卒業式から1年後
今日はアリーナとヘンリックの結婚式。
空は晴れ渡りとてもいい天気だ。
あの、教会で行われる。
控え室ではアリーナが準備をしていた。
ウェディングドレスを着て化粧を施され
髪も結いあげられた。
そして白いレースのベールをかぶった。
ここで、時間になるのを待つ。
そこに両親、弟、ブルーノがやって来た。
正装の父はもう号泣だった。鼻水まで垂れていた。父以外みんな苦笑いをしている。
「あなた、アリーナのエスコートできますか?しゃんとして下さい。」母が父に言いながら涙をハンカチで拭ってあげている。
「うぇっううっ…ぐっ…うわぁん」返事も出来ない父。
「お父様、いい加減に泣き止んで下さい。エスコートを誰か別の人にしますよ。」
「それは…ヒック…やだ…私がする。」
「それじゃ、泣かないで下さいね。」
「うん……グズッ」
アリーナが
「ディビッドもブルーノもとてもかっこいいわね。」
「ありがとうございます。姉上もとても綺麗です。」
「そうだろう?オレかっこいいだろ?今日のアリーナはとても綺麗だにゃ。ヘンリックのヤツ、びっくりするんじゃないかにゃ。」
「そうかな。」アリーナは顔が赤くなった。
「ねぇ、ブルーノも姉上と一緒にいっちゃうんでしょ?僕ちょっと寂しいな。」
「そうかー?どうせすぐに会えると思うにゃ。首都にいるんだしにゃ。」
「そうだけどさー。」少し寂しそうに言った。
「そろそろお時間です。」そう声がかけられた。
父はビクッとした。
「あなた、頑張って。」妻にそう言われてうなずいた。
そして、父はアリーナをエスコートして向かう。
「お父様、今まで育ててくれて、そして愛情を注いでくれてありがとうございます。」そうアリーナに言われて父は
「うんうん」と頷くことしかできなかった。
やがて式場の扉の前まで来た。
アリーナと父はそこで深呼吸をして背筋をのばす。
扉が開いた。
赤い絨毯の先にヘンリックが立つ。
ヘンリックは目を大きく見開き手を口元にもっていった。なんて綺麗なんだ。
アリーナはヘンリックの正装姿を見て眩しいと思った。なんてかっこいいの。
ヘンリックに向かってふたりは歩いて行く。
一歩一歩ゆっくりと。
「アリーナ、君が私達のところへ来てくれて育てさせてくれてありがとう。幸せになってくれ。」そう父は言った。
「はい。」
ヘンリックのところへたどり着き
「ヘンリック君、アリーナをよろしくお願いします。」そう言ってアリーナの手をヘンリックに渡した。
ヘンリックは「はい。絶対に幸せにします。」そう言ってアリーナの手を取った。
アリーナとヘンリックは祭壇へと向かう。
それを父は泣きながら見ていた。
祭壇にはあの神官長が立っていた。
にっこりと微笑んで中央へふたりを促す。
「さあ、こちらへ。」
そして式が始まる。
「汝、ヘンリック・ブルーライトは病める時も健やかなるときもアリーナ・ホワイティスを生涯の伴侶とし愛することを誓いますか?」
「はい、誓います。」
「汝アリーナ・ホワイティスは病める時も健やかなる時もヘンリック・ブルーライトを生涯の伴侶とし、愛することをちかいますか?」
「はい、誓います。」
「それでは指輪の交換です。」
アリーナは緊張で少し手が震えていた。
それでもなんとか指輪の交換ができた。
「それでは、誓いのキスをお願いします。」
ヘンリックはアリーナのベールをあげてとてもいい顔で微笑んだ。
「とても綺麗だ。」そう言ってアリーナの唇にキスをした。
アリーナは嬉しくて涙をポロッと落とした。
「これで神に誓いは届けられました。どうぞお幸せに。みなさん祝福を。」
ふたりは手を繋ぎ教会の絨毯を歩き出す。ふたりの両親、兄弟、ブルーノそして、招待客にブリーズ国のクラーク、アレン王子、リリー、マークなど、顔見知り達の笑顔があった。みんなの祝福の中を歩く。
教会の外に出てもたくさんの人がふたりを祝福していた。
ヘンリックは手を空にむけて魔力を使った。
空に虹が出て花や花びらが降ってきた。
そして小さな光もたくさん降ってきた。
それを見た人たちは一斉に歓声を上げた。
「どう、綺麗でしょ。アリーナには負けちゃうけど。」
「ううん。とても綺麗ね。ありがとう。」
ヘンリックはアリーナを抱き上げ
「しあわせになろうね。」
「うん、しあわせになろうね。」
ふたりは微笑み会ってキスをした。
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結婚式の後
泣き止まない夫に妻は優しく涙を拭いてあげていた。
ディビッドとブルーノはそれを苦笑いして見ていた。
公爵は
「マーチスが泣いてる。あのマーチスが……。鼻水まで垂らして…」その時は我慢をした。
が、あとになって思い出して大笑いをしていた。
ビルバーグは
「さすがオレの弟。すごいだろう?かっこいいだろう?」とみんなに自慢していた。
公爵夫人は
夫と長男はどうしてこうなったのかしら?と首を傾げていた。
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登場人物
アリーナ…この章の主人公、ヘンリックの妻
ブルーライト伯爵夫人
ヘンリック…アリーナの夫、外交官、ブルーライト伯爵、強い魔力の持ち主
ブルーノ…アリーナの使い魔、聖獣、第一王子の友達、食いしん坊
ホワイティス伯爵…アリーナの父、グラン国の役人?けっこう泣き虫
ホワイティス伯爵夫人…アリーナの母
ディビッド…アリーナの弟
アンダーソン公爵…ヘンリックの父、グラン国魔法騎士団長、笑い上戸
アンダーソン公爵夫人…ヘンリックの母
ビルバーグ…ヘンリックの兄、グラン国魔法騎士団第一部隊隊員、極度のブラコン
クラーク…ブリーズ国王宮専属魔法師団長、ヘンリックの魔法の先生
アレン王子…ブリーズ国第一王子
神官長…首都の教会の神官長
リリー…アリーナの友達、マークの妻
マーク…アリーナの学生時代の同級生、リリーの夫
グラン国の北に聖獣や精霊が棲む山がある。
夏でも山頂には雪が積もり人を寄せ付けない山だ。
人々はこの山をドゴール山と呼び、聖なる山として崇めていた。
近年、聖獣はオークションで高値で売買されるため密猟者が入り込むことが度々あった。
山の麓には集落がありそこに住む民は聖獣を守るため領主に陳情をした。
領主は騎士を派遣して山のパトロール、密猟者の捕縛、聖獣の保護をさせた。
それでも完全に守ることができず密猟者か聖獣を捕まえて連れて行ってしまうこともあった。
まだ、子供の小さな聖獣が罠にかかり密猟者に捕まってしまった。
小さな聖獣は足に怪我をし首に魔力を使えなくする首輪を着けられて逃げることが出来なかった。檻に入れられ馬車に乗せられ何処かに連れて行かれた。
連れられてたどり着いた場所には、いくつもの檻があり中には各地で捕えられた聖獣が入っていた。それはオークションにかけられる聖獣たちだった。
しばらくして、餌を与えられ子供の聖獣は
お腹が減っていたので警戒しながら食べた。
うっえぇーまっずー!!美味しくなーい!!
