目覚まし時計がジリリリリと部屋中に鳴り響く。
「姉ちゃん!!! うっさい!!」
ベッドから起きない雪菜。寝返りを打っては、うーんと唸る。隣の部屋から大きな声を出す徹平。我慢できなくなって、扉をガンッと開けて姉の部屋にズカズカと入る。ベッドの宮に置いていた大きな目覚まし時計の
スイッチをオフにする。一度だけ止めるボタンではない。スヌーズ機能までオフになるものだ。
徹平はイライラしながら、結局その行動で1階のリビングへと移動する。雪菜はずっと寝ている。起きもしない。
「徹平、おはよう。起きたのか」
コーヒーを飲んでいた父の龍弥が声をかける。台所で朝ごはんの準備をしていた母の菜穂は後ろを振り向いて、声を出す。
「徹平、おはよう。お姉ちゃんはまだ起きないの?」
「おはよう!! あいつは、起きない。また目覚まし時計無視して寝続けてるから止めてやった」
どや顔で腕を組む。
「なんで起こさないのよ!! まったく、遅刻するじゃない。お父さん、起こしてきて!!」
「えー-、なんで、俺が。女子の部屋はお父さん入らない方がいいじゃないの?」
「いいから!! もう、雪菜にはそういうのないから早く、起こしてきて!!」
「はいはい」
龍弥は、コーヒーを飲み干して、階段をのぼっていく。徹平は、ぶつぶつイライラしながら、クローゼットで制服に着替えていた。雪菜の部屋の前に着いて、軽くノックをする。何の返事もない。まぁいいかと思いながら、龍弥はそっと中に入った。
いつもより部屋の中が片付いている。ベッドには、大きなぬいぐるみを抱き枕のようにすやすや寝ている雪菜がいた。
「でっけーぬいぐるみだなぁ。ゲーセンでも行ってきたのか? ……おーい、雪菜、朝だぞぉ」
そっと近づいて、肩を軽くトントンとたたいた。
「むにゃむにゃ…凛汰郎くん……」
(寝言か?!寝言なのか。誰だ、りんたろうだと?! あのチャラい芸人のことか? 雪菜、ああいうのが好きなのか?)
めらめらと父の計り知れない娘愛が湧き出てきた。炎が燃えるように目が熱くなる。
「……え? 何。なんで、お父さん、そこにいるの?!」
雪菜は、ベッドの下に置いていたクッションを龍弥の顔めがけて投げた。
「ブハッ!! 何、投げてんだ?!」
「クッションを投げました!! 勝手に入ってこないで。女子の部屋はお母さんだけって前に言わなかったっけ?!」
「なに?! 聞いてないぞ」
「もう、いやだ。制服着替えるから、あっちに行ってて」
背中を押して、部屋から追い出す。とりあえずは、起きたため、父のミッションは完了した。
もやもやした気持ちを残したまま、龍弥は、1階におりていく。
高校生というお年頃。親子関係は難しいものだ。放っておいてはいけないし、近づきすぎてもいけない。反抗期なのだろうか。
ため息をつきながら、全身鏡を見ながら、ワイシャツの袖に腕を通し、制服のスカートに足を通す。セミロングの寝ぐせのついたセミロングの髪にヘアスプレーをかけて、とかした。目の下についていた目ヤニをティッシュでふき取る。
CCクリームを顔に塗りつけて、眉毛を描いて、ビューラーでまつげをあげてマスカラを使って目を大きくさせた。
「よし、これでいいな」
リップクリームを塗って、鏡をもう一度見た。前髪の位置が気になった。くしでとかして整えた。
「雪菜!! 時間大丈夫なの?」
1階から、菜穂が叫ぶ。
「今行くー」
机に乗せていた茶色のバックの中に充電していたスマホを入れて、持ち上げた。もらったばかりの狼のぬいぐるみが揺れていた。ベッドに寝かせていたうさぎのぬいぐるみをハグして、部屋を出た。
「間に合わないから、今日、朝ごはんいらない」
「はい、お弁当と水筒」
「ありがとう」
「このパンくらいなら食べられるでしょう?」
菜穂は、小さなクリームパンを差し出した。
「うん。それなら、大丈夫。行ってきます」
「行ってらっしゃい」
雪菜は、パンを口にくわえて、玄関のドアを開けた。
