フォースレイスを倒して帰って来てから、みんなで泥のように眠りに付いた。
次の日起きたら、ベッドの中でフィリアも一緒に倒れるように寝ていた。
静かに寝息を立てて眠っている彼女が可愛らしい。
まだ昨日のフォースレイスとの戦いの興奮が収まらず、少し震える自分の手を見つめた。
「勝ったんだ…………」
思わず、ポツリと言葉を漏らしてしまった。
「ん…………ソラ?」
「あ、起こしてしまった。ごめん」
「ううん、…………どうしたの?」
「……昨日の戦いを思い出してさ」
「ふふっ、昨日は頑張ったもんね」
「ああ、でも俺だけじゃない。みんなが頑張ってくれたおかげだよ。戦いの最中に何度も仲間に助けられたな」
「うん。私達……遂に勝ったんだね」
「ああ。でもここからが始まりだ。フィリア、これからも――――」
「あ~あ~、ここは甘いお花畑なのかしらね~」
窓の外からアムダ姉さんの声が聞こえた。
「あはは…………フィリア、行こうか?」
「うん!」
俺はフィリアと手を繋ぎ、家を後にした。
◇
「いらっしゃい。ソラくん」
「こんにちは、ガレインさん」
俺達は冒険者ギルドから呼ばれ、フィリア、カール、アムダ姉さん、イロラ姉さんと五人でガレインさんの所にやってきた。
「よく来てくれた。早速だが――――『フォースレイス』の討伐おめでとう」
「あ、ありがとうございます。もうガレインさんに届いているんですね」
「そうだとも。『フォースレイス』を倒したパーティーの噂が広まらないはずもない。今ではソラくんのパーティーは一躍有名だよ?」
「ええええ!? そんなに早くですか?」
「ああ。冒険者ギルドでもすぐに噂が広まってくれてね」
「なるほど……だから既に知っていたんですね」
ガレインさんが「うんうん」と頷く。
「それで、どうして呼ばれたんですか?」
「ん? 君は不思議な事を聞くね? 『フォースレイス』を目指した理由を忘れたのかい?」
「えっ? 確かに僕達は『フォースレイス』を倒したんですが…………まだクランの目標は達成出来てないんですけど……?」
「ん? 達成出来てない? どういう事だい?」
ガレインさんがキョトンとする。
俺達の目標は『フォースレイス』を倒して『フォースクロース』を持ってくることだ。
ただ、既に『フォースクロース』は持っている。ちゃんとフィリアが守ってくれている。
俺達に足りないのは…………
「だって、俺達はフィリアと一緒に倒したんですよ?」
「ん? あ~なるほど! つまり、君は、『剣聖』であるフィリアくんと同じパーティーで『フォースレイス』を倒してしまったから、今回の試練は突破出来なかったと」
「え、ええ」
「あははは~ソラくん。君は本当に面白いね! うん。本当に気に入ったよ!」
ガレインさんが大笑いした。
それを俺達は不思議そうに見つめる。
「僕は君に剣聖くんと同じパーティーであってはならないとは一言も言ってないんだけどね?」
ガレインさんの言葉に、俺の思考が停止する。
え?
フィリアと一緒に戦って良かったの?
あの剣聖のフィリアと?