口に合わなかった。でも食べるしかなかった。
2日ほど経っただろうか、聖獣の檻がどんどん運ばれて行く。
子供の聖獣の檻も運ばれ馬車に積まれて何処かに連れて行かれた。
そこは地下にある大きな会場にある舞台の上だった。ここでオークションが行われ聖獣は買われて行く。会場には沢山の人が入りオークションが始まった。
「さあ、こちらの聖獣は南の火山ブースト山で捕まえたファイヤーバードです。美しいでしょう。それでは、500ゴールドから始めます。」
「600ゴールド」
「800ゴールド」
「1300ゴールド」
「他にはいませんか?」
「2000ゴールド」
「出ました2000ゴールド!!」
「他にはいませんか?いませんね?ではこちらを2000ゴールドで落札です!!」
会場の入り口付近で何やら騒いでいる。
「魔法騎士団だ!逃げろー!!」
「手入れが入った、逃げろー!!」
「きゃー!!」「わぁー!!」
「出入り口はすべておさえてある。観念しろ。」
「私は魔法騎士団長アンダーソンだ!聖獣の売買は禁止されている。ここにいる者は全て逮捕する!!」
逃げる人、それを捕まえる騎士、人々が騒然となった。
その中でニコニコと笑いながら檻に近づく人がいた。「もう大丈夫だ。山に戻してやるからな。」そう優しく声をかけた。
檻に入った聖獣達は首輪を外され餌を与えられた。それはとても美味しい餌だった。
うんまっ!!子供の聖獣は夢中で食べた。
「よしよし沢山お食べ。」さっきの人がヨシヨシと頭を撫でてくれた。そして足の怪我の手当もしてくれた。
その後、聖獣達は元いた場所に戻された。子供の聖獣もドゴール山に帰ることが出来た。そこでめでたしめでたしではなかった。
子供の聖獣は山に帰り暮らしていた。
あれから数年が経つ。
時々、あの時のご飯美味かったなーまた食べたいなーと思うようになった。
ある日、山の中を歩いていた。するとどうした事かあのご飯が落ちていた!
聖獣は警戒もせずにかぶりつく。
するとあろう事かそれは狼を捕まえる罠だったのだ。足に縄がかかり木にぶら下がる。
それでも聖獣はご飯を離さないでモグモグと食べる。もう夢中で。
食べ終わると聖獣は自分に何が起きたのかやっと気づいた。
ぶら下がってるー?足が痛い!!
このままじゃまた捕まっちゃうー。
そこで聖獣は縄を噛み切った。ぶら下がっていたので当然落下する。頭から落ちそこに大きな石があった。足も痛いし頭も痛いしクラクラする。ここにいたら捕まる。
フラフラしながら聖獣は歩き出した。
丁度、馬車が止まっていて誰もいなかった。
そこで、聖獣は荷台に乗り込み荷物の影で休むことにした。次第に意識を無くして眠り込んでしまった。
その馬車は山の向こうの街からやって来た商人の馬車でこちらの街まで商品を運んでいた。
途中、商人は珍しい薬草を見つけて馬車をそのままにし少し奥の方まで行き薬草を摘んでいた。やがて薬草を沢山持って荷台に乗せ馬車を走らせた。夕方に街に着いた。まず商人は先程摘んだ薬草を薬屋に持って行った。
そのちょっと前に目を覚ました聖獣は馬車が動いている事に気がついた。
うっわぁどうしよう?このままだと驚かせちゃうなぁ。そうだ猫に姿を変えてーここを抜け出そう。
そして、馬車が止まり聖獣は猫の姿で抜け出した。しかし、ここは何処だろう。建物がたくさんあって人もたくさんいる、なんか怖い。
夢中で走った。何処をどう走ったかはわからなかった。足が痛い。喉渇いた。お腹減った。
走った先に高い壁があった。
この壁の向こうなら人はいないかも?そう思って壁を乗り越えた。そこはいくつかの木があって花が咲いていた。小さな池もあった。
聖獣は池で水をのみ喉を潤した。そして近くの大きな木の下で倒れるように寝てしまった。
翌朝、小さな女の子が木の下で寝ている猫を見つけた。女の子は猫を抱いてお母さんの所へ連れて行った。お母さんは女の子に薬と包帯を持ってきて2人で手当をした。
その時、お母さんはこの猫は普通の猫ではないと気づいていた。
しばらくして猫が目を覚ました。女の子は
猫にご飯をあげた。猫は夢中でご飯を食べた。
うんめぇっ!
やがて猫は元気になり女の子と遊日楽しい日々が続いた。
しばらくした頃、女の子のお父さんがやって来た。猫はお父さんを見て驚いた。あの時の美味しいご飯をくれた人だ。お父さんも何か気づいていた。
女の子は小さいのでお昼寝をする。そろそろお昼寝の時間だ。
女の子がお昼寝をしてる間、お父さんとお母さんが猫に話をした。
「君はドゴール山に棲む聖獣だね?どうして街に来たんだい?」
「やっぱりわかってたんだにゃー?なんだか知らないうちにここに来ちゃったにゃ。」猫は山から来た経緯をお父さんとお母さんに話した。
そして、数年前にお父さんに助けてもらったことも話した。
「あの時の聖獣か?そうかそうか。」そういうと嬉しそうに撫でてくれた。
「あの時と違って大きくなったんだにゃ。」そういうと元の聖獣の姿になった。
少し毛足が長くて白い毛、ところどころに青い毛があり金色の目、鋭い牙、大きな身体。
「ドゴール山にしかいない聖獣雪豹だね。大きくなったね。助けてよかった。」とお父さんは嬉しそうだ。
「この姿はまだあの子には見せない方がいいと思うわ。ちょっと大きいし怖いもの。」お母さんが言った。
すると聖獣は猫になった。
「猫のときは話せるにゃ。」
「ところで君は山に帰らないのかい?」
「うーんそうなんだけど…あの女の子は魔力があんまりないにゃ。だからオレが守ってあげたいと思うんにゃ。だめかにゃ?」
「あの子には魔力があんまり無くてね私は少し心配なんだよ。あの子を守ってくれるならここにいていいよ。」
「よし、オレがあの子を守るにゃ。」
「私の名はマーチス・ホワイティス、伯爵だ。こちらは妻のフローリアだ。これからよろしくな。」
「オレは名前は無いにゃ。オレ達聖獣は使い魔になるときに主人に名前をつけてもらうにゃ。」
「そうだったな。ではあの子、アリーナに名前をつけさせよう。いいかい?」
「わかったにゃ。」
そして、アリーナに「ブルーノ」と名前をつけてもらいブルーノはアリーナの使い魔になった。
後にブルーノはこのホワイティス伯爵がドゴール山を含む領地を治める領主でありグラン国の役人だと知ることになる。
役人って言ってもただの役人ではないみたいだにゃ。
ブルーノは聖獣。
アリーナとヘンリックが結婚して新居に移った。その時にブルーノも住まいをそこに移した。
ブルーノはアリーナの使い魔、だからアリーナのいるところには付いて行くのだ。
新居は大きな屋敷で、庭も広い。
ブルーノは部屋を貰った。ふかふかのベッドにソファがあって気に入っている。
アリーナとヘンリックがいない時は、王宮の友達のところへ行って話をしたりご飯を貰ったりしている。
ヘンリックが外国に行く時はアリーナが同行するので、ブルーノもついて行く。
その時は従者として人型になる。
そのため最近は人型にも慣れてきた。
外国で2人が出かけて留守の時は猫になって街の探索をしている。
ひとりになるとちょっとだけ寂しいと感じるようになったブルーノ。
今日はアリーナとヘンリックが2人で出かけた。
ブルーノは早速街の探索に行く。
ここはグリード国の大きな港町だ。
ここは、魚が美味しいところだとヘンリックが教えてくれた。
さっかなーさっかなーさっかなーはどこだー?
