♢♢♢♢♢
『そろそろお支度を。』
と言われて、着替えを済ませたら、龍咲さんが、
『美月様がきっと喜ぶからと藍蓮様に頼まれましたのでと言って、お化粧と髪のセットもします。』
と言った。
家に帰れば、お洒落をすることが気に入らないお母さんや美咲がいる。
もう、少ししたら離れて暮らすから、わざわざ、揉めごとを起こしたくなくて、やんわり断ったけど、龍咲さんは頼まれましたのでと譲らなかった。
諦めて、帰る前に化粧を落として、髪を元に戻すことにして、龍咲さんにお任せした。
龍咲さんは、なぜかやたらと張り切っていて、お化粧を済ますと、髪も編み込みにし綺麗にセットしてくれた。
準備が終わって鏡を見ると、今まで見たことのない私がいた。
今までお洒落などしたことも無かったし、許されないから、やろうとも思わなかったけど、
きっともうすることがないだろうから、こういう自分の姿を一度、見れて良かったなと思った。
何事もなく退院し、そのまま、花姫会館に向かった。
花姫会館のレストランには、私の方が先に到着して、美月たちが来るのを待った。
♢♢♢♢♢
美月と藍蓮様は、10分くらいして現れた。
美月は、見慣れない服装をしていた。倒れた私の洋服を用意してしまうくらいだから、泊まった美月の服ぐらい簡単に用意してしまうんだろうな…マメ過ぎてちょっと引いてしまうけど…と思っていたら、
私を見つけた美月は、駆け寄って来て、
『キャー。お姉ちゃん、お化粧してる。髪も可愛いし、やっぱりこの服似合ってる〜。』
とひとしきり騒いだ。
見た目を褒められたことのない私は、居た堪れなさに固まってしまった。
『美月ちゃん、美月ちゃん。忍葉ちゃんが固まっているからね。それくらいにして、ほらこっちに来て座って。』
と藍蓮様に優しく促され、美月は、藍蓮様と並んでテーブルを挟んだ私の向かいのソファに座った。
すぐに水やお絞り、メニューを持って店員が現れて、ホッとした。
『忍葉ちゃん何か頼んだ?』
『ううん。連れが来るからって待って貰っていたから。』
『そうじゃ、一緒に注文しないとね。』
『決まったら呼ぶよ。』
と藍蓮様が店員に声を掛けると、一礼して、離れて行った。
『お腹ペコペコだよ。2人とも何、食べる?』
と藍蓮様が穏やかに聞いた。
注文が決まると、藍蓮様が店員を呼んで、スマートに注文を済ませた。
立ち去っていく店員を見送ると、藍蓮様は、私の方を向いて、
『忍葉ちゃん、ワンピースも、髪型もとっても似合っているよ。』
と言った。
さっき話題を逸らしてくれたかと思ったら、今度は振るんだ…。何というか藍蓮様は自由だなと思っていたら、
『うん。お姉ちゃんは、小さい頃から、私や美咲より、ずっと可愛かったからね。お洒落したら絶対、皆んなの目を惹くって思ってたんだよね〜。思った通りだった。』
と美月が言い出した。
『何を言っているの?美月。小さい頃から、可愛いかったのは、美月たちでしょ。』
『えっ。何、言ってるの。お姉ちゃん。
お姉ちゃんは、ずっと、小さい頃から、可愛いって言われていたよ。近所の人たちに。』
『えっ‼︎』
『お母さんが嫌がって話さなかっただけだよ。』
話しの不穏な雰囲気を察したのか、
『美月ちゃんが、喜ぶと思ったんだけど、想像以上だった。龍咲に頼んで良かったよ。』
と口を挟んで藍蓮様は満足そうに微笑んだ。
私を着飾って、美月を喜ばせるより、美月を直接、着飾ったらいいのにと思って、
『私より、美月を着飾ったらいいと思います。』
と言うと、
『それはこれから一杯楽しむからね。今日は、特別な日だから、いいの。』
とすました笑顔で藍蓮様は言った。
昨日から、時々、藍蓮様は、何か意味深な物言いをする、何かを隠しているような…何だろう…?
それに、空気が読めるんだか、マイペースなんだか掴みどころがない…、
悪い人には、全く見えないし、美月を大事に思っているのは間違いないと思う。
それはそれで、藍蓮様の美月を見る目は、昨日、会ったばかりだと思うと引いてしまうくらい熱っぽさが過ぎると思うけど、
だからこその、
「花姫に会ったばかりの花王子は、みんなちょっと頭のネジがどうにかなる。」
って、神蛇先生の言葉なんだろうけど、花王子は、皆んなこんな調子なんだろうか…、
それに、藍蓮様だけじゃない、花姫会の千景さんや、龍咲さん、神蛇先生も、凄く芯が強くて、動じない…。なんとなく神獣人を敵に回したら怖そうだなと思った。
自分の容姿の話から話題を逸らしたくて、
『美月、内覧どうだったの?』
と話しを振った。
『2軒とも凄い豪邸だったよ。外観も、中も。美咲は、嬉しそうにはしゃいでいたけど…、私は、ちょっと、戸惑って…』
そこまで言うと話すのを躊躇うように口を閉じた。
どうしたのかな…と様子を見ていると、
『お姉ちゃん、あのね、私、お母さんたちとは、住まず、まだ、どっちかを決めてないけど、藍蓮様の家か、お母様の柘榴様の家に住むことにした。』
『そうなんだ。決められて良かったね。考えられなそうだったのに…。』
『一軒目を内覧して、外観から凄く大きくて、高級感がある家で、中も凄かったの。
中央区の殆どがそんな家ばかりだし…。
これから住む家って考えてその家の中を見ると、これからどうしようばかり思えて、
昨日、藍蓮様のお母様の家に泊まった時も、こんな大きな家の花姫なんてできるのかなって…思っていたんだけど…、
内覧が終わった後に、
藍蓮様と絢音さんと、車の中で思ってたことを話してたら、
絢音さんが、
『戸惑いますね。』
って言ったの。
その時にね。私、花姫として藍蓮様と住むことを考えているから、戸惑っているって気づいたの。
お母さんたちとは、住む気が無かったし、だったら、そうしようと思えたんだ。』
『そうなんだ。良かったね。』
隣の藍蓮様は嬉しそうに美月の話を聞いている。美月…だけじゃない、美月たちは、一歩ずつ前に進んでるんだなと思った。
食事が次々、運ばれてきた。
『冷める前に、食べよう。』
と藍蓮様が言ったけど、美月は、話し切りたかったのか、
『それで、そう決めたなら、早い方がいいって、藍蓮様が。
お母さんたちが、あーでしょ。心配だからって。私も、もうお母さんたちには、うんざりしてるし…。暫く距離を置こうと思って…。
家には、暫く帰らず、これから、ゆっくり両方の家を見せて貰って、藍蓮様や柘榴様と話し合って決めるつもりだから。』
と言った。
これを私に言いたかったんだな。私が一人になることを気にして居るんだろうなと美月の言葉を聞いてなんとなく納得した。
『そう。その方が私もいいと思う。それに、昨日から、聞きたかったけど、私が気を失っている間、お母さんたちと何かあったの?』
『…何かあったというか…、いつもと変わらなかった。』
一瞬、言おうか迷っているように見えたけど、口を開いた美月は、
『お姉ちゃん、倒れた時、息が止まったみたいにピクリとも動かなかったんだよ…
それなのに、お母さんは、いつもの体調不良だって言って心配していないし、
美月なんか、お姉ちゃんのせいで、また予定が狂うって、処置室の前で怒り出すし…、
お父さんが会社から駆けつけて来たけど、いつもみたいに、お母さんに調子を合わせているし…、
なんかもう呆れてしまったと言うか、もう親じゃない…まともなことが出来ない親なんだと思った。
美咲も、小さい頃はあんなじゃなかったから、ずっと元に戻って欲しいと思っていたけど、無理なんだって…急に、冷めた思いがして…だから、一度、離れて考えるのもいいのかも知れないと思ったの。』
と一気に話した。
なんとなく予想はしてたけど、やっぱりそんなことだったか…と思った。
『ごめん…。お姉ちゃん大丈夫…?』
『あ、うん。いつものことでしょ。大丈夫だよ。』
『いつものことって、普通じゃないよ。あんな家族‼︎』
いつになく、大きな声を出した美月を、藍蓮様が気遣う。
いくら花王子の藍蓮様に会ったからって、昨日の今日だ。美月だって気持ちの整理はつかないだろう。私だって正直、わけがわからないのだから…。
『美月、落ち着いて、私は、大丈夫だから。』
と言うと、
『お姉ちゃんは、ちょっと怒った方がいいんだよ。』
と不貞腐れたように美月は言った。
藍蓮様が美月の体を引き寄せて頭を撫でているのをボンヤリ眺めながら、
そんなことを言われても、怒ったところでどうにかなったりしないし、ずっと怒る暇すら私には、与えて貰えなかった、今更、何をどう怒ればいいんだろう…か?
