春香と湊は、あの鏡について調べていた。

「生徒会長。私、旅館でこれを拾ったんですけど…」

春香は、旅館の廊下で拾った化粧道具を湊に見せた。

「かなり古いね。落ちてたの?」

「はい。それで中を見たら、鏡が光って、どこかの部屋に飛ばされたんです」

湊はそれを受け取ると、よく観察した。

「これは…」

よく見ると、紅のところに桜の花の模様が彫られていた。

「あの式神の手の甲にあった模様と同じだ」

「その鏡は、平安時代のものだ」

横で見ていた琥珀が言った。

「姿見にも何かあるかもしれない。見てみよう」

姿見を持ってきた。

「あった。同じ模様だ」

裏のところに同じ桜の花の模様が彫られていた。

「でも、平安時代に姿見なんてなかったはずだから、もっと小さいはずなんだ。手鏡みたいに」

(平安時代の人たちってよく鏡を見たのかな)

春香はそんなことを思った。

「本条さんは、誰かに会ったりしなかった?」

姿見を見終わった湊が春香に尋ねた。

「いえ、私は高嶺先生と冴島先生がくるまで、気絶してたみたいなので、誰にも会っていません」

「そっか…誰かに会っていれば、何か手掛かりになったかもしれなかったんだけど…」

「すみません。役に立たなくて…」

春香は俯いてしまった。

「大丈夫だよ。気にしないで」

落ち込んだ春香に優しく湊は言った。

「他に私にできること何かありますか?」

「そうだなぁ…この鏡について、何か書かれた本がないか姉さんに聞いてこよう。持ち主について何かわかるかもしれない。手伝ってくれる?」

「はい!」

春香は。湊の後を追った。

「人間はお人よしだな」

琥珀も後をついていった。


渚は、隼人を和室に連れて行った。

「君にはここで提灯(ちょうちん)を作ってもらいたいんだ」

「提灯?」

予想外のことに隼人は戸惑っていた。

「そう。来年の百鬼夜行の祭りで使う提灯だ。これを持って、列を作って歩くんだ」

「でも、提灯なんて作ったことがなくて…」

渚はふふっと笑った。

「何も初めから最後まで作れとは言わない。この花を入れてほしいんだ」

鬼灯(ほおずき)、ですか?」

花の形が風船のようになっている花がダンボールに入っていた。

「この花を魔除けとして提灯に入れておくんだよ。あやかしたちや悪霊に魂を奪われないように」