「――ここが魔鉱じゃない鉱石が大量に眠ってると噂の、”イクッサ大坑道“だ!」
フューネスの案内で俺達はサラバンド王国の裏に聳える”イクッサ山“の中腹に来ていた。
「休憩があったとは言え山道を半日は......中々にキツかったわね...」
「結構急な山道だったのに......メツセイさんもフューネスさんも平気そうですね」
へばっている俺とホノラとは対照的に、二人はピンピンしていた。
「――――ん? ああ、俺達は同じドワーフの国、“ハントヴァック”の出身でな。その国を出入りする為にはこの山以上の険しい道を通らなくちゃならなかった訳よ」
「そうそう。この山みたいに魔獣が少ない訳じゃないからしょっちゅう襲撃を受けて」
「その度にフューネスが道ごと魔獣を吹き飛ばすから国王によく怒鳴られたなぁ! ガハハッ!!」
メツセイとフューネスは同郷なのか。
しかしドワーフの国ハントヴァックか......可能ならば是非とも行ってみたいね!
「――――さ、お話はこれくらいにして、そろそろ坑道に入るよ。誰か光源魔法を使える奴はいないかい?」
「あ、すまねえ......こんな事になるなら俺が使えるようになっておけば良かったな......」
メツセイが俺達が魔法を使えない事を察してか謝りだした。確かに薄暗い坑道で灯りが無いのは探索難度が大きく変わる。
だがしかし! 今回はそんな事もあろうかと、俺が準備してまいりました!
「メツセイさん! 大丈夫です。こんな事もあろうかとコレを持ってきました」
俺はポーチの中をゴソゴソと漁り手の平サイズの魔道具を取り出す。
「充魔式ポケットライト~」
これは魔ンドラゴラクエストの報酬で買った俺達の新しい便利アイテムなのだ!
「この魔道具は魔力を充填する事で従来の光源魔法の約1.3倍(当店比)の光が出せるそうです」
「私の大量の魔力が込められているから結構持つはずよ!」
ホノラは魔法が使えないだけで魔力の操作は出来るみたいなので、今回は魔力を充填してもらった。
坑道の中のはずなのに、外と変わらない位の光が放たれる。
「すごい魔道具があるもんだなぁ......」
「感心は後でしな! これは先頭のアタシが持とう。よし!! じゃあ迷わないようにね!」
先頭にフューネス、続いて俺とホノラ、最後尾にメツセイの並びで俺達はようやく坑道内部へと足を踏み入れるのだった。
◇◇◇◇
「ここも落盤してるのか......ホノラ、頼むよ」
「わかったわ! せーのっ!!」
道を塞ぐ大岩をホノラが殴り砕く。
「いいねー! 最高だよ!!」
どうやらこの坑道は随分と前に廃坑になっていたようで、あちこちで道が崩れていた。しかし新しく道を掘るのは 面倒なフューネス主導の元、ホノラが絶妙な力加減で落盤箇所の岩を粉々にして強引に進んでいるのだった。
木材で多少支えられているだけの粗末な通路。いつ全体が崩れてきてもおかしくはないな。
「はは......嬢ちゃんすげぇな」
「あんまり怒らせないようにしよう......」
女性二人が笑いながら突き進む後ろで、男二人は若干引きながらその後ろをついて行く。異世界の女性、恐るべし。
「グルギャァァァァ!!!!」
「キャァァァァァ!!!!」
曲がり角の先でホノラと明らかに俺達の物とは違う絶叫があがる。
「何があった!?」
「ッッ!! なんでこいつが......」
俺とメツセイが見たものは、二又の槍を持った巨大な蜥蜴だった。
「フューネスッッ!!!!」
「フューネスさんが......私を庇って...怪我を......」
ホノラに覆い被さる形で項垂れるフューネスの背中はばっくりと裂け、血が噴き出していた。
そこに大蜥蜴が止めを刺さんと槍を振り上げる。
「――――危ねぇ!!」
俺の刃が間一髪で槍を受け止める。凄いパワー...俺が押し負けそうとか、どんな冗談だよ......
「早くフューネス抱えて下がれ!! メツセイ! 回復を頼む!」
「そ、それじゃあ兄ちゃんが一人で」
「俺は大丈夫! 絶対勝ちます!」
三人が安全な場所まで下がった事を確認してから、俺は槍を弾き体制を整えた。
ナマコ神、この蜥蜴、なんだか分かるか?
