぱたいた張本人。

計画では
石浜先輩に犯(や)られた俺に
二人の連絡先を
吐かせるつもりだったはず。

「悪いな、大切なことを
思い出させてくれた春日井の
味方になることにした。
幸樹、笹山を離せ」

慎を捕まえている
男をそう呼んだ。

“幸樹”と呼ばれた男は
大人しく慎を離した。

石浜先輩は俺達を
連れて出口に向かった。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

外に出ると雪村と亮が居た。

「慎❢❢」

雪村は慎を認めると
窒息しそうな
勢いで抱き締めた(苦笑)

こんな雪村は初めて見たな。

「貴也は大丈夫?」

亮は優しく抱き締めてくれた。

「大丈夫だ」

石浜先輩に雪村が
乗って行くかと訊いたが
首を横に振った。

「春日井、笹山
色々と悪かっな」

別に石浜先輩が謝ることはない。

「友人の頼みを
断れなかっただけでしょうから
先輩が謝る必要はありません」

主犯はあの女だからな。

「先生達もすみませんでした」

教師二人に頭を下げて
倉庫の方へと戻って行った。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

運転は雪村がしている。

俺達をマンションへ送り、
慎を連れて帰った。

「貴也、本当に何もされてない?」

心配性だなぁな。

「なんもされてないさ。

確かめてみるか?」

少し挑発してみた。

「隅々まで確かめてあげるよ」

亮が口角だけ上げて笑った。

寝室に連れて行かれ
全て剥ぎ取られる。

「ぁっ❢❢」

全く……

「亮の気が済むまで抱けよ」

明日が学校だとかどうでもよかった。

二ヶ月振りに感じる亮の温もり。

**翌日**

腰が痛い……

完璧亮のせいだ。

本当にあの性欲と体力は
何処からくるんだか(苦笑)

慎はどうしただろう?

雪村が無茶してなきゃいいが(笑)

ああ、でも
あのまま帰したかもな。

意外にも亮より真面目だしな。

「貴也」

教室に着くと慎が俺を呼んだ。

雪村に言われたから
抱き付いて来なくなったな(笑)

