「何系の料理?」
内心慌てる俺とは反対に
的木先生は普通だ。
てか、マジで教えてくれるんだろうか?
「和食系を……」
洋食は割りと自信があるが和食は苦手だ。
「わかった。今度の連休においで」
ヤバい❢❢ 叫びたい程嬉しい//////
「ありがとうございます❢❢」
「春日井君は何系が得意?」
まさか訊かれるとは思わなかった。
「洋食系です」
和食は母さんやばぁちゃんに
作ってもらってたから自分で
作ることはなかった。
「的木先生は?」
聞き返してみた。
「春日井君が苦手な和食かな(笑)」
羨ましい……
「和食は好きじゃないの?」
最もな質問だ。
「普通に好きなんですけど
自分じゃなかなか作らなかったんですよ」
「そっか♬✧*。
因みに笹山君は何系が好き?」
的木先生は慎にも訊いた。
「和食ですね(笑)
でも、貴也が作ってくれる
洋食も美味しいんですよ」
おばさん、あんま洋食作んないもんなぁ。
って、慎❢❢ 何言ってんだよ//////
「それは是非、食べてみたいなぁ♬♡
ところで、よかったらご飯食べてって」
的木先生の手料理が食べられる!?
「おい、亮
こいつらの都合を訊いてから言えよ」
それまで黙ってた雪村が口を挟んだ。
まぁ、俺は例の如く
旅行に行ってるから別にいいんだけどな。
「僕、電話してみますね」
慎も的木先生のご飯食べたいみたいだし
こんな機会、
もぉないかも知れないもんな。
「大丈夫?」
あぁ〜 おじさんがなぁ……(苦笑)
「わからないですけど、
とりあえず電話してみます」
「そっか、じゃぁ電話しておいで」
慎は携帯を持って廊下へ行った。
「お前はいいのか」
的木先生の隣に立っている
俺に雪村が言った。
「例の如く旅行中だからいいんだよ」
帰ったところで一人だ。
「そうなんだ。じゃぁ泊まってく?」
「亮、お前はまた、そぉやって……」
雪村の言葉は意味ありげだが何かあるのか?
「なぁ雪村、何かあるのか?」
一瞬、ビクってなったな。
「それは俺じゃなくて亮に訊け」
何で的木先生?
そぉ言えば、さっきから
言動が少し可笑しいような気がする。
「雪村は何か知ってるんだろう?」
またビクってなった。
「知ってるには知ってるけど
俺の口からは言えないんだよ」
気になる……
「それに、的木先生の
言動も少し可笑しいし?」
俺が言うと雪村がため息を吐いた後怒鳴った。
「思いっきり
疑われてんじゃねぇか……バカ亮❢❢」
雪村が的木先生をベシっと叩いた。
これには吃驚した。
「あいたっ」
叩かれたところをさすっている。
「お前がウジウジしてるからだろうが❢❢」
意味がわからない。
「俺は一服してくる」
そぉ言うとキッチンへ行ってしまった。
リビングに残された俺達……
少しの沈黙の後、的木先生が話始めた。
「あのね春日井君、俺が今から
何を話しても引かないでね……」
さっきのとは違う疑問が頭を過った。
「わかりました」
「俺さ、好きな人がいるんだ。
同性でおまけに生徒……」
チクリと胸が痛んだ……
「笑えるでしょう(苦笑)」
笑ったりしない。
よくわかる。
「まず、生徒を
好きになった時点で教師失格だよね」
「そんなことはないと思います」
先生が教師失格なら
俺は生徒失格だな(苦笑)
「教師だって人間なんですから
誰かを好きになるに決まってます。
それが生徒だっただけです」
「でも、年下で同性だよ?」
別に元から同性愛に偏見はないし
今は俺もそっち側の人間になりつつある。
「いいんじゃないですか?
教師と生徒じゃあまり
年の差ありませんし」
教師と生徒なんてよくある話だ。
「そっか、ありがとう」
「いいえ……」
お茶を一口飲むと真っ直ぐ俺の方を向いた。
「今の話を含めて
聞いて欲しいんだけど……」
何だろう?
「はい」
「俺は春日井君が好きなんだ//////」
嘘……夢じゃないよな?