そんなことを思っていた。
気持ちが落ち着いたのか、
『大きな声を出してごめんなさい。』
と言うと美月は、手をつけていなかった食事に手を伸ばして口の中に入れると、
『やっぱりここの料理、美味しいね。』
と少しぎこちなく笑った。
私も藍蓮様もホッとして、食事を取り始めた。
そこからは、穏やかに食事をした。
なんとなく気になっていたから、
『藍蓮様のお母様には、会ったの?』
と聞いてみると、
『あ、うん。朝、一緒に、食事したよ。凄く若くて綺麗な人だった。そう言えば、翔様のご両親も凄く若々しかった…神獣人って年を取らないの?』
『ぐふっ。そんなことは無いよ。普通の人間と同じように年は取るよ。確かに見た目があんまり衰えないね…。神蛇先生は、あれで還暦近いからね。』
これには、美月も私も驚いた。
『えっ‼︎還暦って60才でしょ。見えない。』
『お母さんたちくらいだと思ってた…。』
『神獣人は、年齢不詳なんだね…。
えっ‼︎じゃあ、ずっと一緒に藍蓮様と居たら、私だけ老けちゃうの?』
と焦ったように美月が言うと、
すかさず、藍蓮様が、
『美月ちゃんは、僕とずっと一緒に居てくれるつもりなんだね。嬉しいな。』
と言った。
美月の頬が見る見るピンクに染まっていった。
すぐ2人の世界に突入するなぁと思いながら、成り行きを見守っていた。
『それでね、藍蓮様のお母さん…柘榴様がね、』
『えっ。ちょっと待って。藍蓮様のお母さんって、柘榴様なの?』
『えっ?そうだよ、言わなかったっけ?』
『聞いてないよ。柘榴様って花姫会の会長じゃなかった?それとも別の柘榴様?』
『花姫会の会長の柘榴は、僕の母だよ。
母さんは、花姫会の会長で、鳳凰一族の当主でもあるよ。』
『えっ‼︎当主って男の人がなるんじゃないの?』
『普通はそうだけど、当主だった父は、亡くなったからね。僕が後を継ぐまで、母が代わりに当主の座についたんだ。』
『そうなんですね…。』
美咲は、柘榴様が私に送った服を、内覧の日に来ていくと言ってたけど、着ていったのかな?着て行って大丈夫だったのかな…。
急に、不安を覚えた。
『それでね、お姉ちゃん、聞いてる?』
『あ、うん。何?美月。』
『柘榴様の家、犬を飼っていてね。それもドーベルマン。家に似合ってたんだけどね、
美月が楽しそうに話しているのを見て、不安を口にして空気を変えてしまうことに躊躇いを感じて黙っていることにした。
後で、藍蓮様か龍咲さんにでも、聞いてみよう、そう思って美月の話しにこのまま、耳を傾けていることにした。
『家に似合うってどういう意味?』
『えっ。似合っているでしょ。高級感があり過ぎて、ピリッとしてる空気感が…。』
『わかるようなよくわからないような…』
モヤっている藍蓮様を置いて、美月が話を続ける。
『見た目は恐いけど、すっごく賢い犬でね、私に直ぐに懐いてくれたの。ずっと犬が飼ってみたかったから、犬と一緒に家に居るのが嬉しくって、
それにね、柘榴様の家にピアノがあったの。
グランドピアノ、久しぶりに弾いてみたの。ちょっと指の動きがもたついたけど、指が曲を覚えていて、楽しかった。』
美月がピアノを弾く気になったことが意外だった。
『そう。弾く気になったんだ。』
『ピアノを辞めた時は、やっと解放された。もうピアノなんか一生見たくないと思っていたけど、ピアノは好きなんだよね。
本当は、ずっと弾きたかった。』
『藍蓮様は美月のピアノを聴いたの?』
『あー、凄く上手で驚いたよ。』
『私も、美月のピアノ聴きたかった。今度、弾いて。』
『えっ。お姉ちゃん、ピアノ好きだったっけ?』
『美月が弾いてるのを聴くのは好きだったよ。ずっと。』
『そうだったんだ。なんか照れるけど、嬉しい。ねえ、紫紺様、…
美月の話しに耳を傾けているうちに、食事が終わった。
藍蓮様が
『食後にコーヒーを飲みたいな。美月ちゃんたちは何を飲む。』
と聞いた。
『私、アイスティーにする。』
と美月。
『じゃあ、私もそれで』
と言うと、
藍蓮様が店員を呼んで、飲み物を頼むと、店員が、食べ終えた食器を下げて行った。
テーブルが片付くと、藍蓮様が徐に、口を開いた。
『実はね、忍葉ちゃん、今日は、君に合わせたい人がいるんだ。』
と言った。
ああ、さっきの思わせぶりな言葉はこれだったのかと思った。凄く嫌な予感がする。
隣の美月は嬉しそうに見えるのも、嫌な予感に拍車をかけた。
『今から呼んで良いかな?』
『誰ですか?』
自分でも思い掛けないほど硬い声が出た。
『多分、忍葉ちゃんが、予想している人だよ。』
『そんなわけ…ない。だって、花紋が現れていないのに…。』
『普通はね、花紋が現れていない花姫の花王子は、誰かわからない。
だけど、忍葉ちゃんは、別なんだよ。』
『…なんで?』
『昨日、神蛇先生が、忍葉ちゃんの花王子は、美月ちゃんの花王子より、上位の可能性が高いって言ってたでしょ。』
そう言えば、そんな様なことを言っていたような気がするけど…
『それと花王子が誰かわかることと何の関係があるの?』
『神獣人の男児は、胸に番の花紋を持って生まれてくるから、誰が花王子か?神獣人なら皆んな知っているんだよ。
そして、僕はね、鳳凰一族の時期当主なんだよ。
だから、僕より上位の花王子は、一人しか居ないんだ。』
『…それって…神蛇先生も龍咲さんも、昨日の地点で私の花王子が誰か知ってたってこと?』
『そうだね。』
あー、だから、藍蓮様は、化粧や髪のセットを頼んだのか…、龍咲さんが張り切っていたのも…、皆んなに嵌められたのか…、
悪意からじゃないのは、わかるから、こんな風に思うのは失礼なんだろうけど…
私にとったら、罠に嵌められたのと変わりないとしか思えない…。
『………昨日、黙っていたのに、なんで今、言うの?』
『忍葉ちゃんの花姫になることへの抵抗が強そうだったからね。ちゃんと準備してから話した方が良いと思って。十中八九間違いないとは思ったけど、一様、確認したかったし…ね。』
