紫の怪物は動き出した。城をも遥かに越える巨体が、ゆっくりと周囲を踏み均し歩く。そして時折、大きな雄叫びを辺りに響かせる。

 そんな中グレイフェズ達は、各々やれることをしていた。

 グレイフェズは、紫の怪物に向かいながら大剣を構え直す。

 《ホーリーヘルファイヤー・ディストラクション!!》

 そう叫ぶと構えていた大剣の柄に魔法陣が浮かんでくる。すると光が放たれ大剣を包み込んだ。

 それと同時に、思いっきり大剣を右横に振り構え直し反動をつける。そのまま飛び跳ねると、紫の怪物の左脚に目掛け勢いよく大剣を左へ振り斬った。

 すると紫の怪物の斬りつけられた左脚が発光し爆発する。だが……傷一つ、ついていない。

 (クソッ……駄目か……)

 そう悔しがりながら一旦、紫の怪物との距離をおいた。


 片やムドルは紫の怪物の体を使いジャンプしていき右肩の上までくる。

 それに気づいた紫の怪物は、ムドルを横目でみた。

 「ナゼ……コウゲキ……スル……」

 ムドルが聞こえる程度の声を発して、紫の怪物はそう問いかける。

 「会話が可能なようですね。ですが……どういう意味でしょうか? 言っていることが、分からない。私たちはただこの国……いえ、この場所を守ろうとしているだけ」

 「ナラバ……ナゼ……ワレヲ……ツクッタ? ソシテ……ソトニ……トキハナッタ……ノダ……」

 「お前を創ったのは、私じゃない!!」

 そうムドルは言い放ち紫の怪物を睨む。

 「イナ……ソレハ……ドウイウ……コトダ」

 そう言い紫の怪物は不思議に思った。そして自分を攻撃しているグレイフェズの方に視線を向ける。

 「モウヒトリ……ユウシャ……ノ……ニオイ……スル。ドウナッテ……イル?」

 「それは私と下に居るグレイフェズが、勇者と聖女の血筋だからでしょう」

 「ソウイウ……コトカ。ダガ……ナゼ……ジャマヲ……スル?」

 そう問われムドルは、紫の怪物を凝視した。

 「決まっています。この国……いえ、この世界を守りたい。それだけですよ」

 「イミガ……リカイ……デキナイ。ワレハ……ユウシャ二……ツクラレタ……コノ……セカイヲ……メッスル……ソンザイ」

 「……そのようですね。ですが、既にその勇者はこの世に居ない。それも事実です」

 それを聞き紫の怪物は困惑する。

 「ユウシャガ……イナイ。ダガ……オマエタチハ……ソンザイ……シテイル。ソシテ……ワレハ……トキ……ハナタレ……タ……」

 「お前を解き放ったのは、私たちじゃありません」

 「……リカイ……デキナイ。モシ……ソウダト……シテモ……ワレハ……シメイヲ……ハタス」

 そう言い紫の怪物は、ムドルを自分の肩から落とそうと左手で払い除けようとした。

 それに気づきムドルは、咄嗟に避け紫の怪物の肩から飛び降りる。

 地面に着地するとムドルは、紫の怪物を見上げ考え込んだ。

 (これは……厄介ですね。それにこのことを、グレイに教えた方がいいかもしれません)

 そう思いムドルは、グレイフェズの方へと駆け出した。