入院2日目。
学校にも行けず、ぼんやりと病室を過ごしていた。左足はまだ動かせない。
検温に来る看護師や清掃員のおばちゃんに世間話をして、担当の医師に症状を伝えるくらいであまり興味のないスマホのアプリゲームや電子書籍の漫画をひたすら読み漁って、あっという間に1日は過ぎて行く。考えるのが楽しみなのは、次のご飯は何が出るのかくらい。おばあちゃんか小さな子供になった気分だった。ぼんやり夕日が沈むのを窓からのぞいていると、ドアをノックする音が響いた。
「お邪魔しま〜す」
「失礼します」
男女の声が聞こえた。入って来たのは、幼馴染の齋藤雅俊と弓道部後輩の菊地紗矢だった。
「珍しい組み合わせだね」
雪菜は2人を見てすぐ思った。
「誘われたんですよ、齋藤くんに。学校帰りに雪菜先輩のお見舞い行かないかって。1人で行くのは心細いとか何とか言ってまして…。
今まで接点なかったんで、ちょっとびっくりしました」
「え、あ、ごめん。菊地さん、余計なお世話だったかな」
「あー、いや、もう、別にいいけど」
紗矢は、雪菜のベッドの隣にあるパイプ椅子に座り、ガサガサとビニール袋から取り出した。
「これ、入院してる間、暇だろうから。雑誌買って来ましたよ。あと、プリン。一緒に食べましょう。おやつに」
「えー、やだぁ。紗矢ちゃん、助かるよ。ありがとう。滅多に雑誌なんて見ないから、嬉しいよ。早速ファッションチェックしようかな。プリンもいいの?」
「ちょうど3つあるから、齋藤くんも一緒に食べる?」
「俺もいいの?食べるわ」
紗矢は袋からスプーンを取り出して、それぞれに手渡した。雅俊は離れた椅子に座って食べはじめた。雪菜と紗矢はベッドの上にあるテーブルで食べた。
「そういえばさ。2人に聞きたかったんだけど、昨日、花束届けてくれた? そこに飾ってるやつ。差出人なかったからさ。
事故のこと知ってるの2人くらいかなって思って……」
プリンを食べながら、雪菜は聞いてみた。雅俊は立ち上がり、綺麗にラッピングされた花束をのぞきこむとメッセージカードに『白狼雪菜 様』と書かれていた。
「…………」
雅俊はピンッと閃いた。紗矢は、花束をのぞきこんで、見入っていた。メッセージカードを取り出して、筆跡を確認しようとしたら、雅俊に取り上げられた。
「それ、俺だよ。雪菜、喜ぶかなぁって思って、買ってきたんだよ」
「え、そうなの?」
「そう。」
慌てるように制服のズボンのポケットにカードを入れた。
「なんだ、雅俊だったの? ここに来てたんなら、普通に中に入ってくればいいのに。両親と担任の先生だから別に入っても全然問題なかったよ?」
「いや、話の腰を折るのは良くないって言うでしょう? 影からのぞいていたわけよ。あとサプライズしたくてさ」
「誕生日じゃないけど、サプライズね。まぁ、雅俊にしては大成功じゃない? 嬉しいよ」
雪菜は満面の笑みをこぼした。雅俊は良心の呵責に苛まれていた。
「あー、そう。それはよかった。買って来た甲斐があったよ」
背中の汗がとまらない。
「……でもさぁ、雅俊、花なんて好きだったっけ?」
「え?! 花好きだよ? 元彼女にプレゼントしたことあるし、花はでも、最近知るようになったかな」
嘘と真実の入り混じった話に心臓が早まった。元彼女に花を贈ったことあるのは事実だった。その後も何気ない世間話や学校での出来事を話すと、あっという間に夕ご飯の時間になっているらしく、調理員さんが運んできていた。
「あ、そろそろ、帰らないと……。ごはん食べてるところ見られるの恥ずかしいですよね。ほら、齋藤くん、帰ろう」
「ああ、わかってるよ。んじゃ、雪菜、また気が向いたら、お見舞いに来るから」
「うん、んじゃまた。来てくれてありがとうね」
2人は、病室のドアを閉めて立ち去った。遠くからその2人を見た男子高校生が病院の玄関で歩いていく。自分の姿を見られたくなくて、雅俊と紗矢から視界に入らないように隠れていた。本当は雪菜のことが気になって、様子を見に来ていた高校生だった。