藍蓮様の言い方は、確認が済んで間違いは無いって言っているのも同じだと思った。
まるで死刑宣告を受けた気分になった…。
どうしよう会いたくない。知りたくない、見たくない…
逃げ出したい衝動に駆られながら、美月も知っていたのか気になった。
『美月は、今日、ここへ来るって知ってたの…?』
『うん。内覧が終わって、レストランに移動する車の中で、藍蓮様に教えて貰った。
だからレストランに来るのが少し遅くなったの。』
『美月ちゃんには、他のことを考えずに、内覧をして欲しかったからね。
だからって何も言わずに連れて来る訳ににも行かないから、ここに来る直前に話したんだ。』
『実はね、これは美月ちゃんにも、まだ、話していなかったけど、昨日の夜、忍葉ちゃんの花王子と一緒に、神蛇先生のところへ行ったんだ。』
私も美月も、藍蓮様が何を言い出すのか固唾を飲んで見つめていた。
『忍葉ちゃんの花紋が出る抵抗が強いのは、わかっていたからね。当然、花王子に会うことにも抵抗は起きるだろうし、祈祷の時のようなことが起きるかもしれないからね。』
美月の顔色が変わったのが目に入った。
藍蓮様は、美月の手を握って話し続けた。
『神蛇先生に相談した方が良いと思って…、やっぱり危険だとは、言われたよ。
それでも避けては通れないとも言ってたよ。
それは僕も同じ意見だよ。
忍葉ちゃんがどう思っていても、忍葉ちゃんはもう神獣人一族にとっては、花姫なんだよ。
それにね、花姫と違って生まれた時から花紋を胸に持って生まれる花王子は、花紋を通して、花姫の感情を時折、感じながら育つんだよ。会うことどころか何処にいるかすら、わからないのに…。
僕も花王子だからね、勝手かもしれないけど、無理でもいいんだ、忍葉ちゃんが、また、体調を崩しそうなら、花王子もすぐ帰るよ。そう話し合ったからね。
だけど、会うことや、花姫になる抵抗について向き合うことはしてあげてくれないかな、
その結果なら、まだ、受け入れられると思うんだよ。
ごめんね。勝手なお願いばかりして…。』
ここまで言われて嫌とは言えない。
神獣人は、敵に回さなくても、利害が合わないと手強い相手なんだと思った。
誠実で思慮深くはあるけど、強引で逃げ道がないよう外堀を全て埋められてしまった……大事にされ信頼できるのかも知れないけど、それが受け入れられない私には、巨大な何かに飲み込まれるような恐怖すら感じる。
逃げ出したいけど、それでは何の解決にもならないんだろうな…、
『わかりました。会うだけ、会います。
でも、美月のように花王子の家に入ることは私には考えられない。』
『家に入ることを今、考えなくていいから。良かった。会うだけ、会ってくれれば、今はいいからね。』
ホッとした顔をした藍蓮様が、
『ここにもう来て貰っているんだ。呼んでもいい?』
とまたもや思いがけないことを口にした。
『ここに来て貰っているって…。』
『うん。僕たちとは別の席で、お昼を取って貰っていたよ。お腹すいちゃうでしょ。』
そうかも知れないけど、そうなのかな…、
こういう状況を生み出しているのは、私だけど、私が花姫になることに抵抗があることを知っていて、その花姫だという私を前に、食事が、喉を通るものなのだろうか?
私は、食事の前にこんな話しを聞かされたら食事どころじゃなかったと思うけど…。
『そんな来ているなら、先に会わせてくれたら良かったのに…。』
『そしたら、忍葉ちゃん、食事どころじゃ無くなったでしょう。』
私への配慮か…美月への配慮でもあるんだろう。花姫に甘いというか…、昨日から、行き届き過ぎて最早、恐い…と思った。
『わかりました。これ以上、お待たせしては悪いので、呼んで下さい。』
『ありがとう。呼んで来るよ。』
と言うと藍蓮様は立ち上がって、
『美月ちゃん、忍葉ちゃんの隣に移動してて。僕の横に座って貰うから。』
と言うと、レストランの奥へ向かった。
入れ替わるように、店員さんが飲み物を運んで来た。
藍蓮様もすぐ、2人の男の人を連れて戻って来て、
『後2つ、ホットを持って来てくれるかな。』
と言うと、席に座った。
藍蓮様と同じく凄く整った顔をして、藍蓮様同様、強い神気を纏っている男の人2人も、席に座った。
真ん中の男の人の纏う神気が一番強いと感じた。
藍蓮様が
『紹介するね。通り側に座っているのが、忍葉ちゃんの花王子の黄竜門 紫紺君。そして、僕の隣が紫紺君の秘書の高桜 道忠君だよ。』
と言った。
紫紺と呼ばれた男の人の紫色の瞳が目に入ったら、胸騒ぎがした。
『紫紺君は、神獣人一族を纏める麒麟の次期当主だよ。』
『えっ?』
『忍葉ちゃんは、神獣人一族トップの花姫だよ。』
『そんな筈あるわけない‼︎花姫だとすら信じられないのに、一族トップだなんて…。
何かの間違いです‼︎』
思わず、口をついて出た。
そのあとで、あー、さっき、鳳凰一族の当主の藍蓮様より上位の花王子は一人しかいないと言ったのは、こういう意味だったのか…とやっと気づいた。
その時、紫紺と紹介された男の人が口を開いた。
『忍葉、君は、俺の花姫だ。間違いない。
俺が花姫を間違えたりしない。』
そう言うと、立ち上がって、私の桃色の瞳を覗き込むようにして、頬を撫でながら、ジッと見つめた。
さも、愛しそうに。
紫色の目に見つめられていたら、何故かわからないけど、足元から強烈な恐怖が上がっきて、ガタガタと震えてきた。
思わず、身を退いて、美月に擦り寄る。
『紫紺君、忍葉ちゃんが怯えて震えてる。離してあげて。』
『すまない。会えて嬉しくて、つい…。』
そう言って、私の頬を撫でていた手を下ろして座った。
私は、力が入らず、固まったままその場を動けないでいた。
『大丈夫?忍葉ちゃん。』
『……恐い…ここから離れたい。』
そう言うのが、精一杯だった。
得体の知れない恐怖を感じて足がガタガタ震えている。
胸が苦しい…どうなっているんだろう、わけがわからないまま、涙目になってきた。
