珍しくニコラの仕事が休みなこともあり、二人は歩いて森へと向かっていた。
 ここらの森はリーズが捨てられた森とはまた別の森で、リスやうさぎなどの比較的小動物しかいない危険が少ない森で、村の皆もよく散歩している。
 そんな村の庭のような場所に、一件の小さなカフェがある。

「こんなカフェが……」
「ああ、村のみんなの憩いの場所の一つだよ」

 そう言いながらニコラはカフェのドアを開けて中へと案内する。
 木の香りの漂う店内に、紅茶の香りがふわっとリーズの鼻をくすぐった。
 木の板で作られた椅子に毛糸で作られたお手製の座布団が敷かれており、二人はそこに腰かける。

「マスター、ベリーティーは今日ある?」
「ああ、あるよ。ちょうど採れたてさ」
「じゃあ、それ二つ! あと、おすすめのケーキも二つお願いできるかな?」
「ああ、了解。ちょっと待ってな」

 慣れた様子でマスターに注文をするニコラをじーっと見つめるリーズ。
 ぽやりとした様子でニコラを見つめるものだから、さすがの彼も少し照れて顔を逸らす。

「その顔は反則……」
「……?」