「シロ、本当にありがとう」
「(構わん、ニコラが心配するから早く家に帰りなさい)」
「うん、ありがとう。風邪ひいちゃだめだよ」
「(魔獣が風邪など引くか)」
「もう、強がっちゃって……」

 そんなたわいもない話をしながらリーズは久々に会ったシロとの話を楽しむ。
 と同時に、すぐに来てしまう別れに寂しさも感じていた──


 その晩のこと、リーズは人さらい犯の男たちを王国警備隊に引き渡したニコラと温かい紅茶を飲みながら話をしていた。

「怖かっただろう」
「いいえ、だってシロとニコラが来てくれたもの……!」

 リーズは紅茶を一口飲むと目の前から視線を感じて顔をあげる。
 すると、ニコラの顔が目の前にあり、驚いて目をまんまるくした。

「──っ!!!」
「本当は?」
「え?」
「本当は怖かったんじゃないの?」

 そう言われてリーズは少し目を泳がせた後で、俯きながら小声で呟く。

「……かった……」
「ん?」
「怖かったわ。すごく、もうニコラに会えないんじゃないかって」
「シロじゃなくて?」
「え?」