「雪菜、行ったのか?」
「うん。今行ったよ。ほら、徹平、ごはんのんびり食べてないで準備しなさいよ」
「ほぉーい」
パクパクとお茶碗を持って食べきった。
「ごちそうさまでした」
「お父さんも、食べ終わったら、食器片づけてね」
「ああ、わかってるよ。ったく、俺は雪菜起こしに行かない方いいだろ。クッション、顔に投げられたぞ」
「え、そうなの。ごめんなさい。いろいろ準備して忙しくしてたから。お年頃だってこと忘れてたわ」
「それに、さっき『りんたろう』とかってつぶやいてたし、雪菜、いつの間にチャラい芸人好きになったんだと思って……」
ぶつぶつとつぶやく龍弥。
「え?!姉ちゃん、そんなこと言ってんの?」
口に歯ブラシをくわえたまま、龍弥の声に反応する徹平。洗面所から食卓に移動している。
「徹平、歯磨き終わらせてから話せって。垂れてるぞ」
「雪菜がりんたろうっていうの? ぜんぜん、テレビ見てても反応してないけど、むしろピンクの頭の人がいいって言ってたよ。聞き間違いじゃない?」
「え、それって、平澤先輩のことじゃねぇの? 確か、まーくんが言ってた気がする。ムカつく先輩がいるとかって
ライバルとか言ってて……。確かそれが、平澤凛汰郎先輩って言ってたような……」
「ふーん。リアルな友達ってことか。なおさらだな。徹平、姉ちゃん、ちゃんと見て置けよ!!」
「え、なんで俺が……。まぁ、良いけど」
「お父さん、雪菜の干渉しないの。親子関係崩れるわよ。様子見ておきなさいよ」
「……もしそれが彼氏だったら、どうするんだよ」
「どうもしないわよ。娘のことで嫉妬? やめなよ。父親として嫌われるわよ」
「……マジか」
急にテンションが下がる龍弥。
「お父さん、俺がちゃんと監視するから安心して。ね」
「おう、任せた」
「放っておけばいいのに……。この親子は」
徹平は、歯磨きを終えて、寝ぐせを直すことも忘れて、学校に向かった。雪菜に彼氏ができることにもやもやする龍弥だった。
「姉ちゃん!!! うっさい!!」
ベッドから起きない雪菜。寝返りを打っては、うーんと唸る。隣の部屋から大きな声を出す徹平。我慢できなくなって、扉をガンッと開けて姉の部屋にズカズカと入る。ベッドの宮に置いていた大きな目覚まし時計の
スイッチをオフにする。一度だけ止めるボタンではない。スヌーズ機能までオフになるものだ。
徹平はイライラしながら、結局その行動で1階のリビングへと移動する。雪菜はずっと寝ている。起きもしない。
「徹平、おはよう。起きたのか」
コーヒーを飲んでいた父の龍弥が声をかける。台所で朝ごはんの準備をしていた母の菜穂は後ろを振り向いて、声を出す。
「徹平、おはよう。お姉ちゃんはまだ起きないの?」
「おはよう!! あいつは、起きない。また目覚まし時計無視して寝続けてるから止めてやった」
どや顔で腕を組む。
「なんで起こさないのよ!! まったく、遅刻するじゃない。お父さん、起こしてきて!!」
「えー-、なんで、俺が。女子の部屋はお父さん入らない方がいいじゃないの?」
「いいから!! もう、雪菜にはそういうのないから早く、起こしてきて!!」
「はいはい」
龍弥は、コーヒーを飲み干して、階段をのぼっていく。徹平は、ぶつぶつイライラしながら、クローゼットで制服に着替えていた。雪菜の部屋の前に着いて、軽くノックをする。何の返事もない。まぁいいかと思いながら、龍弥はそっと中に入った。
いつもより部屋の中が片付いている。ベッドには、大きなぬいぐるみを抱き枕のようにすやすや寝ている雪菜がいた。
「でっけーぬいぐるみだなぁ。ゲーセンでも行ってきたのか? ……おーい、雪菜、朝だぞぉ」
そっと近づいて、肩を軽くトントンとたたいた。
「むにゃむにゃ…凛汰郎くん……」
(寝言か?!寝言なのか。誰だ、りんたろうだと?! あのチャラい芸人のことか? 雪菜、ああいうのが好きなのか?)
