眠い…。
アラームのけたたましい音に起こされて、私は眠い目をこすった。昨日は、帰った後も「しゃべり足りないね」ということで交換したSNSのチャットで陽彩と永遠にしゃべり続けていたのだ。
初めてかも、初対面の人と会って話して、勢いでSNS交換するとか…。でも、なんだか今日の目覚めはいい感じだったかもしれない。
そんなことを感じながら、私は顔を洗いに部屋を出た。
「おはよ、白石さん。」
「あ、おはよう。」
朝、正門の所でいつものように白鳥さんが声をかけてくれた。
「もうすぐ文化祭の出し物決めだったよね。何になるんだろう。」
「楽しみだね。白鳥さんは何かやりたいのある?」
「私はカフェ系やりたいなぁ。みんなでコスプレするっていうのも面白そう。白石さんは?」
「私は…なんだろ?お化け屋敷とか?」
「あ、それもいいね!」
珍しく自分から話題をふって会話を続けることに成功した。少しは変わったのかなと思いつつ、一緒に教室へと向かっていたその時、
「あ、朱莉。おはよ。」
後ろから声をかけられた。驚いて振り向くと、そこには陽彩がいた。
「へ⁉おおおはよ!」
「なんでそんなびっくりしてんの。またね。」
クスリと陽彩は笑うと、そのまま私たちのクラスへと入っていった。
びっくりしたぁ。というか同じクラスだったんだ…。自分のことで精いっぱいでクラスメイトの顔も全員は覚えてなかった…。って!
恐る恐る隣にいた白鳥さんを盗み見ると、驚いたように固まっていた。
「し、白鳥さん。」
「いいなぁ。」
うらやましそうに私…ではなく陽彩を見て白鳥さんはつぶやいた。
「え?」
「私も朱莉ちゃんって呼んでもいい?」
そっち⁉てっきり私が普通にあのキラキラ男子としゃべってたことに嫉妬してるのかと…。
「い、いいよ。」
「やった。これで私も陽彩と肩を並べてのスタートだ!あ、私のことも葵でいいからね、朱莉ちゃん。」
「もしかして白鳥さ…じゃない、葵ちゃんって陽彩に何か恨みがあるの?それになんか仲良しだね。」
キッとドアのほうを睨んでいた葵ちゃんに聞くと、目をぱちぱちと瞬かせて私のほうを向いた。
「仲いいっていうか…。幼馴染なの、陽彩とは。でも恋人とかそういうのじゃないから安心してね!奪わないから!」
「え、そうだったの⁉というか奪わないって?」
「え、好きじゃないの?」
なかなかかみ合わない会話をしながら私たちは教室に入り、それぞれの席に向かった。
「それで、さっきの話の続きなんだけど。朱莉ちゃんって陽彩のことが好き、ってことなんじゃないの?」
朝の支度が終わった後、私の席へまっすぐに向かってきた葵ちゃんに私は首をぶんぶんとふって否定した。
「違うよ!えっと、いろいろとあって仲良くなったの。」
「いろいろと、ね…。具体的には?」
「え、具体的⁉」
ニヤニヤと恋バナを楽しむように葵ちゃんは私を見た。自分の趣味のことは他人に話してもいいのかどうか…。陽彩には不可抗力で話してしまったし、ちゃんと受け入れてくれたけど葵ちゃんはどうなんだろう。ぐるぐると考え込んでいたら、先生が入ってきて「ホームルーム始めるよー」と声をかけた。
お昼休みの時間…。
私はお弁当をもって葵ちゃんのもとへと行った。今日はいつも食べてる友達が委員会などでいないらしく、一人だった。これをチャンスに!とよくない事を考えてしまったが、私の趣味を知る人は少なくていい。授業中も考えた末、私は葵ちゃんには本当のことを打ち明けることにした。葵ちゃんなら中学時代の子たちみたいにはならないという希望を胸に私は話しかけた。
