だけれど今年の夏休みは実際そうはならず、騒がしい日々を過ごすことになった。
 始まりは三日後、夏休みになり最大限シフトを入れたバイトの一日目の朝礼だった。
「七瀬小春と申します! お願いします!」
 溌剌とした挨拶を、皆が拍手で迎える。
「なんで君が?」と僕が呟くと「知り合い!?」と、チーフが露骨に驚いて言った。
「親友です。ねぇ〜?」
 と、七瀬が言って人懐こい笑顔を僕に向けると、皆が不思議そうに僕らを見比べた。
「じゃあ、吉良くんが教育してあげてよ」
 そうして店長がそう言うと、僕は次の瞬間には、気づけば七瀬の教育担当になっていた。
 ミーティングが終わると仕事が始まり、文字通り僕が七瀬を教育する担当となる。だけれど、僕が教えるというより、むしろ僕の方が彼女に聞きたいことが沢山ある。
「なんでバイト? それもなんでここなの」
「夏はお金を使うし、ここは週払いオッケーらしいし。あと友達が居ると続けやすいしね」
「いや、なんで僕のバイト先を知ってるの?」
 そう言った僕を、しかし七瀬は、
「そろそろお仕事教えてよ。労働は真面目にだよ。さぁさ、これどうするの?」と躱した。
 丁度その時、後ろからチーフがやって来たから助かったと言えばそうだけど、それでこの話はうやむやになってしまった。
 ただ七瀬は、さっきの言葉に恥じないくらい仕事に励んだ。それこそ仕事中に僕に話しかけるでもなく真面目に働いた。それは初日だけじゃなく三週間もそのままで、実際、僕らが日々会話を交わすのは帰り道だけだった。
 七瀬と以前に一悶着あった例の交差点まで一緒に帰って、いつもそこで別れた。会話はどれも取るに足らないもので、収穫といえば、七瀬お得意の雑学的な知識と、コンビニ大手四社のコーヒーに、それぞれの個人的な美味しさランキングを付けられたくらい。おまけで、ランキングは七瀬が実はコーヒーが飲めないという事実を知ってから始まったものだから、彼女の意外な弱点を知れたという意味では、ある種、それも収穫の一つだった。
 まぁでも七瀬の飲めるコーヒーは今のところコンビニでは見つからなくて、彼女曰くギリ勝負できるらしいカフェモカを飲みながら、特訓と称して駄弁っていることがほとんどだった。

「お疲れ様でした」
 今日もバイトを終えた。シフトは六時から九時。いわゆる早朝シフトだった。
 日が登っている間の暇を潰したいがためにバイトをしている僕としては、不本意なシフトではあるけれど、夏休みとあっては仕方ない。日中は主婦方が優先され、暇な学生で夕方シフトを取り合うのは、もはや一種の夏休みの風物詩みたいなものだ。
 けれど流石に……ここからが今日の始まりだと言わんばかりの、灼熱のお天道様の追い討ちにはウンザリする。
 この蒸し暑さと蝉の喧騒から逃れる為には、電車で少し行った、そう、七瀬と映画を見に行った、あの駅にある図書館に向かうしかない。
 ただ勿論、本は読まない。夏休みの課題を、こういう日にこそまとめて消化するのだ。
 そう意気込み、教科書で重くなったリュックをジャンプするように弾みで浮かせて担ぎ直した、その時だった。
「うぇっ?」
 戻ってくるはずのリュックの重みを感じない、なぜか、リュックが宙に浮いている?
