何はともあれ、まずはレリエさんにあれこれ説明しないといけない。
 本格的な詳細説明はこの後、ギルドに彼女を連れて行ってリリーさんなりギルド長なりにお願いするとして、簡単な説明くらいはしておこうかなー。
 
「……まず僕についてから。冒険者をしていて"杭打ち"と呼ばれています。レリエさんもそう呼んでいただければ」
「冒険者……えっ、そんなファンタジーな感じの世界なの、今って」
「僕から見れば超古代文明のほうが、よほどファンタジーですけどね」
 
 お互いにお互いをファンタジー世界の住人だと捉えてるみたいだけど、まあ仕方ないよねー。
 僕からしてみれば彼女はじめ超古代文明絡みの存在なんてロマンもいいところだけど、向こうからすれば僕らははるか未来の住人だ。これはこれでロマンチックなのだろうし。
 
 世界中の地下に眠る迷宮や、未だ人類が到達できていない未踏地域に挑まんとする僕達冒険者は今や世界の一大ムーブメントだ。
 前からそこそこ人気の職業だったのが調査戦隊の活躍と解散、それに伴う迷宮攻略法の世界的伝播によって一気に流行し始めたのが3年前。

 今じゃ自由とロマンを求めて好きに生きるべく冒険者になろうとする人達が後を絶たないって状況なんだからすごいよねー。
 そんな感じで冒険者界隈の現在を中心にレリエさんに説明すると、彼女は顎に手を当てふむふむと頷いた。
 
「なるほどなるほど? ……何万年経っても案外人類って行ったり来たりなのね。てっきりもう、宇宙にだって行ってるんじゃないかと思ったけど」
「……行けるものなの? 天体学者さんなんかは、こーんな大きな望遠鏡で四六時中空ばかり見てるけど」
「私達の時代だと割と行けたりしたわね。さすがによその星に定住するとかはできなかったけど、資源や燃料を採掘したりしてたわね」
「へえ……へえーっ!? すご、すごいよー!?」
 
 ものすごい話を聞いちゃった! ひっくり返るような心地でつい素で驚いちゃったよー!?
 星って、あの星だよね夜空に瞬いてるあの!? あそこ人行けるの!? 行けたの!? っていうか行ってなんか採掘とかしてたの、あれ石とか土とかで出来てるのー!?
 
 とんでもないな超古代文明! 本当だとしたら世界中大騒ぎになる話だよー!
 これはすごい……エウリデが古代人を欲しがる理由がちょっぴり分かっちゃうくらいすごいよー。いやまあ、それでも人を拉致して研究とは名ばかりの玩具扱いにするなんて絶対に許されないからそういうのは断固阻止するけどー。
 
「へぁー……お星様にまで行ってたんだ、昔の人ー……」
「……ちょ、ちょっと待ってあなた。ちょっとごめんね!?」
「え? ……ふわわー?」
 
 感動に浸ってるとなんかいきなり、ガシッと両肩を掴まれたよー? 敵意はないけどなんだろ。レリエさんどうしたのかなー?
 思わずビックリして固くなる僕だけど、そんなことはお構いなしとばかりに彼女は僕の肩や背中、杭打ちくんを持つ腕を触る。
 ちょっとくすぐったいし照れるしドキドキするよー! 15回目の初恋だよー!?
 
「……も、もしかして僕のこと好きですか!? もしよければ僕とお付き合いしませんか!?」
「え!? ……え? いやその、それはちょっと」
「ああああ瞬殺されちゃったああああ」
「!?」
 
 ああああフラレちゃったああああ!
 まただよー通算11回目だよー。こんないきなりさわさわしてくるから絶対脈あるよーって思ったら脈なかったよー、っていうかフラレて僕の脈がなくなりそうだよー。
 
 思わず目が潤む。いいもん僕にはシアンさんとサクラさんがいるもん、あとリリーさんとシミラ卿もー。
 この人達にはまだ告白してないからチャンスあるもん、まだ脈あるもん! だからへっちゃらだよー……
 
「…………うう」
「あ、あの杭打ち? さんだっけ。いきなり触られたから勘違いしちゃったのかな、ごめんなさいね? あの、気になることがあったからつい調べちゃって」
「気になる、こと?」
「うん、もしかして君まだ子供、それも女の子なんじゃないかなーって」
「ああああ男であることさえ否定されたああああ」
「!?」
 
 ひどすぎるよー!? 子供扱いはともかく女の子疑惑はいくらなんでもありえませんよー!?
 別に女の子に対して思うところはないっていうかむしろお付き合いしたくて堪んないけど、さすがに男の子だから女の子でしょって言われるのは心外だよー……
 
 でもケルヴィンくんやセルシスくんの言うところによると僕、とても15歳には見えないくらい幼気で童顔らしいものなー。
 クラスの友達にも時折からかわれるしー、もしかして角度によっては女の子みたいに見えちゃうところはほんのちょっぴりくらいはあるのかもしれない。
 
 うーん、でもやっぱり男の子として見てほしいよー。こんな美人な人ならなおのことー。
 せめてもうちょいガッシリめの体格に生まれたかったよーと思いながらも、僕はレリエさんに自分が男であることを主張したのでしたー。