「あのっ!朝のことなんだけど…いい?」
「いいよー。私も聞きに行こうと思ってたから。」
にこりと笑ってくれた葵ちゃんの姿に励まされながら、私は「中庭で食べない?」と誘った。
「わ、めっちゃ綺麗!こんなとこあったんだ。」
「私も学校探検してる時に見つけたの。花いっぱい咲いててきれいだよね。」
そんなことをおしゃべりしながら、私たちはベンチに座り、お弁当を広げた。ふと隣を見ると、かわいいお弁当箱においしそうなおかずがたくさん詰まっていた。
「わぁ。おいしそうだね。」
「毎朝手作りしてるの。料理が好きなんだ。」
「へぇー。すごいね。」
私も自分のお弁当を口に運びながら、どんなふうに話を切り出そうか考えていた。すると、ふいに葵ちゃんがお弁当を食べる手を止めて私のほうを向いた。
「それで、話って何?」
「えっと…。私の趣味のことなの。」
「趣味?」
「うん。私前にさ、好きなことないって言ってたけど、実は洋服とかデザインしたり、メイクしたりするのが趣味なの。ちょっと事情があって話せなかったんだけど。でも、今ならいいかなって。陽彩とはそれで仲良くなった、だけだよ。」
思い切って打ち明けてみた。自分でも何を話しているかわからない。ただ、必死になって葵ちゃんに話していた。反応が全くないのでやっぱり引かれたのかなと怖くなってうつむくと、いきなりぎゅっと抱きしめられた。
「私にドーンと頼ってよ、朱莉ちゃん。しゃべっていいんだよ、自分の趣味なんだから。」
「葵ちゃん…。」
「というか、一番仲いいかなーって思ってたのに陽彩に追い越されたことがめっちゃ悔しいし。」
私を抱きしめたまま、葵ちゃんはちょっと不貞腐れたような声を出した。私は涙を流したくなったけれど、何とか思いとどまって、
「ありがとう、葵ちゃん。」
と答えた。
「うん。これからはなんでも話していいからね。」
葵ちゃんも微笑んでくれた。
私は今、大切なことを知ったような気がした。
アラームのけたたましい音に起こされて、私は眠い目をこすった。昨日は、帰った後も「しゃべり足りないね」ということで交換したSNSのチャットで陽彩と永遠にしゃべり続けていたのだ。
初めてかも、初対面の人と会って話して、勢いでSNS交換するとか…。でも、なんだか今日の目覚めはいい感じだったかもしれない。
そんなことを感じながら、私は顔を洗いに部屋を出た。
「おはよ、白石さん。」
「あ、おはよう。」
朝、正門の所でいつものように白鳥さんが声をかけてくれた。
「もうすぐ文化祭の出し物決めだったよね。何になるんだろう。」
「楽しみだね。白鳥さんは何かやりたいのある?」
「私はカフェ系やりたいなぁ。みんなでコスプレするっていうのも面白そう。白石さんは?」
「私は…なんだろ?お化け屋敷とか?」
「あ、それもいいね!」
珍しく自分から話題をふって会話を続けることに成功した。少しは変わったのかなと思いつつ、一緒に教室へと向かっていたその時、
「あ、朱莉。おはよ。」
後ろから声をかけられた。驚いて振り向くと、そこには陽彩がいた。
「へ⁉おおおはよ!」
「なんでそんなびっくりしてんの。またね。」
クスリと陽彩は笑うと、そのまま私たちのクラスへと入っていった。
びっくりしたぁ。というか同じクラスだったんだ…。自分のことで精いっぱいでクラスメイトの顔も全員は覚えてなかった…。って!