「ごめん、気持ち悪いよね」
直ぐに返事を
しなかったせいか勘違いされた。
「違います❢❢ 嬉しかったんです/////」
「え……?」
信じられないという表情(かお)をされた。
「俺も好きです」
一度、深呼吸してから応えた。
「本当に?」
疑うのもわからなくもない。
同性愛は憧れと
勘違いしてることもあるからだ。
でも、俺の気持ちはちゃんと恋だ。
「はい❢❢
これから、宜しくお願いします」
なんとなくお辞儀もしてみた。
「こちらこそ」
言い終わって二人で笑った。
「下の名前で呼んでいい?」
呼ばれたい❢❢
「あ、はい、いいですよ」
恥ずかしくて切れ切れになってしまった//////
「よかった。
俺のことも下の名前で呼んで?」
それはちょっと無理が……
「貴也、ダメ?」
ぅ゛っ……ある意味反則だ//////
俺は今、耳まで真っ赤だと思う。
恥ずかしくて俯きたくなる。
「ダメってわけじゃないです」
ただ単に恥ずかしいだけだ。
「よかった……嫌なのかと思った」
それはない。
「ほら、呼んでみて?」
的木先生がこんなに
意地悪だとは知らなかった。
「り、亮」
やっぱり恥ずかしい……
「よくできました」
ニコニコしながら亮が言った。
「少しずつ慣れていこう」
慣れる日が来るのか?
「はい」
恋人同士になれたんだよな///
嬉しい♡♡
ギュッと抱き締めてくれた♡*。
この温もりを一生離したくないと思った。
「慎と雪村、遅いですね」
「静は俺が告るって知ってたから
キッチンに行ったんだろうけど
笹山君は本当に遅いね……」
そっか、雪村がさっき言ってたのは
このことだったんだな。
「俺、見て来ます」
「お願いね」
リビングを出て廊下に行くと
電話でケンカしてる慎がいた。
「亮、早く来て❢❢」
急いでリビングに戻って亮を呼んだ。
「どぉしたの?」
「慎が電話でケンカしてて」
「わかった」
亮と一緒に慎のところに行った。
トントンと亮が慎の肩を叩いた。
「的木先生」
「何があったの?」
亮の質問に慎は電話口を
手で塞いで話し出した。
「実は……」
つまり、おばさんはいいと言ってくれたが
おじさんはダメだと言ってるらしい。
「笹山君、電話代わってくれるかな?」
不安そぉな表情(かお)を
しながら亮に携帯を渡した。
「もしもし、私
慎君の学校の教師で的木と申します」
丁寧な口調で話す亮は
大人で教師だなぁと思った。
「今日は急なお話しで申し訳ありません」
おじさんは聞く耳持たずと言った感じで
こっちにまで聞こえるくらいの
大きな声で怒鳴っている……
「いいから、今すぐ息子を帰らせろ❢❢」
あまりの声の大きさに亮も
携帯を耳から離している(苦笑)
「的木先生・貴也、僕帰るよ」
本当はいたいんだろうなぁ。
「貸して」
タメ口になったけど気にしない。
「貴也?」
不思議そうに俺を見て来る。
「いいから」
亮の手から慎の携帯を取った。
「おじさん、お久し振りです、貴也です」
俺の声を聞いて
少しだけ落ち着いてくれた。
「それで、慎のことなんですけど
やっぱりダメですか?」
ダメ元で聞いてみる。
「泊まりはダメだ❢❢」
こういう人だって忘れてた↷↷
「わかりました。
ですが、夕飯は一緒に
食べさせてください」
沈黙が長い……
「仕方ない、夕飯だけだ」
とりあえず、今すぐ帰らずに済んだな。
「ありがとうございます」
「じゃぁ、慎に帰る時に
電話しろと言っといてくれ」
おじさんにわかりましたと言い
通話を切って慎に携帯を返した。
「ほい、携帯」
「お父さん何だって?」
ニィっと笑って二人にピースした♬♡*゚
「泊まりはダメだけど夕飯は
食べて来ていいってさ」
本当は泊まりもできれば
よかったんだけどな。
「貴也、ありがとう」
慎の表情(かお)が笑顔になってよかった。
「どういたしまして。
あと、帰る時に電話しろってさ」
「わかった。本当にありがとう」
大袈裟だなぁ(苦笑)
「そうと決まったら早速作らなきゃね」
張り切ってるなぁ〜
それになんだか楽しそうだ。
「貴也、手伝ってくれるかい?」
最初からそのつもりだっての。
「勿論」
リビングに戻る途中で
慎にツッコまれた。
「あの、的木先生は何時から
貴也を名前で呼んでるんですか?」
ぁ、慎にバレた(苦笑)
「ついさっきからだよ」
訳がわからないという風に首を傾げた。
「貴也、言っていい?」
それは、俺の台詞じゃねぇ?
まぁいいか。
「うん。てか、さっきから
タメ口調なのにツッコまないのな」
何時言うかなと待ったんだが。
「気にしないよ。
むしろ、そっちがいい」
いいならいいか。
「俺達、付き合うことになったんだよ」
亮がサラッと言った。
「本当!?」
慎は同性愛をどう思ってるんだろうか。
「うん」
俺は亮が好きだ♡*。
「そっか」
反応はイマイチか?