『なんだか段々私の呼び方雑になってな~い? まぁ良いけど。この魔物は“蜥蜴亜人”。Cランクの中でも上位の魔物ね。硬い鱗は高い魔力耐性を持ち合わせ生半可な魔法は効かない.....って君には関係ないか!』
腹立つこのナマコぉぉぉ!! その一言が余計なんだよ。その一言で俺の心が傷付いちゃったらどーすんのって話よ。
「さてどうやって戦おうか」
よく見たらコイツも目に黒い煙が纏わりついている。傷だらけで、恐らくだが全く見えていないだろう。
降り注ぐ槍の雨を捌きつつ考えてみるが、何も有効打点が思い付かないね。
まず硬いからって火力の高い技はダメだ。万が一それで天井が崩れて生き埋めなんて事になったら笑えない。だからホノラも下がらせた。
「よし! アレで行くか......」
最っ高の作戦を思いついた。あんまり使いたく無かったけどこれしか勝つ方法がないししょうがないな。
――――
「マツル......何してるの...?」
「兄ちゃん、リザルドマンの攻撃を避けながら少しづつ攻撃してやがる!」
「でもどれも致命傷になってないわよ!? このままじゃ先に限界が来てマツルが負けるんじゃ――」
そんな会話が俺の耳に入ったので、声をかけてみる。
「あー、安心して? もう俺の勝ちだから。メツセイさん、フューネスさんは大丈夫ですか?」
「フューネスは心配ない! 上位回復薬を飲ませた!」
「ギュリィィィ!?」
お? リザルドマンの攻撃が徐々に遅くなってきたぞ? つまり俺の技が効いて来た訳だな?
「どーゆう事!? マツルはちょびっとしか攻撃してないわよ!?」
「何が起こったんだ......? 兄ちゃんまさか遂に魔法を――!」
遂に攻撃の手が止まりその場に膝をついたたリザルドマンの首に刃を当てる。
「魔法は相変わらず使えねーよ。コイツは俺に攻撃を捌かれると同時に斬られてたんだよ。全身の”血管“と”筋繊維“をな」
「剣士ってのはそんな高等技術が使えるのか!」
そりゃ、大きい二足歩行する蜥蜴の体組織なんて分かる訳が無いから適当に斬りまくったんだけどね。
因みに、これは俺の親父一番のお気に入り剣技らしく、真っ先に教えて来た。大事なのは相手を如何に無力化出来るかだ......と。
当時の俺はやってる事えぐいと思っていたから、まさか自分で使う日が来るとは......
【燈燐・葬亡牢】
「ギ――――!!」
全身から血を噴き出し、筋繊維と筋を斬られた事により崩れ落ちたリザルドマンはそのまま息絶えた。
「マツルすごーい!!!!」
後ろから勢いよく抱きついてくるホノラ。
「流石は兄ちゃんだ......まさか一人であのリザルドマンを倒しちまうとは」
驚きと感心の入り交じった表情で俺を見るメツセイ。
「――さぁ! なんとかみんな無事に生き残れたところで! 目的の鉱石集めルゲブャ!」
ヨロヨロと立ち上がり親指を上に立てるもそのまま血を吐くフューネス
「フューネスさんが血を吐いた!」
「馬鹿野郎ッ! お前が一番無事じゃねえんだから大人しく休んでやがれ!」
とまぁ唯一無事じゃなかった人が回復薬を飲み切っていなかったことが判明し大慌てで全て飲ませるなどの一悶着があったものの、なんとか必要分の鉱石を集め、街まで帰ってくる事ができたのだった!
◇◇◇◇
「――――というわけで上質な硬固鋼鉱を大量に入手できた訳だが! ここで問題その1ー! アタシが近接職用の防具作れない問題はどーすんの?」
来たぞ!! 遂に俺の鍛冶師の弟子(仮)としての経験を活かす時がっ!!
「実はもう装備の設計案はできてます! これの通りに作って頂ければなー......と!!」
「なるほどこう作れば......オーケイ!! フューネスの名に賭けて、最高の品を作ってやるよ!」
数時間後、俺達がギルドにクエストの報告に行っている間にとんでもないスピードで出来上がったとの報告が入った。
「早いですね!」
「アタシゃ仕事は早いんだよ! それより見てくれ! これが、アンタ達の装備さ!」
そう言って俺に手渡されたのは、それはもう美しい黒銀和風の手甲と脛当であった!