「なにこのリュック、めちゃ重いじゃん!」
 ここ最近、聞き慣れた声。七瀬だとすぐにわかった。
「……そういや今日も君と同じシフトだったね」
「そういやも何もわかってたくせにっ」
 言うや否や「えいっ」と、いう声と共に、ドスンとリュックの重みを返される。そのまま背後からするりと隣に並んだ七瀬は、僕の顔を覗き込むように見て言った。
「なるほど。私に内緒でどこかに行くから、黙って一人で帰ろうって魂胆なんだね?」
 相変わらず感が鋭いというか、目敏いと言うか……。それに魂胆って何だよ。
「図書館に行くだけだよ。夏休みの課題、まとめてやろうと思って」
「あぁそゆこと。図書館ね……って、あ〜ぁ。 私たちの思い出の駅にあるとこかぁ?」
「そ、だから今日は僕、こっちだから」
 最近、僕も七瀬のこういう面倒なノリを自然に流せるようになった。
 軽く気にも止めずと言った風に身を翻し、いつもとは逆方向に交差点を曲がる——けど、ここで素直に引き離してくれないのも七瀬だ。
「わたしも実は街に用があるんですぅー」
 白々しく言って、追いかけるようにまた僕の隣に並んだ。
「僕、今日は本当に勉強するよ?」
「やだな、別にお邪魔虫しようってわけじゃないよ。本当に別に用事があるの。もぅ、自信過剰なんだから」
「……まぁ、とにかくお邪魔虫じゃないなら、良いけどさ」
 ため息を吐きながら言ったのに、七瀬は構わず「ふふん」と、鼻歌を歌うように笑った。
 それから二回チラチラと僕を見て、また口を開いた。
「ところで吉良くん。お邪魔虫の言葉の由来は知ってる?」
「その調子じゃ、早々に勉強の邪魔をしてきそうな雰囲気だけど?」
「まだ図書館じゃないからいいじゃん。それに雑学だって学び。学問だよ。学問を疎かにするとは、吉良くんは学生の風上にも置けないね」
「なるほど。僕が風上に居ないから、邪魔な虫が寄りつくってわけなんだね」
 あえて七瀬を覗き込むように見ながらそう言った。
 対して七瀬は頬を膨らませる。
「相変わらず意地悪だね! この意地悪虫ぃ!」
「残念、意地悪虫なんて言葉はないよ」
「うるさーい! 意地悪虫でうるさい虫には、もっとうるさいお邪魔虫が寄生してやる!」
 そう言うや否や、七瀬が僕の背後に回り込み、ただでさえ重いリュックに抱きついて、
「ほれ、みんみんみんみんー! つくつくぼーし!」と、喚き始めた。
 演技が割と迫真で、絶妙なウザさも相まって、思わず僕は吹き出してしまう。
 すると七瀬の鳴き声も、すぐに笑い声に変わった。
 リュックが解放されると同時に、お腹を抱えた七瀬が戻ってきた。
 お互いに息を整え、前へ向き直った時には、もう駅にたどり着いていた。
 駅名の看板をくぐり、改札を抜ける。駅舎には外で鳴くツクツクボウシの声が反響して聞こえていた。

 ホームに着くと丁度、電車がやってきた。
 乗り込むと、扉のすぐ側の空席へ七瀬と隣同士で腰掛ける。
 向かい合う長椅子のような座席には、最初こそお年寄りが数人だったけれど、数駅と過ぎるうちに僕達よりも少し歳上くらいの若者が増えてきた。
「皆、大学生って感じだね」
 七瀬がこそっと静かに言った。
 背格好は大きく変わらないはずなのに、たしかに僕とは違って、彼らにはいわゆる垢抜けた感? があった。服装の違いか、はたまた少し明るい髪色のせいだろうか。
 そう考えながら何となく七瀬に向いてみると、彼女には特段、周りの大学生たちとのギャップはない気がした。そんな七瀬がポツリと呟く。
「大学生って、人生の夏休み期間なんだって」
「じゃあ夏休み中の大学生は、夏休みの中の夏休みにいるわけだ」
 七瀬はぼんやりと「たしかに」と言った後「エドガー・アラン・ポーの『夢の中の夢』みたいだね」と返した。
