ヴァイパーウイングはドローンの機体をガッシリとつかむと飛び始めた。どうやら獲物を捕まえた気でいるらしい。
二人はどこに連れていかれるのかと、渋い顔をしながら揺れる画面映像を見て、コーヒーをすすった。
やがて見えてきたのは小高い岩山だった。森を突き抜けてそびえる岩肌には縦にいくつも亀裂が入り、荒々しい景観を誇っている。どうやらここに巣があるらしい。
と、その時だった。
ピーーーーッ!
タケルのモニターが真っ赤に輝き、耳をつんざく警告音を発した。
へ……?
タケルは何が起こったのか分からなかった。画面内でメーターが振り切れているのだ。
「何の……音?」
クレアがけげんそうにタケルの画面をのぞきこむ。
「魔力探知機が振り切れているんだよね。壊れちゃったのかな?」
タケルは首をかしげ、キーボードをカタカタ叩きながらその原因を探す。
クレアはドローンの映像を食い入るように見つめ、その岩肌の様子を探った。
「あっ! 違うわよ! これが魔石鉱山なのよ!」
その岩肌にキラキラ光る魔石特有の輝きを見つけたクレアは、思わず両手を突き上げ、叫んだ。
「え? 魔石……? でもこの数値はこの岩山全部が魔石でもないと出ない数値なんだよ?」
「だったら、これ全部魔石なのよ!」
クレアは両手のこぶしをグッと握り、パァッと明るい顔で笑った。
「え? これ……全部……?」
タケルは信じられずに静かに首を振る。一般に鉱山というのは地層の割れ目に沿って魔石の薄い層があるくらいなのだ。山全部が魔石なんてことがあったら、とんでもない発見である。
「そう! 全部!」
クレアは呆然としているタケルの手をギュッとつかみ、嬉しそうにタケルの顔をのぞきこむ。
「や、やった……」
大発見の実感がようやくタケルに湧き上がる。
「そう! やったのよ! きゃははは!」
クレアはタケルの胸に飛び込み、ギュッと抱き着いた。
お、おい……。
タケルは混乱の中、空虚な眼差しで宙を仰ぎ見ながら、クレアの美しく輝く金髪を無意識のうちに優しく撫でる。彼女から漂う芳香が、タケルを少しだけ穏やかにした。
◇
タケルは『ダンボルちゃん一号』の遺してくれた映像を解析し、埋蔵量を推定する。その量は全人類が派手に使っても当面魔石不足にはならないという途方もない量だった。これはいわゆる『龍脈』と呼ばれているもので、何万年もかけて地中を流れてきた魔力が川のように集まってきて、ここで地上に現れて結晶化したものらしい。暗黒の森は魔物だらけで調査がされてこなかったため、今まで誰も気がつかなかったのだろう。
しかし、どうやって採掘したらいいのだろうか? あるのは分かっていてもどうやって掘り、どうやって回収するか……? とても人間が行けない所だけに難問だった。タケルは月の石を持って帰るかのような困難さに頭を抱える。
「もう、魔物に掘って持ってきてもらうしかないわね!」
クレアはクッキーを頬張りながら楽しそうに笑った。
「もう! 他人事みたいに……。魔物なんてどうやって操る……あれ……?」
この時、タケルの脳裏に召喚系の魔法が思い浮かんだ。
「呼び出して掘ってもらう……? 何にどうやって……?」
タケルは腕を組んで必死に考える。人間が行けないのならクレアの言うように魔物に頼るしかないのだ。しかし、魔物に採掘を頼んだとしてやってくれるものなのだろうか?
「絵本にゴーレムに荷物を運ばせるお話があったわよ」
クレアはクッキーを食べ終わると幸せそうに紅茶をすすった。ゴーレムというのは岩でできた魔物で、その巨体から繰り出されるパワーは超ド級、A級モンスターに分類されている。
「ゴーレムかぁ……。いいかも知れないけどどうやって言うことを聞かすんだろう? そもそも呼び出し方も分からんなぁ……」
「あら、ネヴィアちゃんに聞いたら? 彼女ならゴーレムくらい持ってそうよ?」
クレアは少しつまらなそうに言ってまた紅茶を一口すする。
「あはっ! 違いない」
タケルは早速フォンゲートを取り出すと電話した。
『んん……? うぃーす。タケちゃん、なんかあったか? ふぁ~あ』
寝起きの声がする。
「もう夕方なんだけど、寝てたの……?」
『朝までアニメ見ちまってのぉ! 今期は凄いぞ! くははは!』
「はいはい、で、相談があるんだけど……」
『あ、そう? 今から行こうか? 社長室?』
「そ、そうだけど、いつ頃つく……予定?」
すると空中にいきなりパリパリと乾いた音をたてながら亀裂が走る。その初めて見る面妖な事態に、タケルもクレアも息をのみ、身震いした。
二人はどこに連れていかれるのかと、渋い顔をしながら揺れる画面映像を見て、コーヒーをすすった。
やがて見えてきたのは小高い岩山だった。森を突き抜けてそびえる岩肌には縦にいくつも亀裂が入り、荒々しい景観を誇っている。どうやらここに巣があるらしい。
と、その時だった。
ピーーーーッ!