市場で魚が売られていた。
まさかあれを獲ったりは出来ないなー。
ドロボーになっちゃうもんなー。
と、思って見ていたら、薄汚れた猫が魚を見ていた。
市場のおじさんがそれに気がついて
「また来たのか?お前にはあげられないよ。これは売り物だからね。」そう言ってしっしっと手を振って追い払っていた。
追い払われた猫は弱々しく去って行く。
可哀想にお腹が減ってるんだな。
ブルーノはその猫を追いかけた。
追いかけた先の路地裏でその猫が倒れていた。
「お前、お腹が減ってるのかにゃ?」そう声をかけてみた。よく見るとその猫の首には魔力を使えなくする首輪がはめられていた。
「お前、聖獣かにゃ?」
猫は首を縦に振ってそうだと身振りで答えた。
「オレの背中に乗れるかにゃ?」そう言ってブルーノはその猫を背中に乗せて泊まっている宿に連れて行った。
ちょうどアリーナたちも帰って来ていた。
「ヘンリック、この子の首輪外してほしいにゃ。市場の近くで倒れていたにゃ。」
「どれどれ、見せてごらん。」
ヘンリックは外してしばらくその首輪をみていた。
「お腹が減ってるみたいなんだにゃ。何か食べさせて欲しいにゃ。」
「わかったわ。」
アリーナはご飯をあげてみる。
猫は恐る恐る食べ始めた。
「ここは大丈夫にゃ。誰もいじめないにゃ。」
「そうだよ。安心してお食べ。」
ご飯を食べ終わった猫は今度は眠そうにしていた。
「ここで寝ていいよ。」アリーナはソファにクッションを置いて猫をそれに乗せた。
そしてすぐに猫は寝てしまった。
「随分疲れていたんだね。回復魔法かけてあげようね。」ヘンリックは魔力を使った。
「この子は聖獣だにゃ。どうしてあんなところでお腹すかしていたんだろうにゃー?あんな首輪着けらてにゃ。」
「何処で見つけたの?」
「市場の近くの路地裏だにゃ。」
「どうしてだろうねぇ?起きたら聞いてみよう。」
「この子はオレと同じところで生まれた聖獣だと思うにゃ。」そうブルーノが呟いた。
3人?は猫が静かに見守った。
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猫は次の日の朝になって目が覚めた。
ブルーノは猫に「気分はどうだにゃ?お腹減ってないかにゃ?」と聞いた。
猫は「気分はすごくいいにゃん。ちょっとお腹は減ったにゃん。」と小さい声で言った。
ブルーノはアリーナに「あの子にご飯あげて欲しいにゃ。」そう言ってご飯を貰った。
ブルーノと猫は2匹で食べた。
「少しは元気になったかにゃ?」
「うん。ありがとうにゃん。」そう言った。
「お前は聖獣だろう。どうしてこんなところにいるんにゃ?ご主人はいないのかにゃ?」そうきいてみた。
猫は元々使い魔として一人暮らしのお婆さんと暮らしていた。優しいお婆さんだった。ある日、お婆さんは具合が悪くなり病院に入院してしまった。猫は毎日病院まで行った。
だけど、お婆さんが亡くなってしまった。
遠くに住んでいる息子という人がやって来てお婆さんの葬儀が終わるとお婆さんの家を整理して売ってしまった。そして、その息子は連れて行く時に聖獣だと知られてはいけないからと首輪をつけた。しかし、本当は連れて行く気は無かった。息子は船に乗って行ってしまい猫はそのまま港に置いてけぼりにされてしまった。首輪がついていれば追いかけて来ないと思ったのだろうか。
猫は捨て聖獣になってしまったのだ。
行くところもない、聖獣の力も使えない、普通の猫と違い狩りも出来ない。仕方なくそのまま、港の市場でウロウロしていたという。
聖獣は使い魔の主人が亡くなった場合その関係は消滅してしまい付けてもらった名前は忘れてしまう。だからこの猫は今は名前が無い。
アリーナは「その息子って酷い人だね?なんとかならないの?」と怒った。
「何処の誰か知らないからにゃ。まぁ、わかったとしてもそんなヤツのところへは行かない方がいいにゃ。」
ヘンリックは「そうだね。まずは、お風呂に入るかい?随分汚れているよ。」
ブルーノは「濡れたら可哀想だにゃ。ヘンリック申し訳ないけど、浄化で綺麗にしてあげて欲しいにゃ。」
「そうだね。じゃあブルーノも一緒に浄化しようね。」
ピカッ!!ピカッ!!
「どう?綺麗になったかな?」
すると、あの汚れていた猫は毛が真っ白でふわふわになった。痩せてはいるがとても綺麗な猫になった。目はブルーだ。
アリーナは「あらーとても綺麗だわ。うふふっそれに美人さんね。」
ブルーノも猫を見て綺麗だなーって思った。
でもちょっと恥ずかしくて口に出せなかった。
「これからどうしようね?このまま港には置いて行けないよね?」ヘンリックが言った。
「生まれた所に帰る?」アリーナが聞いた。
「それは無理だにゃ。今までご飯を貰っていたヤツが野生にはなれないにゃ。」ブルーノはそう言った。
「私はまた誰かと暮らしたいにゃん。もう、ひとりにはなりたく無いにゃん。」そう悲しそうに猫が言った。
「じゃあ、うちの子になる?」アリーナが言った。「ねぇヘンリックいいでしょう?」
「僕は構わないよ。うちの子になるかい?無理に使い魔にはならなくていいからね。」
「いいのかにゃん?嬉しいにゃん。」
「ブルーノもいいよね?」
「オレもいいにゃ。お前人型になれるかにゃ?」
「なれるにゃん。」
「アリーナ、この子の服を用意してあげてにゃ。」
「わかったわ。うふふ、後で買いにいきましょうね。」
アリーナは女の子の世話ができて少し嬉しかった。
数日が過ぎ、グラン国に帰る日になった。
アリーナ達は港で船に乗る。
もちろん、ブルーノとあの子も一緒だ。
ふたりは人型で船に乗る。
あの子はアリーナに可愛い洋服を買ってもらってとても嬉しそうだ。
ホワイトシルバーの長い髪、ブルーの瞳、スタイルも良く顔も可愛らしい。
ただ、笑うと尖った八重歯が少しだけ見える。
ブルーノはあの子は人型も綺麗なんだなーと
ぽーっとして見ていた。
オレが連れて来たんだからちゃんと守らないといけないな。
甲板であの子が海を見ていた。海風が長い髪を乱す。
ブルーノは
「ここは寒くないかにゃ?」
「少し寒いけど、海って広いんだにゃん。見ていて飽きないにゃん。」
「夕方はもっと綺麗だにゃ。」
「そうなのかにゃん?」
「夕日で赤くなるにゃ。後で見れるにゃ。さあ、中に入ろうにゃ。」
ブルーノはあの子の手を繋いで連れて行く。
それをアリーナとヘンリックは見ていた。
「あのふたり、いい感じじゃない?」
「そうだねー。仲がいいよね。」
「ヘンリック。私ね、せっかくうちの子になったんだから、あの子を名前を呼んであげたいなって思うんだ。どうすればいいのかな?」
「使い魔にするのが手っ取り早いけど…。それ以外は…わかんないね。」
「ブルーノは知っているのかな?」
「さぁどうかなー。」
「あの子はブルーノと同じ山の生まれなんでしょ?そこってホワイティスの領地にあるの。
ヘンリックは知ってた?」
「それは知ってたよ。帰ったら、お義父さんに聞いてみようか?」
「それいいかも?」
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船が港に着いた。
ここからは馬車に乗り換える。
ヘンリックとアリーナは外交官夫妻として振る舞うため聖獣たちは従者と侍女の姿で馬車に乗り込む。
あの子は今まで長旅をしたことがないので馬車は辛いものになった。
「大丈夫だかにゃ?気持ち悪くないかにゃ?少し横になった方がいいにゃ。」
ブルーノはあの子につきっきりで世話をしている。
「ヘンリック。あんまり当てにしたらいけないのは知ってるんだけど…なんとかしてあげてほしいな。」
「うん。いいよ。光を外に漏らさないように窓のカーテンを全部閉めてくれるかい。」
「わかったにゃ。」
ピッカー!
