☆゚+.〈BL〉 GAME ゚+.☆

「これで、ダブルデートできるね♬」

亮も嬉しいみたいだ。

「雪村が慎を好きだったなんて
全く気付かなかったな……」

「だから、貴也は鈍感なんだよ(笑)」

恋人なのに酷いなぁ(苦笑)

「まぁ、静は隠すのが上手いから
よっぽど近くで見てないと
わからないかもね」

フォローのつもりなんだろか。

「亮のバカ」

ボソッと小さな声で呟いたが
隣にいた慎には聴こえたらしい。

「貴也?」

「何でもないから気にするな」

俺の言葉に納得したらしい。

「わかった」

流石、親友だよな。

「学校では付き合ってること
隠さないといけないんだよね……」

バレた時に当然、
俺達は色々言われるだろうけど
責められるのは教師である亮と雪村だ。

「そうだな」

だから、俺と亮も
バレないようにしている。

「ねぇ二人とも、
バレた時に考えようよ」

暢気だなぁ……

「それに、万が一バレたら
俺達が守るからさ❢❢」

亮はわかってねぇなぁ……

「そうだろう? 静」

「当たり前だ」

雪村もか……

“恋人”としては物凄く嬉しいが
“生徒”としては複雑だったりする。

慎も同じだと思う。

万が一バレて、亮達が
辞めるなんてとこになったら
俺達は立ち直れなくなる。

「あのな、亮・雪村」

今後の俺達のためにも
此所で言っといた方がいいよな。

「ん?」

よし❢❢

「その答えはさ“恋人”としては
嬉しいんだけど“生徒”としては
複雑なんだよ」

下手したら二人の教師人生を
奪いかねないからだ……

「慎もそうだろう?」

「うん」

だと思ったぜ。

「俺達がクビになったらって思ってる?」

他にないだろう。

「それ以外に何があんだよ❢❢」

「心配してくれてありがとうな」

俺達の気も知らないで……全く……

「だけど、俺も静も覚悟はしてるんだ」

それはそれで嬉しいがやっぱり……

「僕達のせいで先生達が
クビになるのは嫌なんです」

慎は本当に俺の心を
読み取るのが上手いな。

「そうでしょう? 貴也」

途中で黙ってしまった俺に
慎が確認の意を込めて訊いた。

「あぁ……」

好きだからこそ
二人の教師人生を奪いたくない。

「お前ら優しいな」

学校では見せないような
表情(かお)で雪村が言った。

「亮達の方が優しいと思うけどな」

いくら恋人だといっても
教師と生徒なのは俺達が
卒業しない限りかわらない。

そんな俺達のためにクビを
覚悟してるなんて普通は言えない。

こんな優しい二人を
クビにさせないためにも
絶対に学校にバレないように
気を付けなければいけない。

「俺達もバレなように気を付けるから
後一年ちょっと頑張ろうな」

とりあえず卒業すれば
教師と生徒じゃなくなる。

「学校で会えなくなるのは
少し淋しいけどな」

学校だからこそ会える場合もある。

「まぁねぇ……
あっ❢❢ 二人が卒業したら
四人で此所に住もうか❢❢」

また、突拍子もないことを(苦笑)

「俺はいいぞ」

は? 雪村まで何言い出すんだよ……

「家賃は折半でいいだろう」

待て待て、おもいっきり
俺達は蚊帳の外なんだが……

「静、出してくれるんだ?」

話が進んでってるけど……

「四人で住むならな」

俺達の方を向いて雪村が言った。

親父を説得しなきゃだよな(苦笑)

「問題は春日井と笹山だよな」

そうだろな。

未成年だからな。

「貴也の親御さんには俺が頼みに行くさ」

亮の一言にフリーズしかけた。

「的木先生、カッコイイ❢❢」

慎が目を輝かせて言いながら雪村を見た。

「わかった笹山の
親御さんには俺が頼みに行く」

その視線が何を言いたいのか
読み取ったみたいだ。

「ありがとうございます」

亮が満足そうな表情(かお)をした。

こりゃ、誘導尋問だな(苦笑)

それに気付かない雪村はアホだな。

知らない方がいいこともあるだろうから
此所は黙っておくことにするか。

卒業後云々の話が終わり宿題の話へ。
「お前ら、宿題いつやるんだ?」

アホなのにいきなり教師モードかよ。

「此所にいる間にやるなら
俺達が教えてやるけど?」

それはラッキーかも(笑)

「一つ言っておく、
理数系は亮に訊け」

ふぅ~ん、雪村は理数系が苦手なのか。

「雪村、英語はできんの?」

俺が訊くと雪村が答える前に慎が遮った。

「ちょっと貴也、英語なら
僕が教えてあげるから❢❢」

お? 俺にヤキモチか?