タケルのモニターが真っ赤に輝き、耳をつんざく警告音を発した。
へ……?
タケルは何が起こったのか分からなかった。画面内でメーターが振り切れているのだ。
「何の……音?」
クレアがけげんそうにタケルの画面をのぞきこむ。
「魔力探知機が振り切れているんだよね。壊れちゃったのかな?」
タケルは首をかしげ、キーボードをカタカタ叩きながらその原因を探す。
クレアはドローンの映像を食い入るように見つめ、その岩肌の様子を探った。
「あっ! 違うわよ! これが魔石鉱山なのよ!」
その岩肌にキラキラ光る魔石特有の輝きを見つけたクレアは、思わず両手を突き上げ、叫んだ。
「え? 魔石……? でもこの数値はこの岩山全部が魔石でもないと出ない数値なんだよ?」
「だったら、これ全部魔石なのよ!」
クレアは両手のこぶしをグッと握り、パァッと明るい顔で笑った。
「え? これ……全部……?」
タケルは信じられずに静かに首を振る。一般に鉱山というのは地層の割れ目に沿って魔石の薄い層があるくらいなのだ。山全部が魔石なんてことがあったら、とんでもない発見である。
「そう! 全部!」
クレアは呆然としているタケルの手をギュッとつかみ、嬉しそうにタケルの顔をのぞきこむ。
「や、やった……」
大発見の実感がようやくタケルに湧き上がる。
「そう! やったのよ! きゃははは!」
クレアはタケルの胸に飛び込み、ギュッと抱き着いた。
お、おい……。
タケルは混乱の中、空虚な眼差しで宙を仰ぎ見ながら、クレアの美しく輝く金髪を無意識のうちに優しく撫でる。彼女から漂う芳香が、タケルを少しだけ穏やかにした。
◇
タケルは『ダンボルちゃん一号』の遺してくれた映像を解析し、埋蔵量を推定する。その量は全人類が派手に使っても当面魔石不足にはならないという途方もない量だった。これはいわゆる『龍脈』と呼ばれているもので、何万年もかけて地中を流れてきた魔力が川のように集まってきて、ここで地上に現れて結晶化したものらしい。暗黒の森は魔物だらけで調査がされてこなかったため、今まで誰も気がつかなかったのだろう。
しかし、どうやって採掘したらいいのだろうか? あるのは分かっていてもどうやって掘り、どうやって回収するか……? とても人間が行けない所だけに難問だった。タケルは月の石を持って帰るかのような困難さに頭を抱える。
「もう、魔物に掘って持ってきてもらうしかないわね!」
クレアはクッキーを頬張りながら楽しそうに笑った。
「もう! 他人事みたいに……。魔物なんてどうやって操る……あれ……?」
この時、タケルの脳裏に召喚系の魔法が思い浮かんだ。
「呼び出して掘ってもらう……? 何にどうやって……?」
タケルは腕を組んで必死に考える。人間が行けないのならクレアの言うように魔物に頼るしかないのだ。しかし、魔物に採掘を頼んだとしてやってくれるものなのだろうか?
「絵本にゴーレムに荷物を運ばせるお話があったわよ」
クレアはクッキーを食べ終わると幸せそうに紅茶をすすった。ゴーレムというのは岩でできた魔物で、その巨体から繰り出されるパワーは超ド級、A級モンスターに分類されている。
「ゴーレムかぁ……。いいかも知れないけどどうやって言うことを聞かすんだろう? そもそも呼び出し方も分からんなぁ……」
「あら、ネヴィアちゃんに聞いたら? 彼女ならゴーレムくらい持ってそうよ?」
クレアは少しつまらなそうに言ってまた紅茶を一口すする。
「あはっ! 違いない」
タケルは早速フォンゲートを取り出すと電話した。
『んん……? うぃーす。タケちゃん、なんかあったか? ふぁ~あ』
寝起きの声がする。
「もう夕方なんだけど、寝てたの……?」
『朝までアニメ見ちまってのぉ! 今期は凄いぞ! くははは!』
「はいはい、で、相談があるんだけど……」
『あ、そう? 今から行こうか? 社長室?』
「そ、そうだけど、いつ頃つく……予定?」
すると空中にいきなりパリパリと乾いた音をたてながら亀裂が走る。その初めて見る面妖な事態に、タケルもクレアも息をのみ、身震いした。