「ふむ、みんな納得いかない顔だね。フィリアくんが剣聖なのは知っているが、剣聖くらいで『フォースレイス』は倒せないよ? あの魔物の別名は『絶望の軍団』さ。軍団と付く理由を君達は味わったのだろう?」
「あ……もしかして、ハイレイスがあんなに大量に現れたのって……」
「ああ、フォースレイスの取り巻きさ。あれは倒しても倒してもずっと現れ続ける。生半可なパーティーなら耐える事すら出来ないのさ」
ガレインさんの言葉に、フォースレイス戦を思い浮かべると、確かにその通りだと思う。
あのハイレイス達の魔法の数と、フォースレイスは単純だが、強力過ぎる広範囲魔法はフォースレイスの耐久が減れば減るほど強くなるのは、絶望に等しいのだろう。
「そんな相手に剣聖をたった一人入れたくらいで勝てた君の実力を、ギルドマスターとして高く評価せざるを得ないのさ。だから、ソラくん。この試練を乗り越えた君だからこそ、セグリス冒険者ギルドマスターとして、君に今一度聞こう」
最も聞きたかった言葉。
俺達がずっと目指してきた道のり。
周りの人々からすれば、俺達の努力は速かったかも知れない。
人よりも努力をしてないように見えているかも知れない。
それでも、俺達は決して楽な道を歩んでいない事を知っているし、俺達を見て来た沢山の人々もそれを分かってくれた。
だからこそ、俺達はこれからも前を向いて走り続けたいと思う。
「ソラくん。クランを結成するかい?」
「はい! よろしくお願いします!」
「分かった。セグリス冒険者ギルドマスターとして、ソラくん。君のクランを正式的に許可する」
この日。
セグリス冒険者ギルドマスターのガレインの承認により、一つのクランが誕生した。
その報せは王国だけでなく、隣国にも広まる事となり、瞬く間に広まる事となった。
何故瞬く間に広まったのか。
それには二つの理由がある。
一つ目は、冒険者ギルドマスターのガレインという史上最強と呼ばれている男が唯一認めたクランである事。
二つ目は、そのクランマスターが『転職士』であるからだ。
こうして『転職士』のクランマスターが誕生する事によって、王国は、いや、世界は大きく変わろうとしていた。
――――『一章』後書き――――
日頃『幼馴染『剣聖』はハズレ職能『転職士』の俺の為に、今日もレベル1に戻る。』を読んで頂きありがとうございます!
この話で『一章』が終わりとなります。一章のテーマはクランを設立するまでの話を書いております。
ソラだけでなく、フィリアとカール、アムダやイロラ、先輩達の頑張る姿をしっかり書けたと思っております。
ここまで読んで頂けた方なら既に作品フォローはしてくださっていると思いますが、この先も楽しみだと思われた方は、是非作品フォローと★を3つ入れて頂けると作者のモチベが上がり、これからの執筆も頑張ります!
さて、ここからの進行の件になりますが、二章からはソラくん達のクランの話となります。
一章で猛威を奮っていた弓士隊は卒業してセグリス町に残りますが、ソラ達の冒険が新たに始まります。
それに伴い、また魅力的な仲間が増える予定でございます。
新たな仲間やソラ達の活躍を楽しみに待ってくださると嬉しいです!
作者御峰はこれからも精力的に執筆を頑張っていきますので、読者様の温かい応援を心からお待ちしております! よろしくお願いします!
あ、それと明日から一話投稿に戻りますのでよろしくお願いします!
次の日起きたら、ベッドの中でフィリアも一緒に倒れるように寝ていた。
静かに寝息を立てて眠っている彼女が可愛らしい。
まだ昨日のフォースレイスとの戦いの興奮が収まらず、少し震える自分の手を見つめた。
「勝ったんだ…………」
思わず、ポツリと言葉を漏らしてしまった。
「ん…………ソラ?」
「あ、起こしてしまった。ごめん」
「ううん、…………どうしたの?」
「……昨日の戦いを思い出してさ」
「ふふっ、昨日は頑張ったもんね」
「ああ、でも俺だけじゃない。みんなが頑張ってくれたおかげだよ。戦いの最中に何度も仲間に助けられたな」
「うん。私達……遂に勝ったんだね」
「ああ。でもここからが始まりだ。フィリア、これからも――――」
「あ~あ~、ここは甘いお花畑なのかしらね~」
窓の外からアムダ姉さんの声が聞こえた。
「あはは…………フィリア、行こうか?」
「うん!」
俺はフィリアと手を繋ぎ、家を後にした。
◇
「いらっしゃい。ソラくん」
「こんにちは、ガレインさん」
俺達は冒険者ギルドから呼ばれ、フィリア、カール、アムダ姉さん、イロラ姉さんと五人でガレインさんの所にやってきた。
「よく来てくれた。早速だが――――『フォースレイス』の討伐おめでとう」
「あ、ありがとうございます。もうガレインさんに届いているんですね」
「そうだとも。『フォースレイス』を倒したパーティーの噂が広まらないはずもない。今ではソラくんのパーティーは一躍有名だよ?」
「ええええ!? そんなに早くですか?」
「ああ。冒険者ギルドでもすぐに噂が広まってくれてね」
「なるほど……だから既に知っていたんですね」
ガレインさんが「うんうん」と頷く。
「それで、どうして呼ばれたんですか?」
「ん? 君は不思議な事を聞くね? 『フォースレイス』を目指した理由を忘れたのかい?」
「えっ? 確かに僕達は『フォースレイス』を倒したんですが…………まだクランの目標は達成出来てないんですけど……?」
「ん? 達成出来てない? どういう事だい?」
ガレインさんがキョトンとする。
俺達の目標は『フォースレイス』を倒して『フォースクロース』を持ってくることだ。
ただ、既に『フォースクロース』は持っている。ちゃんとフィリアが守ってくれている。
俺達に足りないのは…………
「だって、俺達はフィリアと一緒に倒したんですよ?」
「ん? あ~なるほど! つまり、君は、『剣聖』であるフィリアくんと同じパーティーで『フォースレイス』を倒してしまったから、今回の試練は突破出来なかったと」
「え、ええ」
「あははは~ソラくん。君は本当に面白いね! うん。本当に気に入ったよ!」
ガレインさんが大笑いした。
それを俺達は不思議そうに見つめる。
「僕は君に剣聖くんと同じパーティーであってはならないとは一言も言ってないんだけどね?」
ガレインさんの言葉に、俺の思考が停止する。
え?