だとしたら可愛いな(笑)

慎は英語得意だったな。

「悪い、忘れてた」

そぉ言ったらベシベシと叩かれた。

軽くだから全然痛くないが。

「んじゃぁ、英語は
慎に教わることにするか」

「OK♬♡*゚ 代わりに日本史教えてね」

日本史は得意だからな(笑)

「勿論だ」

「じゃぁ、明日からやろっか。
そして、此所にいる間に
全部終わらせよう」

亮、それはいくらなんでも
無理じゃないか(苦笑)

「二人の宿題が終わったら
四人で出かけるから頑張って」

何処に行くんだ?

「内緒だよ」

顔に出てたらしい。

「とにかく、此所にいる間に
全部終わらせちゃえば残りの
一ヶ月丸々遊べるでしょう?」

亮達以外と遊ぶ予定は
今のところないが早めに
終わらせば楽なことは確かだ。

「そうだな」

頑張るか。

「だね」

俺達は色んな意味で贅沢だと思った。

学校一人気者の亮と
そこそこ人気者の雪村に
教えてもらえるうえに恋人なんだから。

俺達が恐れているのは
二人のクビだけじゃないく
ファン達にボコられないためにも
バレてはいけない。

「貴也、二人のファンのこと考えてた?」

ぼーとしてたらしい。

「当たりだ」

しかしよくわかったなぁ(苦笑)

「一人で百面相してたから」

また、顔に出てたらしい。

「ファン?」

二人は知らないよな(苦笑)

亮が不思議そうに訊いてきた。

「知らないと思うんですけど
校内には先生達のファンクラブがあるんです」

慎の口から淡々と告げられた言葉に
二人はフリーズした(苦笑)

気持ちはわからなくもない。

「やっぱり、知らなかったんだな」

知らなくて当たり前なんだけどな。

「おーい、二人とも戻ってこい」

たっぷり十秒フリーズした後で
やっと戻ってきた。

「貴也、それ本当!?」

信じられないのはわかるが事実は事実だ。

「本当だ」

俺達が入学した時には既にあった。

「まぁ、堂々と〔ファンクラブ〕なんて
名前で活動してるわけじゃないから
教師達も知らないんだよ」

気付かない教師達もマヌケだと思うけどな。

「それ、生徒達は知ってんのか?」

雪村が訊いてきた。

「大体の生徒は知ってるけど
言わないのが暗黙の
ルールみたいになってるから
いまだに教師達が知らないままなんだよ」

噂ではバラした者には容赦ない
制裁があるんだとか。

「俺達も学校では知らないフリをしとくよ」

それがいい。

次の日(お泊まり三日目)、
さっそく宿題を始めた俺達。

理数系が苦手な俺は亮に
暗記系が苦手な慎は雪村に教わることに。

なんの因果か自分の恋人に
教わることになるとは(苦笑)

宿題を始めて一時間。

「少し休憩しよう」

亮の一言でやっと休憩ができた。

普段、一人でやる時は
こんな長い間集中力は続かないが
皆でやってるからか今日は捗ってる。

「そうだな」

雪村も賛成した。

「俺はキッチンで煙草吸ってくる」

それだけ言うとさっさとキッチンへ行った。

「亮はいいのか?」

俺に付きっきりで
教えていたのにいいんだろうか?

「うん、大丈夫だ」

本人がいいならいいか(笑)

「そうだ、お昼ご飯何がいい?」

訊かれて時計を見ると
昼を少し過ぎていた。

そういや腹へったな。

よし、作るか❢❢

「亮は休んでてくれ。
俺が作ってくる」
教わるより教える方が
明らかに疲れる。

だから、昼飯は俺が作ることにした。

さっきの亮の質問を
そっくりそのまま返した。

「何がいい?」

「炒飯かな」

以心伝心か?(苦笑)

作ろうと思ってた物を言われた。

「わかった」

材料は揃っているだろう。

立ち上がりキッチンへ向かった。

換気扇の下で煙草を吸ってる
雪村の横で調理を始めた。

「何か作るのか?」

時計を指して一言。

「昼飯」

俺も亮に
言われるまで忘れてたけどな(苦笑)

「何作るんだ?」

秘密だ(笑)

「できてからのお楽しみだ」

雪村は何だそれって
顔をしてキッチンを出て行った。

「できたぞ」

テーブルの上の教科書やらノートを
退かして皿を置いた。

「炒飯だったんだな」

「静、知らなかったんだ」

俺が教えなかったからな(ニヤリ)

「春日井が教えてくれなかったんだよ」

亮にチクりやがった(笑)

「ぁはは、貴也イジワルだね」

「できればわかるんだから
別にいいだろう」

わざわざ言わなくても
できりゃわかるんだしいいと思う。

「確かにそうだね」

昼飯を食べた後、宿題を再開し
夕方までできるところまでやって
亮が夕飯を作った。

これもそれも全部
亮と雪村のおかげだと感謝した。

「二人ともお疲れ」

宿題が全部終わった❢❢

「やっと終わった❢❢
二人ともありがとうな」

こんなに勉強したのは初めてで疲れた……

「これくらどうってことないさ」

教師だからか?

