校舎のカザミドリが、いつも以上に強く風が吹いて勢いを増していた。
お昼休みのチャイムが鳴った。
授業を終えた生徒たちが、一目散に購買部に駆け出している。
教室のあちらこちらの引き戸が、大きな音を立てて開いていく。
雪菜はようやく松葉杖から解放されて、健康的な日常を取り戻していた。
机の脇にかけていたバックの中から長財布を取り出した。
「雪菜、今日購買部行くの?」
緋奈子が声をかけた。
「うん。久しぶりにパンでも買おうかなって。お弁当今日、持ってきて無いから」
「雪菜の好きなパンは人気だから難しいかもよ?」
2人は廊下で話しながら、購買部へ行く。その声を座席で聞き耳を立てながら、聞いていたのは凛汰郎だった。
(俺も、購買でも行こうかな)
バックから財布を取り出す。
「ねぇねぇ、凛汰郎くん」
クラスメイトの伊藤あゆみに声をかけられた。
「ごめんね、初めて話しかけるんだけど、君の家ってお花屋さん?」
「え……」
「先週の土曜日に母と一緒に花、買いに行ったとき、直接話してなかったけど、ちょうど君が部活から帰ってくるところ見かけたの」
後ろ頭をガリガリとかいて、照れ臭そうに話す。
「あー。うん。そうだけど」
「え!? マジで?!」
その話を聞いていたのは2年の斎藤雅俊だった。コンビニで飲み物を買った以来犬猿の仲だった。
「お前のうち、花屋なの?」
「……」
突然、後輩が先輩の教室に入ってきて、話に割ってくる神経が気に入らない凛汰郎はだんまりを続けた。
「なるほど~」
雅俊は、雪菜の机に寄りかかって顎に指をつけた。
「だから、あの花……。だよな、急に、男が花を持って行ったらキモイよなぁ。花屋って聞いて安心したわ」
独り言のようにぶつぶつという雅俊。隣にいた伊藤あゆみも反応する。
「斎藤くん、急にどうしたん?」
「え、伊藤さん。この人知ってるの?」
凛汰郎は、指をさしていう。
「えっと、元部活で一緒だったのよ。中学の時、同じ学校で。先輩、後輩」
「伊藤先輩こそ、ここのクラスだったんっすね。知りませんでしたよ。今日は、雪菜に会いに来たんですけど、いないっすね。購買でも行ったのかな」
窓際に駆け寄って、外を眺める。
「……というか、あんた、送ってもない花で名前、名乗っただろ」
「あ……。やっぱり、あれ、先輩だったっすね。ここでバラすんですか? 本人いないけど、大丈夫です?」
「俺じゃない」
「またまた強がっちゃって……。でも、俺の性格ではあんなことしないかな。なんとなく、陰キャラがしそうかなぁって……。黙っておくってことは俺しないし」
喧嘩を売るように話す雅俊の頬に強烈なパンチが入った。
罰悪くその良くないシーンで、雪菜が緋奈子とともに購買で買ってきたビニール袋を持って、教室出入り口で目撃していた。
「は? なにすんだよ!?」
雪菜が来てるとは知らずに乱闘騒ぎになる。横では伊藤あゆみが雅俊をとめて、その隣では凛汰郎の両腕をおさえる
五十嵐竜次がいた。慌てて、雪菜がもめている中の間に入った。
「ちょっと2人とも、やめて。原因は一体何なの?」
息が上がって、両者とも頬は赤くなる。お互いに黙ったまま、何も言わない。
「そうやって、黙るの良くないと思うんだけど……」
「……さっき聞いてた話では、花がどうたらこうたら言ってたよ」
伊藤あゆみが声を出した。
「花?何のことだろう」
「凛汰郎の家が花屋なんだってさ」
竜次が興奮した凛汰郎をなだめながらいう。
「え……」
なんとなく、花と聞いて思い出すのは、雪菜が入院していた時にもらった
お見舞いの花束。雅俊から受け取ったはずだけども、この2人が殴り合うということは何かがおかしいと察した。
「もしかして、入院中に届けてくれた花って雅俊じゃなくて、凛汰郎くんなのかな?」
2人とも何も言えずにずっと黙っている。いたたまれなくなって、凛汰郎は廊下に飛び出していった。
「雅俊、嘘ついていたの?」
「そんなの知らねぇよ」
そう吐き出すと教室を出て行った。
クラスメイトたちは、なんだかもやもやした空気の中、それぞれの座席に着席した。
「雪菜、モテモテだねぇ」
「そんなじゃないでしょう、別に」
「え、付き合ってないの?」
「えーだって、誰と?」
「雅俊くんとじゃないの?」
雪菜はまさかと首を横に振った。
「幼馴染だよ。近所だし」
「あ、わかった。んじゃ、凛汰郎くんと?」
「ブッブー。部活が一緒ってだけ。違います」
(そうなれたらいいなぁとは思うけど、緋奈子にはまだ黙っておこう)
「もう、高校生活あと少しで終わるんだから、恋の1つや2つ、進展させてみようよ」
「努力します!」
雪菜は机に両手をついて、軽く緋奈子にお辞儀をした。
購買部で買ってきた大きいパンを大きな口を開けてほおばった。コーヒー牛乳がのどを潤した。
まさか、雅俊と凛汰郎が乱闘するとは思わなかった。
なんとなく、教室を飛び出した凛汰郎が気になって、パンを食べ終えると、凛汰郎の後を追いかけた。
