「ヤベッ!! ヤベペッッ......ヤベペクバザイッッ......」
ホノラの一方的な攻撃が10分程続き、闇バカラの命乞いが始まった。
「あら、もう終わり? なんだか拍子抜けね」
「助けテくれるのか......? ワタシを」
「助けるまでは行かなくても、特に私は恨みとか無いし、マツルどうする?」
そうだな......俺もさっきは頭に血が上ってたけど、特段闇バカラをどうしたいって事は無いんだよなぁ......
「そうだな、あとは聖騎士の皆さんに色々お任せしよ――――」
その時、俺は見てしまった。傷が完全回復し、ホノラの後ろに立つ闇バカラを。
「ホノラ! 後ろ!!」
「えっ――」
【闇魔法”闇牢”】
ホノラが後ろを振り向いたのは、既に闇で出来た球体に包まれた後だった。
「ハハハハハァッ!! 簡単に人の言う事を信じる馬鹿ハ騙しやスくて助かル!!!!」
「ちょっと!! 出しなさいよ!!」
ホノラが内側から叩くが、闇はビクともしない。
「無駄ダ! 闇牢ハ“通さない”事に特化したアらゆる攻撃に対シて無敵の耐性を持ツ脱出不可能の牢獄!! 人間は酸素を吸わないと生きてイケナイのだろう? ソの酸素も内部は有限!! 早くしなケればこのガキは死んじまうなァ!!」
「早くホノラを出せ......」
「出して欲しかったらワイヴァーグリッドウルフをこちらにヨコセぇ!!!! この国にいるのは分かってるんダ!!」
それか......
「なぁ小僧よ。我が出ていけば、ホノラは助かるのか? なら――」
「絶対出るなモフロー。第一、お前があちらに行った所でホノラを出す事は絶対に無いだろ......だからこの条件を呑む必要は無い」
「ならどうするのだ!」
俺は刀を抜き、刃先を闇バカラに向ける。
「テメェは俺が殺す。それで全員助ける」
――――
「脆弱ナ人間風情がワタシを殺す? 今のワタシは魔王にすら届ク究極の存在!!」
「兄ちゃん、俺達も一緒に戦ぞ!!」
「マツル、ここは俺の守る国だ。お前一人に背負わす訳にはいかん」
前に躍り出るのはメツセイとクーガだ。
「ありがとう。メツセイ、クーガ。でも大丈夫だ......これは俺の喧嘩だから!」
「貴様......死んダゾ?」
「殺してみろや暗黒男――」
【闇魔法 暗黒魔震眼】
さっきより多い闇の球が俺に襲いかかる!
避けれる物は全て避けて接近しろ!!
「避けタ!? ナラ避けル余白を無くセばいイ!!」
どうしても避けれないタイミングでも......!
俺には視える!
【我流“防御剣術”流静・颯免】
「ナ―――ッッ!! 全てノ闇を斬っタ!?」
「ハッハァッ!! どうだ見たか!! これが異世界人の底力じゃァ!!」
あと一撃! あと一撃斬れば勝てる!
どう考えても弱点な胸の黒い球! あれを壊せば勝てる!
「じゃあな闇バカラ! 弱点晒してんのが悪いんだよォ!!!!」
「マズイ――――!」
俺の刃が闇バカラの胸の球に触れようとした瞬間、刀が砕けた。
「なっ――ッ!」
それを見た闇バカラは勝利の怒号をあげる。
「ハハハハハハハァ! やはリ闇を斬ってそンな鉄切レが無事ナハズ無いのダ! ではなマツル。余裕を晒すのが悪いのダ」
【闇魔法 煉獄の闇極球】
「マツル――――」
極大の闇の球が俺に触れた瞬間、誰も目を開けて居られない程の閃光が周囲を包んだ。
「ハハッ......ハハハハハァ!!!! ワタシの!! ワタシの勝ちだァァァァ!!!!」
闇バカラは己の勝ちを確信し勝利の雄叫びをあげた。
「マツルが......負けた......?」
ホノラが声にすらならない程微かに呟く。
「ホノラとか言ったカ!? ワタシを散々殴りやがっテ!! その絶望ノ......恐怖に絶望したその震えタ瞳が見たかっタ!!!! まァ安心しロ......貴様も直二死ぬ。呼吸ガ出来なくなリ、涎・糞尿を無様にモ垂れ流しナガらな......地獄ではずっと一緒二いれルと良いなァ!!!!」
でも残念。
「――――誰と誰が地獄行きだって? お前の話じゃねぇの?」
俺はまだ生きてるんだよなぁ......