俺にまで嫉妬とか笑えるよな。

「はよ」

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

昼休み、俺達は教官室に来ていた。

すっかり居座っている。

数時間前のことなんて
忘れたように教師モードだ。

期末テストも終わり
明日から冬休みだ。

やっと、四人で
ゆっくりできると
思っていたのに
まさか、あんなことに
なるなんて知る由もなかった……
冬休みに入り、
俺達は相変わらず
亮の家に集まっていた。

二学期の連れ去り事件は
誰に知られることもなく
終わり、石浜先輩は
バスケの試合に出られた。

雪村と慎は二人で
出掛けたりするようになり
内心ホッとしていた矢先、
俺の方に問題が起きた……

あれは、亮と手を繋ぎ
マンション近くのスーパーで
夕飯の買い物をしていた時だった。

後ろから声をかけられ
振り向いた先にいたのは
普段、めったに
帰って来ない親父だった。

げっ❢❢

はぁ~

よりによって、
何で今なんだよ……

亮と繋いでる手に
ギュッと力を込めた。

「貴也?」

何かを察した亮が
優しく名前を呼んでくれた。

実は、親父とは
それほど仲がよくない。

二年前、つまり
中学三年時にも
同性の恋人がいたことがあった。

付き合ってた期間は三ヶ月。

これは慎も知らないことだ。

夫婦仲はいい二人だが
性格は正反対。

母さんはまぁおおざっぱというか
俺に対して干渉してこない。

親父は俺が一人っ子だからか
なにかと干渉してくるきらいがある。

二年前のことも親父が原因で別れた。

「お前はまた、
男なんかと付き合っているのか」

親父が同性愛を嫌う理由を
俺は知っていた。

じいちゃんが同性の恋人を
つくって出ていったからだ。

ばぁちゃんの話だと確か、
親父が中学生くらいだったはずだ。

それからはばぁちゃんが
女手一つで親父を育てた。

ばぁちゃんはじいちゃんが
バイだと知っていた。

そして、こう言っていた
「誰かを好きになる気持ちは
誰にも止められないからね」と。

中学三年生の時、
初めて好きになったのがあいつだった。

そして、二年後
亮を好きになった。

「親父は何時まで
殻に閉じ籠もってんだよ」

抑揚のない声で問う。

「もう、中学生のガキじゃないんだ、
世の中には同性愛者だって
いることを理解しろよ❢❢」

じいちゃんが出て行った
原因が同性の恋人だったから
子供の頃は理解出来なかっただろう。

だけど、親父はもうガキじゃない。

大人になり、結婚もした。

ガキの頃よりは世間を見ているはずだ。

「貴也、説明してくれる?」

親父にムカつき過ぎて
亮の事をほったらかしだった。

「悪い亮、
親父が同性愛を嫌う理由は
じいちゃんが同性の恋人を
つくって出ていったからなんだ」

納得したらしい。

「貴也のお父さん、
あなたの気持ちも
わからないでもありません。

ですが、俺達も
真剣に愛し合っているんです」

俺は亮を。慎は雪村を。

「どうか、貴也と
付き合うことを許して下さい」

亮が親父に頭を下げた。

かなり理不尽というか
ムカつくが亮に合わせて
無言で親父に頭を下げた。

「高校を卒業したら出ていけ」

親父はそれだけ言うと
出口に向かって歩いて行った。

「高校卒業したら
追い出されるみたいだから
亮のマンションに住んでいいか?」

聞くまでもないんだけどな(笑)

「当たり前でしょ」

卒業後の住む場所が決まってよかった。

「帰ろっか」

とりあえず、会計をして
マンションに帰って来た。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

夕飯後、二人で風呂に入った。

「一緒に入るのは久しぶりだね」

そういやそうだな。

亮が仕事してたり
俺が本に夢中だったりと
此処最近は別々に入っていた。

親父に遭遇した後だからか
無性に亮にくっつきたくなった。

「貴也、わざと煽ってる?」

無言で頷いた。

「亮、何時ものじゃ足りない」

「そんなこと言われると
止められなくなるけどいいんだ?」

「亮にならなにされてもいい。

親父のことを忘れさせてくれ」

とにかく、忘れたかった。

「はぁん……気持ちいい……ぁっ……」

「んんっ❢❢ 亮……奥、奥もっと……」

まだまだ足りない。

「貴也、煽らないで……」

亮の言葉は無視して
俺は自ら動いた。

目が覚めると亮が起きていた。

「おはよう、貴也」

「はよ」

カーテンの向こう側は白んでいた。

「あんなに煽るから
遠慮なしにシちゃったけど
身体は大丈夫?」

何時ものじゃ足りないと
言ったのは俺だ。

「腰が痛い(苦笑)

だけど、気持ちよかった」

何時も以上に腰は痛いが
それ以上に気持ちよかったし
充実感がある。

俺には亮がいないと
駄目だと改めて実感した。

「貴也、愛してる」

「俺も愛してる」
親父に
「高校を卒業した出ていけ」
と言われた俺は今のうちから
亮ん家に荷物を少しずつ
運ぶことにした。

クリスマスはそれぞれの恋人と過ごした。

そうして、俺の荷物が亮の
マンションに移され増えていった。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

親父に遭遇して三日後。

久々の四人揃っての夕飯。

慎や雪村も気付いているだろう。

「なんか、貴也の物増えた?」


「あぁ、増えたな。
卒業したら此処に住むから
今のうちに少しずつ
運ぶことにしたんだ」

事の経緯を二人に話した。

「貴也、恋人いたの!?」

「あぁ、中学三年生の夏の間だけな。

慎は菱谷音和って覚えてるか?」

当時、同じクラスだった音和は
男子の中では可愛い方だった。

「覚えてるけど、貴也と
付き合ってなんて
今の今まで知らなかったよ……」

そりゃ、バレないようにしていたからな。

告白は音和からだった。

「こっそり
付き合っていたからな(苦笑)

慎は気付いてなかっただろう?
だけど、親父には
この間みたいにバレたんだ」

そして、無理やり別れさせられた。

今回は亮が年上ってものあって
結果、卒業後は此処に
住めることになった。

「卒業までは後一年くらいあるけど
今から少しずつ
運んどけば楽だと思ってな」

母さんにはまだ話せていない。

「そっか……」

「やっぱり、慎の両親を
説得に行かなきゃだよな」

夏休みに話した四人で
此処に住むって話か。

「雪村頑張れ」

おじさんは親父以上に
手強い相手だと思う。

「静、しっかりね」

俺は半ば追い出される形で
住むことになったからな。

結果的にはよかったけどな(笑)