まぁいいか(苦笑)

「そうそう、この前の話覚えてる?」

四人で出かけるってやつか?

「覚えてるよ」

亮が告げた行き先は……

「行き先は温泉♨」

それは慎が無理だろう❢❢

「ちょっと待て、慎が行けないだろう❢❢」

お泊まりの間だったとしても
あの親父さんが行かせないだろう……

「笹山君は行きたくない?」

本人に訊きやがった。

「僕は行きたいです❢❢」

雪村がいるし、このメンバーで温泉なんて
この機会を逃したら
いつ行けるかわからないしな……

「よかった」

亮が安堵した声を出した。

「じゃぁ、携帯貸してくれる?」

慎が少し不安そうに確認した。

「家に電話するんですよね?」

旅行には行きたいけど
親父さんが許してくれるか不安なんだな……

「そうだよ」

慎は自宅の番号を出して
亮に携帯を渡した。

「お願いします」

廊下に出て電話をしていた亮が
何をどう説明したかは不明だが
慎の親父さんを説得した。

二日後、俺達四人は県外の温泉に来た。

俺は母さんにだけにメールした。

そしたら、吃驚する返信が来た❢❢

〔「お父さんには黙っててあげるから
彼氏と楽しんで来なさいね」〕
と返ってきた……

何でバレてんだ!?

夕飯の時にでも話すか(苦笑)

先に温泉に入って夕飯は後から
食べることになった。

in温泉

「俺、久しぶりに来た」

最後に来たのは
何時か忘れるくらい前だ。

「僕も久しぶりだよ」

慎もか(笑)

「亮・雪村、
連れて来てくれてありがとうな」

両親は休みになる度に
俺を置いて旅行に行くから
連れて来てもらえたことが嬉しい♡*.+゜

「どういたしまして」

後ろから抱き締められ
逆上(のぼ)せそうになった//////

「別に、礼を
言われる程のことじゃないけどな」

雪村はそう言うが嬉しかったから
勝手に礼を言わせてもらう。

あんまり長湯すると
本当に逆上せそうだから
そろそろあがることにした。

「あのさ、話があるんだ」

部屋に着き俺は口を開いた。

「ん?」

実は……と話し出した俺。

★母さんに恋人が出来たと話したこと。

★同性とは言ってないのに
同性と気付いてること。

★父さんには言えてないこと。

「今度、貴也ん家に挨拶にいくよ」

その言葉に慌てたのは
当然、俺と慎だ。

「おい、亮❢❢」

俺が何か言う前に
口を開いたのは雪村だった。

「的木先生は勇者ですね」

慎にまでツッコまれてるし(苦笑)

「貴也ん家の親父さん、怖いの?」

怖いっつうか、訳ありなんだよな……

「会えばわかるさ……」

半ば諦めモードで俺が言った。

話しが終わった頃、
丁度いいタイミングで仲居さんが
夕飯を運んで来た。

ネットで評判の良かった
この旅館はご飯も美味しかった。

三泊四日の楽しかった旅行も
今日が最終日である。

そして、亮ん家に帰って来た。
楽しかった夏休みも終わり
今日から二学期だ。

一年間の中で一番長い学期だ。

二学期は平和でいたいと
願っていたがそれは
無理だと一週間後に知ることとなる。

それは何故かというと
二人のファン達にバレたからだ。

一体、何処から情報を
仕入れてくるんだか……

**一週間後**

俺達は今、ピンチだ。

こっちは二人だが
向こうは四・五人だ。

「ちょっとあんた達、
的木先生と雪村先生と
付き合ってるってどういうことよ❢❢」

リボンの色で三年生だとわかる。

先頭に立って話す
その先輩はいかにも
リーダー的な女子だった。

「別にどうでもこうも
それが真実ですよ」

怯むことなく言ったのが
気に食わなかったのか
その先輩は俺をひっぱたいた。

流石に取り巻きの女子達も
ひっぱたいくとは
思ってなかったみたいで
驚いている。

「気は晴れましたか?」

ひっぱたいかれても平然としている。

ただ、今日は教官室に
行けないなぁと思った。

こんな顔で行けば
雪村と亮に理由を訊かれるだろう。

そして、俺をひっぱたいた先輩も
取り巻きの先輩達も黙ったままだ。

やがてチャイムが鳴ったため
したなく教室に戻ることに
なったのだが、帰ると決めていた。

「貴也、大丈夫?」

慎が心配そうに近寄ってきた。

「大丈夫だけど、俺は帰る」

午後一は雪村の国語なのだが
こんな顔で会いたくない。

「わかった、僕も帰る」

そんじゃぁ、二人で帰るとするか(笑)