「ナゼ!? ナゼナゼナゼナゼナゼェ!?!?!?」
「マツル!! 俺の剣を使え!! 俺の剣は闇を斬り払える!!」
クーガから匣になった大剣が投げて俺に渡される。
「クーガお前そんな便利な大剣だったなら最初から教えろよ!! あと俺大剣使えねーぞ!?」
「お前が喧嘩だっつったから手ぇ出せなかったんだろうが!! あと安心しろ! 匣は使用者の思い描く剣に形を変える!! 握りしめて念じてみろ!!」
取り敢えず刀の形状を手に持って考えてみる。
すると本当に匣は刀へと形を変えた。
「――こりゃすげーわ......」
「認めン!! ワタシは認めなイ!! 偶外れただけ......運が良かっただけ......もう一度撃テば確実二殺せる!! 【闇魔法 煉獄の闇極球】ッッッ!!!!」
「外れてなんかねーよ......正直死んだかと思った」
身体が熱い......沸騰してるみたいで......左目が完全に見えないけど、それも精神を研ぎ澄ます良い材料になってる気がする。
時間が俺を捉えられてないみたいに周囲がゆっくりと進む......蹴った地面がもうあんな遠くに、殺すべき敵がもうあんな近くに――――
今なら......親父に教えて貰った剣術、完全に使いこなせる気がするよ......だからこの技を使う!
【西宵流“居合”四王裂き】
「――――? ァ......」
俺の刃は極大の闇の魔法ごと闇バカラの身体を真っ二つに両断し、同時に胸の球も割れた。
「あーやっと出れた!! 新鮮な空気が生きてるって感じよね!」
ホノラを捕らえていた闇魔法も解けたようで、これで安心だな!
「ナゼ......何故闇の上位魔法をくらって生きていたのだ......」
真っ二つになったバカラの右半分は、正気に戻ったような顔で話し始めた。右半分でまだ喋れんの生命力凄いな。
「まぁ色々あってな......左目が完璧に見えなくなったけど、それで済んだんだわ」
「はは......私の渾身の闇魔法で持って行けたのが左目だけとは......私は鍛錬が足りなかったようだな......」
バカラの身体が崩れ始めた。
ナマコ神様に聞いた話だが、魔人というのは、死体が残る事は無く、世界を漂う魔の気に分解されてしまうのだそう。
あれ......じゃあなんで喋らない左半身の方は崩れ始めてないんだ?
『急激な魔力の高まりだ!! 離れて!!』
俺が疑問を抱くのとほぼ同時、バカラの左半身が膨張するのが見えた。
「おいバカラ右!! 崩れ始めの所申し訳ないがあれはなんだ!?」
「あぁ......私が負けた時の保険の自爆という訳か!! 魔王ニシュラブ......死んだ私をも使うつもりだったのか!!!!」
「事情はよく分からんが自爆なんだな!! 止める方法は!?」
「......無い」
「ない!? じゃあ被害を最小限に抑える方法とか......」
「恐らく何もしない状態で私の魔力が全て破壊エネルギーに変換されて爆発したらこの大陸が半分程消し飛ぶ......どんなに最小限に抑えてもこの国一帯は消滅するだろう......」
終わりじゃねぇかそうなったら!!
「マツルなんか膨れてるわよ!? どうするの!?」
後ろから名前を呼ばれたので振り向いてみると、そこにはパンパンに膨れ上がったバカラ左を持ち上げるホノラがいた。
「何怪しい物に触ってんだホノラァ!!!! 爆発するかもしれないんだぞ!?」
「えー爆発!? どうしよう......」
「落ち着いて......そーっと地面に下ろした後こっちにゆっくり急いで走ってこい! な!?」
「――――ホノラ君!! 下ろさないで! 思いっきり上にぶん投げて!!」
「ギルドマスター!? 信じるわよ......えーぇぇい!!」
バカラ左はホノラの剛腕で垂直にぶん投げられた。
まさか空中で爆発させて被害を抑えるつもりなのか!?
「ありがとうホノラ君......ユニークスキル【共有】発動!!」
爆発する瞬間、バカラ左は塵になって消えてしまった。そうか! ロージーが爆発しない世界を共有したのか!