「どうだにゃ?よくなったかにゃ?」
「ありがとうにゃん。スッキリしたにゃん。すごい魔法だにゃん。」
「この魔法は誰にも言っては駄目だからね。絶対に内緒にしてね。」アリーナはあの子にそう言った。
「わかりましたにゃん。」とにっこり笑った。
「明日にはお家につくからね。そうしたらあなたに必要な物を揃えないといけないわね。」
「そうだね。寝るのはベッド派?籠派?」
「籠でいいですにゃん。」
「お部屋もほしいよね?そうしたらベッドは欲しいでしょ?」
「贅沢はいいませんにゃん。」
「ブルーノだって部屋を持ってるんだから。いいのよ。」
「そうにゃ。オレも部屋をもらったにゃ。」
「そうなんですかにゃん?夜はベッドでご主人と寝ていたんですにゃん。お昼寝は籠でしたにゃん。私に部屋はなかったですにゃん。」
「ブルーノの隣の部屋が空いてるからー部屋はそこにしてベッドを置いてーお洋服を入れるクローゼットも欲しいわね。」アリーナはひとりで考えている。
それをヘンリックはニコニコして見ていた。
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屋敷に着いた。
「疲れたにゃー。」ブルーノはすぐ猫になった。
「そうね、今日は早く休みましょう。」
「あの子の寝るところは?」
「あら、どうしましょ?」
「私はこのソファでいいですにゃん。」あの子も猫になった。
「そうはいかないにゃ。オレの部屋で寝たらいいにゃ。こっちにゃ。」そう言って部屋へ案内をする。
「いいんですかにゃん?」
「いいんにゃ。」
ふたりは部屋に行った。
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「立派なお部屋だにゃん。」
「アリーナが用意してくれたんだにゃ。」
「すごいにゃん。ブルーノさんはアリーナさんに大切にされてるんだにゃん。」
「そうだにゃー。オレはアリーナの使い魔だからにゃ。」
「そうなんだにゃん。」
「そこのベッドはふかふかだからそこに寝たらいいにゃ。」
「ブルーノさんはどこで寝るにゃん?」
「オレはソファがあるにゃ。これもふかふかだからいいにゃ。」
「いいのかにゃん?」
「いいんだにゃ。」
そして2匹?ふたりは休んだ。
次の日、ヘンリックは仕事で王宮へ行った。
屋敷ではアリーナがあの子のためにベッドやクローゼットなどの手配をしていた。
ブルーノは猫に屋敷を案内していた。
客間、応接室、書斎、食堂そして厨房をまわる。
「ずいぶん大きなお屋敷ですにゃん。」
「そうだにゃ。次は庭だにゃ。」
2匹?ふたりは庭に出た。
花壇には花が咲いて木も生えている。
「とてもいいところですにゃん。」
「気に入ったかにゃ?」
「ええとても気に入りましたにゃん。」
「そうか、よかったにゃ。」
木下でひと休みをする。
「今度オレの友達を紹介するにゃ。」
「友達ですかにゃん?」
「そうにゃ。友達にゃ。」
「そうなんですかにゃん。」
そして、ブルーノは友達や黒猫の話をした。
猫はブルーノの話をきいていた。
「ブルーノさんは優しいですにゃん。」
「そんなことはないにゃ。」
「黒猫さんも助けたし、私も助けられましたにゃん。」
「当たり前のことをしただけにゃ。」
褒められたので少し照れていた。
人型だったら顔が赤くなっていただろう。
そして、「ご飯だよー。」とアリーナの声がした。
ブルーノたちは食堂へ行ってご飯を食べた。
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少しして、ブルーノはひとりで王宮に向かった。第一王子のところへ向かう。
抜け道を通って王宮の庭に出た。
少し離れたところで、ヘンリックとお父さんがいた。ヘンリックの手にはあの子に着けられていた首輪があった。
なんの話をしているのかな?
まぁいいかー見つかると面倒だしな。
第一王子の所へ急いだ。
「やぁ、白猫、久しぶりだね?」
「遠くにお出かけしてたからにゃ。」
「あーそうか、ご主人と出かけていたんだね。」
「白猫さん、こんにちは。」黒猫が挨拶をする。
「元気だったかにゃ?」
「はい。元気でした。」
「今日はクッキーがあるよ。食べるかい?」
「もちろん食べるにゃー。」
「さあ、お食べ。」
食べ終わるとブルーノはグリード国の港でのことを第一王子に話をした。
その時の聖獣を連れて来たことも話した。
「捨てられた聖獣か。それは可哀想だったね。」
「アリーナがうちの子にするっていうから連れてきたにゃ。今度、紹介してもいいかにゃ?」
「ぜひ連れて来てくれ。私もその聖獣に会ってみたいな。」
「とても綺麗な猫にゃ。人型になってもとても綺麗なんだにゃ。」
「ふ〜ん。それは楽しみだ。」
「連れて来たらご馳走をだしてにゃ。」
「もちろんだよ。歓迎するよ。」
第一王子はにこにこしてブルーノの頭を撫でた。
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ブルーノは帰ると猫を探した。
その時に、あれ?あの子は名前が無かったな
呼ぶときはなんて言えばいいんだ?