「気持ち悪いか?」
訊いてみる。
「そんなこと思ってないよ」
よかった。
「恋愛は自由だし、僕は
貴也の気持ち知ってたしね」
爆弾発言された……
「俺、そんなにわかりやすかったか?」
自分じゃ隠してたつもりだったのに……
「まぁ、貴也を見てればわかるよ」
恥ずいな……
「教官室行く時とか嬉しそうだったし
的木先生を見てる時の目が
恋してる目だったから
好きなんだなぁって思ったんだ」
まさか、慎に最初からバレてたとは……
内心、焦り気味の俺に気付いたのか
亮が話を反らしてくれた。
「二人とも、何が食べたい?」
キッチンに向かいながら訊いてきた。
「亮が作ってくれるなら何でもいい」
俺が何でもいいと言ったら
今度は慎に訊いた。
「なぁ亮、雪村には訊かなくていいのか?」
一服して来ると
言ったっきり戻って来ない。
「静は何でも食べるからね」
ぁぁ、好き嫌いなさそうだよな。
「因みに静の好物は餃子だよ」
ぷっ、イメージに合わねぇ(笑)
「貴也、今イメージに
合わなさそうって思ったでしょう?」
二人に見抜かれた。
「何の話だ?」
いきなり後ろから雪村が来た。
「静の好物の話」
亮は雪村が来てたのに気付いてたんだな。
「どっからそんな話になったんだ?」
戻って来ていきなり自分の好物の話を
されてれば訪ねたくなるよな。
「何作ろうかって話」
「成る程な」
それで納得するのか。
「二人の好物は?」
亮に訊かれた。
「オムライスだな」
自分でもよく作る。
「僕は肉じゃがが好きです」
亮の好物は知らないけど
三人とも和・洋・中とバラバラだな。
「とりあえず、
全部作れるけど何作ろうか?」
一人暮らしだよな?
「いっそうのこと
全部作るってのは?」
提案してみる。
「お前なぁ」
雪村が
呆れた声を出した。
時間はまだある。
「二人で作れば
できないこともないと思うんだけどな」
元々、手伝う気でいたんだし
料理は苦じゃない。
「貴也始めるよ」
張り切ってる亮が可笑しかった。
「お待たせ」
テーブルに料理を並べてると
雪村がうまそうなだなと言った。
「夕飯食べたら笹山君を送ってあげて」
自分では行かないのな(笑)
「了解」
まぁ、雪村も帰るからいいか。
慎と二人で亮の家に行った
あの日から気付けば半年が過ぎていて
もうすぐ夏休みだ。
そして、例のGAMEも終盤に……
残りは五人。
夏休み前には終わるだろう。
クラスメイト四十二人中何人が
逃げ切れたかはこのGAMEが
総て終わってからの楽しみだ。
後二週間で夏休みになるが
残りの五人は逃げ切れるだろうか?
ルールを一つ追加すると、
部活中はの追いかけっこは中止とされる。
五人は幸い部活に入っているから
その分、時間稼ぎが可能だ。
時は経ち、終業式。
因みに、五人は逃げ切った。
染野の悔しそうな
表情(かお)には笑えた。
GAMEの結果は亮の家で
ゆっくり話すことになった。
今日は慎も一緒に
亮の家に泊まれることになった♬♡
「明日から夏休みだな」
体育館に向かいながら
慎に話かける。
「うん❢❢
色々楽しみだね」
宿題さえなけりゃな(苦笑)
「校長先の話、長いから寝ちまいそぉだ」
「そしたら僕が起こしてあげるね」
慎が起こしてくれるのか♬
「じゃぁ、そん時はよろしく」
多分、というか絶対に寝る自信がある。
「オッケー」
慎に頼ることにしよう。
ふぁ〜
欠伸が止まらない。
in体育館
「え〜明日から夏休みに入るわけだが
くれぐれも羽目をはずさないように」
その後もつらつらと長い話が続き
やっぱり寝てしまい、慎に
起こされた時には
終業式は終わるとこだった。
教室に戻ると慎がもぉ❢❢ と言いながら
体当たりしてきた。
「ぉゎっ❢❢」
いきなり体当たり
されたから転けそうになった(苦笑)
「何すんだよ慎」
「だって、何回
起こしても起きないんだもん❢❢」
ぷぅっと頬を膨らませた。
全然、怒ってるように見えない。
「悪かった」
「別に本気で怒ってるわけじゃないから」
すぐ、笑顔に戻った慎は
自分の席に戻って行った。
場所がか変わって此所は亮の家。
俺達は朝、家を出る時に
お泊まりセットを持って学校へ行った。
一旦帰るなんて時間の無駄だし
一分一秒だって亮の傍にいたい//////
こんなこと、恥ずかしいから
面と向かって言えないけど……
そぉそぉ、両親に恋人が
(敢えて彼氏とは言わなかった)
できたと言ったら大喜びしていた。
でも、相手が“男”だって知ったら
怒るだろうか?