フィリアと一緒に戦って良かったの?
あの剣聖のフィリアと?
「ふむ、みんな納得いかない顔だね。フィリアくんが剣聖なのは知っているが、剣聖くらいで『フォースレイス』は倒せないよ? あの魔物の別名は『絶望の軍団』さ。軍団と付く理由を君達は味わったのだろう?」
「あ……もしかして、ハイレイスがあんなに大量に現れたのって……」
「ああ、フォースレイスの取り巻きさ。あれは倒しても倒してもずっと現れ続ける。生半可なパーティーなら耐える事すら出来ないのさ」
ガレインさんの言葉に、フォースレイス戦を思い浮かべると、確かにその通りだと思う。
あのハイレイス達の魔法の数と、フォースレイスは単純だが、強力過ぎる広範囲魔法はフォースレイスの耐久が減れば減るほど強くなるのは、絶望に等しいのだろう。
「そんな相手に剣聖をたった一人入れたくらいで勝てた君の実力を、ギルドマスターとして高く評価せざるを得ないのさ。だから、ソラくん。この試練を乗り越えた君だからこそ、セグリス冒険者ギルドマスターとして、君に今一度聞こう」
最も聞きたかった言葉。
俺達がずっと目指してきた道のり。
周りの人々からすれば、俺達の努力は速かったかも知れない。
人よりも努力をしてないように見えているかも知れない。
それでも、俺達は決して楽な道を歩んでいない事を知っているし、俺達を見て来た沢山の人々もそれを分かってくれた。
だからこそ、俺達はこれからも前を向いて走り続けたいと思う。
「ソラくん。クランを結成するかい?」
「はい! よろしくお願いします!」
「分かった。セグリス冒険者ギルドマスターとして、ソラくん。君のクランを正式的に許可する」
この日。
セグリス冒険者ギルドマスターのガレインの承認により、一つのクランが誕生した。
その報せは王国だけでなく、隣国にも広まる事となり、瞬く間に広まる事となった。
何故瞬く間に広まったのか。
それには二つの理由がある。
一つ目は、冒険者ギルドマスターのガレインという史上最強と呼ばれている男が唯一認めたクランである事。
二つ目は、そのクランマスターが『転職士』であるからだ。
こうして『転職士』のクランマスターが誕生する事によって、王国は、いや、世界は大きく変わろうとしていた。
――――『一章』後書き――――
日頃『幼馴染『剣聖』はハズレ職能『転職士』の俺の為に、今日もレベル1に戻る。』を読んで頂きありがとうございます!
この話で『一章』が終わりとなります。一章のテーマはクランを設立するまでの話を書いております。
ソラだけでなく、フィリアとカール、アムダやイロラ、先輩達の頑張る姿をしっかり書けたと思っております。
ここまで読んで頂けた方なら既に作品フォローはしてくださっていると思いますが、この先も楽しみだと思われた方は、是非作品フォローと★を3つ入れて頂けると作者のモチベが上がり、これからの執筆も頑張ります!
さて、ここからの進行の件になりますが、二章からはソラくん達のクランの話となります。
一章で猛威を奮っていた弓士隊は卒業してセグリス町に残りますが、ソラ達の冒険が新たに始まります。
それに伴い、また魅力的な仲間が増える予定でございます。
新たな仲間やソラ達の活躍を楽しみに待ってくださると嬉しいです!
作者御峰はこれからも精力的に執筆を頑張っていきますので、読者様の温かい応援を心からお待ちしております! よろしくお願いします!
あ、それと明日から一話投稿に戻りますのでよろしくお願いします!