全国的に梅雨。

外は雨。景色は灰色。
リズムよく教室に響く雨音は、心地よい眠りを誘う音楽。
先生がチョークで描く化学式は、羊が柵をジャンプする公式。
5時間目の化学は眠い。

ウトウトと集団催眠にかかったような我がクラス。真面目に勉強してる人達もいるけどね。

私は黒板を見る振りをして
その上にある大きな時計をチェックするけど
針はさっきから動かない。
時計止まってない?
時間が経つのが遅い。

こっそりミンティアでも食べようかと思っていたら

隣の席で大きな金属音が鳴る!

「うわっ!」と、みんな驚いて目を覚ます。

「あ、ごめん。ごめんね!」
金属音は隣の席に座ってる、美音ちゃんの左手首から大音量で鳴っていた。
美音ちゃんは誰よりも焦りながら、慣れぬ手つきで大きな腕時計もどきのスイッチを押す。

「あれっ?あ、違ったこっちだ。……もしもしっ?」

美音ちゃんは先生に頭を下げ、教室の後ろにパタパタと走ってうずくまる。

もう
みんなわかってるんだから
ここで会話していいのに。

「はい了解です。あ、違った……らっ……ラジャー!」

遠慮しながら言うラジャ―は
クレヨンしんちゃんに出てくる、かすかべ防衛隊より弱そうだ。

「せんせー。すいません」
ほぼ涙目で美音ちゃんは情けない声を出すと

先生は「早く行きなさい」と、冷たい声を出す。

怪人が現れたのね。

こんな雨の日に。