(言えるわけない、好きだなんて。それに……)

 彼女と彼は、王女と従者──
 『禁断の恋』は彼女の恋心の大きな妨げになっていた。



 彼を初めて見かけたのは、クリスティーナが9歳の頃。
 王宮の一角でおこなわれていた王国騎士団の演習がおこなわれている横を通りかかった時だった。

「リュディー! お前は足がいつも疎かだ、そんなんじゃ敵に足元を掬われる」
「はい……」

 あまり覇気があるような声ではなく、どちらかと言えば気弱そうに見えた。
 見えた後ろ姿と長い髪からは綺麗な少女と言ってもいいくらいの線の細さ。
 そんな彼に隣にいた幼馴染のレオンハルト・ヴァイスは騎士団長に見えないようにちょっかいをかけては、リュディーにうっとおしそうにあしらわれている。

(泣き虫レオちゃんと呼ばれたレオンハルトも、隣の彼に比べればだいぶ体格がいいのね)

 クリスティーナより5歳年上で幼馴染のレオンハルトは、両親と祖父を早くに亡くしたこともあり若くして公爵の地位にいる。
 しかし、彼の希望もあって武術や剣術など、騎士と同じ境遇で強さも磨いていた。