「それでは長い間お世話になりました」
「おう、この街で新しい店を出すんだってな。頑張れよ、応援しているぞ!」
「もしよかったらご飯だけでもまた食べに来てちょうだいね」
「ええ、新しいお店はここからそんなに離れているわけじゃないので、たまにご飯は食べにきますよ」
店舗と契約した次の日の朝、長い間泊まっていたこの宿ともお別れだ。とはいえ、この辺りのお店を食べ歩いた中でも、上位に入るほどの美味しいご飯を出す宿だから、たぶんちょこちょこ通うことになるだろう。
「お兄ちゃん、また来てね!」
アルベラちゃんとも今日でお別れだ。なんだかんだでこの子の笑顔には癒されてきたものである。アルベラちゃんにはアウトドアスパイスが美味しかったとお礼を言われたし、おっちゃんにはこの世界の食材のことについていろいろと教えてもらった。またなくなった頃に分けに来てあげるとしよう。
「うん、また来るよ。アルベラちゃんも元気でね」
「うん!」
一度荷物を新しい店舗へ運び、拠点を変更したことを冒険者ギルドに伝え、同じように宿を引き払ったリリアと合流した。
「それじゃあ、市場に行っていろいろと買い揃えに行こうか」
「ああ」
昨日と同様に私服のリリアと一緒に、生活するのに必要な食器や寝具などを市場で買い揃えていく。……非常に残念なことではあるが、デートではないんだよ。
「……よし、こんなもんだろう」
「テツヤ、こっちも終わったぞ」
店舗の2階にある居住スペースへの家具などの配置が完了した。それぞれの部屋にはベッドと小さめの机、居間のスペースには大きめのテーブルや椅子、台所には食器棚や食器などを配置している。
「なんだかんだでいい時間になっちゃったな。それじゃあ晩ご飯にしようか。今日は簡単なものになっちゃうけど良いかな?」
「もちろんだ。なんでも構わないぞ」
これからリリアとの共同生活を送るにあたって、いろいろな取り決めをした。
まずは基本的な家事についてだが、食事は基本的に俺が作ることになる。リリアは片腕なので料理をするのは難しく、今までも基本的には外食で済ませていたようだ。自分の食事は自分で準備すると言っていたのだが、一人分を作るのも二人分を作るのも大して変わらないし、料理を作るのは結構好きなので、俺に任せてもらうことにした。
その代わりに掃除についてはリリアに任せることとなったし、食事の材料費も出してもらうことになった。洗濯については下着などの問題もあるので、各自で行うことになった。
そして家賃についてだが、この店舗の賃料は一月に金貨20枚となっている。他の店舗候補よりも立地や店の大きさなどが理想的だったため、予定していた予算ギリギリになってしまった。
リリアもこの店舗に住み込みで働くため家賃の一部を払うと言ってくれた。お店の護衛のために必要な経費でもあるので、家賃は必要ないと伝えたのだが、部屋も貸してもらい、食事も作ってもらうのだから家賃は払うと折れてくれなかった。
リリアなりに新しくお店を出すから、気を遣ってくれたのだろう。ありがたく月に金貨5枚をもらうことにしたが、お店が軌道に乗ったら給金を上げるなどしていくとしよう。
「お待たせ。今日は疲れたから簡単なもので悪いけど、どうぞ召し上がれ」
「おお、良い匂いだな。スープまであるじゃないか、確かに時間は早かったが、とても簡単な料理には見えないぞ」
さすがに昨日今日は街中をかなり歩き回って俺もクタクタである。今日の晩ご飯は手抜きの肉野菜炒めとパンとスープである。
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます」
まずは肉野菜炒めだ。肉は市場で売っていたブラックブルという比較的安い魔物の肉を使っている。それとキャベツもどき、玉ねぎもどき、ニンジンもどきなどといった元の世界にもあった野菜と近い野菜を使っている。宿でいろんな料理を食べていた時に、少しずつこちらの世界の肉や野菜について勉強してきた甲斐があった。
「うん、十分いけるな!」
「おお、これはうまいぞ! ただの肉と野菜に見えるが、とてもうまい味が付いているな!」
味付けはもちろんアウトドアスパイスを使っている。宿で出てきたご飯もそうだが、濃い味付けの料理はそれほどなかったので、今日はちょっと濃い目の味付けにしてみたが、悪くはない味だ。本当はお米もほしいところであったが、この街の市場では見かけなかったので、パンを買ってきてある。
「それにこのスープもうまいぞ! こんな味のスープは今まで飲んだことがないな!」
「そうか、味噌汁はやっぱり飲んだことがないんだ。結構独特な香りがすると思うけれど大丈夫そう?」
「ああ。今まで味わったことのない味だが、良い香りと味だぞ!」
「それはよかったよ。他にもいろんな味のスープがあるから、今度少しずつ試してみよう」
アウトドアショップがLV3に上がったことにより新しく購入できるようになった商品であるインスタントスープ。最近のアウトドアショップでは保存食やインスタントスープなどが売られている。ありがたいことにお湯を注ぐだけで手軽に作れる、味噌汁、コーンクリーム、コンソメスープ、たまごスープの4種類のインスタントスープが新しく追加されていた。
残念ながら水を注ぐだけでご飯が食べられる、保存食のアルファ米などはまだ出てなかったが、インスタントスープだけでもありがたい。さすがに屋台の時には販売をしなかったが、この店舗をオープンする時の目玉商品のひとつとして販売する予定だ。
インスタントとはいえ、懐かしい元の世界の味噌汁は沁みるなあ。少しだけ元の世界が懐かしい気持ちになってしまった。