教室に着き、帰る準備をしていると
珍しく染野が声をかけてきた。

「帰るのか?」

「あぁ、雪村には
適当に言っといてくれ」

って、俺には返事しないのな。

「僕も帰るから、後お願いね」

染野が少し反応した。

「しょうがねぇな」

こいつ、相変わらず
慎には弱いよな……

「じゃあな」と染野に手を振って
二人で教室を出た。

その週の土曜日、
当然といえば当然だが
あの日のことを説明しろと
物凄い剣幕で詰め寄られた。

勿論、俺と慎はだんまり(苦笑)

「なぁ、そんなに
言いたくない理由なのか?」

そりゃそうだ。

二人のファンの女子に
ひっぱたかれたから
早退したなんて言えない。

「どうしても言いたくない?」

亮も雪村も優しいから
尚更言えない……

「笹山は知ってんだろう?」

俺が答えないとわかると
慎に話しを振ったが慎は答えない。

「貴也が言えないことを
僕が言えるわけないじゃないですか」

本当、いい奴だよな。

ひっぱたかれたあの日、
家に帰ってから鏡を見たら
案の定腫れていた。

四人の間に重たい空気が流れる。

「ねぇ貴也、俺達が
関係してるんだよね?」

げっ、亮は感がいいな……

内心慌てるが
それを表にはださない。

さっきは二人な優しいから
迷惑になるんじゃないかと
思ったけど、言っていいんだろうか?

隣にいる慎に無言で
答えを求めた。

俺の言いたいことが
わかったみたいで
「大丈夫」と言った。

「わかった、話す」

一昨日、何があったのか
慎と二人で話した。

★昼休みに食堂に
行く途中で三年生を含む
女子達に囲まれたこと。

★三年の先輩に亮達と
付き合ってるのかと訊かれ
素直に答えたら
ひっぱたかれたこと。

やっぱり、
そういう表情(かお)になるか(苦笑)

「だから、染野に伝言を
頼んで帰ったのか……」

二人は何も悪くない。

「そうだよ」

さっき程ではないが
依然、空気は重いままだ。

長いようで短い沈黙を
破ったのは亮だった。

「何ですぐ言ってくれなかったの?」

返す言葉がない。

「ごめん……」

泣きそうな表情(かお)した
俺に亮が慌てて謝った。

「ごめん貴也、
責めているんじゃないんだ」

それは、わかっている。
俺が泣きそうなったのは
嬉しかったからだ。

「責められているなんて思ってないから」

そんなこと、
これっぽっちも思っていない。

「心配してくれたことが嬉しかったんだ」

「貴也」

俺達を囲んでいたファンクラブの連中は
別れろと目で訴えていたが
何があっても俺達は別れない。

これなら一学期の
染野のGAMEの方が
断然楽だったな。

「守ってやれなくて悪い」

雪村も心配してくれてるんだな。

「心配してくれて
ありがとうございます」

俺が言う前に慎に言われたな(笑)

「慎、明後日からは
一時間目が終わったら
食堂に行くぞ」

とにかく、一人にならないことだ。

「いいよ。
また囲まれるの嫌だもんね」

友達にも恋人にも恵まれて
俺は幸せ者だよな。

あの日から早一ヶ月。

教官室に行けないのは
仕方ないと諦めて
休み時間や昼休みは
トイレ以外は教室にいることにした。

こういう時、携帯があって
よかったと思った。

十月半ば、中間テストが始まった。

午前中で終わるため、
勉強も兼ねて昼食は
慎ん家でご馳走になることになった。

まぁ、帰って一人で
作るのも面倒だし有り難い。

「亮に会いたい」

テストは仕方ない。

ただ、半月近く
本人達に会えていない。

「僕も雪村先生に会いたい」

慎の部屋で
二人でため息を吐いた。

下手に動くと亮達の立場が悪くなる。

「ねぇ貴也」

わからない問題でもあったか?