『やっぱり無理そうだね。紫紺君は、離れた方がいい。』
『ああ、道忠後は頼んだ。』
そう言うと、紫紺様は、振り返ることもなく、スタスタとレストランを出て行ってしまった。
後ろ姿が見えなくなっても、呆けたように見つめていると、
『忍葉ちゃん、忍葉ちゃん。』
と藍蓮様が何度も名前を呼んでいるのが、聞こえてきた。
ハッと我に返った。
『忍葉ちゃん、大丈夫?』
と心配そうに聞かれた。
震えも、胸の苦しさもいつの間にか消えていた。代わりにどうしようも無いない絶望感を感じた。
『…このままじゃ私、花姫なんて絶対に無理。ごめんなさい…。帰してしまって…紫紺様やお家の方に迷惑を掛けるどうしたらいいの…。』
『忍葉ちゃん、今、そんなことを気にしなくていいんだよ。』
『そうだよ。お姉ちゃん。花姫になって欲しかったけど、それは、幸せになって欲しいからだよ。
お姉ちゃん、今にも倒れそうだった。
命懸けで、花姫になって欲しいわけじゃない。』
『……そんな命懸けなんて大袈裟な、、』
そう言いながら、あの恐怖を思うと、そうじゃないとは、正直、言えない…と内心思っていた。
『あのね。忍葉ちゃん、今日、ここに来て貰ったのは、紫紺君に会って貰うためだけじゃないんだ。』
今度は、藍蓮様は、何を言い出すんだろう?もう泣きたい気分で振り絞るように、
『どういうこと?』
と訊いた。
藍蓮様は、真剣な声で、
『忍葉ちゃん、もう家には、帰らない方がいいから、これからの住む場所を相談したかったんだよ。』
と言った。
これには美月も、驚いた様子を見せたから、知らされていなかったみたいだ。
『なんで?家には、帰らない方がいいってどういうこと?』
『落ち着いて聞いてね。』
『忍葉ちゃんの家庭の事情だけでも、充分に帰って欲しくは無いんだよ。
僕ですらそうだ。紫紺君は尚更そうだよ。』
これには、道忠さんが、真剣に頷いている。
『それに多分、今日の内に、花姫会から、
浅井家に、
千虎家が、中央区管内に美咲ちゃんが家族で住む話を白紙にしたい。
って申し出て来たと連絡が来るよ。
そういう動きになったら、僕に連絡するように頼んである。今のところは、連絡はないけど…ね。』
『どうして?』
『忍葉ちゃん、柘榴様から、服を贈られたでしょ。』
あー、さっき不安に思ったことか‼︎と思った。
『今日、美咲、あの服を着て内覧に行ったの?やっぱり何か問題になるの?』
『気づいていたの?忍葉ちゃん。』
『だって、さっき、藍蓮様のお母様は、柘榴様で、鳳凰一族の当主だって言ってたでしょ。』
『忍葉ちゃんは、やっぱり鋭いね。
美咲ちゃんは、今日、その服を着て、内覧に来たんだよ。
僕が翔君の母親、雅様の前で、
美咲ちゃんとお母さんに、
「どうして、柘榴様が忍葉ちゃんに、贈った服を美咲ちゃんが着ているの?」
って聞いたからだよ。』
『えっ?それだけ?それだけでどうして千虎家の申し入れがわかるの?それも今日、来るって。』
『花姫会は、花王子と花姫を引き合わせ、仲を取り持つ役割をしているから、
花王子側、花姫側どちらにも、寄らない中立な立場に立っているんだよ。
花姫の姉妹に対してもそれは、同じだよ。
その花姫会会長の柘榴が、一人の姉妹に服を贈ったと聞いたら、
それだけで、どんな事情があるか調べたくなるよ。
ましてや、自分の家の花姫の美咲ちゃんが、それを姉妹の忍葉ちゃんから借りてるとなったら、尚のことだよ。
普通の人は知らないけど、忍葉ちゃんの髪や目の色をした人間の女の子が、上位の花姫である可能性が高いことは、神獣人なら誰だって知っているんだよ。
花姫の姉妹が、上位の花姫の可能性が高い目や髪の色をしていることを花姫会が、千虎家に伝えないはずはない。
千虎家は、姉妹の花姫の確認に拘っていたでしょ?』
それが自分のせいだったとは思いもしなかったから驚きながら、
『うん。』
と答えた。
そして、花姫の確認の結果、
忍葉ちゃんは、花姫だと断定された。
上位のって言わなくても、神獣人なら上位だと思うよ。
おまけに、美月ちゃんは僕の花姫だ。
千虎家の花姫の姉妹が、両方、自分の家より上位の花王子の花姫だとわかったんだよ。
母さんは、鳳凰一族の現当主だし、
おまけに、
美咲ちゃんの双子の姉の花王子の母親だよ。
どんな事情で贈られたもので、借りることが妥当かどうかを調べるし、不審だと思ったら、家庭の事情も調べるはずだよ。
調べたら翔君のご両親はどう思う?
美咲ちゃんをご両親や、2人の姉妹の側に居させちゃいけない。花姫の教育をしなきゃって今頃、思っていると思うよ。
花姫の美咲ちゃんを諦める選択も視野に入れているだろうね。』
美月が、美咲に言ってた、
花姫会会長が贈ったものを着ていい訳ない。
が、ホントになるってこと?
花姫会の神獣人社会の説明を聞いたから、
ひょっとして大変なことになるんじゃないか?と想像はしたけど、
今まで、家の中では、日常的に、当たり前に起きていたことの一つが、これほどの騒ぎに本当になるとは信じられなかった。
それに気になることがあった。
『藍蓮様はそうなるってわかっていて、翔様のお母様の前で、美咲たちに聞いたの?』
『そうだよ。もっと言えば、母さんもだよ。』
『えっ‼︎』
美月と被るように驚きの声が出た。
『母さんは、いつも花姫が現れたら、その花姫家族を調べるからね。
美咲ちゃんが小さい頃、
忍葉ちゃんが貰った服を母親が着せていたことを知って敢えて、忍葉ちゃんに服を、贈ったんだよ。
母さんに、聞いてないけどね。
きっとそうだよ。』
『なんでそんなことをするの?』
『母さんは、花姫会の会長だけど、
鳳凰一族の当主だ。
花姫の花王子の家に花姫会が、直接、問題がある家庭と言えば、
花王子家にとったら、
鳳凰一族の当主に直接、対処するように言われたのと変わらないんだよ。
それじゃ、一気に大事になるでしょ。
でも、何も言わないわけにもいかない。
美咲ちゃんが何もしなければ、問題にならないし、何かをすれば問題があるかも?