オレが勝手に付けるわけにはいかないよなー
だってオレが付けたらそれは……。
猫はアリーナと部屋にいた。
ベッドやクローゼットやソファが備え付けられていた。
そして、洋服や靴を見ていた。
「アリーナ、ずいぶん楽しそうだにゃ。」
「うふふっ。私には女の子の兄弟いないから
こうやってお世話するのが夢だったんだー。」
「そうかにゃ。よかったにゃ。」
「ふふっ。」
「私も嬉しいにゃん。」
「それはよかったにゃ。」
アリーナも猫も嬉しいなら良いことだと思った。
夕方になってヘンリックが帰って来た。
「お帰りなさい。」
「お帰りなさいにゃん。」
「おかえりーにゃ。」
みんなでお出迎えをする。
さて、そろそろご飯の時間だ。
みんなでご飯を食べる。
ヘンリックが
「今日王宮でお義父さんにあったよ。」
「へぇーこっちに来ていたの?」
「そうみたいだよ。明日あたりここに来るかもね。」
「ふーん。」
「連れて来た子に会いたいらしいよ。」
「どうしてにゃ?まさか連れて行くなんてしないよにゃ?」
「それはしないよ。ブルーノがドゴール山でその子が生まれたって言ってたから伝えたんだ。だから会いたいんじゃないかな?そこはお義父さんの領地でしよ?」
「そうだったにゃ。それならいいにゃ。」
「へぇー。」アリーナはブルーノを見ていた。
今夜はブルーノと猫はそれぞれのお部屋で休んだ。
ブルーノは眠れなかった。
名前なーやっぱり無いと呼べないよなー
すると、ブルーノの部屋に猫が来た。
「どうしたにゃ?眠れないのかにゃ?」
「ひとりでは寂しいですにゃん。今日もここにおいて欲しいですにゃん。」
「そうかー寂しいのかにゃ。じゃあここで寝ていいにゃ。」
「ブルーノさんは?」
「大丈夫にゃ。こっちのソファがあるにゃ。」
「ごめんなさいにゃん。」
「いいんだにゃ。」
そして今日もブルーノの部屋で眠った。
2日後、アリーナの父ホワイティス伯爵がやって来た。
「こんにちは」
「お父様、いらっしゃい。」
「アリーナ、聖獣を連れて来たんだって?」
「ええ、そのままにはできなくて。いけなかったですか?」
「そんなことはないよ。よかったと思うよ。」
「お父様が連れて来た子に会いたいとヘンリックが言っていたけど。」
「そうだよ。ちょっと話をしたいんだけどいいかな?」
「今、連れてきますね。応接室で待っていて。」
応接室にブルーノが猫が一緒にやって来た。
アリーナはお茶の用意をする。
「こんにちは」
「いらっしゃいにゃ。」
「いらっしゃいませにゃん。」
「私はアリーナの父でマーチス・ホワイティスといいます。あなたがグリード国の港にいた聖獣ですね?」
「はい、そうですにゃん。初めましてにゃん。」
「あなたはグラン国のドゴール山の生まれだと思うけど、どうしてグリード国にいたのかな?」
猫が話始めた。
「小さい頃に山で人間に捕まって檻に入れられて何処かに行く途中で檻から落ちたんですにゃん。それで私は逃げて走っているうちに疲れて近くにあった箱の中で寝てしまったんですにゃん。気がついたら船に乗っていて着いたのがあの港だったんですにゃん。私がお腹が減ってふらふらしていたところをお婆さんに拾ってもらったんですにゃん。お婆さんは一人暮らしでとても可愛がってくれて。私も恩返しがしたくて使い魔になったんですにゃん。……………。」
「そうだったんだね。辛かったね。」
「オレと同じだったんだにゃ。」
「そうだね。年齢もブルーノと同じぐらいだから、君たちを捕まえたのは同じ密猟者だと思うよ。」
「そいつらは捕まったんだよにゃ?」
「あぁ、捕まえたね。ヘンリック君のお父さんがね。」
「あの時にいたのかにゃ?」
「あぁ、いたねー。」
「どうして我が領地の聖獣がグリード国にいたのかわかったよ。話を聞かせてくれてありがとう。」
「どういたしましてにゃん。」
「それでね、君が付けていた首輪なんだけどね一般禁止魔道具で使ってはいけない物だったんだよ。」
「そうだったんですかにゃん?」
「アレは、誰に付けられたの?」
「アレはお婆さんの息子?っていう人ですにゃん。」
「何処に行ったかわかるかい?」
「船に乗って行っちゃったのでわからないですにゃん。」
「そうかい。船ね。」何かを考えているようだ。
「教えてくれてありがとう。」と頭を撫でた。
それをブルーノは目を細めじっと見た。
アリーナはそれを見ていた。
「もう、いいかにゃ?」
「あぁいいよ。」
「行こうにゃ。」
「はいですにゃん。」そう言ってブルーノは猫を連れてさっさと行ってしまった。
アリーナは
「お父様なんか尋問していたみたいだったわ。」
「まぁ、仕事だからねぇ。」
「仕事なの?」
「半分はね。」と笑った。
「あの、猫に会いたかったけどブルーノの様子も見たかったんだよね。」
「どうして?」
「ブルーノはあの猫に恋してるみたいだってヘンリック君が言っていたからね。」
「そうなのよ。さっきお父様があの子の頭を撫でた時にブルーノ、なんか変な顔してたの。目を細くして。それにさっさと連れて行ったでしょ?」
「そうだったね。」
「ブルーノにその自覚は無いと思うけどね。」
「そうかなー?」
あの、やんちゃな聖獣が恋ねー。
まぁそんな年頃だしな。
と父は思った。
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夕方、ヘンリックが帰ってきた。
「ただいまー。」
「お帰りなさい。」
「お帰りにゃ。」
「お帰りなさいにゃん。」
「お帰りなさい。」父はまだいた。
「お義父さん、来ていたんですね?」
「そう、まだいたよ。」
「じゃ、応接室でいいですか?」
「そうだね。ブルーノもちょっとおいで。」
「なにかにゃ?」
3人は応接室で話をした。
「あの子のことでブルーノに聞きたいんだけどね。いいかい?」
「なんだにゃ?」
「ブルーノは聖獣の名前はいつ付けるか知っているかな?」
「使い魔になる時と番になる?とき?だったにゃ」声が小さかった。
「知っていたんだね?」
「それはオレは聖獣だからにゃ。」
「あの子はそれを知ってるかな?」
「多分知らないと思うにゃ。小さい時に山から出たんだからにゃ。オレは山に戻ってからいろいろと教わったしにゃ。」
「そうなんだね。ブルーノはあの子に名前を付けてあげたい?」
「それは…それは…付けてあげたい…けど…。そういうのは…オレだけでは…勝手に決めちゃいけないにゃ。ちゃんと意思をきかないとだめにゃ。」もじもじしている。
「ブルーノは本当にいい子だね。」とお父さんが頭を撫でて言った。
ヘンリックは黙って聞いていが、
だったらあの子に直接聞けばいいんじゃないかな?」
「オレでいいのかにゃ。オレはまったくぜんぜん自信がないにゃ。」
「いつも一緒にいるし仲良しじゃないのかい?」
「それはそうだけど…。」
「それならアリーナにきいてもらおうか?」
「アリーナにかにゃ?」
「そうだよ、女の子同士だから話しやすいでしょ?」
「そうかにゃ?」
「アリーナにまかせてみようよ。」
「いいのかにゃー?」
さて、どうなるのかな?