別れろって言うだろうか?
母さんはともかく、
父さんはなぁ……
慎や雪村の前では話せないから
二人っきりの時に相談しよう。
「さてと、今日は何作ろうか」
決めてなかったらしい。
学校では王子様的存在でも
プライベートでは抜けてるとこがある(苦笑)
こんなことを知っているのが
俺と慎だけだと思うと優越感を感じる。
「俺が作りたいんだけどいいか?」
亮が連れてってくれた
あの店のカルボナーラが美味かったから
一度作ってみたかったんだよな。
上手くできるかはわからないけど。
「貴也が作ってくれるんだ♡*。
それで何作るの?」
カルボナーラと言うと
洋食は得意だもんね♬♡と
亮に言われたが今回は初めてだからな……
「材料あるか?」
「勿論」
流石亮の家だな(笑)
「先に言っとくが何時も
作ってるやつじゃないから
上手くできるかわからないが
作らせてくれ」
「俺も手伝うよ」
助かるぜ。
「ありがとうな」
三十分後……
「できた❢❢」
果たしてあの店の味を
再現できてるだろうか……
「亮、味見してみてくれ」
小さな皿に取り分けて渡した。
「どぉだ?」
一人で食べる時は
失敗してもいいんだけど
他人に食べてもらう時は
そうもいかない(苦笑)
「美味しい」
よかった。
「あれ? でもこの味、何処かで……」
「亮が連れてってくれた
あの店のカルボナーラを再現してみたんだけど」
「貴也、凄いね❢❢
二回食べただけで再現できるなんて」
上手くできてよかった。
「洋食、好きだからな……」
まぁ、理由はそれだけじゃないけどな(苦笑)
「冷めない内に
二人のところへ持って行こう」
食器棚から皿を出し、盛り付けて
四人分のカルボナーラを持って
リビングへ向かった。
「今日は俺が作ったんだ」
自信満々に言ってみた(笑)
「美味しそうだね♬♡
それに、貴也のご飯久しぶりだ♡*。」
確かに久しぶりだな(笑)
最近、慎の家に行ってなかったな……
亮の隣に座って俺達は食べ始めた。
皆でいただきますと手を合わせた。
「美味いな」
一口食べて雪村が言い
さっきの亮と同じことを言った。
「ん? この味、何処かで……」
そりゃそうだ(笑)
あの店のカルボナーラを
再現したつもりなんだから。
「静も気付かないんだ(笑)」
亮も気付かなかったもんな。
「二人が連れてってくれたあの店」
俺がこたえると雪村が納得した。
「俺も最初、気付かなかったんだよ」
「やるな、春日井」
雪村に褒められた。
「サンキュー//////」
とりあえず、礼を言っといた。
「そぉだ、例のGAME
夏休み前に終わったな」
残りの五人が部活に
入っててよかったよな(苦笑)
「結果はどぉなったの?」
亮は直接関わってなくても
早く結果が知りたいらしい。
「慎と染野本人と俺を除いた
三十九人中十四人って結果になった」
夏休みまで
追いかけ回されるのは御免だからな
終業式前に終わってよかった。
安心して夏休みがおくれる。
「これで聡君も少しは大人しくなるかな?」
少なくとも 夏休み中は
何もやらかさないだろう。
「二学期は平和だといいね」
ぁはは( ̄∀ ̄;)
「そぉだな」
お泊まり一日目は
宿題なんて忘れて四人で沢山話した。
ついでに言えば、雪村も泊まるらしい。
「なぁ、雪村と慎は好き人いないのか?」
話題が尽きてかけてきたから
二人に恋バナをふってみた。
「そぉ言えば最近、
静の恋バナ聞いてないな」
亮も便乗してきた。
ニヤニヤしながら雪村に詰め寄っていく。
「今はいない」
亮が詰め寄るごとに雪村は下がって行く。
「嘘だね。
静が隠してるだけで
俺は知ってるんだから」
その言葉に雪村が焦り出した。
俺にはさっぱりわからない。
「なぁ、雪村の好きな人って誰?」
誰が好きなのだろうか?