 エドガー・アラン・ポーの『夢の中の夢』は、僕も知っていた。頭の中でその内容の大体を思い出せたのは、それが小説ではなく詩の体裁であったから。
 ただ、その内容は何も今話し合うようなものではなかったし、七瀬自身も語呂が似ているくらいのイメージで話題に出したのだろうと思っていた。
 だから、眺める彼女のその横顔の哀愁に、僕は違和感を覚えた。
「七瀬?」
 けれど直後、七瀬はまたいつものように僕に向いて「ふふん」と謎に笑ったから、杞憂だったらしい。七瀬はまた深く椅子にもたれるように座って言った。
「羨ましいねぇ。大学生」
 そう言われても、僕は大学生に対し何の羨望も抱いていない。人生の夏休みと形容される程の自由な時間を有意義に過ごせる自信も、さらに勉学に励みたいという意識もなければ、その先に広がる未来も想像すらできない。
 対して七瀬にしてみれば、それらの全てに憧れを抱いていると言う訳なのだろう。
「君もあと二年もすれば大学生になれるだろ。本来は頭も悪くないんだし。それに君のことだから、大学生活もきっと上手く乗りこなすんだろうさ」
「……やっぱり? そう見える?」
 七瀬は少し間をおいて、はにかみながらそう答えると、そのまま続けた。
「吉良くんは、大学とか行くの?」
「行かないよ」
「行きたいとは思う?」
「わからない」
「そっか」
 淡々と、特に感情もなくそう受け答えをした。
 本当にどうでもいいというか、途方もないくらい想像もできないし、実感もない話だった。
「もし大学生になったなら、やってみたいこととかはないの?」
 やってみたいことも勿論ない。けれど淡白な返事だけを繰り返すと七瀬がまた拗ねるだろうから、適当に視界に入っていたスーツケースを持った学生を見て言った。
「旅行かな」
「あら、意外だね」
 発した時こそ他意はなくそう言った。しかし、自分でも意外だった。言葉にしてみると本当に興味を惹かれる気がした。ただ旅行とは少しニュアンスが違う。もっと近い言葉にすれば、
「どこか遠くへ行きたい」かもしれない。
 考えていると、意図せずその一端が口から漏れた。
 すると、その言葉を拾い上げるかのように七瀬が不意に僕の腕を掴んだ。そして——、
「遠くに行きたいの?」と僕の目を覗き込んで「それとも」と続けて、こう言った。
「行ってしまいたい?」
 なぜだか、七瀬が僕を睨んでいるように見える。
「何? どうしたの?」
 僕が身を引きながら言うと、七瀬は手を離し、ゆっくり腕を組み直してから言った。
「何でもないよん」
「い、意味がわからないんだけど、マジで」
 七瀬は長くため息をついて、それから右手の人差し指をスッと立てて言った。
「まぁ強いて言うなら、旅行は逃げるためのものじゃない。迎えに行くものだ。って感じかな」
「はぁ?」
 困惑する僕の隣で、七瀬は謎にコクコクと頷いている。意味不明すぎて呆れてきた。
 そして呆れたらやっと思い出した。彼女は元より話を無駄にややこしくする天才だった。
 だったら雑に割り切って、さっさとこの不毛な会話を終わらせるべきであることも思い出す。
「まぁとにかく、旅行ならちょうど修学旅行があるもんね。そこで行けるからいいや」
 そう言って終わろうとした。でも、今日の七瀬は、また一段と頑固だった。
「吉良くんは、大勢じゃなく、一人で旅行に行きたいんじゃないの?」
「話を戻すのかよ」と、もはや口に出してしまった。けれど七瀬の言ったことは的を得ていた。そういえば七瀬は不必要な場面で妙に鋭いことを言う天才でもあるのだった。それでも僕は、
「まぁそうだけどさ」と言った後に続けて、
『もうこの話はいいだろ』と続けて今度こそ終わらせようとした——その時だった。