学校にも行けず、ぼんやりと病室を過ごしていた。左足はまだ動かせない。
検温に来る看護師や清掃員のおばちゃんに世間話をして、担当の医師に症状を伝えるくらいであまり興味のないスマホのアプリゲームや電子書籍の漫画をひたすら読み漁って、あっという間に1日は過ぎて行く。考えるのが楽しみなのは、次のご飯は何が出るのかくらい。おばあちゃんか小さな子供になった気分だった。ぼんやり夕日が沈むのを窓からのぞいていると、ドアをノックする音が響いた。
「お邪魔しま〜す」
「失礼します」
男女の声が聞こえた。入って来たのは、幼馴染の齋藤雅俊と弓道部後輩の菊地紗矢だった。
「珍しい組み合わせだね」
雪菜は2人を見てすぐ思った。
「誘われたんですよ、齋藤くんに。学校帰りに雪菜先輩のお見舞い行かないかって。1人で行くのは心細いとか何とか言ってまして…。
今まで接点なかったんで、ちょっとびっくりしました」
「え、あ、ごめん。菊地さん、余計なお世話だったかな」
「あー、いや、もう、別にいいけど」
紗矢は、雪菜のベッドの隣にあるパイプ椅子に座り、ガサガサとビニール袋から取り出した。
「これ、入院してる間、暇だろうから。雑誌買って来ましたよ。あと、プリン。一緒に食べましょう。おやつに」
「えー、やだぁ。紗矢ちゃん、助かるよ。ありがとう。滅多に雑誌なんて見ないから、嬉しいよ。早速ファッションチェックしようかな。プリンもいいの?」
「ちょうど3つあるから、齋藤くんも一緒に食べる?」
「俺もいいの?食べるわ」
紗矢は袋からスプーンを取り出して、それぞれに手渡した。雅俊は離れた椅子に座って食べはじめた。雪菜と紗矢はベッドの上にあるテーブルで食べた。
「そういえばさ。2人に聞きたかったんだけど、昨日、花束届けてくれた? そこに飾ってるやつ。差出人なかったからさ。
事故のこと知ってるの2人くらいかなって思って……」
プリンを食べながら、雪菜は聞いてみた。雅俊は立ち上がり、綺麗にラッピングされた花束をのぞきこむとメッセージカードに『白狼雪菜 様』と書かれていた。
「…………」
雅俊はピンッと閃いた。紗矢は、花束をのぞきこんで、見入っていた。メッセージカードを取り出して、筆跡を確認しようとしたら、雅俊に取り上げられた。
「それ、俺だよ。雪菜、喜ぶかなぁって思って、買ってきたんだよ」
「え、そうなの?」
「そう。」
慌てるように制服のズボンのポケットにカードを入れた。
「なんだ、雅俊だったの? ここに来てたんなら、普通に中に入ってくればいいのに。両親と担任の先生だから別に入っても全然問題なかったよ?」
「いや、話の腰を折るのは良くないって言うでしょう? 影からのぞいていたわけよ。あとサプライズしたくてさ」
「誕生日じゃないけど、サプライズね。まぁ、雅俊にしては大成功じゃない? 嬉しいよ」
雪菜は満面の笑みをこぼした。雅俊は良心の呵責に苛まれていた。
「あー、そう。それはよかった。買って来た甲斐があったよ」
背中の汗がとまらない。
「……でもさぁ、雅俊、花なんて好きだったっけ?」
「え?! 花好きだよ? 元彼女にプレゼントしたことあるし、花はでも、最近知るようになったかな」
嘘と真実の入り混じった話に心臓が早まった。元彼女に花を贈ったことあるのは事実だった。その後も何気ない世間話や学校での出来事を話すと、あっという間に夕ご飯の時間になっているらしく、調理員さんが運んできていた。
「あ、そろそろ、帰らないと……。ごはん食べてるところ見られるの恥ずかしいですよね。ほら、齋藤くん、帰ろう」
「ああ、わかってるよ。んじゃ、雪菜、また気が向いたら、お見舞いに来るから」
「うん、んじゃまた。来てくれてありがとうね」
2人は、病室のドアを閉めて立ち去った。遠くからその2人を見た男子高校生が病院の玄関で歩いていく。自分の姿を見られたくなくて、雅俊と紗矢から視界に入らないように隠れていた。本当は雪菜のことが気になって、様子を見に来ていた高校生だった。