「ロージーぃぃぃぃ!!!!」
「危なかった......ノヴァーリスの魔力障壁復旧させて戻って来たらなんか光ってるし......」
「はは......まさか被害が全く0とは。本当に凄いなぁ......そしてすまなかった......」
俺が持ってきていたバカラ右も、ついに頭だけになってしまっていた。
「私は、自分が魔王ニシュラブを超えるという野望と復讐の為だけに君達に迷惑をかけてしまった......本当に申し訳ないと思っているよ」
「バカラ......」
「――――だからマツル......君に私の野望を託したい......魔王ニシュラブを殺して欲しい......フーゴ...ナベラ...やっとみんなの所へ行け......」
その言葉を最後に、バカラは完全に消滅してしまった。
詳しい理由は俺には分からない。フーゴもナベラも俺からしたら他人だ。てか誰だよ。
でもコイツは涙を流しながら俺に願いを託し死んでいった。それだけで理由は十分だ。
魔王ニシュラブ......そいつを殺す。
「マツルーーーー!! おつかれ!!」
「兄ちゃんが......魔王の幹部に本当に勝っちまった......」
「ウチの聖騎士になって欲しい位だぞ!」
「メツセイ、クーガ、俺の我儘に付き合わせてすまなかっ―――グッ......!」
見えなくなった左目が痛くなって来た......アドレナリンが落ち着いたからか目の奥を針でぐちゃぐちゃにされてるみたいな痛みが這い回っている!
「マツル目が!! さっきの魔法くらった時何があったの!?」
「あぁ......あの魔法が俺に触れる瞬間に食べて除去したんだ。左目が見えなくなったのは闇をその身に受けた代償って奴だな」
実は少しだけ嘘が混ざっている。食べたのと左目の失明は本当だが、実際除去したのはナマコ神様である。
――――
『――死にたくなかったら食べなさい!』
「嫌だ!! 触っただけでめちゃくちゃ痛いんだろ!? そんなもん口に含んだら死ぬどころの話じゃ済まないだろ!?」
『安心したまえ! 口に入れた瞬間、私が神様パワーで99パーセントろ過してあげよう!!』
「その1パーセントのろ過出来てない部分が不安なんだよ!! どうなっちまうんだよ!」
『運が良かったら何も起こらない......運が悪かったら......まぁなんとかなるさ!!』
「チクショー!!!! 食えば良いんだろ食えば!!」
『あ、私の事絶対口外しないでね!!』
――――
というやり取りがあの一瞬の中であったのだが......どうやら俺は運が悪かったらしい。いや、左目だけで済んでるという事は運が良かったのか?
「何はともあれお疲れ様! 目はなんとかなるわよ!」
ホノラ、多分何とかはならないぞ? なんでそんなに笑顔なんだ?
「あの......裁判を再開したいのですが......」
裁判官のおっさんが戦勝ムードの俺達を一気に現実に引き戻した。
「あの......救国の英雄として免罪とか......?」
「それとこれとは切り離して公平に判決を下します」
コイツぅ! 裁判官の鑑!!
こうして、ほぼ死刑確定の裁判が再開されるのだった。
「――――えー、色々と想定外の事態が起こりましたが気を取り直して、判決を言い渡す......」
裁判所の壁をぶち抜いたホノラ達一行も何故か傍聴席に座っている。
さっきのバカラの件で有耶無耶になんねぇかなとか思ったけど無理か......
「被告人、マツルとロージーは.......」
俺達は......?
「ドッキリでしたー!!!! あそれドッキリと? ドッキリと!」
「は?」
「...はぁ?」
「はぁぁぁぁぁぁ!?」
裁判長とフリージアさん以外の全員が驚愕の告白にビビり散らかした。
え、は? ドッキリ? ドッキリってアレだろ? 「ドッキリ大成功~」ってやつだろ? は?
「おいババアこの野郎何がドッキリでしたー! だよ!!」
「今ババアって言っちゃった? ロージーはネタばらしの前にちょっと別室に来ちゃってね......」
「......あ、」
数分後、顔を潰れた空き缶のようにしたロージーが帰ってきた。
「......大丈夫ですか?」
「前が見えねぇ......」
良かった。大丈夫そうだ。
「――――それでオーバーサイトマスター? ドッキリって......どこからどこまでなんですか!?」
「最初からよ。最初から! あ、でも国際条約違反なんじゃないかって議論が出ちゃったのは本当ね! そこから今まではぜーんぶドッキリ! びっくりした!? びっくりしちゃったよね!?」
「えぇそりゃあもう......そんな説明じゃ納得できない位にはびっくりしてますよ!!」
全方位からの怒号がフリージアさんに向けられて発射される。
「分かったよ分かっちゃったわよ! 一から説明するとね......まずこの馬鹿の説明不足で超魔導兵器が使われてんじゃないかって疑惑が出ちゃったのよ」
ほうほう.....