週末だけだったのが
毎日になるだけだ。
冬休みも明け、三学期は
何事もなく無事に終わった。

そして、季節は冬から春に。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

石浜先輩達が卒業し
俺達が三年になった。

来年の春には
四人であのマンションに
暮らせることを願っている。

果たして、おじさんが
家を出ることを許してくれるか……

短い春休みの間も
俺はマンションに泊まっていた。

親父と顔を合わせたくなかったし
向こうも俺顔なんか見たくないだろう。

母さんには春休み中に話したら
亮に会いたいと言われたな。

だから、卒業式の後で
会わせると約束した。

後一年。

俺達の関係が
バレないようにしなくちゃな。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

月日が経つのは早いもので
高校最後の夏休みが来た。

去年と変わらず
のんびりと過ごした。

俺は大学に行けるような頭はないから
専業主夫になることにした。

慎は近場の専門学校に行くことに。

夏休みが明けると
目まぐるしい月日は流れ
秋が過ぎて冬になり
慎も専門学校に受かり
残るは卒業を待つだけとなった。

そして、三月某日
今日は卒業式だ。

保護者席に親父の姿はない。

無事に式も謝恩会も終わった。

お開きになり
俺は亮の手を引いて
母さんのところへと向かった。

「母さん」

ホテルの入り口にいた母さんは
俺が声をかけるまで
気付かなかったらしい。

「貴也、吃驚したじゃない」

マンションにいることの多い俺は
実は母さんと話すのは
半月振りだった。

「あら、的木先生が恋人だったのね♬*゜」

根本的にズレている気がする(苦笑)

「お久しぶりです」

亮が母さんにお辞儀をした。

「よかったわね。

あんた、一年生の時から
的木先生のこと好きだったでしょ?」

何でバレてんだ!?

母さん恐るべし。

「そうだったの?」

今更ながら本人にもバレてるし……

「そうだよ。
一目惚れだったんだ//////」

付き合って約一年で
こんなことをカミングアウト
することになるとは……

しかも、卒業式に(苦笑)

「貴也のこと
よろしくお願いしますね」

「はい」

今日から、俺の家は
亮がいるマンションだ。

「あんたも父さんがいない時は
帰って来ていいんだからね」

母さん……

「ありがとう」

駅まで三人で歩いた。

「じゃぁね、私は帰るわ」

謝恩会をしたホテルから
家まではそんなに距離はない。

「わかった、また連絡する」

母さんに手を振って
俺達はパーキングに向かった。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

マンションに着き、
制服から着替えた。

明日から着なくなっても
記念写真は沢山撮ったから大丈夫だ。

「卒業おめでとう」

抱き締められた後
額にキスされた//////

「ありがとう」

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

慎が一緒に住めるかは
雪村からの連絡を待つしかない。

果たして上手くいくのか……(苦笑)