次の日、ブルーノは猫を連れて王宮に行くことにした。
「今日はオレの友達のところへ行くにゃ。」
「友達ですかにゃん?」
「隠し道路を行くけどこの道は内緒だからにゃ。」
「内緒ですかにゃん?内緒なのにいいのですかにゃん?」
「お前は特別だからいいんにゃ。」
「特別にゃん?」
王宮の庭に出た。
「すごいところですにゃん。もしかしたらここは王様がいるところですかにゃん?」
「そうだにゃ。」
「こんなところに友達がいるのですかにゃん?」
「いるんにゃ。」
そして第一王子の所へやって来た。
「やあ、白猫待っていたよ。」
「来てやったにゃ。」
「そちらの猫はブルーノのうちの聖獣だね?」
「そうにゃ。まだ、名前は付いてないからー
お嬢さんと呼んでいいぞ。」
「初めまして、お嬢さん。私はこの国の第一王子です。よろしくね。」
「私は、名前の無い猫ですにゃん。よろしくお願いしますにゃん。」
「この子は私が世話をしている黒猫だよ。」
「黒猫さん、初めましてにゃん。」
「お嬢さん、初めまして。」
「黒猫さんは、可愛いですにゃん。」
「ありがとうございます。お嬢さんは綺麗です。」
黒猫とお嬢さんは仲良くなった。
「さあ、ご馳走を用意するよ。お嬢さんは何が好きかな?」
「私はお魚とお菓子が好きですにゃん。」
「それでは、お魚とお肉とお菓子を用意しようね。」
「ご馳走〜うれしいにゃ。」
「ありがとうですにゃん。」
「ねぇ、白猫。お嬢さんに名前はつけてあげないのかい?」
「名前は勝手に付けたらいけないにゃ。」
「そうだったね。呼ぶ時はどうしてるのかな?」
「いつも近くにいればいいんにゃ。そうすれば別に呼ぶこともないにゃ。」
「それはちょっと不自由だね。」
「お嬢さん、名前が無いと困らない?」
「ちょっと、困りますにゃん。」
「そうだよね?お嬢さんは名前を誰に付けてもらいたい?」
「私はいつも一緒にいるブルーノさんに付けてもらいたいですにゃん。」
「そうか、ならいい名前をつけてもらわないとね。ねぇ白猫。」
「か、考えとくにゃ。」ブルーノはもじもじする。
コイツはその意味知ってるのか?簡単じゃないんだぞーとブルーノは思った。
「さあ、ご馳走の用意ができたよ。お食べ。」
「いただきまーすにゃ。」
「いただきますにゃん。」
ふたりは仲良くご馳走を食べる。
それをニコニコしながら第一王子が見ている。
「こっちのお肉もおいしいにゃ。食べろにゃ。」
ブルーノはお嬢さんにお肉を分けてあげた。
「本当だにゃん。美味しいですにゃん。じゃあこっちのお魚を食べてくださいにゃん。」
お嬢さんはブルーノにお魚を分けてあげた。
第一王子はそのやり取りを微笑みながら見ていた。食べ物を分け合うのは愛情の表しというが…。どうやら、白猫はお嬢さんに恋をしているようだな。お嬢さんも満更でもない様子だ。
「お腹いっぱいにゃー。」
「私もですにゃん。」
「それはよかった。今度来るときも用意しよう。」
「そうだにゃー今度はお魚を多くしてくれにゃ。」
「わかった。お肉じゃなくてお魚だね?」
「そうにゃ。お魚にゃ。」
「ふふっわかったよ。」
「それじゃーオレたちは帰るにゃ。」
「またおいで。」
「おお、また来てやるにゃ。」
「ごちそうさまでしたにゃん。」そう言って2匹?ふたりは帰って行った。
ふ〜んあの白猫がね…。
ちょっと揶揄うつもりで言ってみたけど…。
近いうちにお嬢さんに名前がつくかもしれないな。白猫、楽しみにしてるよ。
第一王子は聖獣の「名前を付ける」その意味を知っていた。
だんだんとブルーノの周りには「ブルーノの恋」を応援する人が増えていく。
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ブルーノは王宮を出て家に帰る前に寄り道をすることにした。
首都にある公園で少し高いところにある。
そこには、見晴し台があり遠くまで見ることができる。
そこに、ブルーノは猫を連れて登った。
「大丈夫か、疲れてにないかにゃ?」
「大丈夫ですにゃん。」
「ここからドゴール山が少し見れるんにゃ。」
「そうなんですかにゃん。」
1番高いところに着いた。
「北の方を見てみろにゃ。あの雪がある山だにゃ。ここからだと小さいにゃ。」
「見えましたにゃん。あれがドゴール山…。」
「オレたちが生まれたところにゃ。」
「そうですにゃん。私の生まれたところですにゃん。」しばらく猫はそれを見ていた。
「お父さんの領地だからお願いすれば行くこともできるにゃ。」
「そうなんですかにゃん?」
「お前が帰りたいなら、お父さんにお願いして連れて行ってもらえるにゃ。どうするにゃ?」
「…私はよく覚えてないですにゃん。特に帰りたいとかは思いませんにゃん。」
「そうか、そうなんだにゃ。ちょっとオレ安心したにゃ。」
「……。」
「この間、お父さんが来た時にお前が連れて行かれちゃうと思ったんにゃ。お父さんはそんなことはないって言っていたけど、お前が帰りたいって言ったらきっと連れて行くだろうと思ったんにゃ。」
「私は帰らないですにゃん。」
「そうか、オレはお前とずっといたいんにゃ。」
「私もですにゃん。」
そこに風が吹いた。
「ところでさっきアイツが名前の話したにゃ。オレが名前を付けていいのかにゃ?」
「お願いしますにゃん。」
「その意味をお前は知ってるのかにゃ?」
「知っていますにゃん。私は聖獣ですにゃん。だからブルーノさんに付けてもらいたいんですにゃん。」
「えぇ?ほんとーにかにゃー?」
猫が頷く。
「わ、わかったにゃ。いい名前を考えるにゃ。」
「はいにゃん。」
「そ、そろそろ帰るにゃ。」
「はいですにゃん。」
ブルーノは
うわぁーほんとう?どうしよどうしよー!!
ドキドキした。
ねぇブルーノ、これって相思相愛じゃないの?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その晩、こっそりとブルーノはヘンリックに猫の話をした。
ヘンリックは喜んでくれた。
そして、アリーナに伝えてくれた。
「ブルーノよかったじゃない。嬉しいわ。」
「そうだね。よかったね。」
「いい名前考えてあげてね。」
「そうだにゃ。考えるにゃ。」とブルーノはもじもじとしていた。
ヘンリックが
「実は、アレン王子の立太子と結婚のお祝いでブリーズ国に行くことになったんだ。明後日には出かけるけど、もちろんみんなもだよ。」
「じゃあ、ちょっと色々と考えなきゃね?」とアリーナがヘンリックに何かを耳打ちしている。
ヘンリックはそれを聞いてうんうんと嬉しそうに頷いてる。
ブルーノにはよくわからなかったけど、
ふたりが喜んでくれて良かったと思った。
ブリーズ国へ
ブリーズ国へ行くには通常、馬車に乗って船に乗って10日ほどの日にちがかかる。
ブリーズ国の第一王子外数名を呪いから解き、逃亡中の魔女を捕まえたグラン国はその後ブリーズ国と友好を結び交流することになった。
転移魔法のゲートもお互いを行き来できるように設置されブリーズ国の働きで他国のゲートも使えるようになった。
おかげで、ブリーズ国には1日で着くようになった。
一度に大人数での移動は出来ないが、ヘンリックたちぐらいなら大丈夫だ。
ブルーノとあの子は人型になってついて行く。
ゲートの入り口にやって来た。
「これがゲートかぁ。」
「大人数は移動出来ないんだよ。」
「そうなんだねー。」
「馬車ごとなんて楽でいいにゃ。」
「途中で休憩するよ。」
「ご飯とおやつは欲しいもんにゃ。」
「そうだね。」
4人は大きな円のの真ん中に馬車に乗って進む。そして光に包まれて消えていく。
次の日、ブリーズ国に到着した。
到着した所に、クラークが迎えに来ていた。
「お久しぶりです。ヘンリック殿、ブルーライト夫人、ブルーノ。ん?このお嬢さんは?」
「お久しぶりです。この子はうちで世話をしている聖獣です。」
「そうですかー。なんとも可愛らしいお嬢さんですね?」とブルーノを見て言う。
「そうだろう可愛いだろう?」とブルーノが言った。
お嬢さんは顔が赤くなって「初めまして。」とご挨拶をする。
遅れてアリーナも「お久しぶりです。」とご挨拶をした。
「まずは王宮までご案内します。」
一行はクラークの案内で王宮に行った。
王宮では、侍女に案内され、「こちらの部屋と隣の部屋をお使い下さいね。何かありましたらお呼びください。」と言われた。