「ファンの子達は
的木先生ん家知らないよね?」

違ったか(苦笑)

言われてみれば
家に行ったことは
指摘してこなかったな。

「多分、知らないんじゃないか」

「テスト終わったら行ってみるか?」

提案すると嬉しそうに頷いた。

テスト期間はあと三日。

「とりあえず勉強しなきゃな」

明日は苦手な数学がある。

「そうだね」

**三日後**

今日はテスト最終日で金曜だ。

昼食をご馳走になった後
俺ん家に泊まるという名目で
(本当は亮ん家に行くんだけどな)
夕方、俺ん家に帰って来た。

「突然行ったら亮達驚くかな(ニヤリ)」

「かもね(笑)」

そんな会話をしながら
駅に向かい、電車に
揺られること十五分。

亮ん家がある駅に着き
タクシーに乗った。

マンションに着き、インターフォンを鳴らした。

「はーい」

「俺だけど開けてくれないか?」

一瞬の沈黙。

俺が正確には俺達が
来ると思ってなかったんだろう。

「えっΣ(๑°ㅁ°๑)!? 貴也!?」

凄い驚きようだな(笑)

「いらっしゃい」

玄関を開けてから
更に驚いた表情(かお)をしたのは
俺の隣に慎がいるからだろう。

「笹山君も一緒だったんだね」

俺一人だと思っていたんだろう。

「こんばんは」

律儀に慎が挨拶をした。

「とにかく上がって」

今年は珍しく残暑が続いていて
十月半ばなのに蒸し暑い日がある。

「お邪魔しまーす」

二人で言って中に入った。

「雪村は?」

ソファーに座りなが訊いた。

「今、電話したからすぐ来るよ」

話していたら玄関が開く音がした。

「静、いらっしゃい」

「雪村、久しぶりだな」

学校ではあまり話せていなかった。

俺に続いて慎も挨拶した。

「お久しぶりです」

ここ一ヶ月弱の寂しさを
ぶつけるように雪村に抱き付いた。

「久しぶりだな」

学校では見せないような
優しく顔をした雪村がいた。

「なぁ亮、今日泊めてくれないか?」

最初からそのつもりで来たんだけどな。

「勿論、笹山君も泊まってくでしょう?」

当然のように亮が言うと
雪村が口を挟んだ。

「笹山はうちに泊めていいか?」

何で俺達に訊く?

抱き締めている本人に訊けよ。

「貴也、どうする?」

いや、だから、本人に訊け❢❢
「笹山、今日は此処じゃなくて
うちに来ないか?」

雪村は自分の家に泊めたいわけか。

「慎はどうしたい?」

あくまでも、決めるのは慎だ。

俺や亮が決めることじゃない。

「僕は行きたい……」

これで決まりだな。

「何かあったら電話でもメールでもしてくれ」

雪村ん家ってのも少し興味があるから
次は連れてってもらおう♬

秘かに心に決めた。

俺は亮ん家に、慎は雪村ん家に。

二人が帰り、珍しく
亮から抱き付いて耳元で囁いた。

「久々にシよう」

その言葉にまで真っ赤になったが
嫌なわけじゃないから
黙って頷いた。

「じゃぁ、寝室に行こう」

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

in寝室

「最初に謝っとく。
優しくできないからごめん……」

恋人なんだから気にしなくて
いいっつうの(苦笑)

「別にいいよ」

優しくされたら
物足りなくなる気がする。

「亮、早く」

久々だからか身体が疼く。

待ちきれず自ら上になることにした。

所謂、騎乗位というやつだ。

「ぁ❢❢ こら、貴也」

ぁっんん……

慣らさず挿れたから少しキツい。

「全部挿いった」

そう言うと亮が「全くもう」と
呆れた声を出した。

「大丈夫かい?」

無理矢理挿れたから
心配してるみたいだ。

「大丈夫」

**数十分後**

最初は何時も通りだったが
途中からは宣言した通り
激しかった(苦笑)

それはもう、
足腰が立たなくなるくらいに。

「亮、いくら久々で
明日が休みだからってヤリ過ぎだって」

煽ったのは俺だけどさ……

明日はベッドから出られないな。

慎と雪村はどうしたかな?

