呪いが自分の夫の身体を蝕んでいく。
 苦しそうに何度もはあ、はあ、と息を吐きながら、目を閉じて苦しむ。

「コルネリア様?」
「少し外に出てきます」

 コルネリアは静かにその場を去ると、庭園へと向かった。
 庭の象徴ともいえる一際大きな木の裏に隠れると、そのまま崩れるようにしゃがみ込む。

(呪い……レオンハルト様……!)

 呪いを目の当たりにするのは実は初めてではなかった。
 そう、彼女がルセック伯爵家でいた時の患者に一人、酷い呪いにかかったような老婆がいたのだ。
 しかし、もうその老婆がルセック家に来た時には、コルネリアは聖女の力を失ってしまっていた。
 医療で助けることもできず、聖女の力も受けられなかった彼女は、翌日に亡くなった。
 一晩中苦しみ悶え、そして意識を失った数時間後に──

(嫌……もうあの時のようなことは、見たくない)

 コルネリアは涙を堪えながら、唇を噛む。
 そして自分の手のひらをじっと見つめて力を込めてみる。

「どうしてなくなってしまったの?」

 彼女にとって救えなかった事実が重くのしかかり、そして自責の念に駆られる。