「貴也、気付いてないの?」
質問を質問で返された。
「わかんないから訊いてんじゃん」
呆れながら言うと、鈍感と言われた。
「見てればわかると思うんだけどな」
どうやら、教えてくれる気はないらしい。
まぁいいか……
結局、雪村は言わなかった。
しかし、気付いて次の日の夜に
明らかになることをまだ知らない。
お泊まり二日目(夏休み一日目)
俺達は何もせずダラダラと過ごしていた。
「あ゛ち゛ぃ〜」
七月半ばの気温は三十度を越えている。
「言うなよ、余計暑くなるだろう❢❢」
雪村の言い分はわかるが暑いものは暑い。
「僕も暑いです」
慎も同じみたいだ。
「笹山、お前まで言うなよ」
三人でくだらない言い合いをしていると
亮が麦茶を乗せたお盆を持って
キッチンから戻って来た。
「ちょうど、
お茶が飲みたかったんだよ」
ナイスタイミング❢❢
「それはよかった」
あれは夕方の話で今は夕食後……
話は雪村の好きな人。
「はぁ~わぁたよ、言えばいいんだろう」
呆れたような諦めたような
ため息をついてから言った。
「俺が好きなのは……
笹山……お前だよ//////」
はぁ~!? マジか(驚)
「僕ですか……?」
告られた本人も吃驚している。
「やっと言ったな」
まさか、雪村の好きな人が
慎だったとは驚きだ。
「おい慎、どうすんだよ?」
何時までも放心している場合じゃない。
慎の方を見ると顔が真っ赤だった。
こりゃ、脈ありかもな(笑)
「雪村先生」
答えが出たんだな。
「僕なんかでいいんでしょうか」
やっぱりな(ニヤリ)
「笹山、それは……」
雪村の緊張したところなんて
初めて見たな。
「僕なんかでよければ、
宜しくお願いします」
慎がニコッと笑った。
「これで、ダブルデートできるね♬」
亮も嬉しいみたいだ。
「雪村が慎を好きだったなんて
全く気付かなかったな……」
「だから、貴也は鈍感なんだよ(笑)」
恋人なのに酷いなぁ(苦笑)
「まぁ、静は隠すのが上手いから
よっぽど近くで見てないと
わからないかもね」
フォローのつもりなんだろか。
「亮のバカ」
ボソッと小さな声で呟いたが
隣にいた慎には聴こえたらしい。
「貴也?」
「何でもないから気にするな」
俺の言葉に納得したらしい。
「わかった」
流石、親友だよな。
「学校では付き合ってること
隠さないといけないんだよね……」
バレた時に当然、
俺達は色々言われるだろうけど
責められるのは教師である亮と雪村だ。
「そうだな」
だから、俺と亮も
バレないようにしている。
「ねぇ二人とも、
バレた時に考えようよ」
暢気だなぁ……
「それに、万が一バレたら
俺達が守るからさ❢❢」
亮はわかってねぇなぁ……
「そうだろう? 静」
「当たり前だ」
雪村もか……
“恋人”としては物凄く嬉しいが
“生徒”としては複雑だったりする。
慎も同じだと思う。
万が一バレて、亮達が
辞めるなんてとこになったら
俺達は立ち直れなくなる。
「あのな、亮・雪村」
今後の俺達のためにも
此所で言っといた方がいいよな。
「ん?」
よし❢❢
「その答えはさ“恋人”としては
嬉しいんだけど“生徒”としては
複雑なんだよ」
下手したら二人の教師人生を
奪いかねないからだ……
「慎もそうだろう?」
「うん」
だと思ったぜ。
「俺達がクビになったらって思ってる?」
他にないだろう。
「それ以外に何があんだよ❢❢」
「心配してくれてありがとうな」
俺達の気も知らないで……全く……
「だけど、俺も静も覚悟はしてるんだ」
それはそれで嬉しいがやっぱり……
「僕達のせいで先生達が
クビになるのは嫌なんです」
慎は本当に俺の心を
読み取るのが上手いな。
「そうでしょう? 貴也」
途中で黙ってしまった俺に
慎が確認の意を込めて訊いた。
「あぁ……」
好きだからこそ
二人の教師人生を奪いたくない。
「お前ら優しいな」
学校では見せないような
表情(かお)で雪村が言った。
「亮達の方が優しいと思うけどな」
いくら恋人だといっても
教師と生徒なのは俺達が
卒業しない限りかわらない。
そんな俺達のためにクビを
覚悟してるなんて普通は言えない。
こんな優しい二人を
クビにさせないためにも
絶対に学校にバレないように
気を付けなければいけない。
「俺達もバレなように気を付けるから
後一年ちょっと頑張ろうな」
とりあえず卒業すれば
教師と生徒じゃなくなる。
「学校で会えなくなるのは
少し淋しいけどな」
学校だからこそ会える場合もある。
「まぁねぇ……