「お腹へったにゃー。」とブルーノが言うと、
「お食事をお持ちしますね。」と言って出て行った。
「ブルーノ、お行儀悪いよ。」
「だってお腹減ったんだにゃ。」
「さっきおやつ食べたじゃない。」
「あれだけじゃ足りなかったんだにゃ。」
「ふふっ。」そのやり取りをみてお嬢さんは笑った。
やがて食事が運ばれてきて、ブルーノは自分のお皿からお嬢さんに分けてあげた。
「これはお魚だから、やるにゃ。」
「ありがとうにゃん。じゃあこっちはブルーノさんにあげるにゃん。」と肉を分けてあげた。
それをアリーナとヘンリックは微笑ましく見ていた。
「食べたら少し休もうね。」
「隣の部屋はブルーノたちが使っていいよ。」
「いいのかにゃ?」
「王宮のベッドにソファだよ。きっとウチよりフカフカだよ。」
「そうかー?じゃあ遠慮なく使ってやるにゃ。」
「ご飯の時は呼ぶからね。」
「わかったにゃ。」
隣の部屋で2匹の猫がベッドでポンポンと弾んで楽しそうに遊んでいた。
ヘンリックとアリーナはそんな2人のために
ある物を用意していた。
「これ、気に入ってくれるかな?」
「きっと、気に入ってくれるよ。」
嬉しそうにそれを見ていた。
明日はアレン王子の立太子式と祝賀会。
明後日はアレン王子の結婚式と祝賀会。
明日から忙しいぞ。
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今日はアレン王子の立太子式が行われる。
そこは神殿の祭壇。
アリーナたちは招待客として見守る。
ブルーノもお嬢さんも一緒だ。
式の途中ブルーノは周りを見渡した。そこには、お父さんとお母さん、ディビッド、ヘンリックのお父さんとお母さん、ビルバーグがいた。そして、第一王子と黒猫もいた。
あれ?なんでだろうな。
「アリーナ、お父さんがいるぞ。どうしてだ?」
「招待されたんだよ。」と小さい声で答えた。
「お父さん、見たことない服きてるにゃ。」
「あれ?本当だ?後で挨拶にいこうね。」
式が終わり今度は王宮で祝賀会が行われる。
王宮まで馬車で移動をする。
「お父さんがいたにゃ。知っていたのかにゃ?」
「言って無かったかな?お父さんたちも招待されていたんだよ。」
「第一王子もいたにゃ。アイツも招待されていたのかにゃ?」
「そうだね。グラン国の代表として招待されていたはずだね。」
「アイツはすごいヤツだったんだにゃ。さすがオレの友達だにゃ。」
「そうだね。」
王宮に到着した。
祝賀会場は王宮の大ホールで行われる。
まずは、王族にご挨拶をする。
人が多くて先が見えない。
すると、ヘンリックを呼ぶ声がした。
声の方を見るとお父さんたちがいた。
声の主はもちろんビルバーグ、ヘンリックを見つけるのは得意だ。
ビルバーグは走ってやって来た。
「あっ、兄上。」
「おぅ、ヘンリック久しぶりだなー。」と言ってヘンリックに抱きついた。
それを苦笑いで家族は見ていた。
その後、みんなで挨拶を交わした。
「その子が例の聖獣さん?」アリーナの母が言う。
「そうなの。可愛いでしょう?」
「えぇ、とても可愛いわ。」そう言いながらブルーノを見る。
「そうにゃ。可愛いんだにゃ。」ブルーノが答えた。
お嬢さんは顔が赤くなった。
「はじめましてにゃん。名前はまだ無い聖獣ですにゃん。」そう挨拶をした。
「まぁ、ブルーノ。名前付けてあげなさい。」ブルーノはもじもじと顔が赤くなった。
「今、考え中だにゃ。」
「まぁ、そうなのね。早くしてあげなさいね。」
「わかったにゃ。」
「ねえ、名前なんてすぐに付けてあげれるでしょ?」ディビッドが言った。
「簡単なことじゃないんにゃ。」
「ねぇどうして?名前でしょ?」
「子供には教えないにゃ。」
「ちぇーっ。」
「お父様、その衣装は?見たことないけど?」
「これかい?これは、その、役人だからその制服なんだよ。」
「お父様の役職ってなんだっけ?」
「まーいわゆるーあー国の役人?」
「ふーん。とてもかっこいい制服ね?見たことないけど。」
「そうかー?そうだったかなー?」ちょっと困ってる。
そこにヘンリックが
「まぁ、王族へ挨拶が終わったらゆっくり話をしようね。」と言った。
アンダーソン一家、ホワイティス一家、ブルーライト一家が揃って王族へ挨拶をすることになった。
国王が
「ようこそ、ブリーズ国へ。貴方たちを歓迎いたします。そして、我が息子を助けてくれて感謝いたします。これで、我が国も安泰です。」
アレン皇太子が、
「貴方たちのお陰でこの日を迎えることが出来た。本当に感謝します。」と言った。
王妃は
「本当にありがとうございます。今日と明日、楽しんで下さいね。」
「ありがとうございます。」と一同が答えた。
緊張が解けみんなが笑顔になる。
国王の合図で音楽が流れる。
ダンスをする者、歓談をする者、そして食事をする者がいてとても賑やかだ。
もちろんアリーナとヘンリックはダンスをする。
ブルーノはその隙をみてお嬢さんを連れてご馳走が並ぶテーブルに行く。
それをディビッドやホワイティス伯爵夫妻が追いかける。
「ご馳走だにゃ。一緒に食べようにゃ。」
「はいですにゃん。」
聖獣のふたりはそのままでも目立つ。
なんせブルーノとお嬢さんは美男美女だから。
「お行儀よく食べなさい。」とお母さんが言った
「ちゃんとナイフとフォーク使ってるにゃ。」
「ブルーノ、ほら、こぼしてるよ。」デェビッドも。
そこに、正装を着た青年と数人がやって来た。
第一王子と側近だった。
「こんばんは、ホワイティス夫妻。」
「第一王子にご挨拶申し上げます。」
「やっぱり来ていたね。君は、ディビッドだったね。」
「はい。第一王子にご挨拶申し上げます。」
「ところで、ホワイティス卿。この間の首輪の件だが、どうなった。」
「はい。首輪の入手先の確認が出来たところです。購入者リストも入手済みです。あと、3日〜5日ほどで踏み込みが出来ます。」
「そうか、引き続きよろしく頼むぞ。」
「はっ。」
そして、ブルーノを見て、
「やぁ白猫、元気かい?」
「お前も来てたんだにゃ。さっき見たにゃ。」
「私も見ていたよ。白猫たちは目立つからね。」
「そうかー?オレたち大人しくしてたんだけどにゃ?」
「人型のお嬢さんはこんなに綺麗なお嬢さんだったんだね?」
「そうなんだにゃ。綺麗だろう?」
「そんなことありませんにゃん。」
「そういえば、黒猫はどうしたにゃ?」
「疲れて部屋で休んでいるよ。」
「まだ子供だからにゃ。」
「あっちにお菓子があったよ。行くかい?」
「よし、みんなでいくにゃー。」
「さあ、案内しよう。」
そう言ってブルーノ、お嬢さん、ディビッドを連れてあっちに行った。
「あなた、アレいいんですか?ディビッドまで。」
「まぁ、アレはいいことにしよう。楽しそうだしね。」
「そうですねぇ。」
お腹いっぱい食べたブルーノたちは、ダンスを踊る。
ブルーノとお嬢さんがペアになって踊った。
もともと、聖獣は運動神経がいいのでちゃんと踊れた。
「楽しいにゃ。」
「はい。楽しいですにゃん。」ふたりは笑いながら踊る。
それを少し離れた所でアンダーソン公爵とホワイティス伯爵が見ていた。
「ほう、様になってるじゃないか?」
「そうなんですよ。なかなかの美男美女でしよ?」
「そうだな。でもアレが恋?信じられんな。」
「そう、アレが恋しちゃってね。」
「あの、アレがなー。ププッ。」
「私はいつまでもアレはそのままだと思ったんですがね。」と少し寂しそう。
「成長したということだな。それでも、フフッ。ハハっ。アレがなー。そうかそうかー。」
とまぁいつもの笑い上戸が…。
ヘンリックとアリーナは踊り疲れてバルコニーで休憩をする。
「疲れたー。」
「そうだね。ちょっと疲れたかな?」
飲み物を飲んで風にあたる。
「涼しいー。」
「本当だー。」
「ヘンリック、明日ね晩餐会の前にブルーノに渡そうと思うの。」
「明日だね。わかった。」
「ブルーノどんな顔するかしら?」
「ふふっ楽しみだね。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日は、昨日立太子となったアレン皇太子の結婚式だ。アレン皇太子のお相手はあの一緒に石にされていたご令嬢だ。
ふたりは美男美女。
結婚式の間ブルーノは考えていた。
「あの花嫁さんは綺麗ですにゃん。」
「そうかにゃ?普通だと思うにゃ。」
お前の方が綺麗だなんて言えないー!
