朝食をとった二人は食後のコーヒーを飲みながら、今後の生活とこの辺境の地について話していた。

「ここはいわゆる王都からは『辺境の地』と呼ばれるキュラディア村というところなんだ」
「きゅらでぃあ村?」
「ああ、数十人の小さな村でどの家庭もだいたい農業など自給自足で暮らしている」
「自分たちでものを作っているのですね?」
「ああ、だが積極的に協力し合っているから野菜を交換したり、みんなでお金を出し合って王都の市場に行って買い物をしたりする」
「なるほど」

 コーヒーを一口飲んで、再び二コラは語り始める。

「リーズにはゆっくりここでの生活に慣れてもらいたいなと思うから、最初はゆっくりお散歩とかしてごらん」
「村のみんなには今朝話してあるから」
「ありがとうございます」
「記憶がないことだけ話してある。そこからは自分で村のみんなに話したいと思ったら話してごらん」
「大丈夫でしょうか……」

 二コラはコップをそっとテーブルに置くと、リーズの手を握る。
 その手は彼の温かさなのか、それとも飲み物で暖まったからなのか、リーズにはとても嬉しくて優しいぬくもりだった。

「村のみんなは優しいよ。でももし不安があったらいつでも俺に話して? 一緒に出かけるようにするから」
「ええ、ありがとう、二コラ」

 そっとそのまま二人は見つめあって、目が離せなくなった。

「リーズ」
「二コラ……」