あっ❢❢ 二人が卒業したら
四人で此所に住もうか❢❢」
また、突拍子もないことを(苦笑)
「俺はいいぞ」
は? 雪村まで何言い出すんだよ……
「家賃は折半でいいだろう」
待て待て、おもいっきり
俺達は蚊帳の外なんだが……
「静、出してくれるんだ?」
話が進んでってるけど……
「四人で住むならな」
俺達の方を向いて雪村が言った。
親父を説得しなきゃだよな(苦笑)
「問題は春日井と笹山だよな」
そうだろな。
未成年だからな。
「貴也の親御さんには俺が頼みに行くさ」
亮の一言にフリーズしかけた。
「的木先生、カッコイイ❢❢」
慎が目を輝かせて言いながら雪村を見た。
「わかった笹山の
親御さんには俺が頼みに行く」
その視線が何を言いたいのか
読み取ったみたいだ。
「ありがとうございます」
亮が満足そうな表情(かお)をした。
こりゃ、誘導尋問だな(苦笑)
それに気付かない雪村はアホだな。
知らない方がいいこともあるだろうから
此所は黙っておくことにするか。
卒業後云々の話が終わり宿題の話へ。
「お前ら、宿題いつやるんだ?」
アホなのにいきなり教師モードかよ。
「此所にいる間にやるなら
俺達が教えてやるけど?」
それはラッキーかも(笑)
「一つ言っておく、
理数系は亮に訊け」
ふぅ~ん、雪村は理数系が苦手なのか。
「雪村、英語はできんの?」
俺が訊くと雪村が答える前に慎が遮った。
「ちょっと貴也、英語なら
僕が教えてあげるから❢❢」
お? 俺にヤキモチか?
だとしたら可愛いな(笑)
慎は英語得意だったな。
「悪い、忘れてた」
そぉ言ったらベシベシと叩かれた。
軽くだから全然痛くないが。
「んじゃぁ、英語は
慎に教わることにするか」
「OK♬♡*゚ 代わりに日本史教えてね」
日本史は得意だからな(笑)
「勿論だ」
「じゃぁ、明日からやろっか。
そして、此所にいる間に
全部終わらせよう」
亮、それはいくらなんでも
無理じゃないか(苦笑)
「二人の宿題が終わったら
四人で出かけるから頑張って」
何処に行くんだ?
「内緒だよ」
顔に出てたらしい。
「とにかく、此所にいる間に
全部終わらせちゃえば残りの
一ヶ月丸々遊べるでしょう?」
亮達以外と遊ぶ予定は
今のところないが早めに
終わらせば楽なことは確かだ。
「そうだな」
頑張るか。
「だね」
俺達は色んな意味で贅沢だと思った。
学校一人気者の亮と
そこそこ人気者の雪村に
教えてもらえるうえに恋人なんだから。
俺達が恐れているのは
二人のクビだけじゃないく
ファン達にボコられないためにも
バレてはいけない。
「貴也、二人のファンのこと考えてた?」
ぼーとしてたらしい。
「当たりだ」
しかしよくわかったなぁ(苦笑)
「一人で百面相してたから」
また、顔に出てたらしい。
「ファン?」
二人は知らないよな(苦笑)
亮が不思議そうに訊いてきた。
「知らないと思うんですけど
校内には先生達のファンクラブがあるんです」
慎の口から淡々と告げられた言葉に
二人はフリーズした(苦笑)
気持ちはわからなくもない。
「やっぱり、知らなかったんだな」
知らなくて当たり前なんだけどな。
「おーい、二人とも戻ってこい」
たっぷり十秒フリーズした後で
やっと戻ってきた。
「貴也、それ本当!?」
信じられないのはわかるが事実は事実だ。
「本当だ」
俺達が入学した時には既にあった。
「まぁ、堂々と〔ファンクラブ〕なんて
名前で活動してるわけじゃないから
教師達も知らないんだよ」
気付かない教師達もマヌケだと思うけどな。
「それ、生徒達は知ってんのか?」
雪村が訊いてきた。
「大体の生徒は知ってるけど
言わないのが暗黙の
ルールみたいになってるから
いまだに教師達が知らないままなんだよ」
噂ではバラした者には容赦ない
制裁があるんだとか。
「俺達も学校では知らないフリをしとくよ」
それがいい。
次の日(お泊まり三日目)、
さっそく宿題を始めた俺達。
理数系が苦手な俺は亮に
暗記系が苦手な慎は雪村に教わることに。
なんの因果か自分の恋人に
教わることになるとは(苦笑)
宿題を始めて一時間。
「少し休憩しよう」
亮の一言でやっと休憩ができた。
普段、一人でやる時は
こんな長い間集中力は続かないが
皆でやってるからか今日は捗ってる。
「そうだな」
雪村も賛成した。
「俺はキッチンで煙草吸ってくる」
それだけ言うとさっさとキッチンへ行った。
「亮はいいのか?」
俺に付きっきりで
教えていたのにいいんだろうか?