「おう、この街で新しい店を出すんだってな。頑張れよ、応援しているぞ!」
「もしよかったらご飯だけでもまた食べに来てちょうだいね」
「ええ、新しいお店はここからそんなに離れているわけじゃないので、たまにご飯は食べにきますよ」
店舗と契約した次の日の朝、長い間泊まっていたこの宿ともお別れだ。とはいえ、この辺りのお店を食べ歩いた中でも、上位に入るほどの美味しいご飯を出す宿だから、たぶんちょこちょこ通うことになるだろう。
「お兄ちゃん、また来てね!」
アルベラちゃんとも今日でお別れだ。なんだかんだでこの子の笑顔には癒されてきたものである。アルベラちゃんにはアウトドアスパイスが美味しかったとお礼を言われたし、おっちゃんにはこの世界の食材のことについていろいろと教えてもらった。またなくなった頃に分けに来てあげるとしよう。
「うん、また来るよ。アルベラちゃんも元気でね」
「うん!」
一度荷物を新しい店舗へ運び、拠点を変更したことを冒険者ギルドに伝え、同じように宿を引き払ったリリアと合流した。
「それじゃあ、市場に行っていろいろと買い揃えに行こうか」
「ああ」
昨日と同様に私服のリリアと一緒に、生活するのに必要な食器や寝具などを市場で買い揃えていく。……非常に残念なことではあるが、デートではないんだよ。
「……よし、こんなもんだろう」
「テツヤ、こっちも終わったぞ」
店舗の2階にある居住スペースへの家具などの配置が完了した。それぞれの部屋にはベッドと小さめの机、居間のスペースには大きめのテーブルや椅子、台所には食器棚や食器などを配置している。
「なんだかんだでいい時間になっちゃったな。それじゃあ晩ご飯にしようか。今日は簡単なものになっちゃうけど良いかな?」
「もちろんだ。なんでも構わないぞ」
これからリリアとの共同生活を送るにあたって、いろいろな取り決めをした。
まずは基本的な家事についてだが、食事は基本的に俺が作ることになる。リリアは片腕なので料理をするのは難しく、今までも基本的には外食で済ませていたようだ。自分の食事は自分で準備すると言っていたのだが、一人分を作るのも二人分を作るのも大して変わらないし、料理を作るのは結構好きなので、俺に任せてもらうことにした。
その代わりに掃除についてはリリアに任せることとなったし、食事の材料費も出してもらうことになった。洗濯については下着などの問題もあるので、各自で行うことになった。
そして家賃についてだが、この店舗の賃料は一月に金貨20枚となっている。他の店舗候補よりも立地や店の大きさなどが理想的だったため、予定していた予算ギリギリになってしまった。
リリアもこの店舗に住み込みで働くため家賃の一部を払うと言ってくれた。お店の護衛のために必要な経費でもあるので、家賃は必要ないと伝えたのだが、部屋も貸してもらい、食事も作ってもらうのだから家賃は払うと折れてくれなかった。
リリアなりに新しくお店を出すから、気を遣ってくれたのだろう。ありがたく月に金貨5枚をもらうことにしたが、お店が軌道に乗ったら給金を上げるなどしていくとしよう。
「お待たせ。今日は疲れたから簡単なもので悪いけど、どうぞ召し上がれ」
「おお、良い匂いだな。スープまであるじゃないか、確かに時間は早かったが、とても簡単な料理には見えないぞ」
さすがに昨日今日は街中をかなり歩き回って俺もクタクタである。今日の晩ご飯は手抜きの肉野菜炒めとパンとスープである。
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます」
まずは肉野菜炒めだ。肉は市場で売っていたブラックブルという比較的安い魔物の肉を使っている。それとキャベツもどき、玉ねぎもどき、ニンジンもどきなどといった元の世界にもあった野菜と近い野菜を使っている。宿でいろんな料理を食べていた時に、少しずつこちらの世界の肉や野菜について勉強してきた甲斐があった。
「うん、十分いけるな!」
「おお、これはうまいぞ! ただの肉と野菜に見えるが、とてもうまい味が付いているな!」
味付けはもちろんアウトドアスパイスを使っている。宿で出てきたご飯もそうだが、濃い味付けの料理はそれほどなかったので、今日はちょっと濃い目の味付けにしてみたが、悪くはない味だ。本当はお米もほしいところであったが、この街の市場では見かけなかったので、パンを買ってきてある。
「それにこのスープもうまいぞ! こんな味のスープは今まで飲んだことがないな!」
「そうか、味噌汁はやっぱり飲んだことがないんだ。結構独特な香りがすると思うけれど大丈夫そう?」
「ああ。今まで味わったことのない味だが、良い香りと味だぞ!」
「それはよかったよ。他にもいろんな味のスープがあるから、今度少しずつ試してみよう」
アウトドアショップがLV3に上がったことにより新しく購入できるようになった商品であるインスタントスープ。最近のアウトドアショップでは保存食やインスタントスープなどが売られている。ありがたいことにお湯を注ぐだけで手軽に作れる、味噌汁、コーンクリーム、コンソメスープ、たまごスープの4種類のインスタントスープが新しく追加されていた。
残念ながら水を注ぐだけでご飯が食べられる、保存食のアルファ米などはまだ出てなかったが、インスタントスープだけでもありがたい。さすがに屋台の時には販売をしなかったが、この店舗をオープンする時の目玉商品のひとつとして販売する予定だ。
インスタントとはいえ、懐かしい元の世界の味噌汁は沁みるなあ。少しだけ元の世界が懐かしい気持ちになってしまった。