めらめらと父の計り知れない娘愛が湧き出てきた。炎が燃えるように目が熱くなる。
「……え? 何。なんで、お父さん、そこにいるの?!」
雪菜は、ベッドの下に置いていたクッションを龍弥の顔めがけて投げた。
「ブハッ!! 何、投げてんだ?!」
「クッションを投げました!! 勝手に入ってこないで。女子の部屋はお母さんだけって前に言わなかったっけ?!」
「なに?! 聞いてないぞ」
「もう、いやだ。制服着替えるから、あっちに行ってて」
背中を押して、部屋から追い出す。とりあえずは、起きたため、父のミッションは完了した。
もやもやした気持ちを残したまま、龍弥は、1階におりていく。
高校生というお年頃。親子関係は難しいものだ。放っておいてはいけないし、近づきすぎてもいけない。反抗期なのだろうか。
ため息をつきながら、全身鏡を見ながら、ワイシャツの袖に腕を通し、制服のスカートに足を通す。セミロングの寝ぐせのついたセミロングの髪にヘアスプレーをかけて、とかした。目の下についていた目ヤニをティッシュでふき取る。
CCクリームを顔に塗りつけて、眉毛を描いて、ビューラーでまつげをあげてマスカラを使って目を大きくさせた。
「よし、これでいいな」
リップクリームを塗って、鏡をもう一度見た。前髪の位置が気になった。くしでとかして整えた。
「雪菜!! 時間大丈夫なの?」
1階から、菜穂が叫ぶ。
「今行くー」
机に乗せていた茶色のバックの中に充電していたスマホを入れて、持ち上げた。もらったばかりの狼のぬいぐるみが揺れていた。ベッドに寝かせていたうさぎのぬいぐるみをハグして、部屋を出た。
「間に合わないから、今日、朝ごはんいらない」
「はい、お弁当と水筒」
「ありがとう」
「このパンくらいなら食べられるでしょう?」
菜穂は、小さなクリームパンを差し出した。
「うん。それなら、大丈夫。行ってきます」
「行ってらっしゃい」
雪菜は、パンを口にくわえて、玄関のドアを開けた。
「雪菜、行ったのか?」
「うん。今行ったよ。ほら、徹平、ごはんのんびり食べてないで準備しなさいよ」
「ほぉーい」
パクパクとお茶碗を持って食べきった。
「ごちそうさまでした」
「お父さんも、食べ終わったら、食器片づけてね」
「ああ、わかってるよ。ったく、俺は雪菜起こしに行かない方いいだろ。クッション、顔に投げられたぞ」
「え、そうなの。ごめんなさい。いろいろ準備して忙しくしてたから。お年頃だってこと忘れてたわ」
「それに、さっき『りんたろう』とかってつぶやいてたし、雪菜、いつの間にチャラい芸人好きになったんだと思って……」
ぶつぶつとつぶやく龍弥。
「え?!姉ちゃん、そんなこと言ってんの?」
口に歯ブラシをくわえたまま、龍弥の声に反応する徹平。洗面所から食卓に移動している。
「徹平、歯磨き終わらせてから話せって。垂れてるぞ」
「雪菜がりんたろうっていうの? ぜんぜん、テレビ見てても反応してないけど、むしろピンクの頭の人がいいって言ってたよ。聞き間違いじゃない?」
「え、それって、平澤先輩のことじゃねぇの? 確か、まーくんが言ってた気がする。ムカつく先輩がいるとかって
ライバルとか言ってて……。確かそれが、平澤凛汰郎先輩って言ってたような……」
「ふーん。リアルな友達ってことか。なおさらだな。徹平、姉ちゃん、ちゃんと見て置けよ!!」
「え、なんで俺が……。まぁ、良いけど」
「お父さん、雪菜の干渉しないの。親子関係崩れるわよ。様子見ておきなさいよ」
「……もしそれが彼氏だったら、どうするんだよ」
「どうもしないわよ。娘のことで嫉妬? やめなよ。父親として嫌われるわよ」
「……マジか」
急にテンションが下がる龍弥。
「お父さん、俺がちゃんと監視するから安心して。ね」
「おう、任せた」
「放っておけばいいのに……。この親子は」
徹平は、歯磨きを終えて、寝ぐせを直すことも忘れて、学校に向かった。雪菜に彼氏ができることにもやもやする龍弥だった。