昼休みの廊下は生徒たちの会話でざわついていた。
お昼休みのチャイムが鳴った。
授業を終えた生徒たちが、一目散に購買部に駆け出している。
教室のあちらこちらの引き戸が、大きな音を立てて開いていく。
雪菜はようやく松葉杖から解放されて、健康的な日常を取り戻していた。
机の脇にかけていたバックの中から長財布を取り出した。
「雪菜、今日購買部行くの?」
緋奈子が声をかけた。
「うん。久しぶりにパンでも買おうかなって。お弁当今日、持ってきて無いから」
「雪菜の好きなパンは人気だから難しいかもよ?」
2人は廊下で話しながら、購買部へ行く。その声を座席で聞き耳を立てながら、聞いていたのは凛汰郎だった。
(俺も、購買でも行こうかな)
バックから財布を取り出す。
「ねぇねぇ、凛汰郎くん」
クラスメイトの伊藤あゆみに声をかけられた。
「ごめんね、初めて話しかけるんだけど、君の家ってお花屋さん?」
「え……」
「先週の土曜日に母と一緒に花、買いに行ったとき、直接話してなかったけど、ちょうど君が部活から帰ってくるところ見かけたの」
後ろ頭をガリガリとかいて、照れ臭そうに話す。
「あー。うん。そうだけど」
「え!? マジで?!」
その話を聞いていたのは2年の斎藤雅俊だった。コンビニで飲み物を買った以来犬猿の仲だった。
「お前のうち、花屋なの?」
「……」
突然、後輩が先輩の教室に入ってきて、話に割ってくる神経が気に入らない凛汰郎はだんまりを続けた。
「なるほど~」
雅俊は、雪菜の机に寄りかかって顎に指をつけた。
「だから、あの花……。だよな、急に、男が花を持って行ったらキモイよなぁ。花屋って聞いて安心したわ」
独り言のようにぶつぶつという雅俊。隣にいた伊藤あゆみも反応する。
「斎藤くん、急にどうしたん?」
「え、伊藤さん。この人知ってるの?」
凛汰郎は、指をさしていう。
「えっと、元部活で一緒だったのよ。中学の時、同じ学校で。先輩、後輩」
「伊藤先輩こそ、ここのクラスだったんっすね。知りませんでしたよ。今日は、雪菜に会いに来たんですけど、いないっすね。購買でも行ったのかな」
窓際に駆け寄って、外を眺める。
「……というか、あんた、送ってもない花で名前、名乗っただろ」
「あ……。やっぱり、あれ、先輩だったっすね。ここでバラすんですか? 本人いないけど、大丈夫です?」
「俺じゃない」
「またまた強がっちゃって……。でも、俺の性格ではあんなことしないかな。なんとなく、陰キャラがしそうかなぁって……。黙っておくってことは俺しないし」
喧嘩を売るように話す雅俊の頬に強烈なパンチが入った。
罰悪くその良くないシーンで、雪菜が緋奈子とともに購買で買ってきたビニール袋を持って、教室出入り口で目撃していた。
「は? なにすんだよ!?」
雪菜が来てるとは知らずに乱闘騒ぎになる。横では伊藤あゆみが雅俊をとめて、その隣では凛汰郎の両腕をおさえる
五十嵐竜次がいた。慌てて、雪菜がもめている中の間に入った。
「ちょっと2人とも、やめて。原因は一体何なの?」
息が上がって、両者とも頬は赤くなる。お互いに黙ったまま、何も言わない。
「そうやって、黙るの良くないと思うんだけど……」
「……さっき聞いてた話では、花がどうたらこうたら言ってたよ」
伊藤あゆみが声を出した。
「花?何のことだろう」
「凛汰郎の家が花屋なんだってさ」
竜次が興奮した凛汰郎をなだめながらいう。
「え……」
なんとなく、花と聞いて思い出すのは、雪菜が入院していた時にもらった
お見舞いの花束。雅俊から受け取ったはずだけども、この2人が殴り合うということは何かがおかしいと察した。
「もしかして、入院中に届けてくれた花って雅俊じゃなくて、凛汰郎くんなのかな?」
2人とも何も言えずにずっと黙っている。いたたまれなくなって、凛汰郎は廊下に飛び出していった。
「雅俊、嘘ついていたの?」
「そんなの知らねぇよ」
そう吐き出すと教室を出て行った。
クラスメイトたちは、なんだかもやもやした空気の中、それぞれの座席に着席した。
「雪菜、モテモテだねぇ」
「そんなじゃないでしょう、別に」
「え、付き合ってないの?」
「えーだって、誰と?」
「雅俊くんとじゃないの?」
雪菜はまさかと首を横に振った。
「幼馴染だよ。近所だし」
「あ、わかった。んじゃ、凛汰郎くんと?」
「ブッブー。部活が一緒ってだけ。違います」
(そうなれたらいいなぁとは思うけど、緋奈子にはまだ黙っておこう)
「もう、高校生活あと少しで終わるんだから、恋の1つや2つ、進展させてみようよ」
「努力します!」
雪菜は机に両手をついて、軽く緋奈子にお辞儀をした。
購買部で買ってきた大きいパンを大きな口を開けてほおばった。コーヒー牛乳がのどを潤した。
まさか、雅俊と凛汰郎が乱闘するとは思わなかった。
なんとなく、教室を飛び出した凛汰郎が気になって、パンを食べ終えると、凛汰郎の後を追いかけた。
昼休みの廊下は生徒たちの会話でざわついていた。