「うん、大丈夫だ」
本人がいいならいいか(笑)
「そうだ、お昼ご飯何がいい?」
訊かれて時計を見ると
昼を少し過ぎていた。
そういや腹へったな。
よし、作るか❢❢
「亮は休んでてくれ。
俺が作ってくる」
教わるより教える方が
明らかに疲れる。
だから、昼飯は俺が作ることにした。
さっきの亮の質問を
そっくりそのまま返した。
「何がいい?」
「炒飯かな」
以心伝心か?(苦笑)
作ろうと思ってた物を言われた。
「わかった」
材料は揃っているだろう。
立ち上がりキッチンへ向かった。
換気扇の下で煙草を吸ってる
雪村の横で調理を始めた。
「何か作るのか?」
時計を指して一言。
「昼飯」
俺も亮に
言われるまで忘れてたけどな(苦笑)
「何作るんだ?」
秘密だ(笑)
「できてからのお楽しみだ」
雪村は何だそれって
顔をしてキッチンを出て行った。
「できたぞ」
テーブルの上の教科書やらノートを
退かして皿を置いた。
「炒飯だったんだな」
「静、知らなかったんだ」
俺が教えなかったからな(ニヤリ)
「春日井が教えてくれなかったんだよ」
亮にチクりやがった(笑)
「ぁはは、貴也イジワルだね」
「できればわかるんだから
別にいいだろう」
わざわざ言わなくても
できりゃわかるんだしいいと思う。
「確かにそうだね」
昼飯を食べた後、宿題を再開し
夕方までできるところまでやって
亮が夕飯を作った。
これもそれも全部
亮と雪村のおかげだと感謝した。
「二人ともお疲れ」
宿題が全部終わった❢❢
「やっと終わった❢❢
二人ともありがとうな」
こんなに勉強したのは初めてで疲れた……
「これくらどうってことないさ」
教師だからか?
まぁいいか(苦笑)
「そうそう、この前の話覚えてる?」
四人で出かけるってやつか?
「覚えてるよ」
亮が告げた行き先は……
「行き先は温泉♨」
それは慎が無理だろう❢❢
「ちょっと待て、慎が行けないだろう❢❢」
お泊まりの間だったとしても
あの親父さんが行かせないだろう……
「笹山君は行きたくない?」
本人に訊きやがった。
「僕は行きたいです❢❢」
雪村がいるし、このメンバーで温泉なんて
この機会を逃したら
いつ行けるかわからないしな……
「よかった」
亮が安堵した声を出した。
「じゃぁ、携帯貸してくれる?」
慎が少し不安そうに確認した。
「家に電話するんですよね?」
旅行には行きたいけど
親父さんが許してくれるか不安なんだな……
「そうだよ」
慎は自宅の番号を出して
亮に携帯を渡した。
「お願いします」
廊下に出て電話をしていた亮が
何をどう説明したかは不明だが
慎の親父さんを説得した。
二日後、俺達四人は県外の温泉に来た。
俺は母さんにだけにメールした。
そしたら、吃驚する返信が来た❢❢
〔「お父さんには黙っててあげるから
彼氏と楽しんで来なさいね」〕
と返ってきた……
何でバレてんだ!?