恐る恐る隣にいた白鳥さんを盗み見ると、驚いたように固まっていた。
「し、白鳥さん。」
「いいなぁ。」
うらやましそうに私…ではなく陽彩を見て白鳥さんはつぶやいた。
「え?」
「私も朱莉ちゃんって呼んでもいい?」
そっち⁉てっきり私が普通にあのキラキラ男子としゃべってたことに嫉妬してるのかと…。
「い、いいよ。」
「やった。これで私も陽彩と肩を並べてのスタートだ!あ、私のことも葵でいいからね、朱莉ちゃん。」
「もしかして白鳥さ…じゃない、葵ちゃんって陽彩に何か恨みがあるの?それになんか仲良しだね。」
キッとドアのほうを睨んでいた葵ちゃんに聞くと、目をぱちぱちと瞬かせて私のほうを向いた。
「仲いいっていうか…。幼馴染なの、陽彩とは。でも恋人とかそういうのじゃないから安心してね!奪わないから!」
「え、そうだったの⁉というか奪わないって?」
「え、好きじゃないの?」
なかなかかみ合わない会話をしながら私たちは教室に入り、それぞれの席に向かった。
「それで、さっきの話の続きなんだけど。朱莉ちゃんって陽彩のことが好き、ってことなんじゃないの?」
朝の支度が終わった後、私の席へまっすぐに向かってきた葵ちゃんに私は首をぶんぶんとふって否定した。
「違うよ!えっと、いろいろとあって仲良くなったの。」
「いろいろと、ね…。具体的には?」
「え、具体的⁉」
ニヤニヤと恋バナを楽しむように葵ちゃんは私を見た。自分の趣味のことは他人に話してもいいのかどうか…。陽彩には不可抗力で話してしまったし、ちゃんと受け入れてくれたけど葵ちゃんはどうなんだろう。ぐるぐると考え込んでいたら、先生が入ってきて「ホームルーム始めるよー」と声をかけた。
お昼休みの時間…。
私はお弁当をもって葵ちゃんのもとへと行った。今日はいつも食べてる友達が委員会などでいないらしく、一人だった。これをチャンスに!とよくない事を考えてしまったが、私の趣味を知る人は少なくていい。授業中も考えた末、私は葵ちゃんには本当のことを打ち明けることにした。葵ちゃんなら中学時代の子たちみたいにはならないという希望を胸に私は話しかけた。
「あのっ!朝のことなんだけど…いい?」
「いいよー。私も聞きに行こうと思ってたから。」
にこりと笑ってくれた葵ちゃんの姿に励まされながら、私は「中庭で食べない?」と誘った。
「わ、めっちゃ綺麗!こんなとこあったんだ。」
「私も学校探検してる時に見つけたの。花いっぱい咲いててきれいだよね。」
そんなことをおしゃべりしながら、私たちはベンチに座り、お弁当を広げた。ふと隣を見ると、かわいいお弁当箱においしそうなおかずがたくさん詰まっていた。
「わぁ。おいしそうだね。」
「毎朝手作りしてるの。料理が好きなんだ。」
「へぇー。すごいね。」
私も自分のお弁当を口に運びながら、どんなふうに話を切り出そうか考えていた。すると、ふいに葵ちゃんがお弁当を食べる手を止めて私のほうを向いた。
「それで、話って何?」
「えっと…。私の趣味のことなの。」
「趣味?」
「うん。私前にさ、好きなことないって言ってたけど、実は洋服とかデザインしたり、メイクしたりするのが趣味なの。ちょっと事情があって話せなかったんだけど。でも、今ならいいかなって。陽彩とはそれで仲良くなった、だけだよ。」
思い切って打ち明けてみた。自分でも何を話しているかわからない。ただ、必死になって葵ちゃんに話していた。反応が全くないのでやっぱり引かれたのかなと怖くなってうつむくと、いきなりぎゅっと抱きしめられた。
「私にドーンと頼ってよ、朱莉ちゃん。しゃべっていいんだよ、自分の趣味なんだから。」
「葵ちゃん…。」
「というか、一番仲いいかなーって思ってたのに陽彩に追い越されたことがめっちゃ悔しいし。」
私を抱きしめたまま、葵ちゃんはちょっと不貞腐れたような声を出した。私は涙を流したくなったけれど、何とか思いとどまって、
「ありがとう、葵ちゃん。」
と答えた。
「うん。これからはなんでも話していいからね。」
葵ちゃんも微笑んでくれた。
私は今、大切なことを知ったような気がした。