と、花姫の花王子側が気づくでしょ。
自主的に対処して、花姫が以後、問題を起こさなければ、花王子家は、花姫を失わずに済むし、花姫も、花姫でいられるからだよ。
僕や紫紺君、他の花王子だって、これから自分の花姫に危害を加えないなら、過去は不問にするよ。
花王子や花王子家にとって花姫がどれほど大切か知っているからね。
正直許せないけどね。
自分の花姫を傷つけられた紫紺君は、尚、そうだよ。』
またもや、道忠さんが、深く頷いている。
『ねぇ、藍連様、花姫会の千景さんが、神獣人一族の社会について説明してくれたから、藍蓮様の話はなんとなくそうなんだろうと理解はできるけど…、
お母さんや美咲は、あの話しを聞いて、天狗になってた。
花姫の自分は、神獣人から大切にされることはあっても、逆はまるであり得ないみたいに…。
自分たちは、特別みたいな感覚が強い美咲たちには、そう思う話し方だったと思うんだけど…。
ひょっとしてそれもわざと?』
『神獣人は、冷静で理性的だからね。
尻尾があるなら、ビビって引っ込められるより、図に乗ってサッサと出して貰った方がいいからね。
母さんは特に、そうだよ。そうじゃなければ、当主は務まらないからね。千景は、母さんの部下だ。多分、そうだろうね。』
美月の質問にそんなに率直に答えるのかと驚いたし、引く思いがした。
『…神獣人、恐い…ね。』
『はぁ〜、美月ちゃんに嫌われちゃったらどうしよう…凄いショックを受けるだろうな…
だけど、神獣人を理解して貰わないと本当には分かり合えないから…ね。』
そう言うと、藍蓮様は、話を続けた。
『ちゃんと美月ちゃんは、得意にならずに、気づいたろう?
物事には、何にでも表と裏の2面がある。
分別がある人間が花姫側への神獣人の配慮を聞けば、花姫側にはどんな責任があるか?
普通に疑問に思うものでしょ。
ましてや、自分が花姫や花姫の家族なら、得意になるより、
そんな厳しい縦社会で自分はやっていけるのか?とか、
自分の娘は大丈夫なんだろうか?と考えて、
緊張したり、心配したり、不安に思ったり、するんじゃないかな?』
それはその通りだと思った。あの時も、美咲が、どうして、自分がして貰う側しか、思わないのか?疑問だった。
『例え、花姫側の責任を話したところで、美咲ちゃんは、それを真摯に受け止めたと僕は、思えないし、
母さんや僕が何もしなくても、美咲ちゃんはいずれ神獣人社会で問題になるよ。
そういうことを次々と起こす子でしょ。
例え、姉妹が花姫じゃなくても、問題になるよ。あんな我儘で身勝手な子は。
問題がある花姫だと花王子家が知ることが遅くなれば、花王子家の立場が悪くなる事態になりかねないからね。
花姫会だって、早い対処をとるよ。
花姫の問題を花王子家側に、早くに露見させて、花王子家側から本人にハッキリ突きつけさせて、思い直す機会を与えることが、母さんの狙いなんだよ。
そういう花姫会や母や僕の考えは、直接話しを持っていかない対応で千虎家側は、理解していると思うよ。
同じ神獣人社会を生きているんだからね。
美咲ちゃんみたいな子は、それくらい身につまらないと本当に自分の行を思い返したりしないものだし、
だけど、神獣人一族に入る前にそうして貰わないと美咲ちゃんの花王子側が一番、痛手を被ることになるからね。』
『でも、美咲は、要領が良くて、外面が凄く良いんだよ。』
『それ以前の問題だよ。
美月ちゃんや忍葉ちゃんは、花姫会会長の柘榴が、鳳凰一族の当主だと知らなくても、姉妹に贈ったものを花姫会や花王子の前で着よだなんて思わないだろう?
それ以前に、姉妹の物に、手を出そうとすら思わないんじゃないかい?』
これには、美月も私も何も言えなかった。
その通りだったから。
花姫会の会長の母さんが忍葉ちゃんに、贈った服を美咲ちゃんが着ている地点で、聞いた側が納得するような返事できないだろう?
だから普通そんな馬鹿なことを最初からしないんだよ。
だからこそ、千虎家のご両親だって問題視するんだよ。』
『藍蓮様の話は、理解できました。正直、本当にそんな大事になるとは、信じられない思いがするけど…。』
『良かった。じゃ、家に帰らずとりあえず、これから何処に住むか相談しようね。』
『家に帰ります。』
『えっ?』
『ダメです。危険です。何かあったら、紫紺様が悲しみます。』
と道忠さんがただならぬ、表情でそう言った。
紫紺様を心配する思いが滲み出るような表情と言葉に、秘書というのは、こんなに仕える相手に思い入れを強く持つものなんだろうか?と疑問がわいた。
『お姉ちゃんどうして?せっかく、皆んなが、お姉ちゃんを守ろうと考えてくれてるのに。』
『私のことを心配して、言ってくれていることは、わかる。
だけど、
危険って言うのは、大袈裟だと思う。
藍蓮様が言う通りのことが起きたとして、
されるのは、八つ当たりくらいのことだと思う。そんなのいつものことじゃない。
それでわざわざ、家を出る必要を感じないし…、それに…そんな大事が起きるとわかっていて、家に帰らないなんて、心配で不安になる。』
『大袈裟では、決してありません。
日常的な、忍葉様への家族の態度がそもそも普通ではありません。
八つ当たり程度だなんてとんでもない。
されるいわれのないことじゃないですか‼︎
ご自身が酷い扱いを受けていることに、自覚が無さ過ぎます。
忍葉様は、大事にされて守られるのが、当然の紫紺様の花姫なんです。』
道忠さんの言葉はどれも、ボディブローのように心に深く刺さって痛くて、堪らなかった。
『守って貰いたくない。
大事にされたり、よっぽど守られる方が恐い。どうしていいかわからない。
私には、花紋が出てないし、美咲や美月みたいに、花王子に花姫って言われても、花王子って感じなかった…。
感じたのは、ただ、ただ底の無い穴に落ちていくような途方もない恐怖だった。
そのせいで、あんな風に帰してしまった。
私は、花姫の欠陥品なのよきっと。
私に花姫の価値なんかない‼︎』
これ以上心配されまいと必死に隠していた本音を、ぶち撒けるように言ってしまった。
すぐ後悔の念が押し寄せる中、
取り乱した私とは、正反対に、道忠さんは、動じることなく落ち着いた口調で、話し始めた。
『忍葉様がどうご自身のことを思っておられようと忍葉様は、紫紺様の花姫です。
ただそれだけで紫紺様にとって、誰よりも、何よりも価値があるんです。
どうかご自覚なさって下さい。
それに、紫紺様に感じる恐怖が、
何より、忍葉様が紫紺様を花王子だと感じている証拠じゃないかと私は、思います。』
『忍葉様は、花王子の紫紺様や、花姫会だけでなく、忍葉様と関わる神獣人にとって、
もう花姫なんです。
そこからは逃れられません。』
『そんな…私、花姫にならなきゃいけないなら、もう居られる場所がない…生きていけない』
忍葉の言葉に成り行きを見守っていた藍蓮と美月に緊張が走った。
道忠も、表情にこそ出さなかったが、
まさか、これほど、花姫になる抵抗が強いと思わなかったと内心驚いていた。
遅ればせでも、忍葉の頑なな心を感じとった道忠が口を開いた。
『私の言葉が少々、足りませんでした。
忍葉様に花姫になることを強要したりは、決して致しません。』
道忠の思い掛けない言葉に
『…ホント?』
と口をついて出た。
『忍葉様が花姫になっても良いと思うまで、花姫になることを紫紺様なら必ず待たれます。』
『思ったりしない。きっとそんな日は来ない…』
『それでもです。それでも待たれると思います。いつまででも…。』
『それじゃ、紫紺様が……』
『忍葉様が、紫紺様に感じる恐怖の強さは、忍葉様の花姫になる心理的な抵抗の強さだと、紫紺様は、理解しておられます。
だから、先程も、お帰りになられたのです。
紫紺様をそのことで、お気になさることは、ございません。』
そう言われたからって気にせずにはいられないけど、気持ちが少し楽になった。
『それより、今後の住まいを早くお決めになって頂くことが今の優先事項です。
どうしても家に帰りたいなら、帰ることは、構いません。』
帰っていいと言われてホッとした。
『忍葉様これは、紫紺様の意志だと思って聞いて下さいね。
忍葉様に、花姫になることを強要は致しませんし、誰にもさせません。
ですが、これからは、もう、
花姫会も、忍葉様の周りの神獣人も、忍葉様は、花姫だと思うし、そう扱います。
今は少ないですが、忍葉様の花王子が誰かを知っている相手であれば、忍葉様を紫紺様の花姫だと思い、扱います。
そこからは逃れさせてあげることはできません。』
美咲が花姫になってからの数日で、どれほど神獣人にとって花姫が特別か理解していた忍葉は、そうだろうと道忠の言葉に納得して、
『それは、理解できていますし、
花姫になりたくないと我儘を言うんだから、できる限り、周りの方たちには、迷惑を掛けないようにします。』
と答えた。
『忍葉さまの花姫になりたくない思いは、心理的な抵抗から来るもので、単なる我儘では、ないでしょう?