「ごめん、貴也不足で
中々離してあげらんなかった」

慎達のことを
考えていたら突然言われた。

「しょうがないから今日は許す」

俺も亮不足だったからな。

「ありがとう」

次の日、やっぱり
ベッドから出られなかった。

「亮のバカ」

本気で怒ってるわけじゃないけど
言わずにはいられない。

「ごめん」

笑いながら謝る
亮に背を向けて
布団を被った。

「貴也」

呼んでも返事してやんないんたから。

「朝ごはん作ってくるから待ってて」

それだけ言って寝室を
出て行った。

ドアが閉まる音を聞き
仰向けになった。

はぁ~

動けないのは困るけど
満たされた感じがして嬉しい。

調子に乗りそうだから言わないけど(笑)

眠いわけじゃないが
目を閉じていたら
寝室のドアが開いた。

「ご飯、できたよ」

動けない俺を気遣ったのか
朝ごはんをトレイに乗せて持って来た。

「ごめん、久々だったから
加減できなかった……」

ぷっ(笑)

そんなに謝んなくても
大丈夫なんだけどな。

「別に怒ってねぇよ」

この幸せな時間が続けばいいなと思った。

明後日から学校だと思うとため息が出る。

「ため息吐くと、幸せが逃げるよ」

わかっているがファン達に
追い回されるのは
思いの外疲れる。

「学校に行くのがダルいと思っただけ」

「なんか、ごめんね」

別に亮達が悪いわけじゃない。

ダルいとはいえ学校に
行かないわけにはいかない。

冬休みはまだまだ先だからな。

そういえば、慎と雪村は
今頃、何してるかな?

電話でもしてみるか。

手探りで近くに
置いといた携帯を取り
慎に電話してみた。

「もしもし」

眠そうな声だな。

「慎、はよ」

腰は痛いが他は元気だ。

「貴也? おはよう」

「眠そうだな」

現在の時刻は午前十時。

休みだからゆっくり寝てたのか?

それとも、雪村が慎に手を出したか?

後者なら色々聞き出さなきゃな(ニヤリ)

「もし、暇だったらこっちに来ないか?」

ずっとベッドにいたからか
とりあえず、寝室を
出られるくらいにはなった。

「ん~ しずに訊いてからでいい?」

しず? あっ❢❢ 雪村のことか❢❢

いつの間に?

「名前呼びとはやるな」
確か昨日、俺達といる時は
まだ苗字で呼んでたはず。

「そ、それは」

慌ててる慎、かわいいな(プッ)

「どうしたの?」

俺は不安と寂しさを隠して笑った。

「何でもない」

只でさえファンクラブのことで
心配をかけているのに
寂しいなんて言えない。

「そう? 何かあったら言ってね」

亮の科白に泣きそうになった。

ごめんな……

俺はたった今
自分の気持ちを隠したどころだ。

「わかった」

心の中で謝った。

悟られないようにもう一度笑った。

大丈夫、明後日からも頑張れる。

色々考えていたら
亮の携帯が鳴った。

「静からだね」

雪村?

「はいよ、どうした?」

来られなくなったのか?

「渋滞?

わかった、着いたら電話して」

なんだ、渋滞にひっかかってるだけか。

三十分後、再び亮の携帯が鳴った。

雪村達が着いたみたいだ。

「貴也、おはよう」

俺に抱き付こうとした
慎を雪村が止めた。

「いくら幼馴染みだからって
春日井に抱き付こうとするなよ、慎」

おぉ?

雪村が俺に嫉妬?

しかも、名前で呼んだよな。

一晩で進展したな(ニヤニヤ)

「静、笹山君に手出したの?」

慎は真っ赤だな。

「へぇ~

静は優しくしてくれた?」

顔をますます真っ赤に
しながら頷いた。

「よかったな」

二人をからかいなが
亮と俺はキッチンでお茶を淹れている。

夕方、亮に駅まで送ってもらった。

大丈夫、学校で話せなくても
また家に来ればいい。

明日から頑張れる❢❢

そう思っていたのに
あんなことが起きるなんて
知る由もなかった……

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

俺が亮ん家に
慎が雪村ん家に
泊まった二ヶ月後、
事件は起きた……

十二月になりめっきり
寒くなってきたある日に
それは起こった。

俺と慎を
狙っていたみたいで
学校帰りに拐われた。

最悪だ(怒)

連れて来られたのは
何処かの倉庫らしき場所。

主犯の検討はついている。

「あの時以来ね」

やっぱりな。

俺のことをひっぱたいた三年。

俺達を連れて来た奴は知らないが
他はうちの学校の生徒だ。

しかも、三人は三年ときた……

「お久しぶりでーす」

わざと棒読みで答えた。

「要件は一つ
二人の連絡先を
大人しく教えなさい」

教えるわけねぇだろう❢❢

「無理」

二人に連絡先を
教えてもらった時に
誰にも教えないと約束した。

「そう、じゃぁ
犯(や)られれば吐くかしら?」

一人の男が俺に近付いて来た。

「好きに犯(や)っていいわ」

バカだなぁ(ニヤリ)