夕方になっても
連絡がこないことに焦れた
俺達は慎の家に行くことにした。

恐らく拗れているであろう
話し合いに参戦しに。

「やっぱり、おじさんが
そうそう慎を家から出すわけないか」

慎の父親は所謂“親バカ”だ。

「去年のお泊まりや旅行も
最初はかなり反対してたもんね」

あれはあくまでも
数日だったからな……

かろうじて
許容範囲内だったんだろう。

しかし、今回は

話の規模が違う。

「まぁな。
雪村大丈夫か?」

「大丈夫だよ。
静は笹山君を愛してるからね」

そりゃ、見てりゃわかる。

「俺も貴也のこと愛してるからね」

貴重な二人っきりの時間。

「俺も愛してる」
あの日、慎の家に着くと
やっぱりというか予想通り
おじさんが怒鳴っていた。

そんなおじさんをおばさんと
三人で説き伏せてお許しが出た。

四人で生活を始めて一ヶ月。

今日から新学期が始まる。

専業主夫になった俺は
早く起きて朝食と
二人分のお弁当を作っている。

それが終わると
雪村を起こしに行く。

時刻は五時四十五分。

春とはいえまだまだ暗い。

今日は入学式。

寝起きのいい亮と慎は
すぐに起きるからいいが
問題は雪村だ。

「おはよう、貴也」

まさか、あんなに寝起きが悪いとはな。

「亮はよ、雪村
起こしてくるな」

実は、慎が家を出るには
まだ余裕があるんだが
寝坊するよりはマシだろう。

まぁ、慎は起きてるだろうけど。

「貴也、おはよう」

ほらな。

「はよ」

根気よく待つ。

「雪村起きろ
遅刻したら洒落になんないぞ❢❢」

本来は短気な俺だが
雪村の寝起きの悪さには
半月で慣れた。

慎にも手伝ってもらい
雪村を起こす。

さて、そろそろ
時間がなくなってきたから
本気でいくか。

布団を捲り耳元でスマホのアラームを
大音量にして鳴らす。

「うるせぇ❢❢」

「しず、おはよう。

今起きないと遅刻するよ?」

確かにギリギリだな。

寝ぼけ気味の雪村は
慎に任せてキッチンに戻った。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

雪村と亮を見送り、
洗濯を回し、
洗い物をした。

「慎が出るには後一時間くらいあるな」

入学式は九時からだ。

家から学校までは三十分くらいだ。

いくら近場とはいえ、
此処から駅までは少々遠い。

「いってきます」

テレビの時計は
八時十分になるところだった。

「気を付けてな」

慎を見送って
丁度終わった洗濯物を
洗濯籠に入れてベランダへ向かった。

今日は天気がいいな。

入学式だからよかった。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

此処最近、慎が悩んでいる様子だ。

専門に入って二ヶ月、
イジメでもされているのか?

中・高校時代は
俺や染野がいたから
慎をイジメようとする奴はいなかった。

「悩み事があるなら
俺達に相談してくれ」

逡巡した後で話始めた。

「実はね、三雲大知っていう
新しい友達ができたんだけど……」

話の内容はこうだった。

◇新しくできた友人に夏休みに
海に誘われていること。

◇家に遊びに行きたいと言われたこと。

◇合コンに誘われたこと。

ということらしい。

海はともかく、
家に来られるのはちょっとな(苦笑)

合コンに関しては慎が興味ないだろうな。

まぁ、イジメじゃないならよかった。

「早いなぁ~
もぉ夏になるんだね」

俺達が付き合って二年。

月日が流れるのは本当に早い。

「海は行ったらどうだ?」

雪村が賛成するとは予想外だ……

「いいの?」

慎の目には戸惑いの
感情が見てとれた。
雪村が賛成したことに対する不安だ。

俺にすら嫉妬する雪村が
二ヶ月ばかりの知人に近い友人と
海にいくこと賛成した理由はなんだ?

「あぁ、俺達も一緒に行くけどな(ニヤリ)」

“俺達”って……

俺と亮も巻き込まれるのな。

なんとなくはわかってたけど。

「え、だけど……」

慎が戸惑うのも無理ない。

俺は同い年だから友人でいいだろうけど
亮と雪村はどう見ても年上だ。

さて、慎の新しい友人は
どんな反応を示すのか
楽しみだな(ニヤリ)

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

「笹山」

待ち合わせ場所に行くと
彼はすでに来ていた。

「三雲君、待った?」

「いや、そんなに待ってねぇよ」

そう言う奴に限って
かなり待っていたりする。

「そう? ならいいんだけど」

慎もわかっているのだろう。

「え~と、後ろの三人は誰?」

まぁ、そうなるよな。

「向かって左から、親友の春日井貴也
貴也の“恋人”の的木亮さん
そして、“僕の恋人”の雪村静さんだよ」

とうとう、慎が暴露した(笑)

俺から紹介したのは同い年だからだろう。

慎の新しい友人は言葉が出ないみたいだ。

まぁ、ノンケの奴に
いきなり同性と付き合ってるなんて
言えば、こうなることは当然だ。

亮が
“困惑してしまうんじゃないか?”と
言っていたのを思い出す(苦笑)

彼の反応は普通だ。

「初めまして、笹山と
仲良くさせてもらってます
三雲大知です」

とりあえず復活した彼も
自己紹介した。

「成る程な。

笹山が合コンに来ないのも
家に行かせてくれないのも
そういうことだったわけか」

同性と付き合ってるとは
そうそう言えるもじゃないからな……

「ごめんね」

謝った慎の頭をグシャグシャにかき混ぜた。

「謝るようなことじゃないだろう。

そりゃ勿論、吃驚はしたけど
四人を軽蔑しないし、
笑い者にしたりもしない
専門で言いふらしたり
しないから心配すんな‼」

いい友人ができたんだな。

「でも、恋人はいるって言っとかねぇと
あいつら、また合コンに誘っててくるから
そこだけは夏休み明けたら言っとけよ」

この後、海で遊んだ。
高校を卒業して
四人で暮ら始めてから五年。

買い物から帰って来て
郵便物を取り出すと
【同窓会のお知らせ】が入っていた。

正解には母さんが
家に来た【同窓会のお知らせ】を
わざわざ、こっちに
送ってくれたみたいだ。

日時は……来月の真ん中か。

慎は行けるだろうか?