「じゃあ旅行、私と行こっか」
「……は?」
 たしかに七瀬は、突拍子もないことを言う天才でもあった。
「このまま、今から二人で」
 ただ今日のはさすがに、度がすぎていた。
「なんで……?」
 未だ冗談だと疑う僕に対し、七瀬はふざけた様子もなく、こう言った。
「さっき吉良くんがわからないと言った言葉の意味を、探しに行くために」
 刹那、状況の整理がついていないうちに僕の耳へ飛び込んできたのは、降りる予定だった駅からの出発を伝える車内アナウンスだった。

「……て言うか君、今日、他に用事があるって言ってなかった?」
 そう僕が言ったのは、わけのわからないままに乗り換えた特急電車の中、車内販売で買った幕内弁当のがんもを口に含もうとする瞬間の七瀬に向かって。
 がんもを一口で頬張りながら七瀬が言う。
「ぼ、ぼじろんうぼにぎばっ——」
「飲み込んでからでいいよ」
「……んぐっ。もちろん嘘に決まってるじゃん」
「もちろんなんだ。潔いね」
「でも、チャンスがあればいつでも吉良くんと阿古屋に行きたいと思っていたって意味では、いつかの用事を遂行できているとも言えるよ」
 七瀬が今言った通り、旅行とは言っても日帰りで阿古屋に行くというだけだった。それも、旅行委員としての修学旅行の下見として。
「ところで吉良くんこそ、珍しく文句も言わずに付いてきたね」
「一応、文句を言っていないことはないし、無理矢理連れてきておいてよく言えるね」
「何で今日は素直に付いてきたの?」
 七瀬は、もはや僕の話を聞かないスタンスらしい。
「はぁ……なんとなくだよ」
「やっぱり本当は一人じゃなくて、私と二人っきりの旅行に憧れてたとか?」
「……二人旅行で、どちらかを不機嫌にさせたら楽しくなくなると思うよ?」
「ごめん。ごめん。謝りますとも。付いてきてくださって、どうもありがとうございますぅ」
「はい。どういたしまして」
 二人で頭を下げてから、どちらともなくクスッと笑った。僕は照れ隠しに言葉を発した。
「そんで、下見って何をするの?」
「特にこれと言ってやることはないよ。行く予定の先々を見て周る感じかな。名付けて、ザ・下見だね」
「ん……それ何の為に行くの?」
「もしも私が修学旅行に行けなくなった時のために、吉良くんに現地をしっかり把握させておくのさ」
 言いながら、七瀬がお金持ちのおぼっちゃまキャラがやるような動作で、前髪をファサッと撫で上げる。その行為の意味はもちろん謎だった。
「そんな状況、想像もできないね。君なら仮に風邪をひいたって、いや、むしろどんな病気に罹っても、這ってでも来そうだ」
「確かに。病気くらいだったら、私は行くだろうね」
 七瀬がカラカラと笑った。それから、また自分の弁当に目線を下ろして、こう言った。
「まぁでも、さっきも言ったけどさ。この旅行にまだ理由は無くたっていいんだよっ」
 七瀬はその言葉を弾みにするように立ち上がると、僕の目を見ながら続ける。
「吉良くんと二人で阿古屋に行く。その理由は、これから私が探し出してみせるから——」
 そう言った七瀬の声を全て聞いたかどうかわからないうちに、僕の手元で軽い音がした。目線を向けると、僕の死角から伸びた七瀬の箸が、僕の弁当の卵焼きを奪い損ねていた。
「おいっ」
「ちぇっ。バレたか……」
 七瀬は席に座り直すと、白飯の上の梅を口に含んで、口を窄ませた。
 それを見て、ため息のような笑いが漏れた時にはもう、直前の七瀬の言葉など忘れていた。

 弁当を食べ終わった僕達は、どちらともなく「「ふぅ」」と息を吐いて席に背中を預けた。
 その一瞬に静寂が訪れ、目的の駅までの残り一時間の過ごし方を選択させるかような時間が訪れる。