「イメージ通りの出来栄えぇぇぇ!!」
「――――そして、ホノラちゃんにはこれを」
ホノラに渡されたのはクリームホワイトのナックルグローブだ。この前棘を殴りたくなさそうだったので、これで手の怪我の心配はないね!
すごいキラキラした顔で手に嵌めている。
「私の好きな色! これでムカつく奴も魔物もボコボコにできるわね! ありがとうフューネスさん!!」
言ってる事とんでもないけど喜ぶ姿が可愛いからヨシ!
「礼ならマツルに言いな。コイツの最高な設計図が無かったら、ここまで良い品は出来なかった! アンタどこで修行したんだい?」
「俺の師匠はグレンって言うんです。この刀も師匠の作品です!」
俺は脇に差している刀を取り出しフューネスに見せる。
「グレン? 確かに有名と言えば有名だが、鍛冶師では聞いた事が無いね......」
なんか含みのある言い方だが、まあいいだろ! 俺の師匠は名前が売れてるどうこうなんて気にしてないだろうし!
◇◇◇◇
マツルとホノラが大喜びしていたちょうどその時、今日も報告を受けるギルドマスターが一人。
「――――また目無しの魔獣の報告!? ここ数日で2件はちと多いでしょうに......」
「まあまあそう仰らずに。今回もマツルさんですね。リザルドマンでしたよ?」
「ボールボーグの他にリザルドマン......え、彼って魔法使えないんだよね? めっちゃ強くない?」
「クエストカウンターで話を聞く限りではそうですね」
「魔法無しでそんなCランク中位と上位の魔獣狩れるとは思えないんだけど......うん、これは僕が直々に話を聞くべきだろうね。ウィール、彼が次ギルドに顔を出し次第僕の所へ来るよう伝えて」
ウィールと呼ばれたいつもカウンターにいる女性は、「かしこまりました」とだけ残して部屋を去った。
――――もしかしてマツル君って......異世界から来た人だったり?
ギルドマスターは待つ。彼に会える日を心待ちにして。
そんな事は微塵も知らないマツルが次にギルドへ行ったのは、ギルドマスターの指示から約2週間後の事だった。
フューネスの案内で俺達はサラバンド王国の裏に聳える”イクッサ山“の中腹に来ていた。
「休憩があったとは言え山道を半日は......中々にキツかったわね...」
「結構急な山道だったのに......メツセイさんもフューネスさんも平気そうですね」
へばっている俺とホノラとは対照的に、二人はピンピンしていた。
「――――ん? ああ、俺達は同じドワーフの国、“ハントヴァック”の出身でな。その国を出入りする為にはこの山以上の険しい道を通らなくちゃならなかった訳よ」
「そうそう。この山みたいに魔獣が少ない訳じゃないからしょっちゅう襲撃を受けて」
「その度にフューネスが道ごと魔獣を吹き飛ばすから国王によく怒鳴られたなぁ! ガハハッ!!」
メツセイとフューネスは同郷なのか。
しかしドワーフの国ハントヴァックか......可能ならば是非とも行ってみたいね!
「――――さ、お話はこれくらいにして、そろそろ坑道に入るよ。誰か光源魔法を使える奴はいないかい?」
「あ、すまねえ......こんな事になるなら俺が使えるようになっておけば良かったな......」
メツセイが俺達が魔法を使えない事を察してか謝りだした。確かに薄暗い坑道で灯りが無いのは探索難度が大きく変わる。
だがしかし! 今回はそんな事もあろうかと、俺が準備してまいりました!
「メツセイさん! 大丈夫です。こんな事もあろうかとコレを持ってきました」
俺はポーチの中をゴソゴソと漁り手の平サイズの魔道具を取り出す。
「充魔式ポケットライト~」
これは魔ンドラゴラクエストの報酬で買った俺達の新しい便利アイテムなのだ!
