「――――ではこれより、国際条約違反についての裁判を始める。被告人は前へ」

「はい」

 遂に裁判が始まった。
 この世界の裁判は元の世界の物とは大きく違う。

 まず弁護士がいないので、自分達でなんとかしなければならない。

 そして魔法なんて言う超便利アイテムがあるので的中率100パーセントの嘘発見器が存在する。

 魔法で過去なり見たらええやんと思ったが、なんかそれすると次元がナンタラとナマコ神様に説明されたがよく分からなかった。

 この条件の元、俺とロージーは無罪を勝ち取らなければならない。

 ます傍聴席や裁判官に向かって、詳しい状況説明が行われた。

 サラバンド防衛戦にて俺が超魔導兵器を使用した疑いがある事。

 ギルドマスターからの報告が無かったのは兵器使用を隠す為であるという事。

 この二つが今回の争点となる。

 つまり、「俺の魔法で勝った事」と「ギルドマスターの討伐要因の報告漏れは故意では無い事」を証明出来れば無罪という訳だ。

 もし出来なかった場合は死刑みたいだけど。

「――――説明は以上です。被告人、何か反論がある場合は、魔道具【真偽の聖鐘_(ライブラ・ベル)】に手を当てながら話して下さい。嘘を吐けば荒く、真実を話せば柔らかな音が鳴ります」

 俺は裁判官に促されるまま、魔道具に手を当てて反論を始める。

「サラバンド防衛戦で100万の魔獣の大群を消滅させたのは、他でもない私の魔法です! 私のユニークスキルは魔法の威力を無限に上げられます! それで一撃で勝利したのです! 決して国際条約に違反などしていません!」

 どうだライブラ・ベル!? 俺は本当の事を言っている!! 柔らかい音が――――

 ベルは一切の反応を示さなかった。どちらの音が鳴るでもなく無反応なのだ。
 
「なんで!?」

「被告人は異世界人だと言うでは無いか。なら魔力が無いのが普通。魔力がないならベルは反応しないし魔法も使えない。その時に魔法が使えたという証拠も無いのだから無実の立証は不可能だな」

 はっ......ハメられたァァァァ!? 非常にいけない状況だッ!! 

 一度俺達に不利なように思われたらそこの争点での挽回は難しい! あとはロージーの討伐要因の報告漏れが故意じゃなかったという事を証明出来るかで全てが変わる!

「――――では次は被告人、ロージーに聞こう。あなたは《《本当》》に報告に隠し事をしていなかったのですか? 何かやましい事があって、報告してない事があったのではないですか?」

 俺と同じように魔道具に手を置いたロージーが口を開く。
 ロージーには魔力があるからちゃんと音は鳴るはずだ。

「僕は何もやましい事なんて隠してません! 報告漏れは本当に忘れていただけなんです!!」

ギャリリリリリリリリリ!!!!!!

 ベルはけたたましく鳴り始めた。

「やはり嘘なのではないか!!」

 なんでぇぇぇぇ!? 本当の事言ってたじゃん!!
 いや......今の発言の中に嘘があったと言う事は確定なのか......「報告はし忘れていただけ」の部分は本当だとするなら嘘になるのは「やましい事を隠していない」という所......

 ハッ!!!!

 確かロージーって宴の代金全額本部にツケてたよな......もしかしてやましい事ってそれか!?

 くっそぉぉぉやましいと思ってたならそんな馬鹿なことするなよぉぉぉぉ!!
 終わった。完全に終わった。

「この状況を覆す証拠も無し......では判決を言い渡――――」

「ちょっと待ったァァァァ!!!!」

 どこからともなく爆発したような声量が裁判所中に響き渡る。

 次の瞬間、裁判所の壁が急に円形に吹き飛んだ。

「その判決! 待った!」

 崩れた壁の土煙の中から登場したのはホノラ達であった。

「ホノラァァァァ!!!! メツセイぃぃぃぃ!!!! ウィールさんんんんんん!!!! 一馬鹿ァァァァ!!!!」

「ハッ!!!! 何故俺だけ名前じゃないのかは気になるがまぁいいだろう!」

「誰だお前達は!!!!」

「マツルの判決に納得がいかないから、待ったをかけに来たのよ」

「ならわざわざ壁を蹴破って来なくても良かったであろう!! 警報音が鳴り止まないでは無いか!!」

 壁を吹き飛ばしたせいなのか、街の至る所から警報音が鳴り響いている。にしてはちょっと異常じゃないか? このうるささは。

「いや......これはホノラちゃん達のせいじゃないね......何者かが魔力障壁を魔法で破ったんだ」

 さっきまで俺達の審議を必死に笑いを堪えながら見ていたフリージアが真面目なトーンで話し始めた。

「ホノラ......まさかお前......」

「マツル違う!! 私じゃない!! 第一魔力障壁なんて簡単に破れるわけがないでしょ!」

「でも現実に破壊されて警報がなっている......相当な緊急事態だね」

「――――ッ!! なんだ......このオーラは?」

 全員が、突如出現した圧倒的な存在感に気が付いた。裁判中だと言うのに、俺の体が走り出すのを、理性では止められなくなっていた。

「やっぱりマツルも気になるわよね。こんなに邪悪なオーラ!」

 ホノラも俺と同じみたいだ。

「あぁ......俺は今容疑者で、この国からしてみたら部外者だが、それは指くわえて逃げる理由にはならないよな!」

「あの.....あなたは容疑者なので一応ここにいて頂きたいのですが......」

 裁判長と警備員が俺を引き留めようと押さえつけるが、俺はその制止を気合で撥ね飛ばす。

「うるせぇクソ裁判長! 後でちゃんと戻って来るわ!」

 俺とホノラは、オーラが出現した方向へ全力で走った。