夕飯の時にでも話すか(苦笑)
先に温泉に入って夕飯は後から
食べることになった。
in温泉
「俺、久しぶりに来た」
最後に来たのは
何時か忘れるくらい前だ。
「僕も久しぶりだよ」
慎もか(笑)
「亮・雪村、
連れて来てくれてありがとうな」
両親は休みになる度に
俺を置いて旅行に行くから
連れて来てもらえたことが嬉しい♡*.+゜
「どういたしまして」
後ろから抱き締められ
逆上(のぼ)せそうになった//////
「別に、礼を
言われる程のことじゃないけどな」
雪村はそう言うが嬉しかったから
勝手に礼を言わせてもらう。
あんまり長湯すると
本当に逆上せそうだから
そろそろあがることにした。
「あのさ、話があるんだ」
部屋に着き俺は口を開いた。
「ん?」
実は……と話し出した俺。
★母さんに恋人が出来たと話したこと。
★同性とは言ってないのに
同性と気付いてること。
★父さんには言えてないこと。
「今度、貴也ん家に挨拶にいくよ」
その言葉に慌てたのは
当然、俺と慎だ。
「おい、亮❢❢」
俺が何か言う前に
口を開いたのは雪村だった。
「的木先生は勇者ですね」
慎にまでツッコまれてるし(苦笑)
「貴也ん家の親父さん、怖いの?」
怖いっつうか、訳ありなんだよな……
「会えばわかるさ……」
半ば諦めモードで俺が言った。
話しが終わった頃、
丁度いいタイミングで仲居さんが
夕飯を運んで来た。
ネットで評判の良かった
この旅館はご飯も美味しかった。
三泊四日の楽しかった旅行も
今日が最終日である。
そして、亮ん家に帰って来た。
楽しかった夏休みも終わり
今日から二学期だ。
一年間の中で一番長い学期だ。
二学期は平和でいたいと
願っていたがそれは
無理だと一週間後に知ることとなる。
それは何故かというと
二人のファン達にバレたからだ。
一体、何処から情報を
仕入れてくるんだか……
**一週間後**
俺達は今、ピンチだ。
こっちは二人だが
向こうは四・五人だ。
「ちょっとあんた達、
的木先生と雪村先生と
付き合ってるってどういうことよ❢❢」
リボンの色で三年生だとわかる。
先頭に立って話す
その先輩はいかにも
リーダー的な女子だった。
「別にどうでもこうも
それが真実ですよ」
怯むことなく言ったのが
気に食わなかったのか
その先輩は俺をひっぱたいた。
流石に取り巻きの女子達も
ひっぱたいくとは
思ってなかったみたいで
驚いている。
「気は晴れましたか?」
ひっぱたいかれても平然としている。
ただ、今日は教官室に
行けないなぁと思った。
こんな顔で行けば
雪村と亮に理由を訊かれるだろう。
そして、俺をひっぱたいた先輩も
取り巻きの先輩達も黙ったままだ。
やがてチャイムが鳴ったため
したなく教室に戻ることに
なったのだが、帰ると決めていた。
「貴也、大丈夫?」
慎が心配そうに近寄ってきた。
「大丈夫だけど、俺は帰る」
午後一は雪村の国語なのだが
こんな顔で会いたくない。
「わかった、僕も帰る」
そんじゃぁ、二人で帰るとするか(笑)
教室に着き、帰る準備をしていると
珍しく染野が声をかけてきた。
「帰るのか?」
「あぁ、雪村には
適当に言っといてくれ」
って、俺には返事しないのな。
「僕も帰るから、後お願いね」
染野が少し反応した。
「しょうがねぇな」
こいつ、相変わらず
慎には弱いよな……
「じゃあな」と染野に手を振って
二人で教室を出た。
その週の土曜日、
当然といえば当然だが
あの日のことを説明しろと
物凄い剣幕で詰め寄られた。
勿論、俺と慎はだんまり(苦笑)
「なぁ、そんなに
言いたくない理由なのか?」
そりゃそうだ。
二人のファンの女子に
ひっぱたかれたから
早退したなんて言えない。
「どうしても言いたくない?」
亮も雪村も優しいから
尚更言えない……
「笹山は知ってんだろう?」
俺が答えないとわかると
慎に話しを振ったが慎は答えない。
「貴也が言えないことを
僕が言えるわけないじゃないですか」
本当、いい奴だよな。
ひっぱたかれたあの日、
家に帰ってから鏡を見たら
案の定腫れていた。
四人の間に重たい空気が流れる。
「ねぇ貴也、俺達が
関係してるんだよね?」
げっ、亮は感がいいな……
内心慌てるが
それを表にはださない。
さっきは二人な優しいから
迷惑になるんじゃないかと
思ったけど、言っていいんだろうか?
隣にいる慎に無言で
答えを求めた。
俺の言いたいことが
わかったみたいで
「大丈夫」と言った。
「わかった、話す」
一昨日、何があったのか
慎と二人で話した。
★昼休みに食堂に
行く途中で三年生を含む
女子達に囲まれたこと。
★三年の先輩に亮達と
付き合ってるのかと訊かれ
素直に答えたら
ひっぱたかれたこと。
やっぱり、
そういう表情(かお)になるか(苦笑)
「だから、染野に伝言を
頼んで帰ったのか……」
二人は何も悪くない。
「そうだよ」
さっき程ではないが
依然、空気は重いままだ。
長いようで短い沈黙を
破ったのは亮だった。
「何ですぐ言ってくれなかったの?」
返す言葉がない。
「ごめん……」
泣きそうな表情(かお)した
俺に亮が慌てて謝った。
「ごめん貴也、
責めているんじゃないんだ」
それは、わかっている。