「この魔道具は魔力を充填する事で従来の光源魔法の約1.3倍(当店比)の光が出せるそうです」
「私の大量の魔力が込められているから結構持つはずよ!」
ホノラは魔法が使えないだけで魔力の操作は出来るみたいなので、今回は魔力を充填してもらった。
坑道の中のはずなのに、外と変わらない位の光が放たれる。
「すごい魔道具があるもんだなぁ......」
「感心は後でしな! これは先頭のアタシが持とう。よし!! じゃあ迷わないようにね!」
先頭にフューネス、続いて俺とホノラ、最後尾にメツセイの並びで俺達はようやく坑道内部へと足を踏み入れるのだった。
◇◇◇◇
「ここも落盤してるのか......ホノラ、頼むよ」
「わかったわ! せーのっ!!」
道を塞ぐ大岩をホノラが殴り砕く。
「いいねー! 最高だよ!!」
どうやらこの坑道は随分と前に廃坑になっていたようで、あちこちで道が崩れていた。しかし新しく道を掘るのは 面倒なフューネス主導の元、ホノラが絶妙な力加減で落盤箇所の岩を粉々にして強引に進んでいるのだった。
木材で多少支えられているだけの粗末な通路。いつ全体が崩れてきてもおかしくはないな。
「はは......嬢ちゃんすげぇな」
「あんまり怒らせないようにしよう......」
女性二人が笑いながら突き進む後ろで、男二人は若干引きながらその後ろをついて行く。異世界の女性、恐るべし。
「グルギャァァァァ!!!!」
「キャァァァァァ!!!!」
曲がり角の先でホノラと明らかに俺達の物とは違う絶叫があがる。
「何があった!?」
「ッッ!! なんでこいつが......」
俺とメツセイが見たものは、二又の槍を持った巨大な蜥蜴だった。
「フューネスッッ!!!!」
「フューネスさんが......私を庇って...怪我を......」
ホノラに覆い被さる形で項垂れるフューネスの背中はばっくりと裂け、血が噴き出していた。
そこに大蜥蜴が止めを刺さんと槍を振り上げる。
「――――危ねぇ!!」
俺の刃が間一髪で槍を受け止める。凄いパワー...俺が押し負けそうとか、どんな冗談だよ......
「早くフューネス抱えて下がれ!! メツセイ! 回復を頼む!」
「そ、それじゃあ兄ちゃんが一人で」
「俺は大丈夫! 絶対勝ちます!」
三人が安全な場所まで下がった事を確認してから、俺は槍を弾き体制を整えた。
ナマコ神、この蜥蜴、なんだか分かるか?
『なんだか段々私の呼び方雑になってな~い? まぁ良いけど。この魔物は“蜥蜴亜人”。Cランクの中でも上位の魔物ね。硬い鱗は高い魔力耐性を持ち合わせ生半可な魔法は効かない.....って君には関係ないか!』
腹立つこのナマコぉぉぉ!! その一言が余計なんだよ。その一言で俺の心が傷付いちゃったらどーすんのって話よ。
「さてどうやって戦おうか」
よく見たらコイツも目に黒い煙が纏わりついている。傷だらけで、恐らくだが全く見えていないだろう。
降り注ぐ槍の雨を捌きつつ考えてみるが、何も有効打点が思い付かないね。
まず硬いからって火力の高い技はダメだ。万が一それで天井が崩れて生き埋めなんて事になったら笑えない。だからホノラも下がらせた。
「よし! アレで行くか......」
最っ高の作戦を思いついた。あんまり使いたく無かったけどこれしか勝つ方法がないししょうがないな。
――――
「マツル......何してるの...?」
「兄ちゃん、リザルドマンの攻撃を避けながら少しづつ攻撃してやがる!」
「でもどれも致命傷になってないわよ!? このままじゃ先に限界が来てマツルが負けるんじゃ――」
そんな会話が俺の耳に入ったので、声をかけてみる。
「あー、安心して? もう俺の勝ちだから。メツセイさん、フューネスさんは大丈夫ですか?」
「フューネスは心配ない! 上位回復薬を飲ませた!」
「ギュリィィィ!?」
お? リザルドマンの攻撃が徐々に遅くなってきたぞ? つまり俺の技が効いて来た訳だな?
「どーゆう事!? マツルはちょびっとしか攻撃してないわよ!?」
「何が起こったんだ......? 兄ちゃんまさか遂に魔法を――!」
遂に攻撃の手が止まりその場に膝をついたたリザルドマンの首に刃を当てる。
「魔法は相変わらず使えねーよ。コイツは俺に攻撃を捌かれると同時に斬られてたんだよ。全身の”血管“と”筋繊維“をな」
「剣士ってのはそんな高等技術が使えるのか!」
そりゃ、大きい二足歩行する蜥蜴の体組織なんて分かる訳が無いから適当に斬りまくったんだけどね。
因みに、これは俺の親父一番のお気に入り剣技らしく、真っ先に教えて来た。大事なのは相手を如何に無力化出来るかだ......と。
当時の俺はやってる事えぐいと思っていたから、まさか自分で使う日が来るとは......