慎は専門を卒業後、
得意の英語を生かして
ツアーガイドの仕事に就いた。

俺は主夫業に勤しんでる。

亮と雪村も変わらず教師をしている。


「同窓会か、皆元気かな?」

夜、慎に【同窓会のお知らせ】を
見せるとそう言った。

教師二人は当然知っるだろう。

染野もどうしてっかな?

あいつは跡取りだから
親の会社で働いてるのかもな。

「会社には明日、
同窓会の日に休めるか聞いてくるね」

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

**同窓会当日**

慎は何とか休みをもらえた。

「春日井・笹山」

会場に着くと呼ばれた。

俺達を呼んだのは
同じクラスだった
陸上部のエースだった奴だ。

「倉浜、俺達はシカトか?」

少し離れたところにいた
雪村が近付いて来た。

隣にいる慎が
笑うのを耐えている。

「雪村先生・的木先生
お久しぶりです」

詰まりながら挨拶する
倉浜が可笑しかった。

「久しぶりだね。

倉浜君、そんなに
緊張しなくて大丈夫だよ」

亮は相変わらず笑っている。

雪村も本気じゃないしな(笑)

「しず、そんな顔のままだと
倉浜君の緊張が解けないよ?」

珍しいな、
慎が外で名前呼びなんて。

恥ずかしがり屋の慎は
俺達三人と違い、
外では名前呼び
しないことの方が多い。

ましてや、此処は
同窓会の会場。

「続いてたのね」

振り返ると宇佐田がいた。

「まぁな」

あの時以来だな。

「今は四人で暮らしてるよ」

亮が現役教師のくせに
サラッと暴露ってるよ(苦笑)

「は?」

倉浜が俺達の
会話に着いてこれていない。

「あんたは知らなかったのね。

この四人、付き合ってるのよ」

こいつもサラッと暴露ってくれる。

まぁいいんだけどな。

「宇佐田の言ってることは本当だ」

雪村も加勢してきた。

「何時から?」

未だ疑問符を頭の上に
浮かべながら倉浜は
それだけをやっと言った。

「高二の時」

俺が簡潔に答えて
宇佐田に質問する。

「会長とは今もつるんでるのか?」

“会長”とは俺をひっぱたいた
雪村と亮のファンクラブの会長のこと。

「あの人が卒業してからは
連絡してないし、会ってもいないわ。

風の噂で松葉先輩と
付き合い出したみたなことは聞いたけど」

松葉?

あぁ、慎を捕まえてた
気の弱そうな人か。

「あいつらがねぇ」

雪村が俺達の会話に入ってきた。

「私も吃驚しました。

あの二人は幼なじみらしいんですけど
松葉先輩は気が弱いほうですし、
逆に洞島先輩は気が強くて
女王様気質ですから、正反対なんですよ」

やっぱり、そう思うよな。

「まぁ、案外正反対だから
いいのかも知れないよ」

俺にビールのグラスを
渡しながら、亮まで
会話に入ってきた。

慎は少し離れたところに
カクテルのグラスを持って
聞き役に徹している。

三十分程した頃、
宇佐田を呼ぶ声がした。

「呼ばれたからじゃぁね。

雪村先生・的木先生、失礼します」

そう言って呼んだ
友人の方へ歩いて行った。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

あの後、俺達は途中で帰った。

そういえば、染野がいなかったな。

あいつがいたら、
真っ先に慎のところに来たはずだ。

まぁ、忙しいんだろう。

親の跡を継ぐってのも
楽じゃないよな。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

亮と付き合うきっかけは
染野が始めたGAME。

そういう意味じゃ
染野に感謝しなきゃな(笑)

かつてのクラスメイトに
心の中で礼を言った。

俺達はこれからも
変わらず四人で暮らして行く。

(完)

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