「それで、私的には使っててもそれ以外の方法でも“目無しの魔獣”の問題は解決出来ちゃった訳だからどっちでもいいと思ったんだけど、それじゃあ世間の不安が和らがないから形式的には『兵器使用の犯人を捕まえました』ってことにしたかった訳!」
なるほど、一般市民的には目無しの魔獣もそれを一発で消せる兵器も同じくらい脅威だからそのどちらも失われましたってした方が都合がいいもんな。
「でも普通に一芝居やるのも面白くないかなーって思ってドッキリをしちゃったって訳ね! という事だからマツルくんは無罪!! 帰っちゃってもいいよー!」
......もういいや、ツッコむのも疲れた。
「良かったねマツル君!! ちょっと買い物でもしてから帰ろうか!!」
幸せそうな笑顔のギルドマスターを見ると、「多分なんかあるな」って気持ちになるのは何でだろうか。
「――――でもロージー? アンタは本部にツケた宴の代金の件で話があるからちょっとこっちに来なさい?」
フリージアさんは輝く笑顔だが、目が全く笑っていない。バカラよりも怖い。
「え......あ、マツル君!? なんでこっちみてくれないの? あの......おーい!」
ロージーはフリージアさんに引きずられてまたどこかへ行ってしまった。
この終わり方の方がロージーらしくて良いとも思ってしまうのだった。
◇◇◇◇
俺とホノラは、みんな(ロージーを除く)とノヴァーリス観光をして、お土産をたくさん買う3日間のお休みを満喫した後帰ることにした。
「本当にもう行ってしまうのか?」
「寂しいわね~。もっと居ても良かったのに......」
「クーガにガブリーさん、また会えますよ!」
「楽しかったわ!! 絶対また来るわね!」
俺は行きとは乗り心地の全然違う馬車に揺られ、サラバンドへと帰るのだった。
サラバンドに帰ってきた翌日、俺達の祭りが始まる!!
「第一回!! チキチキ! お土産開封たいかーい!!!!」
「いえぇぇぇぇい!!」
「ウォォォォォン!!」
「――と、言う事で俺達の買ったノヴァーリスお土産を俺達二人と一匹で見ていくぜ!! まずは俺のお土産だ!」
俺は袋に入った大量の商品を並べる。
「なんか訳の分からない魔道具が多いわね......この『コンダテルーレット』って何?」
「ホノラよ! よくぞ聞いてくれました! これは、『今日の晩御飯どうしようかなー。迷っちゃうなー』ってなった時にランダムでメニューを組み立ててくれる凄い魔道具なんだよ!」
凄くないこれ! 魔道具屋の店長が最近入荷したって割引もしてくれたんだよ? これは買うっきゃないでしょ!
「――――だが小僧よ、これはそもそも内蔵されている料理数が少な過ぎて5回に一回はメニューが被るぞ?」
前足でスロットスタートボタンをポチポチしているモフローから衝撃の事実が告げられる。
「大体、ご飯なんて殆ど“ヨージ”の日替わりメニュー定食何だからコレ必要ないじゃない。イントリーグさんも店主もメニュー被らせた事ないわよ?」
「なっ――――確かに!?」
「......無駄使いね」
「そっ......そう言うホノラは! 何を買って来たんだよ!! 俺にそこまで言うくらいなら、さぞ凄いものを買ってきたんだろうな?」
「良いじゃない見せてやろうじゃないの!! これが私のお土産よ!」
そう言ってホノラが出したのは、大量の本だった。
「めっちゃ本じゃん! てか漫画?」
「その通り!! 最近週刊発行になった“週刊ギルド”に連載されている『紅蓮の侍エラ』の初版限定特典付き単行本よ!! サラバンドで買おうと思ってたんだけど、待ちきれなくて買っちゃった!! あと『まじかる☆先公!! キューカンバ!』の公式ファンブックと『SENピース』のスピンオフ『SENピース外伝~失われた1000ピースパズルを追え~』も思い切って買っちゃった!!」
「なんで同じ本が三冊づつあるんだ?」
「保存用と観賞用と布教用ね。マツルにも一冊づつ貸すわ! 特に『紅蓮の侍 エラ』は最近連載が始まったばっかりだけど凄い面白いの!! 丁度マツルと同じ感じだし絶対ハマるわ!」
『紅蓮の侍 エラ』は作者名が“煮足 夜足となっていた。
漢字にご丁寧にこっちの言語でフリガナまで書いてある辺り、これ日本人だよなぁ......まぁ、気が向いたら読んでみるか。
「あとこれ“シデヒレート君人形”」
最後にホノラが出したのは、絶妙にムカつく目や口の開き方をした顔の付いた卵型の人形だった。
「......なにこれ?」
「シデヒレート君人形知らないの? ならいいわ」
なんだろう......凄く気になる......