犯(や)られようが
殴られようが
刺されようが教えねぇよ❢❢

携帯はロックを
かけているから大丈夫だろう。

「貴也❢❢」

慎が俺を呼んだ。

「あんたはお友達が
犯(や)られる
ところを見てなよ」

唯一同学年であろう女が言った。

こいつらバカだろう。

「大丈夫だ」

心配そうな表情(かお)をした
慎に微笑んだ。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

「あんたゲイ?」

別室に連れて来られた
俺はこの男と二人きりだ。

「そうだ」

随分すんなり答えたな……

俺はこの男を知っている。

名前は石浜覚。

バスケ部の主将だったはずだ。

〔ゲイ〕なのは否定しない。

俺達の恋人も〔男〕だからな。
そして、思ったのはこいつ、
俺を犯す気はないんじゃないかと。

「石浜先輩、
バスケ部の練習はいいんですか?」

主将がこんなところで
油売ってていいんだろうか?

俺の言葉に焦りを見せた(ニヤリ)

もうすぐ、冬の大会があったはずだ。

バカな女のバカなことに
付き合ってる場合じゃないだろう。

「今日、部員さん達に
嘘を吐いて此処に来たんですよね?」

顔を歪めた。

図星だな。

「このことを
部員さん達に
バラされたくなければ
俺達に協力して下さい。

それとも、
本当に俺を犯します?」

その瞬間、犯罪者になり
バスケ部は出場停止になるだろう。

証拠?

そんなものは
それこそどうにでもなる。

「高校最後の大会に
出られなくなりますよ?」

主将が問題を起こせば
バスケ部は当然試合に出られない。

欲に負けて出場停止になるか
俺達を逃がす手助けをして
試合に出場するかは
本人次第だ。

「わかった、
お前達を逃がす手助けをしよう」

懸命な判断だ。

「名前を聞いていなかったな」

俺が一方的に知っているだけだからな。

「春日井貴也ですよ石浜先輩」

ついでに慎の名前も告げといた。

別室を二人で出た。

「貴也❢❢ 大丈夫?」

何もされていないからな。

そうそう、別室を出る前
雪村に電話しておいた。

「大丈夫だ。

慎は何もされていないか?」

見た目は大丈夫そうだ。

「うん、大丈夫」

よかった……

慎に何かあったら
俺が雪村に殺(や)られちまう(笑)

「覚、何で!?」

喚いたのは当然
俺をひっぱたいた張本人。

計画では
石浜先輩に犯(や)られた俺に
二人の連絡先を
吐かせるつもりだったはず。

「悪いな、大切なことを
思い出させてくれた春日井の
味方になることにした。
幸樹、笹山を離せ」

慎を捕まえている
男をそう呼んだ。

“幸樹”と呼ばれた男は
大人しく慎を離した。

石浜先輩は俺達を
連れて出口に向かった。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

外に出ると雪村と亮が居た。

「慎❢❢」

雪村は慎を認めると
窒息しそうな
勢いで抱き締めた(苦笑)

こんな雪村は初めて見たな。

「貴也は大丈夫?」

亮は優しく抱き締めてくれた。

「大丈夫だ」

石浜先輩に雪村が
乗って行くかと訊いたが
首を横に振った。

「春日井、笹山
色々と悪かっな」

別に石浜先輩が謝ることはない。

「友人の頼みを
断れなかっただけでしょうから
先輩が謝る必要はありません」

主犯はあの女だからな。

「先生達もすみませんでした」

教師二人に頭を下げて
倉庫の方へと戻って行った。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

運転は雪村がしている。

俺達をマンションへ送り、
慎を連れて帰った。

「貴也、本当に何もされてない?」

心配性だなぁな。

「なんもされてないさ。

確かめてみるか?」

少し挑発してみた。

「隅々まで確かめてあげるよ」

亮が口角だけ上げて笑った。

寝室に連れて行かれ
全て剥ぎ取られる。

「ぁっ❢❢」

全く……

「亮の気が済むまで抱けよ」

明日が学校だとかどうでもよかった。

二ヶ月振りに感じる亮の温もり。

**翌日**

腰が痛い……

完璧亮のせいだ。

本当にあの性欲と体力は
何処からくるんだか(苦笑)

慎はどうしただろう?