言えたら?言う?言わない?ー
「わぁ、素敵ねー?」
「そうだね。でも、アリーナの方が素敵だよ。」
「フフッありがとう。」
ヘンリックは簡単に言えるのになー
オレだってもっと褒めてあげたいなー
式が終わり一度王宮に戻る。
当てがわれた部屋でブルーノたちはまたベッドやソファでポンポンしていた。
そこに、アリーナがやって来てブルーノを隣の部屋に呼んだ。
部屋にはアリーナとヘンリックがいた。
「ブルーノ、これは私とヘンリックからプレゼントだよ。開けてみて。」
「急にどうしたんたにゃ?」
貰った箱を開けるとー。
そこには、金色のブレスレットとブルーのブレスレットが並んで入っていた。
「これは、ペアなんだよ。お互いの色を着けるの。そしてこれは特別製で、猫や人、聖獣の本来の姿に変わってもそれに合わせてサイズが変化するからずっと着けていられるんだよ。」
「こんなにいい物をくれるのかにゃ?」
「あの子とペアで着けるといいわ。」
「そうか、ありがと…にゃ。」
「で、いつ名前付けてあげるの?」
「いつかはまだ…決めてないにゃ。」
「そうねー今日は?」
「今日は皇太子の結婚式だから一緒はダメだにゃ。不敬というやつだにゃ。」
「じゃあ明日は?名前は決めてあるんでしょ?」
「ちゃんと決めてあるにゃ。」
「あの子はとても綺麗な子だから昨日も凄く目立っていたの。ブルーノは気づいていた?使い魔にしたい人とかお嫁さんにしたい聖獣が沢山いると思うの。それに、まだ今はあの子は自由だし。誰かについて行っちゃうかもしれないわ。」
「それは、駄目にゃ。すっごく嫌だにゃ。」
「だったら、明日で決まりね!」
「わかった…にゃ…。」
「ねえ、ブルーノ自信を持って。」
「そうだよ。ブルーノは優しくて、強くて、こんなにかっこいいじゃないか?」
「そうかにゃ…?」
ブルーノはアリーナたちに励まされて明日決行することにした。
アリーナはちょっと強引だったかな?でも、こうでもしないと何時になるかわからないしねと思った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
祝賀会が始まった。
音楽が流れダンスが始まる。
ブルーノは少し緊張をしていた。
明日、明日、明日、あした…
「ブルーノさんどうしたのかにゃん?元気が
ないにゃん。」
「なんでもないにゃ。大丈夫だにゃ。」
「今日もご馳走ですにゃん。食べないのですかにゃん?」
「食べるにゃ。一緒に行くにゃー。」
「それこそブルーノさんですにゃん。」
ふたりは手を繋いでご馳走のテーブルまで行った。
「今日も美味しいですにゃん。」
「そうだにゃー。」
明日、明日、明日、あした…
アリーナはヘンリックとふたりを見ていた。
「ブルーノ、緊張してるのかしら?」
「そうかもね?僕だって緊張してる。」
「そうなの?」
そこへビルバーグがやって来た。
「ヘンリックー今日はダンスしないのかい?
ヘンリックたちのダンスは素晴らしいからなー。みんなに見せてよ。」
「ありがとうございます。」
「うん、これから踊ろうとしてるとこだよ。」
「どうした。元気ないなー?具合でも悪いのか?医者呼ぶか?」
「兄上、具合は悪くありません。ただ、ちょっと心配で。」
「何が心配なんだ?」
「実は……………………。」
ブルーノの恋、「明日の決行」のを話した。
「そうかーヘンリックにブルーノの緊張が移ってると。」
「その様です。」
「大丈夫だよ。アレって相思相愛なんだろ?それより、ダンス踊ったら?」
「そうですね。」
ヘンリックとアリーナはホールの真ん中までやってきて踊り始める。
ビルバーグはニコニコとふたりを見ていた。
そうか、明日決行か…。よーし、父上に教えちゃおう。そしてアンダーソン公爵へ伝わる。
アンダーソン公爵からホワイティス伯爵へ
ホワイティス伯爵から夫人へ夫人からディビッドへと…………「明日決行」が伝わって行った。
ブルーノとお嬢さんはお菓子を食べていた。
そこに第一王子が黒猫とやって来た。
「やあ、白猫、ここにいたのかい。」
「ここのお菓子は美味しいにゃ。」
「そうかい。それは良かったね。」
「黒猫は食べたのかにゃ?」
「さっき食べました。お腹いっぱいです。」
「そうか、子供は沢山食べないとにゃ。」
「白猫はまだこの国にいるんだろう?」
「そうだにゃ。あと少しいる予定だったにゃ。」
「そう。だったら西にある森に広い花畑があるらしい。今が見頃だそうだよ。一緒に行ってみるといい。」そう言ってブルーノにウィンクをした。
「そ、そうか、なら行ってやってもいいぞ。」とブルーノは少し顔を赤くした。
「明日、私は仕事があってね。一緒に行けないが楽しんでくるといい。」
「ありがとうにゃ。」とブルーノは小さな声で第一王子に言った。
第一王子はニッコリと笑ってブルーノのアタマを撫でた。そして、第一王子は呼ばれて行ってしまった。
それから、「西の森の花畑」のことは黒猫からディビッド、ホワイティス夫人、ホワイティス伯爵、アンダーソン公爵……と「西の森の花畑」が伝わっていった。
「西の森の花畑で明日決行」をみんなが知ることになる。
そして、ブルーノに目線が集中する。ブルーノがそちらへ向くととなぜか目を逸らされる。
なんだろうな??まっいいかーとブルーノは明日の事を考えながらお菓子を黙々と食べた。
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((伝達の流れ))
*(アリーナとヘンリック)「明日決行」→→(ビルバーグ)→(アンダーソン公爵)→"アンダーソン公爵夫人)→(ホワイティス伯爵)→(ホワイティス伯爵夫人)→(ディビッド)→(黒猫)→(第一王子)まで。
*(第一王子)「西の森の花畑」→→(黒猫)→(ディビッド)→(ホワイティス伯爵夫人)→(ホワイティス伯爵)→(アンダーソン公爵)→(アンダーソン公爵夫人)→(ビルバーグ)→(ヘンリックとアリーナ)まで。