「――あとは......モフローも何か買ったの? 見せてよ」
嘘だ! シデヒレート君人形の話流れた!! そんなあっさり終わらせて良い人形じゃないだろ!?
「ようやく我の番であるな!! 我の土産は肉屋でもらった獣の大腿骨だ!! これを噛むと中々......イイのである......」
犬じゃん......
「――――後、我が金を出して買ったのは“シデヒレート君人形”だけであるな」
また出てきたシデヒレート君人形!! なんなの!?
「やっぱりモフローも買ったのね。シデヒレート君人形」
「あ! ねぇねぇマツル!! みんなが何買ったかも気になるし、これからギルド行ってみない?」
「え! あ、うん......ソウダネ」
「じゃあギルドに行きましょ!!」
なんなんだよシデヒレート君人形ってぇぇぇぇ!!
こうして俺達は、他のノヴァーリス襲撃チームのお土産を見に行く事になったのだった。
「やっほーみんな!! みんなのお土産を見せてもらいに来たわ!! ちゃんと持ってきた?」
「当然だぜ嬢ちゃん!」
「ハッ!!!! 俺のお土産が一番だ!!」
「私も参加して良いのでしょうか......受付のお仕事任せちゃって......」
「あの、僕ババ...オーバーサイトマスターに拘束されててお土産買ってな――――」
「はいじゃあ一番手はメツセイさん! 見せてちょうだい!」
あ、ロージー可哀想。既にこの会話についていけないことが確定しちゃってる。
「俺はこれだけだな......」
メツセイがテーブルに出したのは、美しいネックレスであった。
「綺麗......中で川が流れてるみたい......」
「これは......綺麗な水が有名なノヴァーリス名産の宝石でな、なんでも数千年前の清流が魔力で閉じ込められてこんな風になっているらしい」
その宝石の中には透き通った鮮やかな碧の水が流れていて、小指の爪程のサイズながらネックレスにすると圧倒的な存在感を誇る美しいアクセサリーだ!
「まさかこれ......フューネスさんに――」
「みなまで言うな! 日頃の礼にと思って買ったんだが......何だか恥ずかしくてな」
頬を紅くして気恥しそうに笑うメツセイが素晴らしい。ありがとうございます。
後日フューネスの店に行ったら、ものすごくご機嫌でテンションの高いフューネスが見れた。その胸にはとても綺麗な碧が輝いて、その笑顔をより一層引き立てていた。
――――
「ハッ!!!! 次は俺の番だな!! 俺のお土産はこれだ!!」
そう言ってパンナが出したのは、三十センチ程の杖二本と写真集であった。
「ハッ!!!! この杖は普段から俺の事を支えてくれているヤリナとモクナへのプレゼントだ!! 何やら魔力操作の効率が上がるらしくより高い制度での魔法が放てるらしい!! 遠慮なく使ってくれ!!」
「パンナ様......一生大事にするぜ!!」
「でも、こんな上等な杖......高かったんじゃ?」
「ハッ!!!! 良いのだ良いのだ! お前達は俺がどん底の失意の中にいた時も明るく励ましてくれた......大切な戦友であり親友だからなぁ!!!! ハッ!!!!」
「パンナ様ぁぁぁぁぁ!」
「俺達......一生ついて行くぜぇぇぇぇ......」
ついに三人は抱き合いながら泣き出してしまった......仲間愛凄いとは言え収取付かないな......
「はい三馬鹿が暑苦しいから次! ウィールさんは? 何を買ったの?」
「私は......この“コピーライター”という万年筆を買いました! なんでも、書類仕事の効率が何倍にもなるらしくつい......」
ウィールさんが買ったのは「書いた文字を他の紙にもコピー出来る」万年筆のようだ。お仕事第一のウィールさんらしくて最高のお土産だね!
「――あぁ、そうでした。もうひとつ買ったものがありました......」
ウィールさんが買ったもの......? まさかとは思うけど......
「”シデヒレート君人形“です!」
やっぱりかァァァァ!!!!
「なんなんですかそのシデヒレート君人形って!? ホノラもモフローも買ってましたけど流行ってるんですか!?」
「兄ちゃん、俺も買ったぞ?」
「ハッ!!!! 俺も3つ買った! これもヤリナとモクナにやろう!」
「やったーシデヒレート君人形だー!」
「家宝にするぜー!」
ヤリナとモクナもとても嬉しそうに受け取り、なんと拝み始めてしまった。
「なんなんだよシデヒレート君人形ってぇぇぇぇぇぇ!!!!」
こうして、最後までシデヒレート君人形がなんなのか分からないまま、お土産開封大会は終わったのだった。
めでたしめでたし?