花姫会も、藍蓮様も、皆、それを理解した上で、忍葉様に何かがあることを心配しています。ですから、家に帰っても、身に危険を感じたら、必ず知らせて下さい。』
『はい。何かあれば知らせます。』
『それから、出来る限り早く寮に住めるように致しますから、家は、出て頂くことになりますが宜しいでしょうか?』
『元々、寮に入ることが決まれば、家は直ぐに出るつもりだったのでその方がいいです。
だけど、学校の話しをする時になったら、龍咲さんに奨学金や国の支援制度の話を聞いて、できる限り親にお金を払って貰わないで寮に住んで学校へ通えるように手続きするつもりだったんですけど、それは、誰に頼んだらいいですか?』
『学費も寮費も、紫紺様がお支払いになりますので、奨学金も、国の支援制度も不要です。』
『えっ?そんな迷惑をこれ以上かけるわけには…私は、花姫になれないのに、そんなことできません。』
『紫紺様に迷惑をお掛けしたくないのであれば、黙って支払って貰って下さい。』
『えっ?』
『先ほども、申し上げたでしょう。紫紺様も、周りの神獣人も花姫会も、忍葉様を、紫紺様の花姫だと見る。そこからは逃れさせてはあげられません。と。』
『はい。それは理解しています。だけど、それと学校の支払いに何の関係があるんですか?』
『紫紺様は、神獣人一族を纏める麒麟一族の次期当主です。
忍葉様が花姫になれないのは、心理的な抵抗があるためだから、仕方ありませんが、
忍葉様が花姫だとわかっているのに、麒麟一族の次期当主である紫紺様が、花姫の学費を国の支援に任せているとあっては、一族の笑い者になります。
お分かりになりましたか?』
そんなことを言われたら、もう何も言えないし、せめて紫紺様の立場を潰すようなことはしたくないので、
『はい。わかりました。支払って頂きます。』
と答えた。
『急ぐなら、親には寮に入ることを話して了解を得ないといけませんよね?今日、帰ったら話してみます。』
『今日、ご両親のどちらかに書類を書いて頂きにあがりますので、忍葉様は、何も話さないで下さい。』
『えっ?』
『その方がスムーズに話が進むと思いますのでお任せ下さい。』
『え?道忠さんが手続きしてくれるの?』
『はい。もちろんです。私は、紫紺様の秘書ですから。』
『はあ…。わかりました。お願いします。』
『お姉ちゃん、今日、帰るんでしょ。』
ずっと成り行きを見守っていた美月が口を開いた。
『うん。』
『じゃあ、私も帰る。』
『えっ!ダメ。駄目だよ。美月ちゃん。』
『そんなのダメ。今日、花姫会から、連絡があるって藍蓮様が言ったんだよ。お姉ちゃん一人を家に帰せないし、私もどうなるかちゃんと見ないと安心出来ない。』
『あ〜……。』
肩をガックリ落として何やら考えていた藍蓮は、溜息を吐くと、
『……仕方ない。いいよ。
その変わり何かあったら、絶対に電話すること。いい?約束だよ。』
『わかった必ず、約束は守るね。』
美月の笑顔を、愛しそうに見つめて、頭を撫でている藍蓮。2人を見ながら、私には、遠い世界だなと思った。
帰るなら…、
『あの〜、きっと凄い我儘になるんだと思うんだけど…』
『なんでしょう?この際、どんな我儘でも、叶えますのでおっしゃって下さい。』
道忠さんに、そこまで言われると返って言いにくいと思いつつ、言わない方が良くない気がするから、思い切って言ってみることにした。
『………えっと、、お母さんと、お父…両親や美咲に、私が、紫紺様の花姫だと言わないで欲しい…です。…』
『えっ?言わないと美咲たち…あっ、言っても…
と言ったまま考え込む美月。
『その方が今は、いいでしょうね。』
『僕もそう思うよ。』
『えっ‼︎じゃ、いいの?』
『ええ。花姫会には私が話しをつけておきますが、反対はされないでしょうね。』
『美月ちゃん?大丈夫?』
『お母さんも、美咲も、どうしてあーなんだろうと思って…お姉ちゃんが紫紺様の花姫だって言っても、きっと頭から否定するし…返って反発してお姉ちゃんに嫌味を言うか、紫紺様に合わせないように、家から出さないように画策すると思う…。』
『そうするでしょうね…。』
藍蓮様は、美月の頭をポンポンと叩いた。
『あんまり考えると頭から煙がでるよ。ねっ。』
『うん。そうだね……。家族には、言わない方がいいと私も思う…。』
『忍葉様、家にお帰りになる前に、これをお渡しして起きます。』
そう言って道忠さんは、スマホを私に渡した。
『えっ?何で?』
『忍葉様がお持ちでは無かったからです。』
『えっでも、今まで必要無かったし…。
『今までと今では、状況が違います。先程、何かあったら連絡するとお約束しましたよね。忍葉様は、どうやって連絡するおつもりでした?』
『…………ノープランでした…。』
『こちらのスマホには、必要な連絡先が登録してあります。何かあれば、適宜、連絡ができるかと思います。持って頂けますね。』
『…必要性はわかりましたが、支払いはどうしたらいいでしょうか?』
『先程も言いましたが、忍葉様は、紫紺様の花姫です。紫紺様がお支払い致します。』
『………それは…黙って払って貰った方が、迷惑にならないってこと?ですよね。』
『ご理解頂けたようで良かったです。』
長いものには巻かれろって言うけど、たった今日、1日で、自分が紫紺様というか、黄竜門家に一気に飲み込まれているように思えて、気が遠くなりそうだった。