雪村が無茶してなきゃいいが(笑)

ああ、でも
あのまま帰したかもな。

意外にも亮より真面目だしな。

「貴也」

教室に着くと慎が俺を呼んだ。

雪村に言われたから
抱き付いて来なくなったな(笑)

俺にまで嫉妬とか笑えるよな。

「はよ」

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

昼休み、俺達は教官室に来ていた。

すっかり居座っている。

数時間前のことなんて
忘れたように教師モードだ。

期末テストも終わり
明日から冬休みだ。

やっと、四人で
ゆっくりできると
思っていたのに
まさか、あんなことに
なるなんて知る由もなかった……
冬休みに入り、
俺達は相変わらず
亮の家に集まっていた。

二学期の連れ去り事件は
誰に知られることもなく
終わり、石浜先輩は
バスケの試合に出られた。

雪村と慎は二人で
出掛けたりするようになり
内心ホッとしていた矢先、
俺の方に問題が起きた……

あれは、亮と手を繋ぎ
マンション近くのスーパーで
夕飯の買い物をしていた時だった。

後ろから声をかけられ
振り向いた先にいたのは
普段、めったに
帰って来ない親父だった。

げっ❢❢

はぁ~

よりによって、
何で今なんだよ……

亮と繋いでる手に
ギュッと力を込めた。

「貴也?」

何かを察した亮が
優しく名前を呼んでくれた。

実は、親父とは
それほど仲がよくない。

二年前、つまり
中学三年時にも
同性の恋人がいたことがあった。

付き合ってた期間は三ヶ月。

これは慎も知らないことだ。

夫婦仲はいい二人だが
性格は正反対。

母さんはまぁおおざっぱというか
俺に対して干渉してこない。

親父は俺が一人っ子だからか
なにかと干渉してくるきらいがある。

二年前のことも親父が原因で別れた。

「お前はまた、
男なんかと付き合っているのか」

親父が同性愛を嫌う理由を
俺は知っていた。

じいちゃんが同性の恋人を
つくって出ていったからだ。

ばぁちゃんの話だと確か、
親父が中学生くらいだったはずだ。

それからはばぁちゃんが
女手一つで親父を育てた。

ばぁちゃんはじいちゃんが
バイだと知っていた。

そして、こう言っていた
「誰かを好きになる気持ちは
誰にも止められないからね」と。

中学三年生の時、
初めて好きになったのがあいつだった。

そして、二年後
亮を好きになった。

「親父は何時まで
殻に閉じ籠もってんだよ」

抑揚のない声で問う。

「もう、中学生のガキじゃないんだ、
世の中には同性愛者だって
いることを理解しろよ❢❢」

じいちゃんが出て行った
原因が同性の恋人だったから
子供の頃は理解出来なかっただろう。

だけど、親父はもうガキじゃない。

大人になり、結婚もした。

ガキの頃よりは世間を見ているはずだ。

「貴也、説明してくれる?」

親父にムカつき過ぎて
亮の事をほったらかしだった。

「悪い亮、
親父が同性愛を嫌う理由は
じいちゃんが同性の恋人を
つくって出ていったからなんだ」

納得したらしい。

「貴也のお父さん、
あなたの気持ちも
わからないでもありません。

ですが、俺達も
真剣に愛し合っているんです」

俺は亮を。慎は雪村を。

「どうか、貴也と
付き合うことを許して下さい」

亮が親父に頭を下げた。

かなり理不尽というか
ムカつくが亮に合わせて
無言で親父に頭を下げた。

「高校を卒業したら出ていけ」

親父はそれだけ言うと
出口に向かって歩いて行った。

「高校卒業したら
追い出されるみたいだから
亮のマンションに住んでいいか?」

聞くまでもないんだけどな(笑)

「当たり前でしょ」

卒業後の住む場所が決まってよかった。

「帰ろっか」

とりあえず、会計をして
マンションに帰って来た。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

夕飯後、二人で風呂に入った。

「一緒に入るのは久しぶりだね」

そういやそうだな。

亮が仕事してたり
俺が本に夢中だったりと
此処最近は別々に入っていた。

親父に遭遇した後だからか
無性に亮にくっつきたくなった。

「貴也、わざと煽ってる?」

無言で頷いた。

「亮、何時ものじゃ足りない」

「そんなこと言われると
止められなくなるけどいいんだ?」

「亮にならなにされてもいい。

親父のことを忘れさせてくれ」

とにかく、忘れたかった。

「はぁん……気持ちいい……ぁっ……」

「んんっ❢❢ 亮……奥、奥もっと……」

まだまだ足りない。

「貴也、煽らないで……」

亮の言葉は無視して
俺は自ら動いた。

目が覚めると亮が起きていた。

「おはよう、貴也」

「はよ」

カーテンの向こう側は白んでいた。

「あんなに煽るから
遠慮なしにシちゃったけど
身体は大丈夫?」

何時ものじゃ足りないと
言ったのは俺だ。

「腰が痛い(苦笑)

だけど、気持ちよかった」

何時も以上に腰は痛いが
それ以上に気持ちよかったし
充実感がある。

俺には亮がいないと
駄目だと改めて実感した。

「貴也、愛してる」

「俺も愛してる」