「由香奈ってば意外と決断力あるんだね」
 クレアは目をぱちぱちして驚いている。
「支払いは分割だっていいんだからね」
「あたしは無金利にしてもらったよ」
「ああもう。わかってるよ、今度もそれでいいよ」

 ミチルさんはテーブルに手を置いて由香奈に確認した。
「じゃあ、注文書を書いてもらうけど。いいんだね」
「はい」
「それならまずはメジャーをするから。こっちに来て」
「行ってらっしゃーい」

 クレアに見送られ、由香奈は奥のカーテンをくぐった。
「靴を脱いであがって」
「……」
 二面が鏡張りの大きなフィッティングルームだった。
「上だけでいいから全部脱いで」
 壁にかかっていたメジャーを手に取り、紫色の細いフレームの眼鏡をかけながらミチルさんが指示する。

 由香奈はバッグを置き、手早くブラウスを脱いでブラを外した。
「やっぱりね。あんた、どう見てもE以上なのにDカップを着けてる」
「あ……」
「自分の願望で選んじまうのだろうけど、自分の体に合ってない下着っていうのは、毒みたいなもんだからね。さ、こっちの鏡に向かって立って」
 由香奈が鏡に向かって立つと、ミチルさんはアンダーやトップバストだけではなく、左右の乳房の上下や脇の下の周りまで細々と採寸した。

「もう着ていいよ」
 ブラウスに袖を通す由香奈の横、カーペットに蹲って採寸票を見ながらミチルさんはぶつぶつ言い始める。
「このボリュームじゃあ、ホックは四連にした方がいいね……アンダーも長くしたほうが良いなあ……ロングブラジャーみたいになっちまうけど……そうするとどうしたって生地は……」
 ぎろっと見上げられて、由香奈はびくっと肩を上げる。

「あんたの色の白さなら、生地はソフトベージュがいいとわたしは思うよ。着たい服を選べなくなるんじゃ本末転倒だろう。ベージュならどんな服にも影響は出にくい。実は黒より生地が安いし」
「あ、それなら……」
「うん、それでやっぱり谷間が隠れくらいがいいんだね? チューブトップみたいになるけど」
 簡単なデザイン画で確認してくる。

「それがいいです」
 由香奈が大きく頷くと、ミチルさんも頷いた。
「じゃあ。頑張っても価格はこうなるね。税抜き三万二千円」
 ごくりと唾を呑んで由香奈はこっくり頷いた。
「オーケー、承ったよ。あと、余計なお世話だろうけど、サービスでここに刺繍を付けてもいいかい?」
 スケッチの左側の肩ひもの根元を鉛筆で示して、ミチルさんは眼鏡越しに由香奈を見上げる。