『それじゃ忍葉ちゃん。スマホの使い方講座しようか?初めて持ったんでしょ。必要じゃない?』
『必要です。是非、お願いします。』
それから、藍蓮様、美月、道忠さん3人に、必要性の高いものからスマホの使い方を説明してして貰うと、手配して貰った車に乗り、美月と2人帰途についた。
♢♢♢♢♢
車に乗ると美月は、
『お姉ちゃん、道忠さんに、ピシッと色々、言われてたね。』
と言った。
『……うん。道忠さんの言うことは、的を得てて何も言い返せなかった…。』
『ふふふっ。お姉ちゃんが、道忠さんに、やり込められてるのを見て、正直、ちょっと嬉しかった。』
『えっ?そうなの?』
『うん。そうだよ。だって、お姉ちゃん自分一人で何もかも背負おうとして、私や藍蓮様が、力になりたいと言っても、頑なに、受け入れなかったじゃない。
お姉ちゃんの気持ちはなんとなくわかっても、やっぱり何も出来ないのは悔しかったし、お姉ちゃんに対しても、この頭でっかち‼︎って腹が立つ気持ちがあったから…。
道忠さんのお姉ちゃんへのきっぱりした態度は、気持ち良かったよね。
言いたいことを代わりに言って貰ってスカッとしたというか…。』
そんなに不満をためさせていたのか…と凹みながら美月の話を聞いていた。
『だけど、それよりも、お姉ちゃんが、仕方なくでもいいから、何かをして貰う相手ができて良かった。安心した。
私や藍蓮様じゃ無理だったから…。』
『最近のお姉ちゃん、誰とも繋がらず、まるで、1人きりで生きて行こうとしてるみたいだったから。ずっと不安で心配だったから…。良かったなって…。
それだけ、、』
そう言ってから美月はずっと窓の外を眺めて話すことはなかったけど、
その時言った美月の言葉はなぜか心に沁みるようだった。
♢♢♢♢♢
美月と一緒に、家に帰った時には、お母さんも美咲も、もう家にいて、花姫会からも連絡が来た後だった。
本当に連絡が入ったのかと正直、驚いた。
私と美月が帰って来るなり、お母さんが、私たちをリビングに呼んで、
『花姫会から、
『美咲に、千虎家から緊急な話があるって連絡が入ったのよ。
両親と美咲が揃っている時に伺いたい。
と言われたから、お父さんにも連絡して、
花姫会の方が、7時に来ることになったから。
花姫会が来る前に夕飯を済ませて置きたいから、忍葉は、早く夕飯の支度をして頂戴。
わかったわね。』
と言った。
私は、夕飯作りにすぐ取り掛かった。
お母さんは、残った美月に、
『美月は昨日、藍蓮様のお母様の家に泊まったのよね、何か粗相をしてないわよね。姉妹が2人とも花王子家から何か言われたりしたら、困るわ。大丈夫よね?』
と言っていた。
美月は、無表情のまま、
『何にも無いから大丈夫だよ。』
と言うとサッサと自室に行ってしまった。
『本当、あの子は益々、反抗期ね。困ったわ。』
と言うと、不安そうに居間に座っていた美咲の方に行って、
『美咲、きっと大丈夫よ。貴方は、花姫なんだから。』
と声を掛けていた。
そんなお母さんの言葉を聞きながら、お母さんは、自分本位で相手にとって中身がない会話をしているんだなと気づいた。
どうなるんだろうと気掛かりだった美咲は、不安で儚げな様子で、いつものような棘のある言葉を言うことも、近づいて来ることもなく、普段の美咲からは、想像出来ない姿にこんな風になるのかと驚いた。
その後少しして、お父さんが慌てた様子で帰って来てからは、
不安そうな美咲を放置して、
お母さんとお父さんは、
『晶子、今日、千虎家の方と、藍蓮様と内覧に行っただろう。
その時、何か失礼なことでも言ったんじゃないのか?』
『失礼ね。私がそんなことをするわけないじゃないですか。
千虎家のご夫妻は、とても素敵な方たちで、用があるとかで、お昼は、ご一緒できなかったけど、内覧中は、楽しくお話しして、とっても気が合いましたよ。』
こんな会話をずっとしてた。
食事の片付けをしていると、インターホンが鳴った。
お母さんが出迎えて、客間にお通しした。
千景さんと龍咲さんそして、どうしてか道忠さんも一緒に来ていた。
紫紺様の秘書の道忠さんが一緒に来ていることに私は、胸騒ぎを覚えた。
客間に案内したお母さんが戻ってきて、お父さんと美咲を連れて行った。
私は、いつものようにお茶を淹れてお出しした。
気になったけど、自分の部屋にいることにした。美月の部屋の前を、通ったら、美月の話す声が聞こえた。
美月は、藍蓮様と電話しているようだった。
きっと今の状況を報告しているんだろうなと思った。
お母さんたちが話しているうちに、美月と話したかったけど、諦めて部屋へ行った。
1時間半近く経って、お父さんが、美月と私を呼びに来た。
リビングに行くと居間のソファに、道忠さんと龍咲さんが座っていた。
美咲とお母さん、千景さんは、まだ、客間にいるようだった。
美月、私、お父さんが座ると、
龍咲さんが、
『忍葉様と美月様にもお話ししておいた方が宜しいかと思いますので、本日、伺ったご用件を簡単にお話しさせて頂きます。』
そう言うと、龍咲さんは、話し始めた。
『実は本日、千虎家から、中央区管内に美咲様とご家族が一緒に住む話を取り止めたいと申し出がございました。
千虎家の奥様が本日、
藍蓮様が、美咲様に、
柘榴様から忍葉様へ贈った服を、どうして美咲様が着ているのか?