【燈燐・葬亡牢】
「ギ――――!!」
全身から血を噴き出し、筋繊維と筋を斬られた事により崩れ落ちたリザルドマンはそのまま息絶えた。
「マツルすごーい!!!!」
後ろから勢いよく抱きついてくるホノラ。
「流石は兄ちゃんだ......まさか一人であのリザルドマンを倒しちまうとは」
驚きと感心の入り交じった表情で俺を見るメツセイ。
「――さぁ! なんとかみんな無事に生き残れたところで! 目的の鉱石集めルゲブャ!」
ヨロヨロと立ち上がり親指を上に立てるもそのまま血を吐くフューネス
「フューネスさんが血を吐いた!」
「馬鹿野郎ッ! お前が一番無事じゃねえんだから大人しく休んでやがれ!」
とまぁ唯一無事じゃなかった人が回復薬を飲み切っていなかったことが判明し大慌てで全て飲ませるなどの一悶着があったものの、なんとか必要分の鉱石を集め、街まで帰ってくる事ができたのだった!
◇◇◇◇
「――――というわけで上質な硬固鋼鉱を大量に入手できた訳だが! ここで問題その1ー! アタシが近接職用の防具作れない問題はどーすんの?」
来たぞ!! 遂に俺の鍛冶師の弟子(仮)としての経験を活かす時がっ!!
「実はもう装備の設計案はできてます! これの通りに作って頂ければなー......と!!」
「なるほどこう作れば......オーケイ!! フューネスの名に賭けて、最高の品を作ってやるよ!」
数時間後、俺達がギルドにクエストの報告に行っている間にとんでもないスピードで出来上がったとの報告が入った。
「早いですね!」
「アタシゃ仕事は早いんだよ! それより見てくれ! これが、アンタ達の装備さ!」
そう言って俺に手渡されたのは、それはもう美しい黒銀和風の手甲と脛当であった!
「イメージ通りの出来栄えぇぇぇ!!」
「――――そして、ホノラちゃんにはこれを」
ホノラに渡されたのはクリームホワイトのナックルグローブだ。この前棘を殴りたくなさそうだったので、これで手の怪我の心配はないね!
すごいキラキラした顔で手に嵌めている。
「私の好きな色! これでムカつく奴も魔物もボコボコにできるわね! ありがとうフューネスさん!!」
言ってる事とんでもないけど喜ぶ姿が可愛いからヨシ!
「礼ならマツルに言いな。コイツの最高な設計図が無かったら、ここまで良い品は出来なかった! アンタどこで修行したんだい?」
「俺の師匠はグレンって言うんです。この刀も師匠の作品です!」
俺は脇に差している刀を取り出しフューネスに見せる。
「グレン? 確かに有名と言えば有名だが、鍛冶師では聞いた事が無いね......」
なんか含みのある言い方だが、まあいいだろ! 俺の師匠は名前が売れてるどうこうなんて気にしてないだろうし!
◇◇◇◇
マツルとホノラが大喜びしていたちょうどその時、今日も報告を受けるギルドマスターが一人。
「――――また目無しの魔獣の報告!? ここ数日で2件はちと多いでしょうに......」
「まあまあそう仰らずに。今回もマツルさんですね。リザルドマンでしたよ?」
「ボールボーグの他にリザルドマン......え、彼って魔法使えないんだよね? めっちゃ強くない?」
「クエストカウンターで話を聞く限りではそうですね」
「魔法無しでそんなCランク中位と上位の魔獣狩れるとは思えないんだけど......うん、これは僕が直々に話を聞くべきだろうね。ウィール、彼が次ギルドに顔を出し次第僕の所へ来るよう伝えて」
ウィールと呼ばれたいつもカウンターにいる女性は、「かしこまりました」とだけ残して部屋を去った。
――――もしかしてマツル君って......異世界から来た人だったり?
ギルドマスターは待つ。彼に会える日を心待ちにして。
そんな事は微塵も知らないマツルが次にギルドへ行ったのは、ギルドマスターの指示から約2週間後の事だった。