 僕は何も考えずにリュックの中の課題に手を伸ばしかけて——でも辞めた。
「到着まで何する?」
 そう言って七瀬に向くと、彼女がやけに暑苦しい視線を僕に向けていた。
「え、課題はいいの?」
「この状況では、やる気にならないよ」
 パァッと明るい笑顔になる七瀬。その頬をムニムニと揉みほぐしてから言う。
「私さ、旅行の道中の特別感も好きなんだよね」
 その笑顔を見て、課題を後回しにしたことによる未来は考えないことにした。ここまで来たら七瀬にとことん付き合ってやろうと思った。
「それで何する?」
「そうだねぇ、流石に私もトランプとかUNOとかを常備してはいないし……」
「別にすぐにスッとモノを出せって言ってるわけじゃないよ」
「わかってるよ。わかってるけど、今の言い草はなんか、ワルの感じがしたね! 『ブツを出せっ』みたいなさ」
「……相変わらず想像力が豊かだね」
「そういえばワルな感じのゲームって言えばさ——」
「……あぁ、ワルな感じから話が続くんだね」
「うん。それで、この前見た映画で麻雀のシーンがあってさ、あれ結構面白そうなんだよね」
「麻雀か——てかその前に意外。極道系って言うのかな? そういうのも観るんだね」
「極道というより、任侠系かな。主人公もマタギの人だったし」
 任侠系でマタギ……? そんなジャパニーズB級ジャンルが……いや、たぶん七瀬は——
「今、カタギって言おうとした?」
 僕がそう言うと、七瀬が固まった。みるみる顔が赤くなり顔を伏せると、フルフル震えだす。彼女はそのまま早口で言葉を並べ始めた。
「い、いや、東北の村で生まれたマタギ太郎が、任侠ヶ島に極道退治に行く話で、毎日おじいさんは山でしばかれて、おばあさんは川で血を洗い流して——」
「いやいや物騒! 物騒すぎるから! 君が言い間違えただけで、無闇に被害者を作るなよ」
 僕がそう言うと、七瀬は両手で顔を覆いながらこう返す。
「確かに、作品への敬意がなかったね……」
「そっちかよ」
 何にせよ、なぜかひどくダメージを食らっているらしいから、僕から話を戻してやろう。でもせっかく七瀬へいつもの仕返しができるチャンスだ。少し恩を売るような言い方にはしておきたい。
「しょうがないね。話を戻すために助け舟を出してあげるよ。話を巻き戻して、うん。まぁ確かに麻雀には、アウトローなイメージはあるね」
「助け舟、あぁ昔話つながりで、一寸法師かな? うん。確かにその例えはアウトロー、外角低めな感じで、カッ飛ばないボケだね!」
「無理矢理に共倒れを狙おうとするなよ! 僕まで引きずり込むな。善意を返せ!」
 顔を抑えたままの七瀬がそのまま笑って、ただでさえ赤い耳がさらに真っ赤になった。
 まだ笑いながら顔から手を離し、ポケットを弄るとお馴染みのチョコバーを取り出した。
「ごめん。これで、手打ちにしてくだせぇ」と、僕の前に両手で高く差し出した。
 僕までまた呆れて吹き出してしまった。
 その後、呼吸を整えた僕らは、遅れて麻雀のルールや役について調べ、説明を読み上げながら互いに「へぇ」とか「ほぅ」とか言っていた。つまりは思う以上に複雑だったのだ。
 用語の読み方も特徴的で『平和』という役は『ピンフ』と読むらしく、以前に現代文の授業で青葉がそう読み間違えていたことを二人で思い出して、妙な答え合わせができた。
 他には『役満』という最高得点のつく役を、七瀬が「ジャーナリストのあの人みたいな名前だね」と言って、調べると元は漫画家らしく、終いにはその芸名は本当に役満から来ていると知り、妙な答え合わせは二問目を突破したのだった。
 結局は麻雀について話しているうちに話が逸れて、いつも通りのふざけた会話をしていると、目的の駅に着くまではあっという間だった。