月が煌々と輝く夜の事──
 コルネリアは夜着に着替えてある人の帰りを待っていた。

「遅い……」

 彼女は自分の部屋の中でぐるぐると歩き回っている。
 口を尖らせて時折ため息をついては、ベッドに座ってじっと門の方を眺めた。

「レオンハルト様、今日は早く帰るって言ったのに……」

 彼女の夫であるレオンハルトは今夜会合があるためある公爵家へと出向いていた。
 夕方には戻ると聞いていたため食事も待っていたが、一向に戻って来る気配がないため、仕方なくコルネリアは一人で食べることとなった。


 もう寝る時間に差し掛かったその時、玄関の前にレオンハルトの乗った馬車が停まった。

「──っ! レオンハルト様っ!」

 コルネリアは急いで玄関へと向かうと、そこにはなんともふらふらとした足つきの夫がいたのだ。

「どうなさったのですか?」
「コルネリア!!!!!」
「──っ!」

 いきなり玄関先で抱き着かれた彼女は、夫の異変に気付いた。

「お酒……ですか?」
「ん? ああ、フィルド公爵がぜひにと勧めてくれて断れなくてね……」