と聞いてるやり取りを耳にしたそうで、
神獣人一族の社会は、立場の理解や分別を理解できないと通用しない縦社会ですので、
鳳凰一族の当主で、
藍蓮様のお母さんでもある柘榴様が、贈った物を安易に借りるような感覚では、神獣人一族との社交に、不安を感じると仰られまして…。
ましてや忍葉様も花姫ですから、
花姫は大切な存在だから、
例え、花姫であっても、
花姫に害を成すことは許されませんし、
もし、花姫を、傷つけるようなことがあれば、花姫としての立場はなくなりますし、
花王子家も処分を受けることになります。
だから、花紋が出ていなくて花王子が誰かわからなくても、姉妹であっても、
花姫である以上、
その花姫に鳳凰一族の当主が贈ったものを、借りるような安易なことをするようでは、
花姫として迎え入れても、
神獣人の社交の場に、不安で花姫として参加させられない。
美咲様には、そういう神獣人一族の中に、嫁ぐかどうか一度、しっかり考えた上で、
それでも花姫になる気があるなら、
千虎家に入り花姫としての教育を受けて貰いたい。
そうでなければ、美咲様を花姫として千虎家には、迎え入れることはできない。
と仰られましてそれを伝えに伺いました。』
と話した。
話の内容は、理解はしていたけど、本当にそんなことがおきるか?半信半疑だったので、お昼に、藍蓮様が話していた通りの内容を龍咲さんから聞いて、正直、驚いた。
『それでですね、
まだ、美咲様とお母様は、千景と話していますから、お父様に先にお話ししたのですが、
美月様は、藍蓮様の家に入られますし、
美咲様がご両親と中央区管内に住む話が無くなりましたので、
忍葉様の中央区管内の住居を至急、検討させて頂きました。
丁度、忍葉さまが、転入を希望されていました九十九學院には、寮がございまして、
九十九學院は、元々、神獣人のために作られた学校ですから、花姫への理解がありますし、警備面も安全に配慮できます。
花紋が出て花王子がわかるまで、とりあえずの住居として、九十九學院の寮に入寮して頂くのが一番いいと判断したのですが、
忍葉様は、いかがでしょうか?』
『私は、それで構いません。』
『そうですか。安心致しました。
それでは、
私と、忍葉様、美月様は今後の話しを致しますので、お父様、転入や入寮手続きの書類をご用意してありますので、こちらの道忠がお手伝い致しますので、ご記入願えますか?』
『ああ、わかったよ。忍葉がそれで良ければ俺はいいからな。じゃあ、お願いします。』
と、道忠さんとお父さんが、ダイニングテーブルの方へ移動して書類を書き始めた。
その様子を見ながら、道忠さんが寮に入る手続きを急ぐ、忍葉様は何もしなくていい、と言ったのは、こういうことだったのかと思った。
龍咲さんは、
『明日、忍葉様には、九十九學院に道忠と一緒に行って頂き、学校の見学や説明、量の見学などをして頂いて転入、入寮の手続きもご一緒に済ませて頂きたいのですが、宜しいでしょうか?』
『はい。えっと、道忠さんと2人ですか?』
『その予定ですが、何か?』
『いえ。なんでもないです。』
『私もご一緒しましょうか?』
『いえ。大丈夫です。』
『そうですか。それでは、明日、8時にお迎えにあがります。』
『はい。わかりました。宜しくお願いします。』
『美月様は、藍蓮様にお伺いかと思いますが、明日、花姫会で学校について説明させて頂きます。お迎えは、藍蓮様がなさるそうです。ご予定はこれで宜しかったでしょうか?』
『はい。』
『お話は以上です。私は、千景と合流しますので、これで失礼します。』
と、客間に戻って行った。
美月は、自分の部屋へ戻って行った。
私は、書類にサインをしているお父さんの隣に座り、道忠さんから簡単に明日の予定を聞いたりした。
30分後には、道忠さんが書類を持って帰っていき、そう10分後には、千景さんと、龍咲さんが帰って行った。
私が、客間のお茶を下げに行くと、
美咲が駆け寄ってきて、
『お姉ちゃんのせいで、新しい家に越すのが取りやめになって、翔に会えなくなったじゃない‼︎
なんでこんな花紋も現れていないお姉ちゃんの為に、
花姫の私が花姫として迎え入れられないって言われなきゃいけないの‼︎
お姉ちゃんなんか、欠陥品の花姫でしょ‼︎』
と捲し立てられた。
かなり泣いていたのか?美咲の目が赤く腫れていた?
美咲の言葉は、自分でも、そう思っていたことだから、堪えたけど、
騒ぎを聞きつけたお父さんが、直ぐにやって来て、
『美咲、まだ千景さんに言われたことがわからないのか?
忍葉は、花姫なんだ。花姫会がそう扱うと言ったんだ。
そんなことを言っていると本当に、花姫として迎えて貰えなくなるぞ。』
と珍しく美咲に怒って言った。
今度は、お母さんが、美咲を2階に連れて行った。
いつもと何かが違って不気味だったけれど、
それ以上の騒ぎは何も起き無かった。
♢♢♢♢♢
浅井家を出た道忠は、車の後部座席に乗り込むと、運転手に行き先を告げ、電話を掛けた。
『神蛇先生や紫紺様が仰った通り、忍葉様の花姫になる抵抗はかなり強かったですね。
それに、虐げられる環境が当たり前だったからでしょうが、ご自身の家庭環境への疑問すら薄く、危険だと言っても、八つ当たりされるくらいだからと家に帰ると仰られました。』
『それで、忍葉は、家に帰ったのか?』
『はい。忍葉様には、家に帰って頂きました。』
『そうか。』
『昨晩、ご一緒に、神蛇先生の話を聞いて置いて良かったです。
先生の仰る通りでしたね。
特に、いくつか言われたポイントは、本当に、大事でしたね。お陰で今日は、スムーズにいきました。
忍葉様は、虐げられる環境のせいか視野が狭いところがございましたし、不安定な危うさはありましたが、聡明な方でしたね。
こちらの立場の理解はすぐにされましたし、
自分への配慮をされる以上、迷惑は掛けないようにすると痛々しいくらい健気でしたね。
花姫会に混じって話を聞きましたが、妹の方は、自分本位で、他者の視点に欠けるお子ちゃまでしたね。
あれでは、何かやらかして千虎家の配慮も無駄にしかねないですね。
寮以外の住居の選択の余地もありそうに無かったので、
紫紺様が仰った通り、他の選択肢の話はせず、寮に住む話しを進め、
予定通り転入、入寮の書類は、先程、父親に記入して頂き、忍葉様にはスマホも持って頂きました。』
『あまり家に居ないようにそれとなく配慮してやってくれ。』
『ええ。妹の反応を見る限り、明日、忍葉様が家にいる時間は減らした方が安全ですからね。
学校や寮の見学をすることにしました。』
『そうか。』
『紫紺様の方は、どうでしたか?』
『ああ、いい方たちだったな。協力は頼めたよ。明日、もう一軒訪ねるよ。仕事の方は大丈夫か?』
『ええ。部下も育ってますから。数日くらい心配には及びませんよ。』
『そうか。すまないが、そっちは頼むよ。』
『いえ。それでは、また連絡します。』
♢♢♢♢♢
やっと巡り会えた花姫に、会えないとは、紫紺様も辛いだろう。
早く会えるようにしてあげたいが…。
今日は、計画通りに事が運んだけど、
まあ、大まかな計画は、これでいいけど、
こういうのは、こちらの思うようにはいかないものだからね。
思いがけないことが起きて、サクッと解決する時もあれば、
思いがけないことが起きて、重傷を負うような酷い結果になることもある。
と言ってたからな。
この先何が起きるかわからない。
それに、神蛇先生の話は理解はできるが、
忍葉君の選択に例え、少々、危険を感じても忍葉君の意思は尊重すること、
それからむやみやたらに危険を排除しないこと、心理的抵抗を解決するなんて、
それ自体が危険を孕むことなんだ。
多少の危険は、避けては通れないよ。
というのは、難しい…、
相手は紫紺様の花姫だからな…。
だから、神蛇先生も、そこを強く言ったのだろうが…。
できる限り、安全で速やかな解決に至りたいものだ。